あらすじ
父のコネで都会の信用金庫の人事部に勤める深文は、安定した仕事の中で同性の先輩ともうまく付き合い、恋人との関係も良好で満足していた。居心地いい生活、それはずっと続くと思っていたのに。ある日、1人の女性新人社員が配属されたことで、深文を取り巻くバランスがゆっくり崩されていく。そして起きた、ある小さな出来事を気掛けに深文を取り巻く世界はすっかり瓦解してしまうが……。
すべてがダメになったと思ったら、何もかも捨てて南の島へ飛んでパイナップル工場で働けばいい。決して実現しない、実現させようとも思わない妄想が自分を救ってくれることもある。中毒性があり! 山本文緒の筆致が冴えわたる、誰もが共感できる日常の物語。
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Posted by ブクログ
20代前半の悩めるどこにでもいそうな女子たちの、浮き沈みの激しい心と生活が丁寧に描かれた作品。
ちょっと昔に書かれた話だから、いまの時代とは違うところが多いけど、それがまたいい味を出してるのよ。
なかなか電話が繋がらなくてもどかしいとか、ワープロ使ってるとか、四大卒女子がちょっと珍しい感じとか。
23~4歳の深文は、自分のキャラを理解してて、彼氏にどう甘えていいかわからない。かわいい発言はキャラじゃないけど、泣きたいときだってある。でも、そういう時に限って頼ろうとする相手はみんなトラブルを抱えてる。
深文の先輩サユリさんと、後輩日比野とのやりとりが好き。どっちもいそうなんだよぁ。一見大人しくて淡々としてるサユリさんみたいな人が地雷系なのは、いつの時代も変わらないかもしれない。傍から見てる分にはおもしろい。深文の気持ちがわかるけど、痛い目見ることになるとは誰も思わなんだ、、、笑
最後に深文がハワイに行って終わるのはなんか嫌だなぁと思ってたら、まさかの展開で、これもまた好き。
Posted by ブクログ
30年以上前の作品のため今から思えば古い部分もある。でもスマホもなく固定電話で連絡、会社から国際電話、備品を…などその時ならではの話題満載で小説だからこそ楽しめる。コネ入社で人事部、暇でお局がいて、ってたくさん周りにいた。背景も社会から受ける圧も違うのに悩みは同じことがよくわかる。恋敵にトラップを仕掛ける、つかみ合い、今より感情を自然に表せている時代も良かった気がした。
Posted by ブクログ
山本文緒さんの本は一気読みに丁度いい。
ある意味頭を空っぽにして読める話だと思った。
初めは深文と姉の関係が私と実姉のようだなと思い、共感する部分が多かった。深文の性格は、「他人に何を言っても無駄」だと思い込んでる性格でかなり厄介だった。その性格を、横領事件から岡崎、日比野、そして天堂によって少しづつ変えられていった。こういう変に達観している人こそ病気になったりするものなんだなあと思った。ハワイに行かなかったのは意外だった。
Posted by ブクログ
長い前奏に続く懐メロを聴いているような感じでした。鈴木深文と天堂義明の「おさまり」に納得です。山本文緒「パイナップルの彼方」、1995.12発行。4日かけて味わいましたw。
Posted by ブクログ
文庫本にて作者1995年10月のあとがきあり。
解説彩瀬まる氏。令和4年。
高校生の時に読んだら、本作を理解しきる事は出来ただろうか。
おこがましいけれど
とうに成人し、社会人として働いているからこそ、登場する女性陣達の理想、憧れ、そして現実への葛藤と悩みを、ちょっと上から眺めることが出来る。
そして、かつてのトレンディドラマのようにポンっと海外へ行けるお金と、休める職場環境はむしろ後退したよなぁ、と今の貧しい日本社会に絶望する。。
よって、当時の生き辛さに今は物質的貧しさもあって、不幸度は加速しているのでは。。と凹んでしまった。ので、解説彩瀬氏ほど読み込めていないのだろう。
天堂目線だと主人公はどう描かれるのだろう。
日比野も、開けっ広げな性格の同僚たちに囲まれていたら、また違ったのでは、とちょっと同情してしまった。
あの3人の空気間の職場環境は、しんどすぎる。。