【感想・ネタバレ】恋愛中毒のレビュー

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2024年02月18日

「他人を愛するぐらいなら、自分自身を愛するように。」
よく引用されているこのフレーズが出てきた時はまだ、こんな展開になるとは想像していなかった…!
水無月は過去の恋愛を引きずって苦しむ、自己主張が控えめで地味な女性。
未練たらしくなってしまったり、ちょっと重くなってしまったりすることはあるよね〜なん...続きを読むて。物語の始まりが彼女の同僚視点だったこともあり、すっかり騙されていた。
創路をはじめ何から何まで対局にいるような人たちに囲まれ、水無月が可哀想に思えていたのに、最後の最後で狂気的なストーカー歴を知ってからは、彼女に出会ってしまった人物たちが不憫で仕方なくなった。笑
けれど水無月自身は「人を愛しすぎてしまう」と表現する。歪みに歪んだ、病的な愛の形ということなのか…。

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Posted by ブクログ 2024年01月27日

何故、この本はなぜこうも易々と自分の今までの読書体験を凌駕してくるんすかね。

タイトルに釣られて、網に引っかかった獲物を八つ裂きにするような展開。

何より、主人公に対して気持ちが悪く感情移入できない。

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Posted by ブクログ 2023年12月13日

ただただ一言。おもしろい。一気読みでした。
解説にもあったが、始まりから終わりまでの構成が完璧で読後の満足感が高い。

起きた事件はホラーだが、どうかもう他人を愛し過ぎないようにと祈る彼女に同情するのだ。もっと要領よく生きればいいのに、、バカだなぁと思う反面彼女にピュアさを感じたりもする。

あとが...続きを読むきに「原始的とも言える愛し方で、主人公は男を愛していく。どうしようもないほど愚かであるが、愚かさゆえに純粋で真摯である。それがお利口になった現代の女たちの心をうったのだ。」とあった。
強さやプライド、理性などを取り除いた女性の本質的な姿なのかもしれないと感じた。

山本文緒さんは、自転しながら公転する以来。こちらが代表作なのかな?他も読んでみたくなりました。

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Posted by ブクログ 2023年11月26日

恋愛が下手な主人公かと思いきや、、、な話。
主人公は過去の失敗から他人を愛しすぎないようにと誓ったのにも関わらず、同じことを繰り返してしまう。先が気になってページを捲る手が止まらない。

恋をすると、自分が見えなくなってしまう。自分自身を他人に預けすぎてしまう。私に思い当たる節がありすぎて、一歩間違...続きを読むえたら主人公のようになっていたかもしれない…と思うととても怖くなった。
人は1人では生きていけない、愛無しでは生きていけない。けど、のめり込みすぎてこうならないように気をつけなさい、とこの本が教えてくれているような気がした。

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Posted by ブクログ 2023年11月15日

山本文緒さんの作品に惹かれて3作目。
解説にもあったけど、構成がすごくて冒頭に出てくる井口が主人公かと思いきや、事務の水無月さんが主人公。
出だしにも終わりにも恋愛は陳腐、と書いてあって、客観的に見るとそうだけど自分のこととなると一つの恋愛を人生レベルで考えてしまうこともある、、水無月さんは行き過ぎ...続きを読むた例だけど何となく気持ちがわかる部分もあってはあすごいと思った。

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Posted by ブクログ 2023年10月31日

恋愛で自分を失うことがいかに愚かであるか、しかし陶酔している本人は何にも代えがたい快感を得ていること、そういう「恋愛中毒」のありさまを主観と客観の両方で味わえる作品。

昼ドラ的なドロドロな内容ではあるが、性的な描写は少なく淡白な印象なので、愛憎渦巻く訳ありな男女の関係を神の視点で達観しているような...続きを読む感覚で序盤は読み進めていた。

しかし、後半になるにつれて主人公水無月に無意識に感情移入している自分がいて、私の中にも「水無月がいた」ことに気づかされる。かつてまさに恋人に依存し、感情と行動の暴走がどうにもならなくなっていた自分と重なる部分があり、読んでいて胸が苦しくなった。

クールで内向的な性格の内側に激しさや異常性を孕んだ水無月と、自分勝手なのにとてつもなく女性を惹きつける創路の屈折した愛の形から、我々は恋愛における「依存」を知ることになる。

