あらすじ
丘の上の家でひっそり暮らす不思議な女性・さとるに出会い、惹かれる大学生の鉄男。しかし、彼女を知るほどに、鉄男の疑問はふくらんでいく。可憐な彼女はなぜそんなに実母に怯え、妹に遠慮し、他人とうまくつきあえないのか? 母娘3人の憎悪が噴出するときにあらわれる、戦慄の情景とは──。恋愛の先にある家族の濃い闇を描いて、読者の熱狂的支持を受けつづける傑作長編小説。山本文緒ならではの、ホラーよりも恐ろしく、猛烈に切ない人間関係の闇!
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
BOOK・OFFでタイトルに惹かれて購入。あっさりとした文体で描写のイメージがしやすく、また物語も面白かったので一晩で一気読みしてしまいました。最後のシーンではあと数ページしかないと物語が終わってしまうのを惜しむほど毬谷家と鉄男からなる物語にどはまりしてしまいました。また読みたい小説です。
Posted by ブクログ
これぞ私が好きな山本文緒さん!という小説だった。下手なホラーよりホラーだ。
長い坂を登った丘の上の一軒家に住むさとる。他人とうまく付き合えず、家事手伝いと称して、実家で母親、妹とともに生活している。
彼氏の鉄男は、さとると交際を続ける中で母親や妹とも関わりを深めていくうちに、その家族に潜む底知れない憎悪とさとるが纏う戦慄の背景を目の当たりにしてゆく……。
怖い。怖すぎる。家族を支配するのは、ヒステリックで冷酷な母親。さとるには、24歳にもなって22時の門限があり、それを守れなければ容赦なく打たれる。母親の意にそぐわないことをすると、幼い頃から妹のみつるとそうやって虐待され続けてきたのだ。
しかしそれを家族の愛だと信じて疑わず、反抗しようとも家を出ようともしないさとるに、鉄男は徐々に不信感を募らせていく。と同時に、冷酷な母親の不思議な魅力に取り込まれていってしまう。「えー?!?!」という展開。怖い。
章ごとに挟まれていた誰かのカウンセリングの真実が分かったあとからは転がり落ちるようなスピード感。怖い。
こういう風に育てるとこういう子になって家族はこうなってしまうんだなという見本のような恐ろしいストーリーでした。
愛に飢えるさとるが不憫で可哀想でならなかった。鉄男はチャラチャラして流されやすいところもあるけれど、優しくて情緒が安定しててさとるは彼に出会えて本当に良かったねと思う。
Posted by ブクログ
すごく激しい内容だった。山本文緒さんの作品は、ほとんど読んでいるはずだけどこんなに引き込まれたのは初めてかもしれない。一気に読んでしまいました。
Posted by ブクログ
アダルト・チルドレンとして育った私と同じ状況のこの本。
小さくても大人になっても、がんじがらめの箱の中からは、自分で出ようと思わなければいつまでも出られない。
同じACの人にはフラッシュバックすることを覚悟で、でも読んでほしい1冊です。
Posted by ブクログ
不気味な感じがする女所帯の秘密が暴かれていきます。
読み終えて多少はスッキリしたけれども、今後この家族はどうしていくのかなと。
母親だけは救いがないような。
ただ人は誰しも登場人物のどの人にもなりえるような気もして。
多分皆幸せになろうとしたのにその方法がわからなくて、増悪がうずめいてしまう。
他人事のような身近なようなお話です。
Posted by ブクログ
真面目って病気だ。
正論が人を強くするのか、弱い人が正論に縋るのか。
山本文緒さんの作品。わたしが初めて読んだのは、「プラナリア」だった。
2020年6月末頃のことだ。
そして、この作品のレビューをベースに、わたしはエッセイを書いて、初めて応募した。
そんな大きな一歩を踏み出させてくれた山本文緒さんが、とても若くして亡くなられた。
早い。早すぎるあまりにも。
わたしはと言えば、遅かった。あまりにも遅すぎた。彼女の作品に触れるのが。
「自転しながら公転する」
この作品を読んで、もっともっと彼女の作品を読みたいと思った。
もう、今ある作品を、魂を込めて読むことしか、今のわたしにはできない。
これではまるでゴッホじゃないか。
悔しい。寂しい。作品は作品として残るけれど、作品だって、生き物だ。わたしはそう思う。
この作品は1995年に単行本で出版されている。
1995年といえば、J-POP全盛期で、とにかく毎日違う名前の歌番組が、前日と違う放送局から流れていた時代だった気がする。子どものわたしには、歌詞はあまり入ってきてなくて、だけどとにかく曲を聴いてた。
その裏側で、この物語もひっそりと存在していた。
とても静かに。
毛布でくるまれて、部屋の片隅で、息をひそめて。
毒に侵された家族を、優しく包み込んでいたのだろうか。それとも、隠していたのだろうか。
