あらすじ
短時間、正座しただけで骨折する「骨粗鬆症」。恋人からの電話を待って夜も眠れない「睡眠障害」。フードコーディネーターを襲った「味覚異常」。ストレス立ち向かい、再生する姿を描いた10の物語。
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小さな高級チョコの詰め合わせ
一話ごとの完成度が高く引き込まれ気づけば一冊読み終えていました。似たような内容の話がないので全く疲れず飽きません。暫くぶりの読書でしたが、あらためて読書の楽しさを感じました。
山本文緒さんの小説をもっともっと読みたかったです。
Posted by ブクログ
以前読んだ『プラナリア』が面白かったので、違う小説も読んでみたいと思い購入。
本作は味覚障害、アトピー性皮膚炎、突発性難聴などなんらかの問題を抱えた女性が主人公の短編小説。
一編は約30ページくらいで非常にすっきりとしたボリュームで読みやすく、また作者さんの文章も非常にお上手なので最後まで退屈せずに読めた。
一番印象に残ったのは『夏の空色』。
昼間からビールをガブガブと飲んでしまうアルコール依存性の女性の物語なのだけど、まさかその女性というのが高校生だとは思っていなかったので斬新な設定でいいなあと思った。
アルコール依存性になった背景、ラストにおける主人公の心境の変化、この二点がしっかりと描かれていて、30ページながらも非常に読みごたえがある作品だった。
この作者さんの作品を二作読んでどちらも当たりだったので、ちがう小説も近いうちに買おうとおもっている。
Posted by ブクログ
ねむらぬテレフォンとシュガーレスラヴが好き。どこか体に不調があるときは大体何か心に突っかかっているものがある。それをうまく絡めて表しているところがいい
Posted by ブクログ
社会で感じる鈍痛を描きたい、そのものだなと。
印象に残ったのは、「秤の上の小さな子ども」、「シュガーレス・ラブ」。
ストレスに抗った結果、病気になってしまった主人公たちが切実にそれらと戦いながら自分を探していく。うまくまとまっていて、とてもおもしろかった。
Posted by ブクログ
山本文緒さんは、「生きていくことの鈍痛を描きたい」作家らしい。解説でそう書いてあって響いた。
派手さがなくて斜に構えた展開の作品が多くてそこが好きだと思ってたけど、鈍痛って言葉はすごくピンとくる。
この作品もその鈍痛を体現した短編集だと思った。
Posted by ブクログ
よかった。短編集で読みやすい。
考えさせられる。少しもやっとする話もあるけど、スカッと終わる話もあって、泣いたり笑ったり悔しく思ったりと感情が忙しい。
この方のお話をもっと読みたかったなぁ。残念。
Posted by ブクログ
じわじわハマり出している山本文緒作品。今作は様々な病気に悩む女性を描いた短編集。アトピー性皮膚炎は自分も悩まされているので共感ポイントも多いが、生理痛や睡眠障害、肥満など相変わらず心がザラつき印象に残る作品がたくさん。ここまでのイライラには悩まされないが、生理痛(PMS)での破壊衝動に駆られる気持ちは理解できる。自律神経失調症では、主人公が彼女にちゃんと向き合おうとしたラストが良かった。健康こそすべて。何らかの病気を抱えてしまったこと自体は悪いことではないが、人生を楽しもうと思うと土台がしっかりしていないといけないと改めて思い知らされる。
Posted by ブクログ
あなたは『病気』を患っているでしょうか?