満たされない心を相手の存在のみで埋め合わせようとすることで、相手への依存が強固になる。上手に自分を甘やかしてくれて、都合のいい相手に限って「好き」以外の多くの理由で追いかけてしまう。それは優越感であったり背徳感であったり、一瞬で過ぎ去る甘美な時間だったり。水無月は、そういう理由で創路に依存する典型的なダメ女で見ていて痛々しかったが、自分にも覚えがあるゆえに共感もしてしまった。

過去に自分を見失うほどの激しい恋愛を経験した人にはグサリ刺さる作品である。少なくとも私は、かつての自分の愚かさを痛感する一方で、むき出しの感情と欲望で満ちていた当時の恋愛を許されるならばもう一度体験したい気持ちになってしまっている。これが恋愛中毒の恐ろしさだ。

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Posted by ブクログ 2023年10月08日

水無月が今の私を見ているようで辛かった。ついこの間切られた私に凄い刺さって、最後の方は何度も読みながら泣いてしまった。

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Posted by ブクログ 2023年09月30日

とっても面白かったです
1人の人を愛すること、複数の人を愛すること、その両極端が描かれていて、どちらがいいのかわからなくなりました。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2023年07月12日

水無月さんのした事は、事実を客観的に見るととても共感できないし、引いてしまうのだけど、最初から読んでいくと、私も気持ちが分かると思ってしまった。もちろん行動には移さないけど、同じ気持ちにはなる。
自分にもそんな一面があるんだと自覚して少しゾッとした。確かに100%で恋愛してしまって、逃げ道なんて作れ...続きを読むないから、失恋は相当なダメージになる。
被害者ぶらない、あと他人を愛しすぎないように、私も心に留めておこうと思った。

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購入済み

2019年03月15日

けして感情移入できないのに夢中で読み進めてしまった。ただただ圧倒される。

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購入済み

久々に再読

匿名 2016年10月20日

眠れない夜に久々に再読してみたら明け方までかけて一気に読んでしまった。
何もなかったかのようにリセットされて戻ってくる男、そして距離を置いているつもりでもやんわりと依存していく女、何処かで見たことある。
他人を愛すよりまず自分。愛しすぎないように、かなり本質をついているとおもう

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Posted by ブクログ 2024年04月08日

想像していたいわゆる"恋愛小説"と違って狂気で面白かった。
面白くて400ページ超えなのに二日で一気に読んだ。
構成の工夫も面白い。これは作家さんの腕だと思う。
以下、印象に残った一文。(かなり序盤で出てくるもの)

どうか、神様。
いや、神様なんかにお願いするのはやめよう。
...続きを読むうか、どうか、私。
これから先の人生、他人を愛しすぎないように。
愛しすぎて、相手も自分もがんじがらめにしないように。
私は好きな人の手を強く握りすぎる。相手が痛がっていることにすら気がつかない。だからもう二度と誰の手も握らないように。
諦めると決めたことを、ちゃんときれいに諦めるように。二度と会わないと決めた人とは、本当に二度と会わないでいるように。
私が私を裏切ることがないように。他人を愛するぐらいなら、自分自身を愛するように。

この後自分との約束を何度も破る水無月さんは見ていて痛々しいけれど、自分に重なるところもあって苦しかった。

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Posted by ブクログ 2024年03月28日

恋愛小説と推理小説のいいとこ取りをした1冊(紛れもない恋愛小説なのだけど、物語の展開や本心の散りばめ方に推理小説を想起…!)。
恋愛なんて、どのエンタメでもこねくり返されているテーマなのに、新しさを感じさせてもらった。

・無理やりガムテープのようなものを引き剥がされたような激しい痛みが走った。

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Posted by ブクログ 2024年03月09日

あなたは、『中毒』でしょうか?

