あらすじ
父のコネで都会の信用金庫の人事部に勤める深文は、安定した仕事の中で同性の先輩ともうまく付き合い、恋人との関係も良好で満足していた。居心地いい生活、それはずっと続くと思っていたのに。ある日、1人の女性新人社員が配属されたことで、深文を取り巻くバランスがゆっくり崩されていく。そして起きた、ある小さな出来事を気掛けに深文を取り巻く世界はすっかり瓦解してしまうが……。
すべてがダメになったと思ったら、何もかも捨てて南の島へ飛んでパイナップル工場で働けばいい。決して実現しない、実現させようとも思わない妄想が自分を救ってくれることもある。中毒性があり! 山本文緒の筆致が冴えわたる、誰もが共感できる日常の物語。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
30年前の作品を再読。今でいう『擬態』をすることによって、若さとOL生活を満喫してなにもかもうまくいっていると自分を騙し続ける主人公。やがて少しずつなにかが崩れ、気持ちがボロボロに壊れていく様をリアリティをもって描かれる。それほど新しい題材でもないにもかかわらず著者が描写すると、とたんに平凡な筈の恋愛小説からホラーに転じるから恐ろしい。ラストに救いはあるのでなんとか読み通すことはできるが少しだけ自分の若い頃が思い出されてしまい、苦い後味は残ってしまった。
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やっぱり山本文緒はすごい。どうしてこうも女の心情をうまく書くんだろう。結婚とか恋愛観とか、男がいないと生きられないとか、結婚は幸せだとか、生まれ持った特性から価値観まで、さまざまな女の真が描かれている作品
自分がわからなくなったら読みたい
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面白かった。すぐ読めちゃう。
残業なし事務仕事▶︎結婚▶︎寿退社▶︎子供産む が女性としての喜びだとされてる時代で、そのパッケージに対して疑問を持つ主人公の日常が描かれてるんだけど、1995年に世に出た本だとは思えないほど主人公の価値観が令和の今と重なってるのが山本文緒さん…凄い…と思った。
ただ、主人公の事はあまり好きじゃない。
プライドが高くうっすらと周りの人を馬鹿にする感じ、自分も浮気するくせに恋人への浮気は許せず被害者ぶる感じ、サバサバしてると見せかけて実は中身がめちゃめちゃドロドロしてる感じ、、気持ちよくない!嫌だ!
と思うけど、自分に当てはまらない所がまったくないわけでもなく、も、もうやめて〜!になった。
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ああ〜〜これこれ!
若いうちの秘めたパワー全開で、読んでてニヨニヨ笑っちゃいました。
あと作品も表紙も好きすぎて自分もショートヘアにしたくらいハマってました。
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人間、一生幸せとは限らない。ちょっとしたことでどん底まで落ちてしまう。そんな人生を生きていく中で誰しもが一度は逃げたいと考えたことはあるのではないだろうか。逃げたいけど逃げられない現実を生きる人間の心情を感じ取れる一冊であった。もしこの本を手に取って読んでくださる方がいれば、ぜひあとがきまで読んでほしい。
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感情を乱されてどうしようもない時、会いたいと言える存在がいることがどれだけ貴重でありがたくて幸せなことか、、ちょっとみんなちゃらんぽらんすぎないかとも思ったけど⁽˙ˑ˙⁾
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やっぱり山本文緒さんの小説が大好きだと再認識した一冊。
“毎日、現実から逃げたいと思っていても、実際に逃げ出したりはしない。”山本文緒さんの小説は、ある1人の女性の日常を覗いている気持ちになれる。その女性が、まるで自分なんじゃないかと思うくらい同じ悩みを抱えているので感情移入がしやすい。
今回も途中苦しくなったり、ニヤニヤしたり、かと思えば泣いたり。最後は温かい気持ちで読み終える事ができた。
彩瀬まるさんの解説の文も好きだなあ。
