北方謙三のレビュー一覧
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「水滸伝」の続編です。
月並みな言葉だけど、北方さんの本は読み始めたら止まらない。
続きが手元にないと、気になって気になって夜も眠れない(笑)
やっと8月に文庫版が完結しそうなので、
待ちきれなくて、ついに読み始めてしまいました。
また至福の時間がやってくる~長いようで短い旅の始まりです。
官軍との死闘から3年。
散り散りになった梁山泊の同士達が、水面下で活動している。
梁山泊の残党狩りは苛烈を極めるけれど、彼らには志がある。
懐かしいメンバーが次々と登場して、胸が高鳴ります。心が震えます。
そして志と共に亡くなった漢の子供達も新たに登場。
彼らがひたすら待ちわびているのは、行方が知れな -
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杖下に死す 北方謙三
柳生新陰流の達人、光武利之(実は代々御庭番の家系・村垣淡路守定行の妾腹の子)と大塩平八郎の養子で東町奉行所同心の大塩格之助との不思議な友情をベースに利之の自分探し?の物語。
眠狂四郎のようにニヒルではないが、群れず独歩行タイプの利之。御庭番の家系もあって、なんとなく親父の命であちこちを旅し、隠密らしからぬ隠密の役目も果たしてきた。
その流れから別に大塩を探れと言われた訳ではないが結果として大塩平八郎に接近遭遇することになる。
大塩平八郎の乱とはなんであったのか『政』が庶民のためであったことはこれまでも、これからもないだろう。
1837年(天保8年)大塩平八郎の乱
大 -
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巨大な宋国が倒れて、定石通り群雄が割拠し、それぞれの小国家が形を成してきた。いよいよこれから、それぞれがしのぎを削って戦い合う、といった段階か。梁山泊の行末も気になる。
でも今回のハイライトは、何といってもホーキョクの最期の場面。最初の登場からインパクトは強くて(ネガティブな意味で)、“こんな奴が108人の中にいたの!?”って感じだったけど、どんどん魅力的な人物に成長していって、その成長がまた嬉しかったりして…そんな感じで、おそらく北方水滸伝の中で、最も原作から飛躍した漢。いなくなったのはすごく残念だけど、ハイライトになるような死に様を与えられてよかった。
これがなければ、トコーの自殺が一番衝 -
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遂に、梁山泊と宋禁軍との戦いに終止符が打たれました。
戦に自分の生涯をかけた禁軍の元帥童貫が、
替天行道を掲げた梁山泊頭領の楊令によって討たれ、
梁山泊の勝利によって宋は敗れました。
元帥あっての禁軍。
禁軍あっての宋という国の存在。
ここ数年、形骸化していた宋の政治は、この敗北によって脆く崩れていきます。
宋を倒すことに力を注ぎ、新しい国を建てることを夢見て長年戦ってきた梁山泊。
いざ、勝利をおさめ、実際に国を建てることに直面した梁山泊がどのような国造りをしていくのか。
なんだか、梁山泊の勝利を応援しながら読み進めてきた分、終わってしまった虚無感がぬぐえません・・・ -
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ネタバレ読み終わったァ。
というか読み始めるのに時間がかかったぁ。
発売日に買ったんだけど、どうにもこうにも読む気が起こらない。
なんでだろう?と考えると、童貫がいなくなったことが、とても大きなことと、あらためて気づくのでした。
とかいいながら、一度読み始めたらあれよあれよと進み、あっという間に終わりました。
今回はAfter童貫の混沌とした中国を東西南北あらゆるところで、ふつふつとした動きがざわついている感じ。群雄割拠の様相を呈しながら、楊令率いる梁山泊は少しずつ体制を整えていく、みたいな。
それにしても、楊令がちょっとしたベンチャー企業の社長のように感じのは僕だけだろうか?今回もと -
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楊令の正面に岳飛が出てくるのが見えた。一度だけ剣が交差した。岳飛の剣が、宙を飛ぶのが見えた。
それだけだった。楊令は岳飛軍を突き抜け、長平もそれに続いた。『幻』の旗は、揺らいでいない。『蒼』の旗もだ。
右手。童貫だった。楊令を、押し包もうとしてくる。息を呑むような、鮮やかな動きだった。しかし楊令は、それより速く反転した。(79p)
遂に楊令と童貫との決着がつく。どのように剣を交わしたのか、描写されない。我々の想像に任せる、ということなのだろう。
戦の終息。それはつまり、宋江が魯智深が思い描いていた、そして楊令が梁山泊の頭領になるに当って死ぬほど苦しんだ「国造り」の構想が明かされるとい -
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「呉用殿が見舞いに来るとは、私ももう目醒めなくなるのだな」
こんなことを、言いそうな気はしていた。呉用は笑いかえしたが、それは覆面で見えなかっただろう。
「偽の書類は必要としていないのか。遠慮することはない。私はまだ、一通や二通の書類なら、書けるかもしれん。ほかに、書ける者はいないのだからな」
「もういいのだ、蕭譲」
呉用は、皺で隠れてしまいそうな、蕭譲の眼を見つめた。
「偽の書類でこそこそやる時期は過ぎた。宋とは、正面切った戦になる」
「そうか、安心して死んでいい、と言いに来てくれたか」
(略)
「面白いところに誘われたものだ。塾の教師がな」
「私もわか若いころは塾の教師だった」
「別れはし -
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ネタバレかなり寂しい気持ちになる。
これまでの伏線から、きっとこうなるのだろうなぁと感じながらも、
いざそれが現実になった時の喪失感が大きい。
童貫禁軍元帥がとうとう戦死する。
王進の家を訪ねたあたりから、そうなるんだろうと予感はあったものの、
しかもこの物語がフィクションであるにもかかわらず、
敵というか、この物語を支える一方の大きな柱がなくなった。
その様子が、梁山泊軍側の言葉からもあらわれている。
楊令が童貫の遺骸に対し「お久しぶりです、元帥」と声をかける。
果たして自分は生涯をかけて戦った相手に対し、
こう言えるのだろうか?と考えた時、楊令と童貫、梁山泊軍と童貫の間にあったものが