北方謙三のレビュー一覧
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「すべての存在を懸けて、闘うのです。」
自らの矜持のために闘うことを貫いた漢たちの物語、後編。
闘いの中で散っていく者たちは、何を守ろうとしていたか。
多かれ少なかれ、誰しもが、無意識に守りたいと感じる心の安定。
その心の安定をどこに置くか、が
人としての器の差だと感じさせられる。
自分の力で得た仲間、地位、守るべき人がいるものは、
与えられて地位を得た人間とは、とる選択が異なる。
心の安定や、自らが力を発揮する動機が大きく異なる。
自らの矜持か、それとも小さな殻や城を守るための怯懦か。
命が、存在が懸っているその瞬間の選択こそが、
自分が何者かを決める。
散ることを選択したことは -
Posted by ブクログ
「上等だ。梁山泊軍は、伊達じゃねえんだ。どこの軍とやり合ったって、勝てる。そして天下を取れる」
「意味があるのかなあ、それが」
「なんだと?」
「いや、私の任務は、病人を診たり、怪我を治したりすることですから。いつも、相手はひとりだけです。天下を見渡している余裕など、ありませんよ」
「志が、あるだろう」
「自分の場所で、懸命に闘う。志を考えれば、私がやるべきことは、それです」
「安道全や薛永はな、最後まで梁山湖の湖寨に留まった。命を懸けて、志を貫いたのよ」
「医師や薬師の場合、生き延びた方が、その後の役に立つ、と思います」
「おまえ」
「無論、安道全殿も薛永殿も、立派に志を貫かれたと思いますが -
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楊六郎と楊七郎が楊業の跡を継ぎ、前回の大戦で痛手を負った楊家軍の再建を目指すが、大戦前の状態まで取り戻すのに相当な苦労をする。全盛期までにはまだまだ至らないが、耶律休哥に太刀打ちできるのはやっぱり楊家軍の人間だけなんだなと思った。
上巻の最後の方は、石幻果の記憶の片隅に触れるような出来事が起こり、そろそろ記憶を取り戻すと思っていたが、記憶が戻った瞬間の衝撃は思ってた以上のものがあった。石幻果となって過ごしてきた人生が全て否定されたような、石幻果になる前の人生が否定されたような。記憶を取り戻した時の戸惑いがなんとなく解る気がする。
今後の石幻果と耶律休哥と六郎、七郎、九妹の動向が気になる!どのよ -
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絶えず悩む岳飛。梁山泊を認めたくないと思いながら、結果は自分の方が劣っていた。そして、それを認め梁山泊の街並みを見に行く。そして、揚令達と会い語る。語りだしても相容れない二人。お互いに違いすぎる考えがある。ただ民への気持ちは二人とも変わらないのに。
また13巻では、蕭珪材と岳飛がお互いの兵を死なせたくないために、一騎打ちをする。
名勝負で最後に分けたのは運なのか。天命なのか。
戦の描写が一番心躍る。本能がそうさせるのかな。
揚令の台詞。
「やるべきことを、やる。ひとつずつだ。それが積み重なって、国というものはできてしまう」
何でも目の前のことを一つずつやることが大切なのだろうか。