まるで家に根が生えていて、根ごと毒に侵されているような。
主人公の様々な心身の不調。毒親は普通、これを放っておかない。なのにそれを放っておく違和感。
主人公目線の章にも関わらず、確実に語られていない何か。巧妙にまだ語られていない何か。
章の冒頭で語られるカウンセリングを受けている人物の正体。
なぜ主人公はこんなに病んでいるのか。
なぜ恋人はこんなにケアできるのか。
違和感の正体は、最後にどばっと、溢れ出る。
ここまでしないと、毒親の根は切れないのか。
みんながみんな、自分のことを罰している。
自分が誰かにしたことの罪を、ずっと抱えている。
それを利用する母親。抜け出せない主人公。抜け出したい妹。共依存。
毒親に植え付けられた罪悪感という感情は、他人から受けるどんな罰よりも思い罰なのかもしれない。
ただの「真面目な人」では済まされない程の、強すぎる正論は、人を暴走させる。
でもなぜ。
正論で言うならば、暴走して人を傷つける方が悪いに決まってる。
なのになぜ、正論が勝っているのだ。
週刊誌でプライベートを明かした方が責められていいはずなのに、プライベートを明かされた方が謝っているのはなぜなのだ。
正論は、真面目なのは、正しいけど、どこか間違っている、狂っている。
最近複雑な音楽が流行っている中、昔の曲、特に90年代の曲って今より単純で聴きやすい。だから歌詞もすんなり入ってきて、浜崎あゆみとか今聴くと、なんか、かなりくるものがある。
「人を信じることっていつか裏切られ~
はねつけられる事と同じと思っていたよ~」
リピートしてる。「A song for XX」この曲のメロディーと歌詞の威力は結構すごい。
なんだかすっかり90年代に侵されている。
Posted by ブクログ
さっぱりした文章の中にぐいぐい引き込まれる不思議な魅力があった。
まぁまぁ狂気に近いところを、重苦しくなく読ませる語り口。さとるやみつるのことが気になって一気に読んだ。家族の重圧、母親の支配、彼氏のぬくもり、ひたひたとそこにある呪縛。それらが、リアルにありのまま描かれている。
Posted by ブクログ
だいぶ昔に一度読んだ小説。
実際映画化されているのだけど、ものすごく映像化向きの物語だと改めて思った。キャラクターの立ち方とか、映像が目に浮かびやすい構成とか。恋愛小説であり、ミステリ小説であり…でもどっちでもないような、不思議な感じ。
一人の弱い女性の自立までを描いた小説、とも言えるのだろうか。
坂の上の家に住む身体も心も不安定な女性・さとると、ごく普通の大学生・鉄男の出逢い、そして恋愛。
さとるは異常なまでに家に固執し、そして異常なまでに母親の存在を恐れている。それにはひとつの大きな理由があった。
実は昔書いた物の参考にさせてもらった小説でもあって、当時の私はそれだけこの小説(というか主人公のさとる)に共感を覚えたのだろうけど、それからけっこう歳を重ねたせいか、今は共感はなかった。
ただ、ぐいぐい読ませるストーリー展開に引き込まれることは変わりなくて、昔読んだ時とはまた違う感情で好きだと思った。
映画はまだ観たことはないのだけど、主題歌が鬼束ちひろの「茨の海」みたいで、想像しただけでぴったりだと考えたりした。
さとるの、人の輪に溶け込んだりうまくやるのが極端に苦手なところとか、風変わりなんだけどそれでいて妙に色っぽくて男の人には人気があるところとか、こういう人いる、と思った。男から見るとたぶん、放っておけないタイプの女性。
Posted by ブクログ
不思議な話だった。
でもさとるの一部分には分かる気がした。
かつての私がそうだったので。
かなり狂気めいた話だが、文体のせいかそこまで重くなかった。
Posted by ブクログ
すごい勢いで読みました。
ちょっと暗い本。元気ない時は読まないほうがいい。世界にすいこまれます(苦笑)
「何かが他とは違う家族」が出てきます。
その家族と普通の世界の青年がかかわる話。
(最後にはあきらかになるけど)不在の父親
娘たちに折檻を働く母親
母におびえ世間におびえ世間に溶け込めず家事手伝いの主人公
一見家に反発しているようでやはり家から逃げ出せない妹
主人公の恋人「鉄生」
がこの家族にかかわって、
家族に少し変化が起こります。
はたしてこの結末は幸せなのか、不幸なのか。
読み応えあり。
Posted by ブクログ
面白いけど怖い。読んでたら家族ってよく分かんないし、皆が悪いようにも悪くないようにも思えてしまった。
あと女って怖いなぁ・・・。おでんに農薬とかっていう件も怖かったけど。
20081009
Posted by ブクログ
時間をかけて壊れてゆく個人、家族。
不自然な女三人(母・娘二人)家族の中での夫であり父親である存在の意義は?
