山本文緒のレビュー一覧

  • 残されたつぶやき

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    五感で捉えることはできない存在になっても、こうやって生き続けていく。教授の本を読んだり、音楽を聴いたりしても、同じことを思う。鴎外を読んでも、バッハを聴いても、本当は同じことを思っていいはずだけど、同時代の存在ではないから、なにか違う。未来のひとは、今の時代の物語をどう読むのかな。

    日常を、言葉にするとこうなるんだなと思い、でも、この日常はつらさのあとに積み上げられたものだったと思う。

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    2023年11月05日
  • 再婚生活 私のうつ闘病日記

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    文庫だと「私のうつ闘病日記」とサブタイトル?がついている。単行本を出したときには、まだ「鬱」という病気に対して吹っ切れていない部分があったそう。まだ距離を取りきれない、引き戻されてしまう怖れを感じていた、ということかもしれない。

    ややもすれば深刻になりそうなところを、読み手への気遣いなのか、作家としての気概なのか、ユーモラスにも感じられるような緩やかな筆致。

    「王子」目線で読んでいたかもしれない。言語化された鬱屈に、そういうことだったかと、ため息をつきつつ。そしていつかはそれを宥めることができるようになる、こともある、という希望が少し。

    書けなくなった日々をはさみつつ、書きたいという意志

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    2023年11月05日
  • なぎさ

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    様々な事に振り回されながらも生きる人達のお話
    メインの視点は、平凡な自分というものと生き方に迷っている女性と、芸人を諦めた男がちゃんとしたところで働けるようにする話


    故郷とは違う、海沿いの見知らぬ街で暮らす同郷の夫婦の冬乃と佐々井
    そんな中、ここ数年連絡のなかった妹の菫が、住んでいるところがボヤ騒ぎを起こして転がり込んでくる。
    菫はすぐに街に馴染み、元スナックを居抜きでカフェをやると言い出し、冬乃も巻き込まれていく。
    一方、元お笑い芸人の川崎は、同窓会をきっかけに付き合い始めた彼女のために芸人をやめて働きだし、現在は佐々井の部下。
    仕事は暇で佐々井が仕事をサボって釣りをするのに付き合い、冬

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    2023年10月23日
  • ブラック・ティー

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    上手いな〜どうして人の心の底にこんなに上手く入っていけるのだろう。
    短編集でどの話も身近にある事だったり似たような気持になった事あるよな〜と。
    でもそこはあまり触れられてほしくないとこなんだけどと思う場所。
    人が今まで犯した事のある軽犯罪にまつわるお話です。
    現実離れしていない誰にでも1つはありそうな軽犯罪の話にドキリとしてしまうかも。
    山本文緒さんらしいちょっとチクリと刺してみたり、暖かかったり、人ってそうだよねって思える小説でした。

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    2023年10月22日
  • みんないってしまう

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    何十年かぶりに再読したが新鮮に読めた。

    解説を書かれた浜野さんのいう様に、
    山本文雄は『ああ、面白かった』だけじゃ決して帰してはくれないのだ。

    結末を読み手に委ねて『あなたにとってはどうすることが本当の幸せですか?』と人生観を問うている。

    やっぱり山本文雄さん好きだなぁ〜と改めて思ったので他の本も読んでみようと思う。

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    2023年10月11日
  • きっと君は泣く

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    ネタバレ

    主人公の椿に対して、もう全然好感もてないまま読み進めていったんだけど、最後にはキレイに抱き締めてあげたくなってた。

    途中から、びっくりするような事が次々出てきて、え?え?って思ってる間に終わってしまった感。でも読後じわじわ来る。

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    2023年09月06日
  • きっと君は泣く

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    ネタバレ


    「人に好かれる人間というのは、どこかに隙を持っている。そな隙を無意識に、あるいは故意に人前に晒す事ができるのが好かれる人間だと思う。祖母にはかけらも隙がなかった。」
    祖母の人間性を知った時、隙が見せられないのだと思った。
    強く、逞しく、卑しく。そして、弱く枯れそうな自分を必死に隠していたのかもしれない。
    その姿を見せることができたら、救いの手を差し伸べてもらえたのかもしれない。

    祖母が椿に注意をした場面があった。
    「あんたのその僻み根性はどう見ても卑しいよ。心の卑しさは顔に現れるんだ」

    祖母は椿に自分のようになって欲しくなかったのかなと思った。


    祖母のようになりたいと願った椿は、祖母

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    2023年09月01日
  • ファースト・プライオリティー

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    ネタバレ

    31歳の31人の31編。
    時代が古いけど(BMWコンパクト!!)今でもわかる気持ちや行動。やることは変わらないのだな。

    社畜が一番好き。レビューを見ても、この話が好きと言っている人を見かけたことがないので、人それぞれだなと感じる。
    「打たれた球を拾うだけ拾う。全部拾っとけば、攻撃しなくてもいつの間にか試合に勝つ。」
    そして全て拾い続ければ、「部長を押し付けられる」
    コネ入社の気弱な女性は周りから嫌味を言われ、日々散々な目にあっている。でも本当の姿は…

