あらすじ
高収入でスマートな男性と結婚し、都心の高級マンションで人から羨まれる暮しを送る佐々木蒼子。しかし夫には愛人、自身にも若い恋人がいて夫婦の関係は冷めていた。恋人と旅行の帰途。偶然、一人で立ち寄ることになった博多の街中で昔の恋人・河見を見かける。彼に寄り添っていたのは、なんと自分そっくりのもう一人の「蒼子」だった。「ドッペルゲンガー?」名前も顔も同じなのに、全く違う人生を送る2人の蒼子。互いに言いようのない好奇心と羨みを抱いた2人は、1か月だけ期間限定で入れ替わり生活してみることにする。しかし、事態は思わぬ展開となって……! 「私より、あっちの蒼子の方が幸せなのかもしれない」読みだしたら止まらない、中毒性ありの山本ワールドが新装版で登場。
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Posted by ブクログ
面白過ぎて一気に読んでしまった。
こういう人生の内面への描写に深く入り込めるのは小説ならではだし、後半はサスペンス的な面白さでページをめくる手が止まらなくなった。
人間、あのときこうしていたらと思うことがあっても、その選択肢の先でも大変なことは沢山起きる。そして、現状への不満は、現状への満足と紙一重だということ、そしてただ抱えるのではなく行動に移して自分の人生をよりよくするべきだということを改めて実感した。
山本文緒作品、もっと読んでみたくなった。
Posted by ブクログ
すごく好きなお話だった。
「ないものねだり」を軸として、蒼子A蒼子Bが
がむしゃらに生きていく物語。
どちらが悪でどちらが正義とかは問わず、
ただひたすら、一人の女性が自らの生活に
疑問や不満を持ち、そこから逃れようともがき、
葛藤する物語。
いや〜、良い。
この展開は考えさせられるものがたくさん。
比較的短くて、2人の心情がイメージしやすいので、
読書初心者にも、おすすめ。
それぞれの蒼子の想いの中に、
共感できるものが多々あったし、
2人とも頑張れと、応援したくもなった。
山本文緒さん、いい。!
Posted by ブクログ
人生の中で自分が選ばなかった方の選択を美化して現状を悔いる事は誰にでもある事で、でもこの本を読んで「足るを知る」だなぁと。
序盤は双子のような、自分と全く同じ人間と偶然出会い、互いの事が手に取るようにわかる2人が羨ましくて「私にも、もう1人の私が存在したらなぁ」と思ったりしながら読み進めていたのですが、どんどんと不穏な雰囲気になってくのがある意味ホラー小説よりも怖かったです。
全体的にどちらの蒼子にも共感できる部分が多く、中でも「余るほどの自由があれば心の拠り所がほしくなり、強く愛されればそれは束縛に感じる」という蒼子Bの思いが共感せずにはいられませんでした。
Posted by ブクログ
自分とそっくりのもう一人の「蒼子」が過去に選ばなかったもう一つの人生を生きてて、ある時その二人が出会い、互いにもう片方の生活を1ヶ月間生活していく物語。「過去に違う選択をしていたら?」という自分にないものを相手が持っていることに人は揺さぶられ、でも実際試してみると「やっぱり元の方がいいや」となったりして、すごく蒼子という人物の感情が揺れ動く文章に惹かれた。相手に求めるが故に不満が大きくなりすぎて、与えてもらったことに感謝しないこと(当たり前になっている)がないようにしたい。
Posted by ブクログ
人生において、「もしあの時、別な選択をしていたら? あの人を選んでいたら?」
それを知ることが、幸せなのだろうか?
メビウスの輪のように表が裏で、裏が表になる自分自身への問いかけの物語。
自分と、もう一人の自分 そんな2人の主人公を通じて心を痛め、想いや後悔があればあるほど、つのる気持ち、、 そんな揺れる心の内を山本文緒さんは輝く言葉で描いてくれています。
「別な選択をした自分」それも紛れもなく自分自身、、「どうして、そんな事するの? 何で分からないの?」 その言葉はまさに自分自身に対してなのでした。
光の当たる方と影、自分の本当の気持ちが上手く表現できないからそこ、誤解があり、後悔があり、、 そして本当に大切なものに辿り着く2人の自分。
そこには小説の中の登場人物でありながら、自分自身であるように感情が移入してしまいます。
そんな素敵な作品を残してくれた山本文緒さんに、心から感謝です。
Posted by ブクログ
結局人はないものねだりをする生き物なんだなと思った。自分であることに日々感謝なんてしないけど、羨ましいと思う誰かに自分が入れ替わった時、きっと私も私に戻りたいって思う気がする。誰かは私を密かに羨ましがってるかもしれない。そう思うことは恵まれてて幸せなことなんじゃないかな。
Posted by ブクログ
もし、あの時、違う選択をしていたら…と誰しもが思うであろうことを体験できるなら…
ちょっと変わってみたいという気持ちも分からなくない。
そして、結末には驚いた。
このお話自体、約30年前の話だから、今とは時代背景も異なるし、現代は多様な考えが少しずつ浸透している世の中になっている気がした。
Posted by ブクログ
“あのとき違う選択をしていたら”…?
