あらすじ
同居していた恋人が出て行った。出て行けと言ったのは私だ。あんなに泣いた晩はない。(「裸にネルのシャツ」)母ちゃん、脳卒中で死んだんだって? 自殺が趣味みたいな人だったのに(「表面張力」)会うのも会わないのも、決定権はいつも相手にある。(「片恋症候群」)永久に続くかと思ったものは、みんな過去になった。物事はどんどん流れていく――。数々の喪失を越え、人が本当の自分と出会う瞬間をすくいとった、珠玉の短篇集!
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Posted by ブクログ
ブラック・ティーと同じくらい好きで、気がついたら手に取って何度も読み返してしまう。
文緒さんが書く「喪失」と「自分を取り戻す」感が好きなのかも
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12話の短編それぞれのストーリーの面白さにとどまらず、読み終えてその続きはどうなるか考えてしまうというか、後をひくというか、山本文緒さんてすごいなあと思います。亡くなられたのが残念でなりません。
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「みんないってしまう」というタイトルに惹かれて読んだ。好きなアイドルが活動休止した、憧れの先生が退職した、大好きな彼氏に振られた、応援しているバンドのギターが脱退した。みんな、いってしまうのだな、と思う場面が最近多くて、その大きな喪失感とか、悲しさとか、どうしてという疑問で心がいっぱいになりつつも、社会は止まりはしないので、無理矢理に心身を働かせて生きていく毎日を過ごしている。失ったあとには何かが得られる、などもう聞き飽きた私にとって、置いていかれた側の主人公たちは仲間であり、友人であり、恋人だった。今読んで良かった。山本文緒が好きだ。
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山本文緒さんによる、「喪失」をテーマにした短編集。
私はもともと短編集は読むのが苦手な人間で、その作品の雰囲気や前提となる背景、登場人物などが毎回入れ替わるのが苦痛に感じてしまう方なのですが、この作品はするすると世界に入り込めて、切り替わる人物などに不思議とストレスを感じませんでした。
「いってしまう」という標題にあるとおり、登場人物たちは何らかのものを「失う」のですが、それが単に人だけではなくて、財布やプライド、はては人間関係やぎりぎりのところで保っている気持ちだったりして、有形無形さまざまに混ぜこぜなところが面白いです。
一話ごとにメモしたくなるような「はっとさせられる」台詞や独白が登場して、ドキリとさせられます。甲乙つけがたい作品の中から、私が好きだなと思ったのは「ドーナッツ・リング」「まくらともだち」でした。どちらも心情的に重い話なのですが、そのグラデーションが美しくて好きです。
どこかで聞いたような事ですが、人間は沢山のものを次々に抱えて、それを落とさないように生きていくということはできません。だとしたら、失うことは得ることと一体。日常の一部であり、時には感謝することなのかもしれませんね。
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短編集。そのうち「みんないってしまう」が本のタイトルになってるけど、私は「表面張力」てのもこの本全体の雰囲気を表してるような気がする。ギリギリのキワッキワを生きてる人々。ほんのしたことで決壊しそうな感じ。
だけど流されたら流されたらで流れて辿り着くところがあるってその先が見える物語。
すごく昔に読んでたけど気づかずしばらく読んでいた。何度も楽しめるってありがたい。
Posted by ブクログ
短編…それぞれの話が ふわっと広がってフッと終わるかんじ。
読んでいて妙に身近に感じるものもあった。
裸にネルのシャツと
愛はお財布の中 が好きだ。身近なストーリーではないけれど…。
Posted by ブクログ
一話が短いストーリー仕立てなのにとても話がまとまっていて、長編作品しか読んだことのなかった自身は山本さんはショートストーリーもお得意なのかと感心してしました。
いってしまうものが、人物に留まらず自分の内にある一部の感情を描いいることがとても興味深かったです。
喪失感情は誰しももっているんだけれども、人は喪失したことさへも時間の経過とともに忘れていく。喪失したことで得るものもあるし、そのまま何も得ずにいってしまうものもある。
自分の人生を振り返ってみたら、ほんとにそうだなと思いました。
Posted by ブクログ