この世には数百種類にもおよぶ『病気』があると言われています。例えばこの一年を思い返しても、あなたも私も何かしらの『病気』に罹ったのではないでしょうか?もちろんそれは、必ずしも病院で治療をしてというものではないかもしれません。しかし、風邪や頭痛、そして花粉症…と、私たちが『病気』と無縁の日々を送ることはなかなか難しいものです。
“健康第一”という言葉がある通り、『病気』を排した日常を送ることは何よりも大切だと思います。しかし一方で、現代の医学をもってしても容易には解決し得ない『病気』も存在します。逃れたくても逃れられない『病気』の数々。私たちがこの世を生きていくにはそんな『病気』と上手く付き合っていくことも大切なのだと思います。
さてここに、『骨粗鬆症』、『アトピー性皮膚炎』、そして『便秘』といった身近によく聞く『病気』を患う主人公が登場する物語があります。身近な『病気』故、主人公たちの悩み苦しみがよくわかるこの作品。そんな『病気』と共に生きる主人公たちを見るこの作品。そしてそれは、『いったい私が、何をしたというのだろう。これは、なんの罰なのだろう』と思い悩む主人公たちの生き様を見る物語です。
『未矢(みや)さんが両足首を骨折して入院しました』という『留守番電話』の伝言を聞くのは主人公の『私』。『何があったのかは知らないが両足首を骨折した』のは、『血は繫がっていないにしても』、『ほかならぬ私の娘なのだ』と思う『私』は、『翌朝一番の飛行機で東京に向か』います。『血の繫がった実の娘が入院したというのに、会社を休もうという発想は微塵もない』夫を思い、『私はいったい、誰の何なのだろう』と思う『私』が、病室へと入ると『お友達ですか?』と『スーツを着た中年の男性』に話しかけられます。それに、『私は後妻なので、彼女と歳が近いんです』と『簡潔に事実を述べ』る『私』は『義理の娘の未矢は二十五歳で、私は三十五歳。十歳しか私達は違わない』という二人の関係を思います。そんな『私』は、『失礼ですけど、どちら様ですか?』と男性に聞くと『私は未矢さんの上司』、『未矢さんは私どもの会社に、昨日入社したばかり』と話す上司は事の顛末を説明します。『歓迎会も兼ねて』、『鰻屋に行った』ところ『そこが座敷で』、でも『一時間ぐらいしか座ってない』にも関わらず未矢は立てなくなってしまい、『病院に連れて行ったら』『足首が両方折れてた』という結果論。『彼女は骨粗鬆症という病気になっていた』という事実を知り、『彼女はまだ二十五歳』…と愕然とする中に、『二週間ぐらい入院して、それからしばらく自宅療養』が必要と理解した『私』が『とりあえず治るまで家に帰ってらっしゃいよ』と言うも『ぶすっとして』『一言も言葉を発し』ない未矢。そんな未矢の様子にやむなく『私』は、『とにかく、パジャマとか下着とか持って来てほしいものをメモに書いて』と言うと鍵を受け取り、未矢に書かせた地図メモを持って病室を後にしました。『都心から私鉄に乗って十五分、徒歩五分の所に』ある未矢のマンションへと着いた『私』は部屋へと入ります。『汚れひとつない』『ミニキッチン』を見て、『まったく料理をしていない』と認識する『私』。『ろくなものを食べてないんだろう… これじゃ老人の骨ですよ。簡単に折れちゃうわけだ』と『X線写真を指さしながら』『眉間に皺を寄せた』医師のことを思う『私』は、『未矢が退院するまで、私がこの部屋に泊まって彼女の世話をすることになるのだろうか』とこれから先のことを思います。そんな時、『床に置いてあった留守番電話がちかちか瞬いていることに気がついた』『私』は、再生ボタンを押します。『未矢?僕です。上原です。あのな、悪いけどやっぱりもう会わないでおこうよ。ずるずる続けてても仕方ないだろう。まだ若いんだから、独身の男を捜しなよ』と、『そっけない男の声がして、メッセージは切れ』ました。そして病院へと戻った『私』と、血の繋がらない娘・未矢のそれからが描かれていきます…という最初の短編〈彼女の冷蔵庫 ー 骨粗鬆症〉。二十五歳の若さにして『骨粗鬆症』を患う血の繋がらない娘との関係性を描きながらも読後感良くまとめた好編でした。
“恋、仕事、家庭。現代女性をとりまくストレスを描いた絶品短篇集!”と内容紹介にうたわれるこの作品。”現代女性”という表現から今の世を思い浮かべますが、実はこの作品が刊行されたのは1997年5月のこと。”現代”とは、今から20年以上も前のことになり、時代を感じる表現が多々登場します。『ワープロ』、『ビデオ』、そして『パソコン通信』といった言葉もそうですがオフィスの会話がなんと言っても衝撃です。新しく採用された女性社員(元モデル)が社長から紹介された後、指導を任された男性社員が、彼女に業務を教え始めるという場面で登場する会話です。
『ほっそいウェストだなあ。僕が去年まで付き合ってた女の子なんか、トドみたいだったんですよ…でも他の男に妊娠させられて、結婚しちゃったんですよ。この前久しぶりに電話がかかってきて、今は幸せに暮らしてるって言ってました。たまには遊ぼうねなんて言っちゃったりしてね、それってもう一回やっていいってことかなあ。どう思います?』
ごく普通のオフィスの場面が描かれていく中にこの会話が登場します。今の世であってもさまざまな会社があるとは思いますが、この会話の内容は絶対にあり得ません。しかし、20余年前にはこの会話の内容があり得たことをこの作品は証明しているとも言えます。本筋ではないですが、かなり衝撃を受けました。90年代のオフィスを経験された皆様、この国はこの20余年でこんなにも変化したのでしょうか?また、たった20余年前でしかない90年代ってこんな会話がオフィスで当たり前に話されていた時代だったのでしょうか?