いやいやいや。いきなり『「中毒」でしょうか?』と訊かれて、はい、そうです!と答える人はいませんよね。そもそも『中毒』とはこんな風に定義されてもいる言葉です。

 “毒性を持つ物質が許容量を超えて体内に取り込まれることにより、生体の正常な機能が阻害されること”

...続きを読む定義そのままに症状が現れるものとしては一酸化炭素中毒、薬物中毒、そして食中毒などが思い浮かびます。一方でその本来的な意味の先に何かに強く依存する症状を『中毒』という言葉で表す場合もあります。ニコチン中毒、アルコール中毒、そしてネット中毒という言葉などでしょうか。いずれもマイナス感情の先にある表現ばかりです。『中毒』という言葉にプラスの意味を探す方が難しいのだと思います。

さてここに、「恋愛中毒」という、プラス感情の最右翼である『恋愛』という言葉にマイナス感情の最右翼とも言える『中毒』という言葉を組み合わせた摩訶不思議な書名が付けられた作品があります。スピード感のある展開にぐいぐい読ませるこの作品。主人公の心の内に読者もどんどん引き込まれていくこの作品。そしてそれは、表紙に描かれた女性の印象が読後にホラーに転じる狂気な物語です。

『目の前にいるのは、創路(いつじ)功二郎だ』と思いつつ『短く刈り込んで金色に染めた髪』の男性に『お決まりですか?』と声をかけたのは主人公の水無月美雨。『う〜んと低く唸る』創路が『お勧めってある?』と訊くのに対して、『唐揚げかトンカツ弁当ならすぐできますけど』と返すも『揚げ物っていうのは、どうも胃がなあ』と言われ、『カルビ弁当はどうですか?』と言うと『焼肉は昨日食ったから』…となかなか決まらない中、『炒飯と餃子っていうのはどうですか?』という提案に『それ、いいね』とすらりと言う創路。『おねえさん、可愛いね』と言われ『まともに目と目が合ってしま』い、『うわっと内心怯んだ』水無月でしたが、『何も言わずに少し笑』い、出来上がった弁当を渡すと『にっこり笑い「ありがとう」』と言われ『耳まで真っ赤になっ』てしまいます。そして、『アルバイトを終えて部屋に戻』ると、『編集者の荻原』から『明日の打合せの時間を一時間遅らせてほしい』というファックスが届いていました。受話器を手にした水無月はデスクに電話し『時間は平気』ということをまず伝えると『今日、創路功二郎がバイト先に来たんだ。びっくりしちゃって誰かに言いたくて』と話します。『私ファンだから、どうしようかと思っちゃったよ』と続ける水無月に『何だそれ』と呆れる荻原。用事がある荻原に早々に電話を置いた水無月は本棚から『創路功二郎の著作を何冊か取り出し』ます。『元々テレビの構成作家だった』創路は『独特の雰囲気とがたいの良さが買われてテレビに出はじめ』、『クイズ番組から映画の端役まで』何でもやる一方で、『コラムやエッセイ』、そして『数年前からは小説も書きはじめて』います。高校生の時、『田舎の一番大きい書店で彼のサイン会』があり『親に黙ってこっそりとサインをもらいに行った』という水無月。翌日、荻原との約束で都心へと出た水無月は、『いつもじゃなくてたまになんだから、遠慮しないで沢山飲んで食べてよ』と荻原に勧められます。『私は駆け出しの翻訳家』という水無月は『今のところ私に仕事をくれる出版社の人間は荻原だけだ』という今を思います。『彼は大学の時の同級生で、実力もコネもない私にこうして時々仕事をくれるのだ』と思う水無月。そんな水無月に『そういえば創路先生の家って、植物園のそばらしいよ』と情報をくれます。『じゃあまたお弁当買いに来るかもね』と返す水無月に『水無月、狙ってるわけ?』と訊く荻原。それに『黙ってしまった』水無月を見て『創路先生って根は悪い人じゃないと思うけど、あんまりいい噂は聞かないから気をつけた方がいいよ』とアドバイスする荻原。そして、再び店に現れた創路に『腹も減ったし、可愛い女の子がいた弁当屋に行こうって思い立ったんだ』と言われ『言葉を失ってうつむ』く水無月。それから数日後、『バイトは休み』という日に、『散歩がてらの行き先』として創路の家があるという『高級住宅街』へと向かう水無月は、『弁当屋の女の子じゃない?』、『この辺に住んでるの?』と『輸入住宅』のような外観のベランダから創路に声をかけられます。『入っておいで。玄関空いてるから』と言われる水無月。そんな創路との出会いから水無月の人生が大きく変化していく物語が描かれていきます。