生きてる限りなにかを失って、またなにかを得てく。
方丈記の言葉のような短編集。
表題作の「みんないってしまう」は、途中の仕掛けにもくすっと笑えるけど、最後がとても好き。
偶然にも花火と隣人に行き会い、こんな人生も悪くないなって思えて爽やか。
他の話は最後が読者に委ねられるので、ついつい自分に引き寄せて考えてしまった。
ストーカーの醜悪さとして第三者から突きつけられる恋心が辛い「片恋症候群」。
気持ち悪いなーと思いながらもお気に入り。
「ドーナッツ・リング」も好き。
主人公は甘酸っぱい思い出とともに家族を大切にしてくれ。
あとは大体出てくる男が不誠実なのについつい惹きつけられて読んでしまった。山本文緒はダメ男書くのとても上手。
Posted by ブクログ
お久しぶりの山本さん。このざらつく読後感が堪らない。『いつも心に裁ちバサミ』の主人公のだらしないけど優しくて、他人のために怒れるところが良い。『不完全自殺マニュアル』と『片恋症候群』、『愛はお財布の中』の危なげな主人公が著者らしくて好き。雑誌で友達募集の文化懐かしい。個人情報誌なんてジャンルの雑誌が存在していたなんて、今では考えられない。山本作品では、平成の懐かしい文化や習慣と変わらない恋愛や友情の人間関係が味わえて楽しい。
Posted by ブクログ
どの話も引き込まれる あーなんかわかる、そういうことってあるなあと思わされる。みんないってしまうてそういうことか。楽しいことも幸せなことも悲しみもずっとは続かない。喪失を繰り返しながら生きてくんだねー。
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山本文緒さんが亡くなっていた事を今になって知った。急に読みたくなってとても久しぶりに手にとった一冊。実は自分の中で再読の可能性が低い棚にこの本をおさめていたのだけど、なぜその選択をしたのかわからないぐらい大満足の読後だった。喪失を悲しい暗いものだけに留まらせず、言葉の選び方表現もどれも素敵だった。表題作が1番好きだな。定期的にまた読み直そう。
Posted by ブクログ
#山本文緒
#みんないってしまう
短編集なのに
どれも読み終わったあと
心に少し重みが残った
自分ならどうする?と考えたり
ため息をついてしまったり
タイトルに思いを馳せてしまうね。
でも、文中の2枚目の言葉が
とても印象に残ってる。
タイトルに抗うような、むしろ寄り添うような。
なんて言うんだろ、全部含めてそうだよなあって
思う感じだった(抽象的にしか言えない)
Posted by ブクログ
短編集なので隙間時間にちびちび読んだ。
きれいごとがない、人間の膿を含んで描かれるストーリーが最高に好き。
いい子じゃなくてもいいんだ、と思える。
本書は喪うストーリーが描かれているけど、
解説にもあるように、我々にその後を委ねながら恐らく失った分しっかりと得ている。
この獲得に気付けるかどうか、
我々にも問われているように思う。
失ったものにばかり目を向けてはいけない。
Posted by ブクログ
何十年かぶりに再読したが新鮮に読めた。
解説を書かれた浜野さんのいう様に、
山本文雄は『ああ、面白かった』だけじゃ決して帰してはくれないのだ。
結末を読み手に委ねて『あなたにとってはどうすることが本当の幸せですか?』と人生観を問うている。
やっぱり山本文雄さん好きだなぁ〜と改めて思ったので他の本も読んでみようと思う。
Posted by ブクログ
山本文緒「みんないってしまう」、1997.1刊行、1999.6文庫。喪失をテーマにした12の短編集。結末は読み手に委ねられています。切り口がユニークで、結構楽しめました。私のお気に入りは、「愛はお財布の中」と「イバラ咲くおしゃれ道」です。
Posted by ブクログ
『恋愛中毒』のあと一気読みした。
短編ということもあってとても読みやすかった。ただの恋愛短編集ではなく、それぞれ趣向を凝らした作品で、バラエティ豊か。
『いつも心にたちバサミ』『不完全自殺マニュアル』が好きだった。
巻末の解説も良かった。『みんないってしまう』に表されているように、全作品それぞれが「喪失」の物語だけど、失うって悪いことばかりじゃないねって思える作品たち。
Posted by ブクログ
対象喪失が共通する短編集。
絶対泣かないもそうだったけど、
短編の中でもさらに短いような短さで
1話はサクッと読めるのに
この短さのストーリーに
どうしてこんなにも揺さぶられるんだろう。
年齢を重ねるうちに
持ってたはずのものがなくなっていって
知らずのうちに永遠を願って信じてた自分に
気づいてまた苦しくなる
そんな毎日を生きてる私に
