山本文緒のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
夫婦にまつわる8作の短編集
外から見たら表面上は円満な夫婦でも、闇の部分が隠れているという物語が多め
15年くらい前に読んだのを再読
当時とは私の状況が一周して大きく変わったわけで、物語の理解度や解像度が高まっていた
・土下座
結婚してから夜の生活を断るようになってきた妻
それに対して自分も求めなくなった夫
そんな夫に、妻は自分から誘うような素振りを見せてくる
普段はニコニコとしているように見えて、実は料理はとんでもないものを出してくる
成人式のときに居酒屋で振り袖にキムチを落としてしまったときでも怒らなかった妻
その時にしたのが土下座の一回目
二回目はプロポーズのとき
そして、三回目は……
・子宝
政略結婚のような結婚をしたお嬢様育ちの妻
夫は何かにつけて妻の世間知らずなところを揶揄してくる
そんな夫は愛人とその子供がいる
キーアイテムは「毛ガニ」でしょうかw
まぁ、生き物って食べるにしろ育てるにしろ大変ですよねー
・おしどり
夫婦円満で何の問題もなさそうな兄夫婦
恋愛関係のトラブルで、そんな兄夫婦の家でしばらく過ごす事になった妹
お互いを想い合いう理想的な夫婦に見えたが、兄嫁が突然の家出
兄夫婦が表には出していない事情
・貞淑
行為の最中に、知らない男の名前を口にした妻
夫は不貞を疑い、相手は誰かと詮索したら、その男は人気芸能人
実際に不倫をしていたわけではない事に夫は安堵するが
それでも残り続ける不快感
・ますお
母親と同じマンションの違う部屋に住む夫婦
夫は姑との関係も良好
しかし、夫の行動には不審なものがあり
最後に明かされる夫の真意
・バツイチ
お互いに離婚経験のある男女
ペットショップで知り合った男女の再生の物語
子供という存在
人によっては救いだけど、時と場合によっては重い枷にしかならない事もあるよね……
ただ、終わり方は希望がゼロではない感じでよい
・秋茄子
二世帯住宅だが、義父母とはまったく交流のない夫婦
休日にも活動的で色々なところに一緒に行きたがる夫
義母からは嫌われているかもしれないと悩む妻
義父母と夫は、何故二世帯住宅に誘ってきたのか?
秋茄子のぬか漬けを義母に持っていったところ、足を捻挫したという
何かと世話を焼こうとするが、義母は遠慮するばかり
体調が悪い妻を気遣うことがなく、はては家に帰ってこなくなる始末
そんな一見したら離婚目前のような関係の夫の家族の隠されていたものとは……
・紙婚式
お互いに干渉しない、依存しあわない関係で10年続けてきた事実婚
夫の一言で、その関係が崩れる時が来る
そんな二人の新たな関係性
全体を通して、夫婦という関係性のダークな部分が描かれている
冒頭に書いた通り、以前よりも物語の理解度は深くなった
以前はただ「結婚なんてするもんじゃねぇな」と思ったけど
改めて読んでみると、経験者だからこそわかる心の動きがある
もしかして、山本文緒さんも同じような経験をしたからこそ書いた作品だろうか?
そして、最後の3つ、バツイチ、秋茄子、紙婚式は終わり方にどこか救いや希望が見え隠れしている
短編小説の並び順としては、前半に表題作や評価の高いものが配置されがちだけど
この3つを後ろに持ってきたというあたりに、結婚は色々とダークな面があるものの、捨てたもんではないというメッセージ性を感じる -
Posted by ブクログ
「アカペラ」文庫版の初版が2011年8月で、
私の購入した本は、5刷で2020年9月。
初版は分からないが、5刷には解説は無く、
作者の「文庫版あとがき」があった。
そこに収録されている3編の中編のうち、1編目の「アカペラ」を書いた後、病気のため約6年小説を書く仕事を休んだ、とある。
「アカペラ」は2001年直木賞受賞後の第一作、
二作目「ソリュード」は2007年復帰作、
三作目「ネロリ」は2008年作、
このあとがきは、2011年夏、とある。
辻村深月さんの「傲慢と善良」文庫版の解説が
朝井リョウさんで、そこには、小説の執筆者が誰に解説を頼むのか、著者本人が決めるのだそうで、その
顛末が、とても興味深い。
という事で、山本文緒さんは、あとがきという形で、解説は誰にも依頼しなかったのかなぁ、と思った。
解説、あとがき、両方ある文庫本もあるし。
「アカペラ」は中学3年生のタマコが主人公。
父にも母にも気にかけてもらえず、おじいちゃんと仲良しで暮らしている。
担任の、蟹江清太31歳は人気者。
学校では、ユニクロか、ノーブランド。
外での私服は、ポールスミスのジャケットにパトリックのスニーカーとか、あきらかに「女避け」みたいで、俺って本当は男前なんだ、と云う本音を感じるタマコ。
ここのみで、どんな人物か丸わかり。
作者の、そんな世の中の見え方が好きです。
最後は、おっと、そうだったのか、なるほど。
