山本文緒のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
中編小説、三遍が収録されています。
山本文緒さんは少女小説出身だとご自身で語っていますが、ちょうど私が高校生の頃好きだった作家さんです。その頃少し大人な女性に憧れていて、色々な恋愛小説や児童小説を読んでいました。
世の中にありふれている様な普通の人間の悲しみ、予期しない人生の幸・不幸に対し、包み込んでくれる様な前向きな主人公が立ち向かうのです。タブー視される暴力描写もサラッと描いていて、それでいて淡々と、嘘は書かない現実的な文章。
胸が温かくなります。
此の3部作のうち、
ネロリが好きです。働く女性を描いていたから。
それだけでなく、懸命に生きている姉弟を見守る若い瞳。
結婚が破談になっ -
Posted by ブクログ
あまり恋愛エッセイってほどではないけれど。
女の幸せは本当に専業主婦なの?て疑問を投げかけつつ、決してバリキャリを目指せってわけでもなく。今のような時代に移り変わる過渡期の頃にちょっと波紋を投げるような物語を生み出した方って印象。
お手紙をくれる学生は「普通のOLにはなりたくない」「普通の主婦にはなりたくない」と言う。でもきっとそのほとんどがそれ以外の何かになるために情熱やエネルギーを注げずあきらめていく。
一方そうじゃないものになったとて、「才能があっていいね」と才能の一言で片付けられる。本当に才能があったならこんな思いはしていない。
才能って一言を言わないように気をつけようと思った。 -
Posted by ブクログ
真面目って病気だ。
正論が人を強くするのか、弱い人が正論に縋るのか。
山本文緒さんの作品。わたしが初めて読んだのは、「プラナリア」だった。
2020年6月末頃のことだ。
そして、この作品のレビューをベースに、わたしはエッセイを書いて、初めて応募した。
そんな大きな一歩を踏み出させてくれた山本文緒さんが、とても若くして亡くなられた。
早い。早すぎるあまりにも。
わたしはと言えば、遅かった。あまりにも遅すぎた。彼女の作品に触れるのが。
「自転しながら公転する」
この作品を読んで、もっともっと彼女の作品を読みたいと思った。
もう、今ある作品を、魂を込めて読むことしか、今のわたしにはできない。
これ -
Posted by ブクログ
タイトルから不倫の話だろうなと想像はしてたけど、主要人物4人みんな想像以上に馬鹿でクソでひどい笑
それがもうコミカルな域で、最後はもうドッカーンて感じ。
現状に不満を持ち、ないものねだりをして、こうしたいという明確な意思もないまま、相手の気持ちを考えず自分勝手に生きた夫婦の末路を描いた小説って感じ。
だけどエピローグで少し救いがあるというか、お互いの気持ちや立場をやっと思いやれたのはよかったかなとか。
90年代、結婚して家庭に入るのが女の幸せで役割、働きに出るなんてもってのほか、みたいな時代に不器用ながらも自立を目指した女性の生き方は、少し応援したい部分もあった。
馬鹿みたいな話だったけど、教 -
Posted by ブクログ
隣家に暮らす七歳の少女。『欲しがる物は全て買い与え』られ、『食べたいといった時に食べたいだけ与えられ』ていたと甘やかされて育つそんな少女を見て、『世界の中心には自分がいると思い込んでいるに違いない』と思っていた少年。そんな少年は、ある時少女の母親が倒れているのを目撃します。今まで幸せの中に暮らしていた少女。そして、ほどなくして亡くなった母親の葬儀のあと、そんな少女は次のような言葉を少年に語りました。
『お母さんね、お母さんじゃなかったんだって。お父さんやお姉ちゃんが言うの。本当はお姉ちゃんがお母さんだったんだって』。
それぞれの家庭には外からは見えない内情を何かしら抱えているものです。外 -
Posted by ブクログ
【家庭と仕事、多面性、不倫】
とにかくリアルで、あーわかる、あるよなーっていう描写の連続。
続きが気になってどんどん読んでしまう。
最初はすっごい魅力的に感じても、接していくうちにちょっとずつイヤなところが見えてくる。
その逆もしかりで、イヤな奴と思ってたけど意外といいとこあったりして。
こういう人間の多面性を分かっていると、例えば仕事しててイラッとした時も、その背景を想像したり、良い面を探したりできるようになる。
自分は仕事をして16年ぐらい経つけど、これに気づいてからは気持ちに余裕ができて、本当にイライラしなくなったなぁ。
不倫の是非はおいといて、心の引き出しを増やしてくれるよう