喪失のテーマはすごく刺さった。
最初の裸にネルのシャツから
読んでいてビリビリくる感じ
誰にも言えない心の中が、
本では言葉になっていてびっくりした。
Posted by ブクログ
私たちが日々生きるということは、新しい人や新しい物と出会うと同時に、今まで当たり前に近くにいた人や、近くにあった物と別れることでもあります。
人はそんな瞬間を、進級してクラスが変わる時に、進学して学校が変わる時に、そして就職して今までの人間関係がゴロッと変わる時などに経験します。一方で、そういった大きなイベントでなくても『初めての手痛い失恋も、幸せだった新婚時代も、子育ても、夫の帰らない孤独な夜も』やがては過ぎ去り過去になっていきます。私たちが慌ただしい日常生活を送る中では、そういったことをいちいち考えている余裕はありません。しかし、ふと時間ができて立ち止まってみると、悲しかった、苦しかった事ごとはいざ知らず、幸せに結びついていた事ごとも、いつのまにか自分の手の届かないところにいってしまったと感じる瞬間があります。「みんないってしまう」、そんな”喪失感”に苛まれる思いに包まれる瞬間。そんな切ない”喪失感”に満たされた書名のこの作品。それは、そんな”喪失感”から人が何かを得ていく瞬間を見る物語です。
12の短編からなるこの作品。作品間に繋がりはありませんが、いずれも「みんないってしまう」という書名が表すように、たった一人置いていかれるような心細さを感じる、言ってみれば”喪失感”をテーマにした内容が描かれています。とは言え、”喪失感”を感じる場面は人によって多種多様です。そんな”喪失感”が描かれていく12の短編は、『結婚十五年目にして、いきなり指輪を外そうと試みたのは、言うまでもなく彼女のせいだ』とコーヒーショップの店員に中年男性が恋をする〈ドーナッツ・リング〉、『親が両方いなくなったら自殺しようと』決めていた女性が主人公となる〈不完全自殺マニュアル〉、そして『彼の出したゴミ』への執着にストーカーの心理を見る〈片恋症候群〉など、えっ!というような場面設定の作品含めて、実にバラエティ豊かな短編揃いです。そんな中で私が気に入ったのは次の二編です。
まずは、一編目の〈裸にネルのシャツ〉。『その日マンションに帰ると、部屋の中には何もなかった』という衝撃。『あまりのことに、私は立ちすくんだ。何が起こったのかすぐには理解できなかった』という光景を前にして呆然とする『私』は、『同居していた恋人が、出て行った』という事実を認識します。『急いで寝室のドアを開け』ると『案の定ベッドがな』く、『床に、シーツと枕カバーがくしゃくしゃに丸めて放ってあった』という光景。『全身の力が抜けた。丸めて放り出されたシーツのように私は床に崩れた』という『私』は、『出て行けといったのは、私だ。だから彼は出て行った』ことを認識します。そして『あんなに泣いた晩はない』と感じたのも『もう五年も前のこと』という今の『私』は、『イラストレーターとしての仕事も順調で、最近小さいながらも事務所を構えることができた』という状況。しかし、『今日の日付を私は忘れることができない。あれから一年、あれから二年、とわたしは毎年数えてきた。今日であれから五年だ』という今の『私』。そんな時電話が鳴りました。『先生、お電話です』とアシスタントの恭子から電話を受けた『私』。それは雑誌編集者の『連載の仕事の催促と今晩の食事の誘い』でした。『今晩はできれば一人でいたくな』い、と思った時、別の電話が鳴ります。それは『もう会うこともないと顔では笑いながら、本当はこの日を待っていたのかもしれない』というまさかの彼からの電話でした。『会わないほうがいいと思うよ』と友人でもある恭子からそう言われて『どんな話か分からないじゃない』と返す『私』。それに対して『どんな話でも同じだよ。自分が何されたか忘れちゃったの?』と詰め寄る恭子を振り切って家に着いた『私』は『昔の恋人に会う時は、何を着て行ったらいいのだろう』と悩みます。そして『深緑のネルのシャツ。元々は彼のもので、着古したので私がもらい普段着にしていた』という彼に縁のあるシャツを着て待ち合わせ場所へと向かう『私』。『…ごめんね。分からなかった』、『そんなに変わったかな、俺』と再開する二人。そして…というこの短編。『彼がいたから、毎日が楽しかった。彼がいたから、仕事も一生懸命にできた』と、かつて『出て行け』といった側なのに、いつまでも彼を思い続けていた『私』の引きずる思いと、再開することによって、そんな『私』が気づくことになる”ある感情”を上手く対比させた好編でした。
