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昭和史研究の第一人者・半藤一利が、最後に日本人に伝え残したかったこととは――。太平洋戦争を理解する上で欠かせない「名言」の意味とその背景を、著者ならではの平易な文体で解説し、「戦争とはどのようなものか」を浮き彫りにした珠玉の一冊。「戦争の残虐さ、空しさに、どんな衝撃を受けたとしても、受けすぎるということはありません。破壊力の無制限の大きさ、非情さについて、いくらでも語りつづけたほうがいい。いまはそう思うのです。九十歳の爺さんがこれから語ろうとするのは、そんな非人間的な戦争下においてわずかに発せられた人間的ないい言葉ということになります。いや、全部が全部そうではなく、名言とはいえないものもまじりますが、それでもそこから将来のための教訓を読みとることができるでありましょう。むしろ許しがたい言葉にこそ日本人にとって教訓がつまっている。そういう意味で〈戦時下の名言〉と裏返していえるのではないかと思うのです」――本書「まえがき」より抜粋
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Posted by ブクログ
戦時下に発せられた名言、そして、むしろ許しがたい言葉にこそ、日本人が忘れてはいけない教訓が詰まっている。
なかでも強く印象に残ったのが、「バスに乗り遅れるな」という言葉。
当時、ドイツ軍がヨーロッパで快進撃を続けるなか、今こそ日本もこの勢いに乗るべきだという空気を象徴したスローガンだった。
戦時下の日本において、なんと日本人は熱狂したことか。そして一度燃え上がった熱狂は、それ自体がまるで正しさであるかのように力を持ち、人々を引っ張り、押し流していく。
みんなが同じ方向を向いていると、自分だけ立ち止まるのは難しい。バスが出てしまう!と言われれば、行き先を確かめる前に飛び乗りたくなる。でも、本当にそのバスに乗るべきなのか。そもそも、どこへ向かうバスなのか。
国民的な熱狂に流されてはいけない。時の勢いに駆り立てられてはいけない。
東京大空襲を経験し、命からがら生き延び、その後、昭和史を研究し続けた半藤一利さん。
90歳を迎えた彼が最後に伝え遺そうとした本作。
繰り返し読み返そうと思う。
Posted by ブクログ
企画の段階では、37の「名言」を取り上げる予定だったが、2021年1月に著者が亡くなり、14の「名言」となったそう。残り23の言葉についても、著者の説明と共に知りたかったです。
学生時代には、戦争のことを学ぶ機会もあり、修学旅行などで、原爆資料館などを訪れることもあり、戦争の悲惨さを知り、憲法9条の問題なども、もう少し、日ごろから考えることがあったように思う。
しかし、社会人になり、日々の生活に追われるようになると、いつの間にか、戦争のことを正面から考える機会が無くなっていく。
徐々に、戦争だけは絶対にいけない、そんな上っ面な言葉だけが自分の中に残りつつも、戦争とはなんだったのか、新たに知ることも、知っていることを改めて見つめることも、積極的にはしなくなってきた。
そこへきて、昨年からの新型コロナ、オリンピック。心なしか、これまでよりも戦争について取り上げているメディアが少なかったように思うのだ。そしてそれを、まあ仕方ないよなあ、こんなご時世じゃなあ、なんて思っている自分がどこかにいた。
しかし、この本を、8月は積読にしたまま過ごしてしまい、9月に入って読み始めた途端、はっとした。そう。本当に、はっとしたのだ。自分の戦争のことを考えなくても仕方ない、戦争はしちゃだめだってわかってるから大丈夫、みたいな気持ちを、心底浅はかだと思った。
この本は、名言を軸に、戦争と言うものがどういうものだったのか、そこから何を感じ学ぶべきなのかを、平易な言葉で綴ってくださっている。でもだからこそ、難しい資料を読むよりも、胸に迫ってくるものがある。
言葉って怖い。その言葉によって、思い込んだり、思想として叩き込んだりすることで、社会が間違えた方向に向かっていくのが怖い。
そして、著者がこう記している。
『悲しい事実は現代にもつづいています。6月23日の沖縄全戦没者追悼式のときに、歴代の首相は挨拶のなかで、きまって「県民の心に寄り添って」といいます。そして美辞麗句で哀悼の意を表しますが、ついぞ国家としての謝罪をのべたことはないのではないか。わたくしはそう思うのです。しかも、いまの自民党政権たるや工事費一兆円をかけて辺野古の米軍新基地の建設を、沖縄の人びとの心のうちを無視して強行しているのです』
『三枝昴之といういま活躍している歌人がいます(略)彼がじつに見事に、いまの悲しい事実を三十一文字にまとめています。「沖縄県民斯ク戦ヘリ」「リ」は完了にならず県民はいまも戦う』