「ソリュード」は、俺はダメな男です、ではじまる。
確かにかなりダメダメ男くん、と思っていたら、
いろいろ事情もあり優しくもあり。
しかしやっぱりダメですね。
中学一年女子の、一花がいい味出している。
「ネロリ」は、中年の姉と、病弱で働けない弟40代の二人暮らし。母は亡くなり父は弟を妊娠中に不倫で離婚。
最後は、これで終了、とおもいきや、ちゃんと伏線回収、スッキリ、でした。 -
Posted by ブクログ
離婚を機に人生初の一人暮らしを始めた32歳の著者、等身大の日記エッセイ。
ほんとに、等身大!気取らず、カッコつけず、強がらず、楽しければ笑い、つらければ泣く。悲しいときは一人で悲しみが去っていくのを待ったり、友達に電話してクドクドと話を聞いてもらったり、ひたすらお酒を飲んだり。どこにでも転がっていそうな日常の細々した出来事の記録なのに、山本文緒さんならではの軽快でさっぱりした文体ゆえに唯一無二のものになっているような。当時の山本さんと今のわたしは年齢が近いからか、わかるぅ、わかるぅ、と、読めば読むほど共感の嵐だった。つらいのも悲しいのも自分だけじゃない、わかってたけどやっぱりみんな頑張って生きてるんだ、と思って少し元気出た。
今後も山本さんの作品を手当たり次第にどんどん読む心算。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ山本さんの、本にはなっていなかったSNSの文章をあつめた一冊。
最初から中盤までは、ふふふと笑いながら、ああ、これはあれを書かれて頃か、とかにやにやしながら読んでいたけれど、後半、ああ、ここからはもう山本さんは、、、と思うと書いていることはそんなことないのに、涙が出そうになった。
ああ、よぼよぼのおばあちゃんになった先生にいてほしかった。
あたらしい小説楽しみだった。
これからもずっと読み続けていきたかった。
また先生のエッセイも読み返したい。
きっと、うわー!!ってなってるのだろうな、と想像しながら。
そういえば、一度だけ先生がTwitterで呟いた言葉にコメントを書いたことがありまして、それに一言だけ返信があって、飛び上がるほどうれしかったけれど、先生も画面の向こうで喜んでくれていたらいいな、と思い出しました。 -
Posted by ブクログ
良い作品だった。
人は誰でも、どんな立場でも、それぞれ何かしら悩み、何かと闘い、その度自分を奮い立たせて乗り越えて、なんでもない日常を送っているものだと思わせる。
田舎を出て夫と久里浜でふたり暮らしの冬乃。
芸人を諦め、サラリーマンをしている川崎。
派手さもなく、一見ただの一般人と思われる2人に焦点をあてつつも、全てではなくても彼らと共通する人生の瞬間を読者は感じると思う。
そういうことあったあった、と。
主人公も不器用ながらも思い悩み、時には人に頼りつつも、なんとか乗り切る。
淡々と、だけどとても緻密に、引き込まれるように人の心理を描けるのは作者ならではだと思う。
ハッピーエンドというわけでもないし、全てが解決したわけでもない最後なのに妙に清々しく感じられた。
どうでもよいが、川崎は示談金払えたのかが気になった。 -
Posted by ブクログ
良い作品でした。
派手さはなく、明るさもないのですが、馴れ合いとも違う感じで、ダメなりに勇気付けてくれます。
不器用で、悪循環にはまり、ずるずると抜け出せずにいる。抜け出す為の、努力がぬるい。
そんな登場人物が少しずつ少しずつ己から目を逸らす事を止め、問題と向き合い、しっかりとした一歩を踏み出していく。
こう書くと、キラキラしたハッピーエンドが待ってるように見えますが、踏み出した一歩は、至極普通なこと。
けれど、「普通」なんて人それぞれで向き合う問題の大きさも人それぞれ。
ただ、向き合ってる時、向き合うまでの気持ちは、似たり寄ったりなのかもしれません。
だから、次が気になって一気に読んでしまいました。
「人の弱みにつけこんで、人の好意を食い物にするタイプだ。都合が悪くなれば、選んだのはそっちだ、自己責任だなんて言って逃げていくような人間だ。盗人たけだけしい。でもきっと人はああいうのに弱いんだ。人の心の撫で方をよく知ってる。人たらしだ。」
「力まなくていいよ。けりなんかつかないよ。でも気持ちに区切りをつけるのはいいことかもしれないね。生きていくということは、やり過ごすということだよ。自分の意志で決めて動いているようでも、ただ大きな流れに人は動かされているだけだ。成り行きに逆らわずに身を任すのがいいよ。できることはちょっと舵を取るくらいのことだ」
この二つの台詞にハッとしました。
そうか、あれは「妖怪 人たらし」だったのか、と。だったら仕方ないやと楽になり、いつか年老いて、人生を振り返った時に、あぁ、我ながら良い舵取りをしたなぁと思いたいなと。
その為に今は、しっかりとした意志を持って頑張ろうと思い、少し力が出ました。
2014年48冊目。