山本文緒のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
のっけから、爽やかでライトな表紙からは想像できないような、どこにも逃げ出せない日々の描写が細かいディテールで続き、息が詰まる(リアルという点ではいい意味で)。
結構随所にきついセリフがあり、よくある優しい小説とは一線を画す。
妹にカフェをやりたいと持ちかけられた姉が、「なに浮ついたこと言ってんの」「働きたいのならコンビニのアルバイトでも新聞配達でも、体使って真面目にやれば?」と返答するのとか、しんどい!
3歩進んで2歩さがるペースで、ゆっくりと登場人物たちが殻を破り、能動的に人生に立ち向かえるようになるまでを、のめり込んで読んだ。
冬乃の「何にもできない、働く自信がないってただ嘆いて、できな -
Posted by ブクログ
「自分らしく生きるとは」ということについて、たまに考える。とくに今の自分の状況が、先が定まっていない、ある意味でとても自由な状態だから。
自分らしく生きたいけれど、それは言葉で言うほど簡単ではないことを、既に分かってしまっている。
もしかしたらそれはものすごく簡単なことなのかもしれないけれど、そこに踏み出す勇気を持つのが若い頃のようにはいかなくなっているという意味で、簡単ではないと感じてしまっているのかもしれない。
…などとぶつくさ考えながらのレビュースタートなのだけど、山本文緒さんの小説やっぱり好きだなとシンプルに思った。
先日亡くなられてしまったので未読のものを読んでいこうと思っているの -
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想定していた話ではなかった分、なかなか面白い話だった。
主人公椿は、男は全員自分に靡くと思っているし、女子との仲を必要以上に取り持つこともしない。
そんな彼女が嫌いになれないのが不思議。
作中で自分の価値観を物おじせずにズバズバいうところがなかなか爽快だったからだろう。
それと、美人だけど性格が悪いので、肉体関係を持ってくれる男はいても結婚できない、慕っていたおばあちゃんがボケてしまう、父親が最悪のクズ男など、結構酷い目に遭っているからかも。
それでも他の人に弱々しく頼ることもなく、自分の力でなんとかしようとするところがいじらしいというか、たくましいというか。
こんな共感度0の彼女の -
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紙婚式 山本文緒 著
山本さんの購読は初めまして。
寄贈してくださった方の本の一冊です。
描かれているのは、複数組の夫婦の姿です。
いずれも、決して良好な関係ではなく、すれ違いの姿です。
初版は1989年。
そう、バブルが終わる時期です。
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さて、厚生労働者の人口動態統計/平成27年の離婚率は、
1975年 12.7%
1990年 21.8%
2015年 35.6%
です。
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2015年の方が、小説執筆時期よりも、遙かに高い割合です。
紙婚式の小説で描かれている夫婦像は、現代の令和の時代にこそ共通事項が多いのかも、、、と考える機会 -
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筆者の鬱病闘病日記。
読んでいてツラかった。
日記になっているので、彼女の思考がごく自然にナチュラルに身体に入ってくる。
それが読んでいてウツ的思考なのかすら、読んでいる最中はわからない。
けれど、後半になるにつれて前半での思考や行動が鬱症状だったことがわかってくる。
この作品は筆者の目線で書かれているが
夫の目線だとまた全然異なる作品になることだろう。
この作品名が「再婚生活」である事が、筆者からの最大限の愛情表現。
そして最後に
精神科医師は本当にすごい。
人は誰しも変わらない。けれど、楽しみ生きる権利はある。
その可能性を医学の力を使って最大限生かす。
恐ろしくもあり、深い仕 -
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いろんな31歳のファースト・プライオリティー(最優先)
31歳にもなれば結婚してたり、子どもがいたり、
離婚して出戻ったり、恋人がいたり、
遊んでいたり、恋人探しをしていたり、
仕事に明け暮れたり、夢と現実の狭間にいたり…
いろんな境遇があるのにどれも身近にも見える。
今年31歳を迎える私。
ファースト・プライオリティーはなんだろう。
あぁ、昔はこれと言えるものがあった気もする。
31歳、なんにでもなれそうだし、
なんにもなれなさそうな齢。
最優先と言えるものがいちばん揺らぎやすい年齢なのかも。
最後の「小説」はご自身のお話なんだろうか。
一文字一文字から感情が伝わってくる気がして