『どうしてか、この方の物語はとてもとても苦いーというか、その苦さが大切なものとして書かれている気がする。楽しくて苦い。苦いから、少し怖い。』
『性分を乗り越えて意思を伝えあうには、適切なタイミングと、配慮と、勇気が必要だ。だからこそ、誰かと心が通うことは奇跡なのだ。』
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20代前半の悩めるどこにでもいそうな女子たちの、浮き沈みの激しい心と生活が丁寧に描かれた作品。
ちょっと昔に書かれた話だから、いまの時代とは違うところが多いけど、それがまたいい味を出してるのよ。
なかなか電話が繋がらなくてもどかしいとか、ワープロ使ってるとか、四大卒女子がちょっと珍しい感じとか。
23~4歳の深文は、自分のキャラを理解してて、彼氏にどう甘えていいかわからない。かわいい発言はキャラじゃないけど、泣きたいときだってある。でも、そういう時に限って頼ろうとする相手はみんなトラブルを抱えてる。
深文の先輩サユリさんと、後輩日比野とのやりとりが好き。どっちもいそうなんだよぁ。一見大人しくて淡々としてるサユリさんみたいな人が地雷系なのは、いつの時代も変わらないかもしれない。傍から見てる分にはおもしろい。深文の気持ちがわかるけど、痛い目見ることになるとは誰も思わなんだ、、、笑
最後に深文がハワイに行って終わるのはなんか嫌だなぁと思ってたら、まさかの展開で、これもまた好き。
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毎日、現実から逃げたいと思っていても、実際に逃げ出したりはしない。平成初期の頃を設定していて、仕事や結婚等悩みが尽きない3人の女性の話。 わかりすぎてヒリヒリしました。
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30年以上前の作品のため今から思えば古い部分もある。でもスマホもなく固定電話で連絡、会社から国際電話、備品を…などその時ならではの話題満載で小説だからこそ楽しめる。コネ入社で人事部、暇でお局がいて、ってたくさん周りにいた。背景も社会から受ける圧も違うのに悩みは同じことがよくわかる。恋敵にトラップを仕掛ける、つかみ合い、今より感情を自然に表せている時代も良かった気がした。
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毎日、現実から逃げたいと思っても逃げ出すことができないということは誰でもあると思う。この本を読んで、やはり人間関係は複雑で、けど頼れる人に頼ったり、逃げ場を見つけたりすることが日々の生活を乗り越えてくには必要だと感じた。
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心の動きの描写が、分かる!の連続。だからこそ、「なんでそこもう少し上手く流せないかな」って思ってしまうのが辛い。わたしも客観視したらこういうことの連続なんだろうな…。深文の生活感が非常にリアルで一気読み。
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山本文緒さんらしさが余すことなく出ていた。
深文さんの心の揺れ動き、人への接し方、当たり方、すごく共感する部分がある反面、そこは違うよ、上手くやらなくちゃ!とツッコミたくなる場面も多々あり。この何とも言えないもどかしさ?が絶妙な表現で描かれてて引き込まれる。
すごく才能のある作家さん。恋愛派生系?の本はこの人の右に出る人はいないんじゃないかな。新作を読むことが出来ないのが悲しい。
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主人公の深文は結婚願望なし。信用金庫で働く。
ストーリーは日常生活かと思いながら読み始め、だんだん登場人物が個性が面白くなった。
今と昔を比べながら読んだ。
違いは?やっぱり連絡の取り方。今は、すぐ連絡とれるのが当たり前になってる。
中場から、さゆりさんのまさかの展開に最後、どうなるのか早く読みたかった。最後は、ハッピーエンド⁈いい感じに終わってたから良かった。
山本文緒さんの本を他にも読んでみたい。
あとがきに、毎日の暮らしからにげたいと思うことはありませんか?とある。
たまにはあるよね、退屈や満たされてないとき、
けど、やっぱり今がいいと思うから、気分転換しながらこれからも大切に過ごして行こう!