私は特に右でも左でもないし、自民党政権を全否定する立場でもない。それでも思う。安倍政権から続く現政権も、戦没者追悼式に限らず、著者の言う「美辞麗句」が多すぎやしませんか?オリンピック開催にあたって繰り返された、安心・安全と言う言葉。菅首相は、戦没者追悼式で読み飛ばしもしました。人はミスを犯すものではある。けれども、上っ面じゃない、心からの哀悼の気持ちがあったら、原稿をただ読むだけ、だから読み飛ばしも起きてしまう、と言うことは無いのではないか。
Posted by ブクログ
はじめて手にした半藤一利さんの本が遺作になってしまったことが悔しいです。
もっと続きを読みたかったです。
後半、特に沖縄のところは胸に迫るものがありました。「県民に対し後世特別のご高配を賜らんことを」と残して自決された司令官の大田実少将の電文に心打たれました。
こんなふうに沖縄の人々に寄り添った人もいたのだと胸が熱くなりました。
奥様(エッセイスト)の解説とお孫さん(編集者)の編集後記にも感動しました。
著者本人の企画書のとおり、まさに“孫に知ってほしい”戦争の名言の数々、
若い方こそ読むべき本ではないかと思います。
知りたい事はまだまだあるので、今後も戦争関連の本は読んでいきたいと思っています。
本書も定期的に再読したい本です。
Posted by ブクログ
半藤一利さんは特に近現代史の研究家として第一人者であろう。しかし、安倍前首相や、その取り巻き達からは嫌われていた。第2次大戦における後世に伝えたい言葉を紹介したこの本は、半藤さん最後の著書である。
まずは山本五十六。真珠湾奇襲にあたり指揮官だけの会議において「日米交渉が成立したら、例え攻撃機発進後でも直ちに帰投せよ」と指示したところ、機動部隊司令長官南雲中将は「実際問題として実行不可能」と発言。山本長官は「兵を養うは、一に国家の平和を守らんがためである。これができない指揮官は即刻辞表を出せ!」と叱責。各指揮官は全員シュンとなったという。司馬遼太郎は当時の日本について「現実の日本は、アメリカに絹織物や雑貨を売って細々と暮らしている国で、機械については他国に売るほどの製品はなかった。陸軍の装備は日露戦争時に毛の生えた程度の古ぼけたもの(主力小銃は三八式歩兵銃、主力戦車はブリキと揶揄された)で、海軍は連合艦隊が1ヶ月も走れる石油はなく、その石油もアメリカから買っていた。大戦争など起こせるはずもなかった。」と書いている。自称保守派連中でも、この現実を理解していない者が多すぎる。
半藤さんは、昭和20年までの教訓で第一のものは「国民的熱狂を作ってはいけない」ということだという。
また、アジア解放を掲げアジアの人々のために戦争に向き合っていた日本人もいることはいた。しかし残念ながら殆どの日本人はアジア緒民族を軽蔑しきっており、それらの国を欧米の代わりに日本が支配するというものだった。もし当時の日本人に岡倉天心や高村光太郎のように、苦しんでいるアジアの民を自分の苦しみとしていたならば、後々まで憎悪されるような圧政はなかったのではないかと書いている。
沖縄戦において大田少将は大本営宛に「沖縄県民斯く戦へり。県民に対し後世特別のご高配を賜らんことを」と電報を打った。しかし米軍基地問題等、沖縄の人々の心の内を無視して強行しているとも書かれている。実際このような考えは上だけでなく、例えば本土から来た警察の機動隊員が現地の人を「この土人が!」と呼び蔑んでいることを見ると、行政の末端に至るまで浸透していると感じる。
参謀次長河辺中将手記には戦争末期、北の国境にソ連軍の大群が集結しているのを確認しておきながら、攻めては来ないと結論付け、ソ連の日本侵攻の報に接し「ソは遂に起ちたり。予の判断は外れたり」と書いた。そのお人好しさに滑稽感があるばかりとして、軍上層部の情報収集能力や国際感覚のなさを指摘する。これは株をやっている人にもお馴染みの、自分の都合のよい判断をする「正常性バイアス」というものだ。
著者の企画メモにはこの本に記載されたもの以外にも、政治家や軍人らの有名な言葉が書かれている。それらに対する半藤さんの考えも読んでみたかったのだが残念である。
Posted by ブクログ
半藤一利の著作を最後に読んだのはいつだっけ?
と思いながら、書店の平積みにあるこの本を手に取った。
その時亡くなっていることに気がつき、惜しい人を亡くしたなと感じた。
半藤一利といえば私の中では『昭和史』。
大学生の時に、なぜかわからないが読んだ。
戦争の悲惨さ、民衆の心の動き、政府の未熟さ。
どれをとっても悲しみと怒り。
沖縄に行けば、否応なく感じるその苦しさ。
それを気がつかせてくれたのも、この人だったと思う。
今の現代人が歴史に興味をもてないのは悲しい。
著者は
「人間の眼は、歴史を学ぶことで、はじめて開くものである。」
という。
歴史を伝える立場にある以上、この言葉を胸に刻みたい。
合掌。
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