山本文緒のレビュー一覧
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今で言う機能不全家族のお話。
でも1995年に初版されていた様なので、その当時読んでたら自分の知識が足りなくてただのホラー小説としか感想が出てこなかった気がする。
毒親の母を持つさとるは終始暗い印象で、彼氏といる時も不安定な状態。なんでまたこういう人にも彼氏ってできるんだろう?と思うけど、良い様に言えば『ちょっと危なっかしい支えたくなる人』に惹かれる人もいる。彼氏が献身的にさとるを支える反面、母親の支配的で且つ常に独善的な言動に押さえつけられ、自分の人生すらも決定出来ないさとるにモヤモヤする。そんな壊れた家族の中で帳尻合わせて家族も助けながら自由気ままに振る舞うみちるの存在がこの物語の印象を少しだけ軽くしてくれている様な気がした。 -
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病を患った人たちの短篇10篇。①都会で生きる若いきれいな女になるため、骨粗鬆症になった義娘。②アトピー性皮膚炎になったことで、夫に去られた女。③男ばかりの職場で働くことになって、トイレに行けず、便秘を患う元モデル。④突発性難聴に悩まされ、教え子に暴力を振るって免職になった元小学校教師。⑤テレビ局に勤める激務の彼からの電話を待つことによって、睡眠障害を発症した会社員。⑥PMSに悩まされ、無関係の人にスタンガンを向ける、会社の上司とセックスしまくるOL。⑦友人に見捨てられる不安から、アルコール依存になった女子高校生。⑧痩せてきれいになる努力をしたのに欲しいものを手に入れることができず、肥満でソープ嬢をしている女を憎む女。⑨自分のことばかりで、彼女の病に気づけない、顔スタイル良しの、金のために仕方なくモデルをしている男。⑩頑張ってのし上がり、独立する段になって、味覚障害を起こしたフードコーディネーターの知られたくない過去。
おもに、人間関係によるストレスから体調を崩す。自身もそのことに気づいておらず、にっちもさっちもいかなくなってようやく、自分の根っこにある病の元に気づく。うまく自分を騙しているつもりでも、体が反応するというか。落ちこぼれる子供を救ういい教師であろうとがんばりすぎたあまり、生徒に暴力を振るうという問題を起こし、突発性難聴になってしまった女性。「私一人がご飯を食べられるだけのお金を稼いで、クラゲのようにただふわふわと生きていこう」という無気力状態からの、再生がよかった。⑥PMSについて書いた小説なんて、とても早かったと思う。⑧は柚木麻子さんの『BUTTER』の原型のよう。つくづく、山本文緒さんは、女で生きることの大変さと喜びとを真摯に見つめ、噛み締め、ズルさ、ダメさも認めて、そこから逃げなかった作家さんだったのだなあ。 -
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ハウスメーカーに勤める夫と妻、一歳の娘。中学教師の夫と、夫の両親、妻、小学生の息子二人。二つの家庭が、それぞれ出会う。モラハラ体質の中学教師は、二世帯住宅を建てるという名目でハウスメーカーの夫と知り合い、ハウスメーカーの妻は専業主婦に嫌気がさして働き始めた生保レディとして、中学教師を顧客として獲得しようとする。ハウスメーカーの夫と、中学教師の妻は、互いに惹かれ合い、不倫関係になる。ハウスメーカーの後輩の女が、その場面を目撃、妻に告げ口する。駆け引きだらけの大人たちの視点の中、中学教師の、非常に聡明な長男の視点が、ちょっとした救い。
だけどその長男は、中学教師の子供ではない。別の男の子を宿した妻が、打算で中学教師と見合いし、結婚した。中学教師はひと目で妻に恋し、絶対に幸せにすると誓って結婚したのだが、現在あちこちの女に手を出したり、家では絶対君主として君臨している。ハウスメーカーのほうの、結婚に至る過程も、少々いびつだ。大学を卒業、就職してそれなりに働いていた妻だったが、そういう毎日が嫌になって、安全日だと嘘をついて妊娠、それで夫に結婚を迫った。親が頭金を出してくれたマンションに引っ越し、結婚式でみなに祝福され、子供が産まれるのを待っている間は、これ以上ない幸せを感じていた。のだけれど、生活が始まると、育児と家事を全部押し付けられることに我慢ならなくなり、働きに出る。登場人物全員、自分勝手。だけど、自分の人生は自分のもの。これも三十年も前の小説なのに、みんなの思うことが現代のあるあるすぎてもう。完全に納得のいく生活なんて、どこにもない。どこかで折り合いをつけて、自分の幸せを探していくしかない。
以下、抜き書き。
「人生の選択肢をまだ持っている自由。選ぶ必要に迫られていない自由。そういうものを目の当たりにすると、すでに道を選んでしまった自分が、彼らとは別の世界に来てしまったような気がした。」
「自分のペース、大人のペースで歩くことがこれほどまでに心地よいとは、子供がいない人間には分からないだろうなと思った。」
「真弓が働きたいというのは、自分の役割から逃げ出したいだけなのだ。子供と夫の面倒をみるのがつまらなくなっただけなのだ。共働きというスタイルに持ち込んで、今以上に自分の役割をこちらに押し付けたいだけなのだ。」
「何となく学校を出て、何となく就職をした。まわりの意見のまま、人に言われるまま、成り行きでここまできてしまったけれど、生まれて初めて祐子は自分に疑問を持った。」
「楽しかったあの頃。あの頃には人生は自分の手の中にあった。いつから、自分はそれを手放してしまったのだろうか。」 -
