山本文緒のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
24歳家事手伝いのさとるは近くのスーパーの大学生の鉄男と付き合っている。
坂の上にあるさとるの家は母と妹と3人暮らしだが、教師の母親が厳しく様々なルールがある。
そんな女3人暮らしのどろどろを描いた作品。
やっぱり病的かつクレイジーなのに魅力的な女性を描かせると、山本文緒さん以上の作家はいないといつも痛感させられる。
嫌な、どうしようもない女なのにどこか憎みきれない。
どこか女らしいねちねちした魅力が文字から香ってくるのだ。
やっぱり一気読み。
母として誰もが自分が正しいと思うことを子どもにして、精一杯の子育てをしている。
それを誰も責めることや、咎めることはできない。
正解も善悪もな -
Posted by ブクログ
★3.7
昨年亡くなられた山本文緒さん
調べてみたら恋愛小説家として有名だったようだが、恋愛小説にあまり詳しくない私は恥ずかしながら知らなかった。
昨年から本をめちゃくちゃ読むようになってきたときに、秋頃、山本文緒さんが亡くなられたこと、それを受けて悲しむ数々の著名人の方のコメントをみて、いつかこの方の作品を読んでみたい、と思い、見かけておもしろそうなものがあれば買ってみよう、というくらいの心持ちでいた。
新年早々、実家近くの書店でたまたま見つけたこの本。
短編の集まりのタイトルごとに、何の病気かが書いてあり、なにこれおもしろそう、と手をとった。
短編の病気、全部患ったことはないけれど -
Posted by ブクログ
ネタバレ女性の塊
選ばれたい女の性癖。資本は美貌。猫、手近な男、男の子に求められまくる。
女性が浸りたいエンタメかな。
私は軽く頷いた。「父ちゃんはさ、給料を持ってくる機械みたいに自分のことを思ってるみたいだけど、そうじゃないんだ。えーとさ、うまく言えないけど、父ちゃんってすごく普通の人じゃん?」「常識的だよね」「そう、それ。母ちゃんは母ちゃんで外っかわだけきれいにしとけば中はどうでもいいって奴だし、妹は末恐ろしいガキだし、俺はこんなじゃん。その中に、あのハゲ親父がいるだけで、何となく空気がさ、えっと……」「中和される?」「そう、それ」 -
Posted by ブクログ
ネタバレ眠くて眠くて何もやる気がおきない時の空気感が漂う小説。
意思もなく自ら塔の中に閉じこもって色んなことをただ受け入れているお姫様。
色々意味不明としかいいようがないしお隣の少年がこんな女に好意を寄せるのが納得いかない。
でも、こんな腑抜けになった女が抱えていたのは、かつて夫と愛し合ったこと、それが過去になってしまったという事実。それに決着をつけてしまうことの怖さから、自分から何か起こすことを避けて城に閉じこもる。だけどきっとどこかで変わることを望んでいたから、外からきた変化は受け入れる。その結果自分で城を壊すことになる。
結局は夫婦関係の不和からうまれた鬱の症状だと思うと可哀想だけれども。
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Posted by ブクログ
どうにもジャンルの分類に困る本だ。
読む前に帯を読んで『恋愛小説』と登録したが、読み終えて、どうやら違う。なんだろう?
ああ、そうだ。ホラーだ。と納得する。
読みながら、首元に鋭利なカミソリ、エッジのきいたナイフを充てがわれているようなひんやりした感覚が付きまとう。
読み終えてもなお、黒板を引っ掻くような言いようのない感覚。不愉快。
父親にも母親にだけでなく、読みながら可哀想と信じていたサトルにまで湧く憎しみに近い怒り。
鉄男には全員を構うことなく捨てて欲しい。
いくら親が毒であったとしても、私はサトルがイヤだ。サトルを構っちゃダメだ。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ短編3作の小説集。
心温まる系のお話かと思いきや、そんな単純なものではなかった!
・アカペラ
単身赴任で不在の父、家出ばかりの母をもつ主人公が、大好きなおじいちゃんを守るために駆け落ちをする。担任の先生やバイト先の店長など、大人らしくない大人達の手を借りながら大好きなおじいちゃんのことだけを考える健気な主人公。ラストが意外すぎる…。これは何エンドと言えばいいのか?ハッピーエンドのようでハッピーエンドではない苦しさ。
というかおじいちゃんと関係をもってしまうくだりはいかがなものなのか…
・ソリチュード
これもラストがわかりやすくないのがいい!心を入れ替えてこうなりました!的なものではなく。自分を -
Posted by ブクログ
ネタバレ読み始めるとどんどんいやな気持ちが積み重なっていくのに、読むのを止められない。
恋愛の先に家族があり、家族ごとに多かれ少なかれ事情を抱えているものだけど、この家族は鉄男が生半可な気持ちで首をつっこんではいけないしさとると鉄男は目的がすれ違い続けていて幸せになれなさそう。
そのことに鉄男自身もはじめから気が付いているはずなのに、情なのか何度も「自分はさとるが好き」と言い聞かせて自己暗示をかけて付き合いを保っているのが怖かった。
何度も驚く場面はあったが、いちばんはカウンセリングの謎が解けたとき。
途中でおでんの具材の話になったときに母親がタコの有無を確認して、入っていないことに薄い反応だっ -
Posted by ブクログ
「喪失感を超え、本当の自分に出会う。」
この本の背表紙に書いてあった文章に、とても共感しました。
失うことはただただ悲しんだり、寂しい気持ちになるだけでなく、
自分が人として成長や人に対して優しくなるきっかけを貰う機会でもあるのかなと感じました。
恋人や信頼を失うことは、もちろん切なくて悔しくなるけど、その先の自分の行動には必ず変化が起きるのではないかと思います。
そう考えると、喪失感を覚えることのすべてが悪いことでは無いのかな?と思わせてくれる作品でもあると思います。
◆印象に残った
①ドーナッツ・リング
②みんないってしまう
③片恋症候群