レビュー冒頭、少し脱線してしまいましたが、この作品の大きな特徴は収録された10の短編のそれぞれに何かしらの『病気』を患う女性が主人公として登場するところです。このような形態の作品としては加納朋子さん「トオリヌケキンシ」があります。同作は6つの短編から構成されており、やはりそれぞれの短編に何かしらの『病気』を患う主人公が登場します。しかし、加納さんの作品と山本さんの作品は少し雰囲気感が異なります。加納さんの作品の『病気』は”場面緘黙症”、”相貌失認”、そして”醜形恐怖症”と言った私たちに馴染みの薄い『病気』ばかりであるのに対して、山本さんの作品の『病気』は誰もが知るメジャーな『病気』ばかりであるところです。とは言え、両者とも現実世界に実際に診断される『病気』ではあります。では、山本さんの作品に取り上げられる『病気』を一覧にして見てみましょう。
・〈彼女の冷蔵庫 ー 骨粗鬆症〉
・〈ご清潔な不倫 ー アトピー性皮膚炎〉
・〈鑑賞用美人 ー 便秘〉
・〈いるか療法 ー 突発性難聴〉
・〈ねむらぬテレフォン ー 睡眠障害〉
・〈月も見ていない ー 生理痛〉
・〈夏の空色 ー アルコール依存症〉
・〈秤の上の小さな子供 ー 肥満〉
・〈過剰愛情失調症 ー 自律神経失調症〉
・〈シュガーレス・ラヴ ー 味覚異常〉
いかがでしょうか?これがこの作品の〈目次〉でもあるのですが、とても〈目次〉には思えませんね。まさしく病名の一覧です。このレビューを読んでくださっている方の中にもこれらの『病気』を患われた方もいらっしゃるかもしれませんし、そもそも『病気』の主人公が登場するとなると、いずれの短編も沈鬱な雰囲気感に包まれる読書を余儀なくされる、普通にはそのように思います。しかし、この作品は違うのです。『病気』に苦しむ女性たちが描かれていくにも関わらず不思議と読後感は悪くない…それがこの作品の特徴でもあります。
では、10の短編から私が特に気に入った三つの短編についてもう少し詳しくみてみたいと思います。
・〈ご清潔な不倫 ー アトピー性皮膚炎〉: 『先月の青果の補充データ、見せてもらえないかな』と主任の一ツ橋に声をかけられたのは主人公の森。そんな森は『南の島にでも行って少し焼いてきた方が…』と一ツ橋に言われ席を立ちます。そして、戻ってくると『不用意なことを言ってすみません…今晩、飯を奢らせて…』という一ツ橋のメモが残されていました。『真夏でも』『長袖のブラウスを着ている』森は『アトピー性皮膚炎』を患っています。場面は変わり、居酒屋で一ツ橋と会話する森は、彼の娘も同じ病気だったことを聞きます。そして、唐突に『うちに泊まって下さいませんか』、『こんな肌だから、もう長いこと男の人と寝てないんです』と話し出した森…。
・〈秤の上の小さな子供 ー 肥満〉: 『失礼を承知で』『彼女に体重を尋ねてみた』というのは主人公の柊子。『七十キロを出たり出なかったり』と答える美波に聞き返され『五十キロを出たり出なかったり』と答える柊子は、『それにしても偶然ってあるのね』と話題を変えていきます。『大学時代の同級生』という美波と偶然に再会した柊子は『車を買い換えたばかり』という美波に誘われます。そして、待ち合わせに来た柊子は『渋いあずき色のポルシェ』に驚きます。そして、乗り込んで今に至る二人。『一目で同胞』という見た目で仲良くなった二人でしたが『信じられないほど男の人にもてる』美波とやがて疎遠になった柊子。そして、二人はプールへと向かいます…。