“みんな逝ってしまった”、この作品を読んで私の胸にこんな言葉が蘇りました。私の祖母が晩年に呟いた言葉です。90歳を超えても元気に生きた私の祖母。昨今、100歳以上の高齢者も八万人を超えるなどしてはいますが、そのそれぞれの知り合いが全て存命というわけではありません。私の祖母も、姉妹、親戚などめぼしい知り合いが全て亡くなってしまって、その寂しさから思わず出てしまった言葉なのだと思います。歳を重ねれば重ねるほどに、日常会話の中に登場する人物が実はとっくの昔に永眠していた、そんなことを知る機会も増えていきます。これはやむを得ないことではありますが、本人にとっては耐え難い”喪失感”を感じる瞬間なのだと思います。そんな感情を描いたのが表題作でもある〈みんないってしまう〉です。『「のんちゃんじゃない?」昼下がりのデパートの中で、私は声をかけられた』という驚き。『もしかして、絵美ちゃん?』と『無意識のうちに、懐かしい名前がこぼれ出た』という旧友との偶然の再開。『最上階にある特別食堂』で『何年ぶりかしら。偶然ってあるのねえ』と、『宇治金時を注文して再びお互いを懐かしがった』という二人。そんな思い出話に花を咲かせる二人の会話の中で『のんちゃん、成井君って覚えてる?』と、中学時代に同じクラスだった一人の男子生徒の名前が登場します。しかし、名前を出したものの、なんとも要領の得ない絵美の会話に思わず『お付き合いしてたの?』と訊く主人公。そんな質問の答えから、二人が全く知らなかったまさかの青春の一ページが判明することになるこの作品。「みんないってしまう」という、言葉の重み、キュンと切なくなるその言葉の意味をしみじみと感じる好編でした。
そして、そんな表題作で『みんないってしまうんだな』、『この手の中に確かにあったと思ったものが、みんな掌から零れ落ちてしまった』と主人公の思いの中に”喪失感”を重ね合わせていく山本文緒さん。『永久に続くのかと思ったもの』であっても、人の世に永遠などあるはずもなく、私たちは誰しもがこの”喪失感”と共に生きていくことになります。それと同時に私たちは年を取り、体力・気力も衰え、余計に”喪失感”を意識するようにもなっていきます。しかし、見方を変えることでそこには違ったものが見えてきます。『ひとつ失くすと、ひとつ貰える。そうやってまた毎日は回っていく』というその考え方。私たちは”失くす”という言葉でどうしても物事を悪い方向に考えがちです。しかし、『幸福も絶望も失っていき、やがて失くしたことすら忘れていく』という言葉にあるように、失くすのは決して『幸福』だけではありません。その逆、『絶望』と感じた瞬間も時の流れによって過去のものとなっていきます。『ひとつ失くすと、ひとつ貰える』、そんな人生を『ただ流されていく。思いもよらない美しい岸辺まで』と続く私たちの人生。そんな風に考えることで「みんないってしまう」という言葉は、また違う響きを持って私たちの胸に去来するのではないか、そんな風にも感じました。
『時折ふと以前持っていた物を思い出すことがある。みんなもうどこにもない。かすかな感傷と共に、それらを自分から手放したことを思い出す』とおっしゃる山本さん。人や物に限らず、普段私たちが日常で当たり前にいつまでも共にあると思っているものが、いつまでそこにあり続けるかは分かりません。『急がなければ、今手の中にある物も、そばにいてくれる親しい人も、明日にはいってしまうような予感がして仕方ない』と続ける山本さんがおっしゃる通り、今共にあるとしても、思った以上に早く、あっけなく、また知らず知らずのうちに姿を消してしまう、それもまた、私たちが生きるということなのだと思います。そして、そこに感じる”喪失感”。しかし、それは一方で新たな存在が、その場所を埋めていく、”獲得感”を感じる瞬間なのかもしれません。
”喪失感”をテーマにした作品にも関わらず、対になる”獲得感”のおかげで読後がやけにさっぱりとしたこの作品。敢えて結末を読者に委ねることで独特な余韻を醸し出すこの作品。失くすことの切なさの中に、失くすことで見えてくる幸せをそこに感じた、そんな作品でした。
Posted by ブクログ
永遠に続くかと思う子育てや家事、仕事に追われる日々。そんな日々の中で、ふとした時に家で1人になると、激しい孤独感に襲われることがある。
子育て卒業して、夫との関係性も変わったら、自由を得る代わりにこんな感じになるのかなと想像した。
それが悪いということではなく、何かを得て何かを失うってこと。
子どもたちが幼い頃、母から
子どもは小さくならないから、この小さい頃を思いっきり大切にして
と言われたことを思い出しました。
Posted by ブクログ
〜1周目〜
2025.09.17
大好きな山本文緒さんの書いた本。
短編集なので、1つ1つのお話にボリュームがあるというよりかは短いながらも1つのお話でちゃんと伝えたいことを伝えてきてくれる。