事件は大学生男子が2つ年上の女子に恋をしたことから始まった。
いや、本当はそれ以前からジワジワと始まっていたのだ。
オバケは出てこないが、
人間性の怖さを描いたホラーかもしれない。
Posted by ブクログ
ドロドロした家族で、母親がすごく怖いなと思いました。
絶対的な存在なんだろうなとか。
みつるはなんだかんだで姉思いなんじゃないかと思った。
自分的にラストがすごく安心した。
Posted by ブクログ
深くて深くて暗い世界。でも、自分も思い当たる節がいっぱいあって結構かぶった。いい子でいようとする。何かにおびえている。普通の家に育ったけど、時々いろいろなものが角度を変えて表現すると、さとるの気持ちがよくわかる気がして、引き込まれちゃいました。葛藤、衝動、誰にでも持ち合わせているんじゃないかな。
Posted by ブクログ
どうにもジャンルの分類に困る本だ。
読む前に帯を読んで『恋愛小説』と登録したが、読み終えて、どうやら違う。なんだろう?
ああ、そうだ。ホラーだ。と納得する。
読みながら、首元に鋭利なカミソリ、エッジのきいたナイフを充てがわれているようなひんやりした感覚が付きまとう。
読み終えてもなお、黒板を引っ掻くような言いようのない感覚。不愉快。
父親にも母親にだけでなく、読みながら可哀想と信じていたサトルにまで湧く憎しみに近い怒り。
鉄男には全員を構うことなく捨てて欲しい。
いくら親が毒であったとしても、私はサトルがイヤだ。サトルを構っちゃダメだ。
Posted by ブクログ
題名からイメージするよりダークな一品だった。女が集まって生活する場所って多かれ少なかれこういう息苦しさと気の休まらなさが発生するような気がする。男性のオアシス感が際立つ作品だった。父親の全てにリアリティーが無いのがちょっと残念だった。あそこまでする執念はそれこそ女に似合う。
Posted by ブクログ
怖い。
ストーリーも怖いけど、何が怖いって
自分がさとると似ている気がするから。
他人とも家族とも関係を気付けなくて
唯一心休まるのは男の人の腕の中。
一体どれだけの人が彼女に共感するんだろう。
きっと少なくないんじゃないかな。
せめてそう思いたい。
Posted by ブクログ
誰かがカウンセリングを受けている場面と、異常な母親に支配された家庭の場面が交互に描かれ、謎が徐々に明らかになっていくという。このミステリー的展開にぐっと引き込まれます。
決してハッピーエンドではないと思いますが、余韻の残るラストでした。
この手の小説は、描写がクドかったり、妙に偏った人物しか登場しなかったりと読みにくい印象を持っていますが、山本文緒さんの話は内容の割にさっぱりしてて読みやすいです。
Posted by ブクログ
少し期待し過ぎたか。
『恋愛中毒』の時ほどの怖さは感じなかった。十分悲劇的でありながら、嘘っぽくもないのに。
心の動きが表に出過ぎたキャラ構成だったからだろうか?
それでも、ともすれば、二時間の薄っぺらなサスペンスドラマにさえ、使われそうなシナリオが、決して品位を失わずにいるのは、作者の力量なのかもしれない。
家族のあり方は一様でなく、お手本は存在しない。今ひとつといところを常に抱え、お互いを信じて諦めず、ある努力を続けて行くことの上に成り立つ。バランスが崩れた時に、ありったけの力をつぎ込まないと、傾き続ける。
最初はちょっとしたかけ違いだ。それが、タイミングや怠慢で、みるみる溝が広がる。そんな光景を目の当たりにする物語。
Posted by ブクログ
とても暗い作品でした。
読むタイミングが
ちょうど家族とごたごたがあった後で
あまりよくなかったのですが
暗い話で気分が晴れるわけでもないのに
一気に集中して読み終わってしまいました。
山本文緒さんの作品の中でも
私は結構気に入ってます。
Posted by ブクログ
特異な親子関係は代々引き継がれるものなのかな。祖母と母のそれがそうだったように、母ととさとるの関係も。妹のみつるも結局は支配されてしまっているし。そして、結局は、歪んだ関係はいつか暴発してしまう。たんかに運ばれながら見えた町並みに「あぁ、朝が来るんだ」と思えたさとると彼氏である鉄男との新しい生活を予感させてホッとする終わり方。
Posted by ブクログ
家庭事情から病んでいる女の子と年下の男の子。
その家庭に隠された深い事情。
ヘヴィなお話ではありますが、たしかに世の中そんなにきれいごとばっかりじゃない。
Posted by ブクログ
恋愛小説であり、家族小説でありスリリング。
山本さんの小説の登場人物はいつもどこかしらほの暗いものをもっていて、それを抜け出したいという心の葛藤が描かれています。