山本文緒のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
読む勇気がなくしばらく置いていたが、気持ちが落ち着いた時にページを開き一気読み。
ガンを告知されてから最期の瞬間まで、自分が著者のそばで見守り共に生きてきたよう。身内のような大切な人を亡くしてしまった喪失感でいっぱいになり、とても悲しい。彼女のいなくなった無人島の周りを、流木につかまり漂流しているかのよう…。
線香花火のように、火花が大きく小さくなりながらも美しく燃え続け、最期まで作家として生きた彼女の生涯。普通の闘病記とは違い、人間の最期に至るまでの心のありようがありのままに綴られていた。書くことは物凄く力量がいり大変なことだが、著者の書いていたい、書かずにはいられない気持ちが伝わってき -
Posted by ブクログ
「できればもう一度、自分の本が出版されるのが見たい」
山本さんほど多くの作品を発表している方がそう思われるのか、と思った。想像でしかないけれど、やはり作家さんにとって自分の本が出版されるのは特別なことでありその一冊一冊の経験が宝物なのだろうな。
それは矜持というより、性(さが)なのかもしれない。
読み始めてすぐ、旦那様がとても素敵な方で山本さんと仲が良いことが伝わる。だからなんでこの二人を引き離すのか、とつらくなった。
お二人が笑い合う写真が泣ける。
命の期限が見えてきた時、人はどういう精神状態になるのか。
たまに、自らの時間が残り少ないことをまるっと受け容れて達観する登場人物が小説な -
Posted by ブクログ
山本文緒の初期・中期の作品を、まだ私は読んでいない。
あの頃は、なんか江國香織も山本文緒も〈「ザ・恋愛小説」を書く作家です!〉みたいなイメージの売られ方だったから。
(そういえば村上春樹さえも、『ノルウェイの森』とかそんな売られ方、されちゃってましたね)
だから晩年の秀作『自転しながら好転する』を読んで、初めて〈山本文緒体験〉をして、心の機微を描き出す筆致と、伏線を上手に張るプロットの巧みさに感服した。そこには地方のショッピングモールエリアで生きる人々の、妙にせせこましい日常体験が具現化されていた。日常を日常的に描ける作家は、地味にすごい。衝撃だった。
『ばにらさま』は2008年から20 -
Posted by ブクログ
面白いなあ。
山本文緒さんの小説ほんとに好きだ〜、長編しか読んだこと無かったけど短編も面白い!!
特にバヨリン心中と子供おばさんが好きだった。
なんでこんなにこの人の作品に惹かれるんだろう?っていうのを言語化出来てなかったけど、
最後の三宅香帆さんの解説を読んでスッキリ。
普通の小説は生活を排除する(例えば桃太郎がどんな服を着ているか誰も知らない)けど、山本文緒さんは半径5m以内の出来事を面白く描写するのが上手い、と。言い得て妙だ。
フィクションの非日常な展開ももちろん好きだけど、生活こそ我々の普段見ている世界だから。
日常のささいな見落としてしまいがちなシーンを面白く切り取る天才なんだと -
Posted by ブクログ
買ったままなかなか手を付けられず、後回しにしていた本書。
ようやく手に取ったが、最初のページをめくった時から涙があふれ、鼻をすすりながら読み進めた。
あさイチで久しぶりにお姿を拝見し、軽井沢のお住まいはとても素敵で、お幸せそうだったのが印象に残っている。
癌が発覚したのがその4ヶ月後。半年後、逝去。
短い。あっという間ではないか。
だが、このあっという間の出来事を日々綴り、本にしたことに驚き、改めて、根っからの作家なんだと感服。
何度か綴られていた「うまく死ねますように」という言葉が辛い。
「死にたくない」という気持ちと現実との葛藤があったことは想像に難くない。
月単位で考えていたことが、 -
Posted by ブクログ
ネタバレ最近読んだ中では、かなり衝撃的に感情を動かされた1冊となった。恐らく昨年何かのネットニュースで山本文緒さんのことを扱った記事を読んでいたから、書店で手に取った時にはピンときていた。読み始めて、ところどころ涙がぽたぽたとこぼれてしまう部分もあった。だけれど、解説に角田光代さんが書かれているように、私たちはこの本を読むことで人生が終わりに向かっていく感情を追体験することになるのだ。私自身は、6年ほど前にサイレント癌で50代でなくなった叔母のことを思い返しながら読んでいた。山本文緒さんご自身も、亡くなられる数年前から、身近な編集者やお父様を失くしていて、死というものはそれなりに近くに感じていたはずだ
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大好き!
山本文緒さんの作品大好きです。日常と小説の世界が見事に一体化していてぐいぐい引き込まれます。短編ですがどれも面白いし、ハッとさせられます。もっともっと作品を世の中に出して欲しかったです。もっと読みたかったです。
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Posted by ブクログ
人生の中で自分が選ばなかった方の選択を美化して現状を悔いる事は誰にでもある事で、でもこの本を読んで「足るを知る」だなぁと。
序盤は双子のような、自分と全く同じ人間と偶然出会い、互いの事が手に取るようにわかる2人が羨ましくて「私にも、もう1人の私が存在したらなぁ」と思ったりしながら読み進めていたのですが、どんどんと不穏な雰囲気になってくのがある意味ホラー小説よりも怖かったです。
全体的にどちらの蒼子にも共感できる部分が多く、中でも「余るほどの自由があれば心の拠り所がほしくなり、強く愛されればそれは束縛に感じる」という蒼子Bの思いが共感せずにはいられませんでした。