あらすじ
同居していた恋人が出て行った。出て行けと言ったのは私だ。あんなに泣いた晩はない。(「裸にネルのシャツ」)母ちゃん、脳卒中で死んだんだって? 自殺が趣味みたいな人だったのに(「表面張力」)会うのも会わないのも、決定権はいつも相手にある。(「片恋症候群」)永久に続くかと思ったものは、みんな過去になった。物事はどんどん流れていく――。数々の喪失を越え、人が本当の自分と出会う瞬間をすくいとった、珠玉の短篇集!
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Posted by ブクログ
生きてる限りなにかを失って、またなにかを得てく。
方丈記の言葉のような短編集。
表題作の「みんないってしまう」は、途中の仕掛けにもくすっと笑えるけど、最後がとても好き。
偶然にも花火と隣人に行き会い、こんな人生も悪くないなって思えて爽やか。
他の話は最後が読者に委ねられるので、ついつい自分に引き寄せて考えてしまった。
ストーカーの醜悪さとして第三者から突きつけられる恋心が辛い「片恋症候群」。
気持ち悪いなーと思いながらもお気に入り。
「ドーナッツ・リング」も好き。
主人公は甘酸っぱい思い出とともに家族を大切にしてくれ。
あとは大体出てくる男が不誠実なのについつい惹きつけられて読んでしまった。山本文緒はダメ男書くのとても上手。
Posted by ブクログ
山本文緒「みんないってしまう」、1997.1刊行、1999.6文庫。喪失をテーマにした12の短編集。結末は読み手に委ねられています。切り口がユニークで、結構楽しめました。私のお気に入りは、「愛はお財布の中」と「イバラ咲くおしゃれ道」です。
Posted by ブクログ
対象喪失が共通する短編集。
絶対泣かないもそうだったけど、
短編の中でもさらに短いような短さで
1話はサクッと読めるのに
この短さのストーリーに
どうしてこんなにも揺さぶられるんだろう。
年齢を重ねるうちに
持ってたはずのものがなくなっていって
知らずのうちに永遠を願って信じてた自分に
気づいてまた苦しくなる
そんな毎日を生きてる私に
喪失のテーマはすごく刺さった。
最初の裸にネルのシャツから
読んでいてビリビリくる感じ
誰にも言えない心の中が、
本では言葉になっていてびっくりした。
Posted by ブクログ
〜1周目〜
2025.09.17
大好きな山本文緒さんの書いた本。
短編集なので、1つ1つのお話にボリュームがあるというよりかは短いながらも1つのお話でちゃんと伝えたいことを伝えてきてくれる。
Posted by ブクログ
表面張力
「のら人間っているのかな?」との息子の問いかけに、見に行く?と言い、ホームレスをみせる場面には衝撃を受けた。
タイトル通りの、みんないってしまうがすべての作品で表されている。永遠と思えたものでも、永遠というものはないというラストになる。
あっやってしまった、そんな気持ちが、きっとどれか一つくらいは当てはまりそうで。
「これってありえなくない?!」ではなく、他人の私生活を覗き見した気分になる。
主人公のほとんどが、ちょっと貧乏臭く、全体的に、内容が暗い、それも現実的。
好きなヒトのゴミを盗む女性。
小柄な喫茶店の店員少女に密かな恋心を抱く、中年男性。
山ほどの洋服があるのに着ていくものがないと言う女性、などなど。
古い本だけど、今読んでもそれほど違和感がなく、今も昔も変わらないのかも、などと感じた。