Posted by ブクログ
生きている中で選択することの多さと疲労を感じるけど、この忙しなさも少し愛おしめるような。なにかを喪失して悲しんだり怒ったりしながらも、また新しいものに出会う人生の豊かさ。こいつカスだな…って思う短編もグッと引き込むのがすごい。
Posted by ブクログ
再読。
弱さを抱えた作品ばかりだと感じた。
読むと心のどこかがひりひりする。
好き嫌いは別として、そんな作品ばかりだった。
だから、この本を捨てられなかったのだ。
2001.10.6
みんな弱いな、と思う。ここに出てくる人たちはみんなとても弱くて、私はとても共感する。くっきりとしっかりと明確に切り取った小説だと思う。一人一人の気持ちが、じんと伝わってきた。
Posted by ブクログ
バイトが決まらないわ、卒論のテーマも定まらないわで大分自堕落な生活をしている今、これが読めてなんだかスッキリした。
いっそ失ってしまえば、何かが分かるのかもしれない。
一度無に戻って考えてみよう。焦りを忘れて。
Posted by ブクログ
表面張力
「のら人間っているのかな?」との息子の問いかけに、見に行く?と言い、ホームレスをみせる場面には衝撃を受けた。
タイトル通りの、みんないってしまうがすべての作品で表されている。永遠と思えたものでも、永遠というものはないというラストになる。
あっやってしまった、そんな気持ちが、きっとどれか一つくらいは当てはまりそうで。
「これってありえなくない?!」ではなく、他人の私生活を覗き見した気分になる。
主人公のほとんどが、ちょっと貧乏臭く、全体的に、内容が暗い、それも現実的。
好きなヒトのゴミを盗む女性。
小柄な喫茶店の店員少女に密かな恋心を抱く、中年男性。
山ほどの洋服があるのに着ていくものがないと言う女性、などなど。
古い本だけど、今読んでもそれほど違和感がなく、今も昔も変わらないのかも、などと感じた。
Posted by ブクログ
みんないってしまう…なんかこの言葉が凄く寂しい響きに感じますね、置いてかれ感みたいな印象があるし共感する箇所もあるのだけれど、いく側にも自分がなってる箇所もあると思うし、いく側の割合が多いと、みんないってしまう…と思う機会も減ると思う。
読後、改めてアタシはどっち? と考えると『いく側』だと思うナ
Posted by ブクログ
「喪失感を超え、本当の自分に出会う。」
この本の背表紙に書いてあった文章に、とても共感しました。
失うことはただただ悲しんだり、寂しい気持ちになるだけでなく、
自分が人として成長や人に対して優しくなるきっかけを貰う機会でもあるのかなと感じました。
恋人や信頼を失うことは、もちろん切なくて悔しくなるけど、その先の自分の行動には必ず変化が起きるのではないかと思います。
そう考えると、喪失感を覚えることのすべてが悪いことでは無いのかな?と思わせてくれる作品でもあると思います。
◆印象に残った
①ドーナッツ・リング
②みんないってしまう
③片恋症候群
Posted by ブクログ
ドーナツリングの話がすごく良かった。
何かを得ると何かを失ってしまう、そしてその失った何かを何であったかさえ人は忘れていってしまうのよね、、悲しい、喪失。だけどそれがこの世の摂理であって現実なのだなあと思わされる作品
Posted by ブクログ
突如「みんないってしまう」というタイトルが頭にこびりついて離れなくなり早急に読みきった一冊。
手をすり抜けていく風のようなこのタイトル好き。留めておけるものなんてない。変わらないものなんてない。無力にも、みんないってしまう。
20ページにも満たないストーリーが12編。
主人公はギリギリの状態で日々をやり過ごしているような人物たちだ。何かの拍子に突き落とされて始めて、自分が立っていた場所が崖っぷちだったことを知ったような。
むろん良いラストなはずはなく、苦みが残るものが多い。けれど自分の立ち位置を知り、本当の自分をみつけるというのは喪失と相反する貴重な何かだ。この短編集をよんで私はその瞬間に立ち会うことができた。
山本文緒さんの書く小説は、現実を教えてくれるというか、自分で気づくように仕向けてくれる。あえて目をそらしてきた嫌な現実を、だから私は落ち着いて見据えられるようになる。
いってしまう、というのは決して悪いことばかりではないだろう。誰かからみたら私もいってしまった側かもしれないし。
あぁいってしまったのだ、と分かったときにはかすかな感傷とさみしさはあるが、ひとつ失くしても、またひとつ貰えるのだ。毎日は、私は、そうやって回っていく。
いずれ辿り着くところは、思いもよらず美しい岸辺かもしれないと願って、ただ流れに身をまかせてみたい。