・〈シュガーレス・ラヴ ー 味覚異常〉: 『最近ものの味があまりしないなとは感じていた』のは主人公の佐伯。社食で『まったく味がしない…スポンジでも食べているような嫌な感じがする』という経験をした佐伯は『現代人はものすごく辛いものや、化学調味料や防腐剤の効きすぎたものばかり食べているせいで、味覚障害を起こす確率が高い』という雑誌の記事を思い起こします。『三月末日で私は会社を辞める』という佐伯は『フードコーディネーター』として独立することになっています。そんな佐伯は『秋口から私の部署に配属になった』『新人君』に何かと誘われることを面倒に感じています。そんなある日、『仕事上の大事な話』と『新人君』に誘われた佐伯は…。
三つの短編をご紹介しましたがいずれも短編タイトルに触れられた『病気』を患う女性が主人公として登場します。そんな女性たちは、”恋、仕事、家庭”の中でさまざまなストレスを抱えています。
・『私はいったい、誰の何なのだろう。会社の雑用係?夫の秘書?そして、こういう時だけ母親になることも求められる』。
・『私はきっと、コンピュータの一部だと思われているのだろう』。
・『女であるというだけで、どうしてこんな目にあわされるのだろう』。
それぞれの短編の主人公たちはそれぞれのストレスの先に、それぞれの『病気』と対峙していきます。この作品が書かれたのは確かに20年以上前の90年代のことではあります。しかし、そこに悩み苦しむ女性たちの思いは、2024年の今、この現代社会にあっても大きな変化はないのではないかと思います。人が生きていく中で、女性として生きていく中で、さまざまに思い悩み苦しみながら、それでも前を向いて歩いていく女性たち。この作品では、『病気』に立ち向かいながら、『病気』と共に生きていくそんな女性の強さが描かれていたのだと思いました。
『いったい私が、何をしたというのだろう。これは、なんの罰なのだろう』。
『病気』の名前がタイトルに記された10の短編から構成されたこの作品。そこには、『病気』に苦しみながらも、『病気』と共に生きていく女性たちの姿が描かれていました。取り上げられた『病気』が20余年の年月を経ても人を苦しめ続けていることに驚くこの作品。そんな『病気』と共に生きていくことの意味を思うこの作品。
ストレスだらけの日常の中に、それでも生きていく他ない人の内面を鮮やかに描き出した、そんな作品でした。
Posted by ブクログ
ストレスを抱え、体調を崩す女性たちの10作の短編集。
1話1話は短いけれど、どれも話がうまい、、、
私自身、人を性別で判断するのは好きではない。女として生きてきて、男だったら良かったと思うことも何度もあった。それでも、「男女平等」が大切だと言われても、やっぱり男女は身体の作りが違う。
男に生理痛はないし、男の方が筋肉と力があるからこそ、女にはできないことができたりもする。
そして女も都合よく「女」を武器にするし、「女だから」と壁を作ったりする。性別に差があることは事実だ。
周りの人に相談できず、溜め込んでしまう女性たちの姿はかなりリアルで、ただのフィクションには思えない、この社会のどこにでもいる女性たちの話だった。
体調を崩すまでストレスを溜め込まないように気をつけなきゃな、、、
Posted by ブクログ
大好きな山本文緒さんの本。
女性が主役の短編小説です。
みな我慢したすえに体調を崩しています。
相変わらず女性の嫌な部分を描くのがとても上手です。
でも共感出来る部分もきちんと描かれています。
手を差し伸べたくなるような気持ちになります。
みな生きていくのに必死です。
Posted by ブクログ
疾患を抱える人や、その周りの人の描写が恐ろしいほどリアル。
どの話も、人物像がよくわかる。
特に秀逸だとおもったのが「ねむらぬテレフォン」
誰も悪くない。
自分の周りはみんな優しい。
でも、彼からの電話を待ってしまう自分が苦しくて睡眠障害になってしまう。
無駄に周りは自分のことを想っていることがわかるから、不満もぶつけられない。
そんな実家暮らしの独身女性の心理が見事に描かれている。