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山本文緒さんは自転しながら公転するを読んだ後の2冊目です。
この本を書かれたのは1992年、一昔前のOLの話だけど、現代の同世代が読んでも共感出来る内容。やっぱり山本文緒さんは裏切らない。読んでて苦しくなるくらいリアルに嫌なことが起こるが、現実的で好きかもしれない。
話も短く2.3時間で読めるため、仕事でちょっと嫌なことがあった人におすすめ。
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山本文緒さんは
日常を書くのが上手で
すぐ思い浮かぶ。
山本ワールドに没入でき楽しかったです。すぐ読み終えてしまいました!
会社員として働いていて
気の合わない人がいても
そこまで近寄らない方がいいなと考えました。
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山本文緒さんの本は一気読みに丁度いい。
ある意味頭を空っぽにして読める話だと思った。
初めは深文と姉の関係が私と実姉のようだなと思い、共感する部分が多かった。深文の性格は、「他人に何を言っても無駄」だと思い込んでる性格でかなり厄介だった。その性格を、横領事件から岡崎、日比野、そして天堂によって少しづつ変えられていった。こういう変に達観している人こそ病気になったりするものなんだなあと思った。ハワイに行かなかったのは意外だった。
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1992年作。
もと少女小説を書いていた山本文緒さんが一般向けに路線変更した、最初の1冊。
今年何冊か親しんできた山本文緒さんの小説、これもやはり同様のニュアンスを持っており、平凡な若い女性の、それでも細やかな生活上の波乱を丁寧に描き、ある種の日常性を浮き彫りにしている。愛すべき凡庸さのようなものが感じられて、好ましく思っている。
この作家の作品は、恐らく感性の似た女性の読者たちに好んで読まれてきたのだろう。男性で読んでいる人はあまりいなそうだ。
本作では、穏やかな冒頭部分から、後半は非常なピンチの状態となり、読んでいて共感のあまり辛くなってくる。が、最後はなんとか収まって、一応はめでたしである。
本作の中で、女性主人公の遠距離恋愛の恋人が、出張先の札幌すすきののソープに行ったことが発覚し、彼女はとても傷つき怒る場面がある。男としては、そんなに怒るかなという気持ちもあるが、それを許せないと感じる女性も多いのだろう。確かに「ちゃんとした」恋人がいるのなら、ソープには行かないような気もするが、そのへんも人によるかもしれない。
それはさておき、ちょっと暗めで人に対して割とクールっぽい女性の個性を起点に、地味だけれどしっかりとした「日常」が描かれていて、好ましい長編作品だった。
Posted by ブクログ
プライドを傷つけられた人間の恐ろしさが垣間見える作品でした。
★印象に残ったフレーズ
「私は全ての義務から解放され、代償として全ての権利を放棄した。」
Posted by ブクログ
山本文緒さんの作品は自転しながら公転するを読んで大ファンになった
その後、短編集、エッセーなど様々詠んだ。どれも面白いし、人物描写が素晴らしく、その人の動作や表情が映像のように浮かぶ
パイナップルの彼方も自転しながら公転するにどこかティストは似ていて
色々あったけど、最後は明るい気持ちで読み終える作品
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長い前奏に続く懐メロを聴いているような感じでした。鈴木深文と天堂義明の「おさまり」に納得です。山本文緒「パイナップルの彼方」、1995.12発行。4日かけて味わいましたw。
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どの登場人物もすごーく好きにはなれないが、それぞれに共感する部分があり、こういう人いるいる!と思った。
逃げ出したいけど、逃げ出せない…時代こそ少し違えどリアリティが凄いと感じた。
