山本文緒のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
厚い蜜を纏った大学芋はカリカリと音を立ててかじると甘い香ばしさが味覚・嗅覚へ一度に幸福をもたらす。これとスプーンに力を込めて山盛りにすくい上げたアイスとをにいっぺんに口に放り込む。至福のひとときである。至福を底上げしてくれるのはバニラ風味のアイスだ。他にも色んな相手と仲が良い。メロンソーダ、万国の嗜好であるコーヒー、米国出身のコーラ、和の至極パートナー黒蜜きな粉。ただ、それは味わう側の第三者の印象。バニラ本人は決して嬉しくないのかもしれない。ベタベタした炭酸水風呂に熱すぎる焦香ばしい温泉、水たまりにハマった直後に砂場に転倒したり、踏んだり蹴ったりなのかもしれない。
多様な相手に合わせられる -
Posted by ブクログ
ネタバレホラーって、別に心霊現象とかスプラッター映画だけでは無いよな、と思う。
今生きている現実を生き抜くことの方が、先が見えない不安のほうが、よほど恐怖に感じる事もあるだろうし。。
自分が二人いて、残りの一人に嫌なことをやらせようとしてもやりたがらずに喧嘩になる、という少年漫画もあるけれど、本作でも、個々の人間として生きればそうだよなぁ。
。と
(藤崎竜氏の短編で影が入れ替わる読み切り作品はむしろ異彩を放っているというか。。)
読み始めた最初はないものねだりというか、隣の芝生は青く見える、そういった結末になるかと思ったが
そんな簡単な話では無かった。。
解説柚木麻子氏の文章が興味深い。
一見わ -
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Posted by ブクログ
ネタバレ作者最後の短編集。
やはりこの人は等身大の女性の描き方が恐ろしく上手い。特別な人間でもなく、清廉でも崇高でもなく、本当にどこにでもいそうな女性の内面をわかりやすく言葉にする。読む人によっては辛い追体験になりそうなほどに。
いろいろなものを捨てて軽くなるというのは分かる気がする。捨てるまでは特別なものと思い込んでいたのに。そういうことは人生の転換期であるよなあ。
物語としては「わたしは大丈夫」が好き。「20×20」は作者自身が割と入っている?そして短編集のラスト「子供おばさん」。
「何も成し遂げた実感もないまま、何もかも中途半端なまま、大人になりきれず、幼稚さと自分勝手さが抜けることのな -
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Posted by ブクログ
テーマは崩れた家族
母親と娘の確執
1995年の作品なのでこの類の小説としては
早い作品なのではと思う
母親の支配は厳しく 娘の精神は脆い
時折 回想する告解が入り
山本さんの作品としては珍しいのでは
ミステリアスなストーリー展開
2002年映画化
大学生の健全そうな男子は バイト先のスーパーの客である美しい女性に恋をする
彼女は心身共に繊細
大学を中退し節約して家事をこなす彼女は
母親と妹と坂の上の戸建てに住む
教師である厳格な母親
奔放な妹
三人の関係を読むほど 家庭の異常さをみる
支配する母親も従属する娘も気持ち悪いのに
この家庭やこの男子にもっと秘密があるようで
最後まで見届けてし