    自分のファースト・プライオリティーは何か、考えるきっかけになる。

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    2023年08月10日
  • アカペラ(新潮文庫)

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    ネタバレ

    帯は、
    -------------------------
    ”家族”をめぐる
    三つの物語。

    こういう作品を作りたいのだと、
    読むたびに思う。
    新海 誠
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    中学三年のタマコが、老人ホームに入れられそうになる祖父と駆け落ちする「アカペラ」
    田舎を飛び出した春一は、父の死をきっかけに20年ぶりに帰郷する。そこで再会を果たしたのは…「ソリチュード」
    病弱な弟を献身的に支える志保子。仕事、恋愛、未来の転換期を迎えた時、二人きりの姉弟はどんな選択をするのか「ネロリ」

    三篇が収められていますが、
    読んだ最初に抱いた感想は、
    タイトルの意味でした。

    この

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    2023年08月05日
  • 再婚生活 私のうつ闘病日記

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     2003年から2007年にかけて書かれ、月ごとに雑誌に連載された日記スタイルのエッセイ。単行本化は2007(平成19)年、文庫化は2009(平成21)年。
     筆者山本文緒さんの当初のつもりでは、最初の離婚から数年、直木賞などを獲得し再婚を果たしたところで、この2番目の結婚生活の模様を描いてゆく予定だったらしい。
     が、次第に「うつ」の状態がひどくなっていき、すっかり「うつ日記」になってしまったようだ。
     前半ではうつ症状の一つとして胸に激甚な痛みを覚えて救急車を呼んだりもし、やがて入院することになるという展開。もっとも、入院してもノートパソコンを持ち込んで少し仕事などもやっているようで、察す

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    2023年07月31日
  • みんないってしまう

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    ネタバレ

     山本文緒「みんないってしまう」、1997.1刊行、1999.6文庫。喪失をテーマにした12の短編集。結末は読み手に委ねられています。切り口がユニークで、結構楽しめました。私のお気に入りは、「愛はお財布の中」と「イバラ咲くおしゃれ道」です。

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    2023年07月28日
  • あなたには帰る家がある

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    各登場人物の目線で描かれた感情、考え方に賛同できる反面、自身の固定概念からどうしてその考え方になってしまうの?という歯痒さを感じた。

    一方的な考えを押し付け満足させた気にさせるだけではなく相手の気持ちに耳を傾けることが必要だと思った。

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    2023年07月25日
  • ファースト・プライオリティー

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    今の自分にとっての最優先事項はあるけれど
    時間が過ぎてそれが変わっていくのかどうか、少し楽しみでもありながら変わってしまうことが少し怖くもなりました。
    大切なものを間違えない人になりたいです。

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    2023年07月18日
  • なぎさ

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    横須賀市久里浜を舞台に、各人が交ざり会いながら、自身の悩みと『共存』していく様が描かれている。
    登場人物の中で、私は菫に感情移入してしまった。私も退職する際に、上司からは冷淡だと非難された。菫さん、分かる気がします。
    久里浜に居住した経験があるが、とても忠実に街のことが描写されている。

    本作の唯一の難点は、章ごとに視点が行ったり来たり切り替わる点。今誰の視点か迷子になってしまうことはあった。

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    2023年07月15日
  • パイナップルの彼方

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    山本文緒さんの作品は自転しながら公転するを読んで大ファンになった
    その後、短編集、エッセーなど様々詠んだ。どれも面白いし、人物描写が素晴らしく、その人の動作や表情が映像のように浮かぶ
    パイナップルの彼方も自転しながら公転するにどこかティストは似ていて
    色々あったけど、最後は明るい気持ちで読み終える作品

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    2023年07月04日
  • パイナップルの彼方

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    不安定な20代女性を見事に表現している。いいことにもわるいことにも、とにかく神経すり減らしていた時代が懐かしい

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    2023年06月22日
  • 残されたつぶやき

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    まだまだ書きたいこと、やりたいこと、たくさんあったと思うし、文章にも見受けられる。私も同世代…なるべく悔いなく生きていきたい。

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    2023年06月03日
  • シュガーレス・ラヴ

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    大好きな山本文緒さんの本。
    女性が主役の短編小説です。
    みな我慢したすえに体調を崩しています。
    相変わらず女性の嫌な部分を描くのがとても上手です。
    でも共感出来る部分もきちんと描かれています。
    手を差し伸べたくなるような気持ちになります。
    みな生きていくのに必死です。

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    2023年05月30日
  • パイナップルの彼方

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    ネタバレ

     長い前奏に続く懐メロを聴いているような感じでした。鈴木深文と天堂義明の「おさまり」に納得です。山本文緒「パイナップルの彼方」、1995.12発行。4日かけて味わいましたw。

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    2023年05月19日
  • 落花流水

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    ネタバレ

     祖母律子84歳、母中村手毬67歳、娘姫乃39歳ら家族それぞれ別々の人生を描いた作品。夫や同居者などを整理しながら読まないと人間関係がわからなくなるおそれがあります。手毬がアルツハイマーで入院したことで、この3人が初めて顔を合わすことに。山本文緒「落花流水」、1999.10刊行、2015.1文庫。

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    2023年05月15日