Posted by ブクログ
読んでいて、あーわかるよその気持ち、そんなこともしたくなるよね、そう思うこともあるよねと、共感することもあれば、なるほどおもしろいなと読む話もあった
きっと女性なら誰でも1回くらいは体験したことが多いであろう話が多いと思う
もう一度読みたい
Posted by ブクログ
誰もが耳にする病気がテーマになっている短編集。
心因性のものが多く
ストレスを抱えやすい現代に身近に感じる。
気づけていないだけで悩んでいる人もいるだろうし
私も何か抱えていてそのうち出てくるのかも。
なんて、ストレスは溜め込まないことがいちばん。
Posted by ブクログ
現代人が抱える病を題材にした短編集。それら病に直接関わっていなくてもズキリと胸が痛む。個人的な感想だけど、「過剰愛情失調症」だけ異質に感じた。語り手は恋人でヒロインの独白もなし。ヒロインは二重三重の思い込みに晒され更にストレスを抱える展開ではと勝手に想像。見事。真意をお聞きしたかった
Posted by ブクログ
様々な病気をテーマに書かれた短編集。
骨粗鬆症や肥満、アトピー性皮膚炎、自律神経失調症など病気は多岐に渡る。
全編を通して言えるのは「自分に嘘をつかないこと」の大切さじゃなかろうか?
原因不明の病気や症状が出ることに、環境や自分の力ではどうしようも無い事も多々ある。
しかしながら、自分の心に正直に生きることは自分次第でできること。
山本文緒さんはそういった女性へのエールを込めて作品を書かれたのではないだろうか
Posted by ブクログ
面白かった。面白かったんだけど、「病気」がテーマの短編集だから、なんとなく心に負担になってしまったかな。自分がナイーブな時期には向かないかも。痛みが伝わりすぎてしまうから。
でもとても読みやすかった。
アルコール中毒の話のラスト1ページ、情景が美しかったなぁ。
Posted by ブクログ
20年前の小説なので、ところどころ描写が古いところがあるものの、人の気持ちはいつだろうと変わらないのだなぁと思いました。
「秤の上の小さな子供」が1番ウッと来たかも。
私も「愛されたい」側で、「愛す」側に辿り着ける気がしない。
自分が好きじゃないから、誰かに好きになってほしい、大事にしてほしい。そうじゃないと、生きることもままならないくらい辛い。
愛されたいの理由はそれぞれ大小あれど、人がほしい言葉をほしいタイミングで掛けられる人は、そりりゃあモテるよね。
それが「愛したい」って気持ちじゃなくて、「あぁ、こういうこと言って欲しいんだな」って気持ちからでも、全然取り繕えちゃうし。
自分が思ったから言う、とかじゃくて、相手の求めてることばかり口にするから、自分がなくなっちゃうんだろうな。
塩梅を間違えると、どちら側になっても辛い気持ちを抱えたままになるから難しい。
「過剰愛情失調症」はホラーかと思った(笑)
他人に何を言われても、よっぽどのことがない限り、人は変わらないね。
Posted by ブクログ
病を患った人たちの短篇10篇。①都会で生きる若いきれいな女になるため、骨粗鬆症になった義娘。②アトピー性皮膚炎になったことで、夫に去られた女。③男ばかりの職場で働くことになって、トイレに行けず、便秘を患う元モデル。④突発性難聴に悩まされ、教え子に暴力を振るって免職になった元小学校教師。⑤テレビ局に勤める激務の彼からの電話を待つことによって、睡眠障害を発症した会社員。⑥PMSに悩まされ、無関係の人にスタンガンを向ける、会社の上司とセックスしまくるOL。⑦友人に見捨てられる不安から、アルコール依存になった女子高校生。⑧痩せてきれいになる努力をしたのに欲しいものを手に入れることができず、肥満でソープ嬢をしている女を憎む女。⑨自分のことばかりで、彼女の病に気づけない、顔スタイル良しの、金のために仕方なくモデルをしている男。⑩頑張ってのし上がり、独立する段になって、味覚障害を起こしたフードコーディネーターの知られたくない過去。