パラレルワールドで生きるふたりの蒼子が同じ世界線で生活を交換する話
冷えきった関係性の夫と束縛の強いDV夫、欲しいものは自由か愛情か
結局はないものねだりなんだなぁ
蒼子Aがわがままで自分勝手でおもしろかった
Posted by ブクログ
意外と批判的な感想が多くて、共感してしまった私は蒼子に似ているのかもしれない。
人生に選択肢が多いほど「あの時違う道を選んでいれば」と思ってしまうのはよくある話で、それが結婚相手ともなるとどうしても隣の芝は青く見えるもの。
実際私自身、完璧なものなど存在せず、みんな足りないものに折り合いをつけて生きているんだと気づいたのはごく最近だった。
普段佐々木蒼子側の立場になりがちな私には、河見蒼子の到底勝てそうにないしたたかさに、「あぁこういうあざとい女の子いるよね」という敗北感と、突き刺さる数多の反省点。やっぱり素直な女の子がかわいいよね、わかる。結局何もかも手に入れるのはそういう子なんだよね。とはいえ自分を殺してまでそうはなりたくない自己中さ、相談できる友人の少なさとか、誰のことも愛しきれていない幼なさ、今更変わることはできないので受け入れて生きていくしかない。
この話ではそれぞれが不器用ながら誰かを愛していて(DVは到底許せるものではないけれど)、「完璧に他者を愛せる人など存在しない」中で、それでも自分の選んだ相手には誠実でいたいと思った。
ラストシーンは、いっそ2人の蒼子で手を取り合って逃げ出して楽しく暮らせば良いじゃんなんて思ったりもしたけれど、そうもいかない現実の中でそれぞれが折り合いをつけて生きていくというのがとても山本文緒さんらしいと思う。
たくさん辛かったあの時の自分へ。きっとあちらの道も同じくらい不幸だったよ、という安堵とともに、今の道を選んだ自分も、あの時違う道を選んだ世界の自分も、どちらの未来も幸せであってほしいと願っている。
Posted by ブクログ
ホラーって、別に心霊現象とかスプラッター映画だけでは無いよな、と思う。
今生きている現実を生き抜くことの方が、先が見えない不安のほうが、よほど恐怖に感じる事もあるだろうし。。
自分が二人いて、残りの一人に嫌なことをやらせようとしてもやりたがらずに喧嘩になる、という少年漫画もあるけれど、本作でも、個々の人間として生きればそうだよなぁ。
。と
(藤崎竜氏の短編で影が入れ替わる読み切り作品はむしろ異彩を放っているというか。。)
読み始めた最初はないものねだりというか、隣の芝生は青く見える、そういった結末になるかと思ったが
そんな簡単な話では無かった。。
解説柚木麻子氏の文章が興味深い。
一見わかりやすいようにドラマ化して結末を変えられるの、そういえば当時はよくあった。。(最近はSNSで個人の声が大きくなり炎上するようになったけれど)
『ミステリというなかれ』でも男性社会の同調圧力に女性がいることの意義を伝えるシーンがあったけれど
女性の敵は女性、というがわざと結託させないように構造化されているという見解。
『最初は…可愛いなどと思っていた。ところが今では、それが一番癇に障る。恋の終わりとはそういうものだ…』
優しい→束縛が強い、よく話を聞いてくれる→何も話さずつまらない、という別れ方をする人がいたなぁ。。
『恋は旅に似ている。非日常の楽しい毎日。けれど、それはいつか必ず終わる。そしてまた日常が始まるのだ。退屈な日常があるからこそ、刺激的は非日常がある。』
『努力して愛する、それは演技ではないか。うまい演技をすれば、素晴らしい人生の舞台が出来上がるとでもいうのだろうか。』
主人公に同性の友人がいないのがこの一文に表れている気がする。円滑に、波風立てないように、女性同士のコミュニケーションというのは 下手するとわざとらしいくらいでちょうどよい時もある。。
Posted by ブクログ
これを30年前に書いていたことが驚き。拭いきれない女の相対的な弱さや生きづらさは今もそう変わらないのではないかと思う。もちろん男女平等の世の中になってきているけど、どこかで結婚や出産をしない女は欠けているという意識がまだあり、男ありきの人生がスタンダードにある気がする。それが悪な訳ではないが、自分だけの気持ちによって選択すればもう1人の自分が生まれるほどの後悔はせずに済むのでは無いのかなと感じた。
Posted by ブクログ
面白いー!