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美術系の短大を出た主人公は、父親のコネで入社した信金で働きながら、雑誌にイラストを描き、アルバイト的な副収入を得て一人暮らしをしている。その生活に、まったく満足している。「会社に行ってお給料をもらい、家賃を払って住んでいる。誰にも保護されていない。誰にも迷惑を掛けていない。誰も私に、ああしろこうしろとは言わないのだ」面倒くさいお局には、彼女のプライドを立ててあげ、鬱陶しい後輩とは深く付き合わない。週末に家にやってくる恋人もいる。そんな状況から一転、恋人が転勤する。そして、備品を失敬しているところを後輩に見られたことにより、副業の露呈から、横領の疑いまでかけられて、会社に居場所がなくなる。彼女には、短大時代の友人が二人いる。一人は仕事も恋人もころころ変えて、現在、語学留学を言い訳にハワイに逃げている。もう一人は、結婚、出産したものの、夫の無理解にキレて、その友人のもとへと飛んで行ってしまう。そして現在、恋人と決定的にすれ違い、職も失って実家に引きこもる彼女もまた、ハワイへ行こうとする。
あちこちの女に手を出して、全く悪びれない岡崎という会社の先輩が、恐ろしい。嫌な人間ではなくて、とても魅力的なのだ。お局も、後輩も、そして主人公も、彼によって人生を引っ掻き回される。「怖いものがない人間は強い。欲望のままに動いて、後先考えずに嘘をつくことができる。相手を傷つけたのではないか、自分が嫌われたのではないかと思い悩むこともない。」
あとがきで文緒さんは自身の高校時代を振り返り、つねに「逃げたかった」と書いている。「予想通りの大学に進学し、予想通りの企業に就職して、予想通りの相手と結婚して子供を生み、予想通りに年老いて死んでいく。思ったとおりに物事が進んで行き、一生そこから出られないこと」を、恐怖していたと。ただ、実際には逃げない。誰にも傷つけられないよう、誰にも文句をつけられないよう、仮面をつけて生きるという選択をする。今、ここで生きるために闘う。文緒さんの小説に共通するテーマのように思う。 -
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ご命日なので、もう一冊。
新婚ではない、熟年夫婦でもない、結婚してから数年の若い夫婦達の結婚生活の不協和音。8編の短編集です。
人生三度目の土下座に悩む小心の夫「土下座」
納得の政略結婚のお嬢様の別宅がある夫への愛「子宝」
口論もできず演じた夫婦の結末「おしどり」
地元の同級生と結婚、貞淑な妻の心の不貞「貞淑」
穏やかな夫の隠された生活。トドメのラスト1行「ますお」
明朗な夫の親との不仲に手を差し伸べる「秋茄子」
同居十年目のカップルの別れ。結婚の有効性を問う「紙婚式」
一緒に暮らすパートナーの見える部分が全てではない。話すことより飲み込む言葉の方が多い。どの短編もラスト5行に掴まれる。
結婚という制度の名の下に揺らぐ夫婦たちを、山本文緒は静かに、確実にえぐってみせる。 そこが、この作家の真骨頂。
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散る花と流れゆく水。
落花は流水のままに流れたいと思い、流水は落花を乗せて流れたいと思う。
互いに惹かれながらも抗えない運命を思わせるこの成句のように、母娘三代の“流れ”を描く物語。
家庭や安寧の対極で生きるような女性たち。若くして娘を産み、母に育てさせた女。その娘・手鞠を中心に、1967年から2027年まで十年ごとに時代を移しながら、流れゆく様子を描きます。
自ら流れに落ちたようで流されぬ母、やがて流れに身を任せる手鞠、そして踏みとどまろうとする手鞠の娘たち。
彼女たちが求めるのは、愛か自由か。
安定の見えないその生活に耐えられる彼女たちは強いと思う。 -
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故郷を離れて久里浜で暮らす佐々井と冬乃な夫婦の元に冬乃の妹である菫が突然転がり込んできた。
その冬乃と、芸人に挫折し、佐々井が勤める会社に正社員として働き始めた川崎の2人の目線で話が進んでいく。
冬乃は突然現れた妹に振り回されるように、カフェを始めることになり、川崎と佐々井が勤める会社はブラック企業。
その他様々な人間関係等を抱え、2人とも疲弊していた。
そんな、なんとも言えない窮屈さややるせなさに包まれ疲弊する2人を支えてくれる温かい人たちがいることに安堵する。
苦難や上手く行かないことに立ち向かう勇気がもらえるかも。
2025.8.17 -
Posted by ブクログ
ネタバレ続きが気になり一気に読んでしまった。だけど、読んでいてイライラ感もあったなと。。
父に再会したシーンで、自分の人生を生きるのを諦めている感じがなんで??と思った。
自分の人生なんだから、前向きじゃないなら結婚しなくても良いのに。。と思ったり、生活を交換してから行くなと言われたデパートに行ったり、カードを使って良い=豪遊して良いと思って使いまくる所とかそんなわけないだろ‥。と思ったり。個人的にはミシン工場で働いている蒼子の方は好きじゃないなと思った。なんかイライラしてしまって
もう片方の蒼子が好きって訳でもないけど。。
最後はお互い発見があった、という形で本人たちはプラスに捉えているみたいだけど、殺されそうになった相手に対してよくそう思えるな‥。私なら無理!と思った。