おもに、人間関係によるストレスから体調を崩す。自身もそのことに気づいておらず、にっちもさっちもいかなくなってようやく、自分の根っこにある病の元に気づく。うまく自分を騙しているつもりでも、体が反応するというか。落ちこぼれる子供を救ういい教師であろうとがんばりすぎたあまり、生徒に暴力を振るうという問題を起こし、突発性難聴になってしまった女性。「私一人がご飯を食べられるだけのお金を稼いで、クラゲのようにただふわふわと生きていこう」という無気力状態からの、再生がよかった。⑥PMSについて書いた小説なんて、とても早かったと思う。⑧は柚木麻子さんの『BUTTER』の原型のよう。つくづく、山本文緒さんは、女で生きることの大変さと喜びとを真摯に見つめ、噛み締め、ズルさ、ダメさも認めて、そこから逃げなかった作家さんだったのだなあ。
Posted by ブクログ
みんな見えないところで何かを抱えてる。自分も経験のある辛さは凄くよく分かるし、経験ない部分も苦しみが想像できる繊細な描写。身体はもちろん、心も参るとしんどいですね。冷蔵庫空っぽニンゲンなのでそこは少し反省。
Posted by ブクログ
リアルな描写が多くて少しゾクッとする場面が多めだった。特に生理痛のとことか。それもまた山本さんの魅力でもあるけど!!各短編小説を読む前はこれとこの病気がどうやって関連するんだろうって思うけど綺麗にまとまってすごいです。スッキリ!って終わることもあれば、少しモヤって終わるものもあってそのいい塩梅で読みやすい。私はねむらぬテレフォンが好きだったなー
Posted by ブクログ
独特な雰囲気のある作品。共感したりしなかったり、心が綻ぶこともあったけど、全体的にはひやりとした感じ。印象に残ったのは、「彼女の冷冷蔵庫」と「いるか療法」。
Posted by ブクログ
山本文緒さんの短編集
現代社会の身近な病を患った主人公達の物語
作品紹介では「ストレスに立ち向かい、再生する姿を描いた」とあったが、予想していた様な希望の光がみえてくる類の物語ではなかった。
10編のサブタイトルが全て病名という個性的な短編集なのでラストも様々だったが、「自分の病に気付くことによって、自分を見つめ直すキッカケがもてる物語」だと思う。
以下、収録作品の目次
彼女の冷冷蔵庫—骨粗鬆症
ご清潔な不倫ーアトピー性皮膚炎
鑑賞用美人—便秘
いるか療法ー突発性難聴
ねむらぬテレフォンー睡眠障害
月も見ていないー生理痛
夏の空色ーアルコール依存症
秤の上の小さな子供ー肥満
過剰愛情失調症ー自律神経失調症
シュガーレス・ラヴー味覚異常
等身大に描かれた主人公達の、心の叫びや苦痛が逃げ場なく切々と語られるので、弱っている時には避けた方が良さそうだ。
ちょっとしたミステリー仕立てになっている物もあり、読後の余韻を楽しませてくれるものが好みだった。特に印象的だったのは、「秤の上の小さな子供ー肥満」と「シュガーレス・ラヴー味覚異常」
Posted by ブクログ
山本文緒さんのご命日なので、もう一冊
1997年の作品
現代社会の中で 働く女性達は
かなりのストレスを抱えて生きている
そして乱れた生活習慣と相まって
彼女達は様々な病気を抱えている
10人10種の病気を抱えた10編の短編集
骨粗鬆症にアトピー性皮膚炎等々
とても身近な症状から
それぞれ回復するきっかけが面白く
ぎゅっと上手くまとまっている
Posted by ブクログ
別の小説の巻末の広告欄から探して手に取った。