山本文緒の一筋縄ではいかない毒のある話大好き
こういうの書ける人はそんなにいないと思う
亡くなってしまったのが悔やまれる……
もっと作品沢山読みたかったです
Posted by ブクログ
もしあのときこうしていればというのはよく考えることだ。
そんなタラレバをやり直しても、自分は変わらず自分で、嫌なところが特に目に付く。
どこに行っても自分は自分で、自分の選択を後悔しないように自分が変わるしかないのだろうと感じた。
Posted by ブクログ
佐々木を選んだ蒼子と河見を選んだ蒼子が出逢い、互いの生活を入れ替えるストーリー。2人の蒼子と河見、佐々木の嫌な部分が強烈に描かれており、特にDV夫・河見のクズぶりが酷い。ドッペルゲンガーという題材が懐かしく、終わり方も希望がほの見えて好き。巻末の柚木麻子さんの解説もまた良い。本書とドラマ版のラストの違いに対して感じられた違和感の正体。女性の不平等を礼賛するドラマ版は観ないでおこう。
Posted by ブクログ
主人公、自分勝手過ぎる。実父とかありえない…!DVは許せない。DVを諦めているのももどかしい!好きになれる登場人物が見事に一人もいない!!
だけど、ミステリーやサスペンスのようなドキドキ、ハラハラがありストーリーは面白くて引き込まれた。最後の終わり方は主人公にもやっとしたけど、そこも妙に現実的で良かった。
Posted by ブクログ
とにかく怖かった。
静かにじわじわ迫ってくる恐怖。
「もしあの時、違う選択をしていたら?」——誰もが一度は考えること。
その“もしも”が現実に形を持って現れる感じが、本当にぞっとした。
日常のすぐ隣に、もう一つの自分の世界がある気がしてならない。
Posted by ブクログ
自分とそっくりなもう一人の蒼子。過去の選択しなかった方を入れ替わって演じてみる。あのとき選んだ夫は間違いだったのか?もう一人の彼と結婚していたら…経験したいようなしたくないような。多分誰しも戻りたい地点はあるよね…どちらの人生も経験して正しい方を選べるなら、相手もそれをする可能性はあって、うまくマッチングしないこともあるのか?
やり直したい選択もたくさんあるけど、選んできた人生を正解にできるようにしたい。
Posted by ブクログ
続きが気になり一気に読んでしまった。だけど、読んでいてイライラ感もあったなと。。
父に再会したシーンで、自分の人生を生きるのを諦めている感じがなんで??と思った。
自分の人生なんだから、前向きじゃないなら結婚しなくても良いのに。。と思ったり、生活を交換してから行くなと言われたデパートに行ったり、カードを使って良い=豪遊して良いと思って使いまくる所とかそんなわけないだろ‥。と思ったり。個人的にはミシン工場で働いている蒼子の方は好きじゃないなと思った。なんかイライラしてしまって
もう片方の蒼子が好きって訳でもないけど。。
最後はお互い発見があった、という形で本人たちはプラスに捉えているみたいだけど、殺されそうになった相手に対してよくそう思えるな‥。私なら無理!と思った。
Posted by ブクログ
わたしだって、環境や周りの人に恵まれたらもっと良い人生が送れるのにな〜という妄想が打ち砕かれました。結局、わたしが変わらないと、努力しないとわたしの人生は好転しない。蒼子はその辺りを検討したりとか、内省をしなかったので読んでてもどかしかったです。
Posted by ブクログ
著者のダークでディープな雰囲気が好きなのだが、今回は若干の肩透かし。
都内で冷めた夫婦関係のなか、好き放題しつつもどこか虚しさを覚える蒼子Aと福岡にてDVを受けながらも辛抱強く生きる蒼子Bによるドッペルゲンガーの物語。
この設定が、どこか期待してたものと違って刺さらなかった感が否めない。入れ替わろうと提案をして次第に相手の生活が羨ましくなり乗っ取ろうとしたり…みたいなダークな感じはあるものの、やっぱり根本にあるドッペルゲンガーだとか、片方は影だとか、そういうファンタジー要素が若干の軽さを生んでて不完全燃焼。
Posted by ブクログ
女の幸せってなんだろう?
