山本文緒のレビュー一覧
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文庫だと「私のうつ闘病日記」とサブタイトル?がついている。単行本を出したときには、まだ「鬱」という病気に対して吹っ切れていない部分があったそう。まだ距離を取りきれない、引き戻されてしまう怖れを感じていた、ということかもしれない。
ややもすれば深刻になりそうなところを、読み手への気遣いなのか、作家としての気概なのか、ユーモラスにも感じられるような緩やかな筆致。
「王子」目線で読んでいたかもしれない。言語化された鬱屈に、そういうことだったかと、ため息をつきつつ。そしていつかはそれを宥めることができるようになる、こともある、という希望が少し。
書けなくなった日々をはさみつつ、書きたいという意志 -
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様々な事に振り回されながらも生きる人達のお話
メインの視点は、平凡な自分というものと生き方に迷っている女性と、芸人を諦めた男がちゃんとしたところで働けるようにする話
故郷とは違う、海沿いの見知らぬ街で暮らす同郷の夫婦の冬乃と佐々井
そんな中、ここ数年連絡のなかった妹の菫が、住んでいるところがボヤ騒ぎを起こして転がり込んでくる。
菫はすぐに街に馴染み、元スナックを居抜きでカフェをやると言い出し、冬乃も巻き込まれていく。
一方、元お笑い芸人の川崎は、同窓会をきっかけに付き合い始めた彼女のために芸人をやめて働きだし、現在は佐々井の部下。
仕事は暇で佐々井が仕事をサボって釣りをするのに付き合い、冬 -
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ネタバレ
「人に好かれる人間というのは、どこかに隙を持っている。そな隙を無意識に、あるいは故意に人前に晒す事ができるのが好かれる人間だと思う。祖母にはかけらも隙がなかった。」
祖母の人間性を知った時、隙が見せられないのだと思った。
強く、逞しく、卑しく。そして、弱く枯れそうな自分を必死に隠していたのかもしれない。
その姿を見せることができたら、救いの手を差し伸べてもらえたのかもしれない。
祖母が椿に注意をした場面があった。
「あんたのその僻み根性はどう見ても卑しいよ。心の卑しさは顔に現れるんだ」
祖母は椿に自分のようになって欲しくなかったのかなと思った。
祖母のようになりたいと願った椿は、祖母 -
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ネタバレ帯は、
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”家族”をめぐる
三つの物語。
こういう作品を作りたいのだと、
読むたびに思う。
新海 誠
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中学三年のタマコが、老人ホームに入れられそうになる祖父と駆け落ちする「アカペラ」
田舎を飛び出した春一は、父の死をきっかけに20年ぶりに帰郷する。そこで再会を果たしたのは…「ソリチュード」
病弱な弟を献身的に支える志保子。仕事、恋愛、未来の転換期を迎えた時、二人きりの姉弟はどんな選択をするのか「ネロリ」
三篇が収められていますが、
読んだ最初に抱いた感想は、
タイトルの意味でした。
この -
Posted by ブクログ
2003年から2007年にかけて書かれ、月ごとに雑誌に連載された日記スタイルのエッセイ。単行本化は2007(平成19)年、文庫化は2009(平成21)年。
筆者山本文緒さんの当初のつもりでは、最初の離婚から数年、直木賞などを獲得し再婚を果たしたところで、この2番目の結婚生活の模様を描いてゆく予定だったらしい。
が、次第に「うつ」の状態がひどくなっていき、すっかり「うつ日記」になってしまったようだ。
前半ではうつ症状の一つとして胸に激甚な痛みを覚えて救急車を呼んだりもし、やがて入院することになるという展開。もっとも、入院してもノートパソコンを持ち込んで少し仕事などもやっているようで、察す