病気に悩む女性をテーマにした短編集。各話の最後は、少し向きが変わりそうなところで終わるのだけれども、自分が交わったことのないタイプの人たちもいて引き込まれながら一気によんだ。
短編なのもあって、思い悩む場面は短くさくさく軽く読める。
この手の話、アルコール依存症は苦手。
Posted by ブクログ
リアルな人間の、女性の姿が描かれている。性別で何かを語るのはあまり好きではないけど、それでも生理は女性という性から切り離せない。みんなにかに耐えながら生きているんだな。
Posted by ブクログ
どの物語の主人公も病気とは別に拗らせている部分や恋愛に重心を置きすぎたり性に奔放な所がある。振り切れているわけでもなくそれを楽しむこともない中途半端で生々しい感じが時々鬱陶しく感じる。とくに最初の2つの短編には強く感じた。
男性も下品で攻撃的な人が多く出てくる。のめり込まず適度な距離感で読まないと嫌な気持ちに浸ってしまう。でも著者の作品はどれも読みやすくて一気に読める。
Posted by ブクログ
「夏の空色」「秤の上の小さな子供」の2編が特に好き。「夏の空色」では主人公の背景や気持ちが書かれていたが、咲視点の話も読んでみたい。「秤の上の〜」は女性同士の友情、嫉妬、憧れなど複雑ながら互いに相手をよく見ている関係がわかる。
この2編は、登場人物2人の感情の描写が良く、互いの関係性が強く出ていて良かったと思う。
自覚有る無しに関わらず、様々なストレスから心身に異常を来すのは、今も昔も変わらない。ただ、自覚しなければ解決できないので、自分の気持ちには敏感になりたいと感じた。
Posted by ブクログ
色々なタイプの病気
心の引っ掛かりから 病気(1話1話にさまざまな病名が付いている)になった 女性たちの話
少し、突飛ない話もあるが
いつ何時 誰もがなってもおかしくはないと思う
Posted by ブクログ
★3.7
昨年亡くなられた山本文緒さん
調べてみたら恋愛小説家として有名だったようだが、恋愛小説にあまり詳しくない私は恥ずかしながら知らなかった。
昨年から本をめちゃくちゃ読むようになってきたときに、秋頃、山本文緒さんが亡くなられたこと、それを受けて悲しむ数々の著名人の方のコメントをみて、いつかこの方の作品を読んでみたい、と思い、見かけておもしろそうなものがあれば買ってみよう、というくらいの心持ちでいた。
新年早々、実家近くの書店でたまたま見つけたこの本。
短編の集まりのタイトルごとに、何の病気かが書いてあり、なにこれおもしろそう、と手をとった。
短編の病気、全部患ったことはないけれどいくつか実際になったことがあるもの、なりかけたことがあるもの、なりそうなものばかりで、”ねむらぬテレフォン”のように共感ばかりのものもあったり、なんとも医学的には説明しがたい描写も現実的に書いていて、ただ薬飲んでおけばいいのではなく、精神と身体は繋がっているという当たり前のことに気づく
そして、“夏の空色”のように救われるものもあれば(短編の中ではやっぱりこれが一番好き)、”月も見ていない”のような、読んでるこっちがただただしんどいものもあり、でも苦しくとも読み進めたい、、みたいな感覚に。脳内花畑になりがちな自分にもぐさっと、現実ってこんなものって冷たく突き付けて我に返るきもちになる。
心身不調になるのは、なぜだかわからない、ということ決してなく、絶対に奥深くにちゃんと理由が存在していていて、
でも逆にそこから再生していくきっかけになることは、案外、その原因と真っ向から対峙するだけではなく(できて戦える力があるのであればそれでもいいけど)、あまり直接的に関係ないふとしたことがきっかけになってくれたりするものなのかもな、と思う。
この物語にいる人々がじんわり再生しようとする姿を想像していくと、じぶんにも、だいじょうぶ、と言ってあげたい気持ちになる