どうして自分の幸せを男性にゆだねるのだろう?
出版された当時は女性が家庭において声をあげることができなかった時代だったということもあるのだろうが、主人公の蒼子は自分の人生の選択肢として「どの男を選ぶか」という点だけ考えているよう。
んでまぁそもそも性格もあまりよろしくなくて、自業自得とも思えてしまった笑
Posted by ブクログ
不思議な本だった、、
ハッピーエンドでもないし、何かが解決したわけでもないし、わがままな人たちが集まった物語って感じで、九州男児との結婚に対する恐怖心だけが芽生えた(全員がそうではないと思うけど、、!)
Posted by ブクログ
後悔の岐路に立ち、歩んでみたかったもう一つの人生を体験する。面白そうな設定から、新しい生活への期待感、そしてやはりスリラーな展開へ。
蒼子Aと蒼子Bのそれぞれの心情が交互に書かれ、先が気になり、一気に読んでしまった。
あのときああだったら、と自分も思うことはあるけれど、確かに自分が自分である以上、どちらの人生を生きても変わらないとはちょっと考えると行き着く答え。自分自身を変えないと。
それがすごく難しい。しかし、それに向けて動き出すことは大事なのだろうなと感じた。
Posted by ブクログ
後半にかけて余裕がなくなり、スリリングな展開となってからは面白く読めました。
山本文緒さんの著す感情はなんと言うか、生々しさがあって好きですねー。
Posted by ブクログ
2021.06.29
結局人は皆ないものねだりをしながら生きている。
実際、憧れていたものを手にとった時、きっとさらに欲しいものがでてくるのが人間なのだろうと思う。
幸せになろうともがき続けても、幸せにはたどり着けない。そんなむず痒さを感じる作品だった。
Posted by ブクログ
自分と姿形が同じドッペルゲンガーと出会ったら‥
から始まる物語。
自身にベクトルを向けて生きる。
与えて欲しかったら、先に与えよ。
がメッセージかな?
隣の芝は青く見える(ブルー)
とはこのことか。
個人的に印象に残っているのは
蒼子が自身の「殺意」に気づく場面。
人生の中で初めて誰かを殺したいと感じるまでの数行がリアル。
ここで理性が勝てなければ人を殺すという行動になるんだと感じた。
もう少し年齢を重ねてから読むとまた印象は変わりそう。
Posted by ブクログ
「君の顔では泣けない」
の瀧井朝世さんの解説に
君嶋さんが小説を書き始めるきっかけの本と紹介されていた
先日、ひまわり師匠が読書していると時折思ってみない繋がりがあるとかなんとかそんな事を書いていたと思うけど
ほんとそういう偶然だか必然って時々ありますよね
私もつい最近「ブルーもしくはブルー」を読んでいたんです♪解説読んでて ほおってなりました
1992年出版で30年前の作品
読み始めて山本文緒さんとしては思い切った設定に驚き
タイムトラベルでなく 並行世界でもなく 自分が決めた結婚相手が違った場合の ドッペルゲンガー的if
自分の今に満足するかは、自分次第ということか
相手の男性達に当然否定されるべき事実があるにも関わらず、敵対していくのは、自分同士
女達の戦いになっていく
ファンタジーにあらず、ですね
自分にわからない幸せに奔走していき瓦解していく 怖!
幸せは相手によるものだけでないというところだけど
高収入、愛人あり夫 vs 低収入、DV込深愛男
私は 前者で(*☻-☻*)
Posted by ブクログ
もう一人の自分が、過去に自分が選択しなかった方の人生を生きていた、そして自分ともう一人の自分が期間限定で入れ替わって生活してみる、と言う設定がまず面白くて、内容も期待を裏切らないストーリー展開であっという間に読めた。
エンターテイメントを期待していた自分としては、もう少し入れ替わり期間中の様子、ハプニング、ドタバタ展開などがあったら良かったなぁと思ってしまった。
どちらかと言うと、しっかりとしたメッセージ性のある社会派小説といった感じかな。
人生に満足感を見出せるかどうかは気持ちの問題、隣の芝は青い、的なことなのかなとも感じだけど、解説を読むに、社会での女性の在り方など、社会的もしくは時代的背景といったもう少し大きな問題を取り扱っている様だった。
Posted by ブクログ
蒼子が入れ替わるまでは、あまり面白味を感じなかったけど、入れ替わってからはハラハラする展開で、結末も気になり一気読み。
身勝手でヒステリックな蒼子Aにかなりイラついた。
あの時あっちを選んでいれば‥も結局は、
隣の芝生は青く見えるというだけ。