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美術系の短大を出た主人公は、父親のコネで入社した信金で働きながら、雑誌にイラストを描き、アルバイト的な副収入を得て一人暮らしをしている。その生活に、まったく満足している。「会社に行ってお給料をもらい、家賃を払って住んでいる。誰にも保護されていない。誰にも迷惑を掛けていない。誰も私に、ああしろこうしろとは言わないのだ」面倒くさいお局には、彼女のプライドを立ててあげ、鬱陶しい後輩とは深く付き合わない。週末に家にやってくる恋人もいる。そんな状況から一転、恋人が転勤する。そして、備品を失敬しているところを後輩に見られたことにより、副業の露呈から、横領の疑いまでかけられて、会社に居場所がなくなる。彼女には、短大時代の友人が二人いる。一人は仕事も恋人もころころ変えて、現在、語学留学を言い訳にハワイに逃げている。もう一人は、結婚、出産したものの、夫の無理解にキレて、その友人のもとへと飛んで行ってしまう。そして現在、恋人と決定的にすれ違い、職も失って実家に引きこもる彼女もまた、ハワイへ行こうとする。
あちこちの女に手を出して、全く悪びれない岡崎という会社の先輩が、恐ろしい。嫌な人間ではなくて、とても魅力的なのだ。お局も、後輩も、そして主人公も、彼によって人生を引っ掻き回される。「怖いものがない人間は強い。欲望のままに動いて、後先考えずに嘘をつくことができる。相手を傷つけたのではないか、自分が嫌われたのではないかと思い悩むこともない。」
あとがきで文緒さんは自身の高校時代を振り返り、つねに「逃げたかった」と書いている。「予想通りの大学に進学し、予想通りの企業に就職して、予想通りの相手と結婚して子供を生み、予想通りに年老いて死んでいく。思ったとおりに物事が進んで行き、一生そこから出られないこと」を、恐怖していたと。ただ、実際には逃げない。誰にも傷つけられないよう、誰にも文句をつけられないよう、仮面をつけて生きるという選択をする。今、ここで生きるために闘う。文緒さんの小説に共通するテーマのように思う。
Posted by ブクログ
あるある。何回も。最近はないけど、何もかもなくして、新しい土地で、誰も知る人がないところで暮らしたいなあと。ハワイなんて、理想すぎるけど、住んだらまた現実になりそうだ。
そんな葛藤をテンポよく、でも丁寧な心のうちを書いてくれた作品。ドラマのようだった。
Posted by ブクログ
文庫本にて作者1995年10月のあとがきあり。
解説彩瀬まる氏。令和4年。
高校生の時に読んだら、本作を理解しきる事は出来ただろうか。
おこがましいけれど
とうに成人し、社会人として働いているからこそ、登場する女性陣達の理想、憧れ、そして現実への葛藤と悩みを、ちょっと上から眺めることが出来る。
そして、かつてのトレンディドラマのようにポンっと海外へ行けるお金と、休める職場環境はむしろ後退したよなぁ、と今の貧しい日本社会に絶望する。。
よって、当時の生き辛さに今は物質的貧しさもあって、不幸度は加速しているのでは。。と凹んでしまった。ので、解説彩瀬氏ほど読み込めていないのだろう。
天堂目線だと主人公はどう描かれるのだろう。
日比野も、開けっ広げな性格の同僚たちに囲まれていたら、また違ったのでは、とちょっと同情してしまった。
あの3人の空気間の職場環境は、しんどすぎる。。
Posted by ブクログ
逃げることの愚かさと大切さを痛いくらい思い知らせてくれる1冊。
逃げてもいいんだよ!というメッセージの本が多い中で、逃げなかった人の目線から物事が描かれている。
携帯が出て来ない5年くらい前の作品かな?と思いきや、約30年前の作品。世の中もだけど、自分もアップデートされているようでされていないんだなあと思い知らされた1冊だった。
Posted by ブクログ
少し古い話なので、物語の中に時代を感じるもの(連絡方法が固定電話だったり、ワープロなるものが出てくる)があって、懐かしく思った。
今の女性像とは違って、見えないものに縛られている20代の女性が主人公。
全てに対して、なんとなく生きているけれど、違和感を拭いたくても拭えずにそこに葢をして、見てみぬふりをしている。
その違和感はメリメリと剥がれていき、やっと本来の姿を出してくるところが、ゾクゾクして面白い。