山本文緒のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
あらすじや表紙絵から、逆境を乗り越えて成長していくヒロインの生涯、のような朝ドラ的さわやかものを想像していたら全然違った。
いや、主人公・手毬の60年を描くと言う意味では合っているのだけど、そこはさすが山本文緒さんの小説。複雑にもつれ変わり続ける家族関係は、朝ドラよりも昼ドラに近くて、でもただドロドロしているだけじゃなくて、私はここに「人生」を感じた。
手毬とそのまわりの人物たちが互いに翻弄され影響し合う、愛というややこしいものの因縁や、血は争えないという事実の途方もなさに、時に泣き、時に笑いながら、壮大な気持ちで読み終えた。
最近は親ガチャなんてワードがあるけれど、どこでどう生まれ育ったとして、運命がどうだとして、でも人生は自分のものなんだ。
私たちはとにかくこの人生で最後まで生きていくのだから。
山本文緒さんの小説に出会えたことは、私にとってなによりの僥倖です。
らっか-りゅうすい【落花流水】
落ちた花が水に従って流れる意で、ゆく春の景色。転じて、物事の衰えゆくことのたとえ。時がむなしく過ぎ去るたとえ。別離のたとえ。また、男女の気持ちが互いに通じ合い、相思相愛の状態にあること。散る花は流水に乗って流れ去りたいと思い、流れ去る水は落花を乗せて流れたいと思う心情を、それぞれ男と女に移し変えて生まれた語。 -
Posted by ブクログ
ネタバレお笑い好きだし読んでみよーって軽い気持ちで読み始めたらものすごい心に響いちゃって何回も泣けるところがあってめちゃくちゃ好きな本に出会ってしまった!。(疲れてんのかな…笑)
特に無関心に見えた小春のお父さんが実は愛に満ち溢れていて獅子のように力強い人だと気づいたところは泣けた。そしてラストの漫才シーンは胸熱。多くの人に認められて、くみの厳しい親父も素直ではないけど小春たちの漫才を認めてくれて本当に良かったし、何よりも小春が父とよく行っていた寄席にスカウトされてそこで漫才できることになり、そこにお父さんをさらっと招待するという完璧な流れ。最高だった〜。これからも頑張れ大春小春。
人生いろいろあるけど、やっぱり夢を追って努力し続けることが大事。ほんとつらいこといっぱいだし夢だったはずの今の仕事が小春とウメほど本気になれることなのかわかんなくなっちゃってるけど。
それでも夢を叶えることができるからこそ人生だ。 -
Posted by ブクログ
結婚生活における男女の心の葛藤を描いた八編の短編集。僕にとっては二冊目の山本文緒作品読書となりました。
この本の感想を書く前に、白状しておきます。僕のファースト山本文緒作品は「パイナップルの彼方」。
林真理子の小説に寄稿されていた著者の解説に接したのが切っ掛けでした。読んだ直後は、自分の感情を言葉に出来なかったのですが、今は出来ます。不愉快でした(笑)。
当時記した「パイナップルの彼方」の読書日記を読み返すと、苦し紛れです(汗)説教してるし(俺)。ハードボイルドとか書いているし……。
ハードボイルドは「固ゆで(卵)」。中身が見えません。外面描写に徹した小説の手法です。
「パイナップルの彼方」
は、心理描写盛りだくさんで、主人公が自分の感情をよく語ります。もちろん、ハードボイルドではありません。
が、しかし。一人称で書かれたこの小説は、主人公の主観に徹していて、著者の、主人公の言動に対する、評価が一切排除されています。友達の結婚や、転職に対する主人公の感情は描かれているのですけれども、著者がどのように考えているかは全く解りません。これがハードボイルド・テイスト(?)を醸し出しているのかも。と思うに至り、他の小説も読みたくなりました。
最新の文庫「紙婚式」は結婚生活における男女の心の葛藤を描いた八編の短編小説集でした。全て主人公の一人称で語られる物語です。各編のタイトルと「一人称」と性別を記してみます。
1. 土下座「僕」男
2. 子宝「私」女
3. おしどり「私」女
4. 貞淑「俺」男
5. ますお「私」女
6. バツイチ「僕」男
7. 秋茄子「私」女
8. 紙婚式「私」女
やはり著者の評価なり、感想なりが一切排除されつつ語られる感情の葛藤は、一種サイコ・ホラー。
怖いあまりに、他人事として「夫婦喧嘩は犬も食わねぇ」と一蹴にしてしまいたくなる気分がなきにしもあらず、でした。
それは、他人には解らない男と女の閉じられた空間であり、人に話したところで、愚痴と受け取られ
「聴いてあげているのよ。」
という顔をされるの落ちになる物語であり、人から聴かされても頷くことしか出来ないのが目に見えている物語です。
ですが、そういう物語であるからこそ、本人にとってはせっぱ詰まった問題であり、語られる事を望まれている物語だと思うのが僕の感想でした。
その後の二人を知りたい欲望が満たされないまま、各々の物語は終わってしまうので、その後の物語は自分で想像するしかありません。
「どうなるのだろう。」
この想像は、自分のケーススタディーとなって、読者自身の物語に引き継がれます。 -
Posted by ブクログ
これぞ私が好きな山本文緒さん!という小説だった。下手なホラーよりホラーだ。
長い坂を登った丘の上の一軒家に住むさとる。他人とうまく付き合えず、家事手伝いと称して、実家で母親、妹とともに生活している。
彼氏の鉄男は、さとると交際を続ける中で母親や妹とも関わりを深めていくうちに、その家族に潜む底知れない憎悪とさとるが纏う戦慄の背景を目の当たりにしてゆく……。
怖い。怖すぎる。家族を支配するのは、ヒステリックで冷酷な母親。さとるには、24歳にもなって22時の門限があり、それを守れなければ容赦なく打たれる。母親の意にそぐわないことをすると、幼い頃から妹のみつるとそうやって虐待され続けてきたのだ。
しかしそれを家族の愛だと信じて疑わず、反抗しようとも家を出ようともしないさとるに、鉄男は徐々に不信感を募らせていく。と同時に、冷酷な母親の不思議な魅力に取り込まれていってしまう。「えー?!?!」という展開。怖い。
章ごとに挟まれていた誰かのカウンセリングの真実が分かったあとからは転がり落ちるようなスピード感。怖い。
こういう風に育てるとこういう子になって家族はこうなってしまうんだなという見本のような恐ろしいストーリーでした。
愛に飢えるさとるが不憫で可哀想でならなかった。鉄男はチャラチャラして流されやすいところもあるけれど、優しくて情緒が安定しててさとるは彼に出会えて本当に良かったねと思う。