“他人を愛するぐらいなら、自分自身を愛するように。哀しい祈りを貫きとおそうとする水無月。彼女の堅く閉ざされた心に、小説家創路は強引に踏み込んできた。人を愛することがなければこれほど苦しむ事もなかったのに”と悩ましい雰囲気漂う内容紹介に読むタイミングを選ぶ必要性を感じさせるこの作品。1999年に吉川英治文学新人賞を受賞した作品であり、2021年10月に亡くなられた山本史緒さんの代表作に位置付けられる作品です。また、この作品は薬師丸ひろ子さん、鹿賀丈史さん主演で2000年にTVドラマ化もされています。

文庫本415ページとそれなりの分量で書き下ろされたこの作品の読みどころは三つあると思います。それを見ていきたいと思います。

まず一つ目は鮮やかな視点の切替です。物語は、〈introduction〉から始まりますが、その冒頭にはこんな一文が置かれています。

 『恋は人を壊す。僕は転職を機に、そのことを肝に銘じた』。

『僕』とあるようにこの作品は『社員五人と事務の水無月さんでやっている小さな会社』という『編集プロダクション』に転職してきて三ヶ月という二十五歳の井口視点で始まります。『恋は人を壊す』という強い言葉を胸にしている井口ですがこれは井口だけでなくこの作品「恋愛中毒」自体のメインテーマとしても響いてきます。しかし、それ以上に読者は井口の物語として作品世界に入っていきます。そこに地味だけれども大きな存在感を放つのが水無月という『製造年不詳、とっくに販売中止のパソコンみたいな事務員』の存在です。『社長とできてるらしいって噂、聞いたことがあるわよ』といった噂を耳にしていく井口は、水無月のことが気になっていきます。そんな中に核心に迫る噂を聞く井口。

 『全部の単行本の印税の五パーセントがあのおばさんに入ってるんだ』。

そして、水無月と二人で会話する時間を得た井口はさまざまな疑問をぶつけます。そこに鮮やかな視点の移動が行われます。本来の主人公である水無月が表に登場する瞬間。物語は上記で取り上げた『目の前にいるのは、創路功二郎だ』と、弁当屋でバイトをしていた時代の水無月の物語へと一気に切り替わり本編がスタートします。山本さんは本屋大賞ノミネート作でもある「自転しながら公転する」でも〈プロローグ〉と本編の絶妙な視点の切り替えで読者を魅せてくださいましたが、この「恋愛中毒」の構成も是非その絶妙さを味わっていただければと思います。

次に二つ目は、これまた「自転しながら公転する」同様に結末へ向けたどんでん返しな展開です。「自転しながら公転する」ではテクニック的に物語を締めにかかる山本さんの上手さを感じましたがこの作品では読者が絶対に予想できない衝撃的な裏事情が後半になって突如語られていきます。後半40ページほどに『その顚末に夫も両親も友人も、私を知る人すべてが驚いていた』という先に突然なまでに展開する物語。これ以上の詳細はネタバレ直結なので触れることは避けたいと思いますが、物語を読み進めていく中でどこか引っ掛かりを感じる内容の核心、物語に隠されていた真実がここにあったのか!という水無月に隠されたまさかの秘密が露わになる衝撃的な物語が描かれていきます。そして、水無月という人物の見え方が〈introduction〉、本編中盤まで、そして本編後半と三つの段階それぞれに大きく変化していきます。同じ一冊の本の中で同じ人物の印象をここまで変化させる凄さ、これから読まれる方には水無月美雨という主人公に兎にも角にも注目してお読みいただければと思います。また、一度読んだ後も水無月に着目しての再読をしたくなる、そのような作品でもあると思いました。

そして、三つ目は書名にもある通り「恋愛中毒」という言葉の意味するところだと思います。この作品には複数の登場人物が上記した水無月の印象の変化の中に登場します。その中で落とせない三人の人物をご紹介しましょう。TVドラマでの配役も記しますが、絶妙なキャスティングだと思います。

 ・水無月美雨: 主人公、『駆け出しの翻訳家』、弁当屋でアルバイトをする中に、創路と知り合い、彼の事務所の社員としてドライバー兼秘書を務めることになる。大学時代の同級生・藤谷と結婚するも離婚した今を生きる。
  → 薬師丸ひろ子さん

 ・創路功二郎: テレビの構成作家出身でタレントとして活躍。小説も執筆。『沢山の羊ちゃん』がいる。
  → 鹿賀丈史さん

 ・荻原映一: 水無月、藤谷とは大学の同級生。〈introduction〉では『編集プロダクション』の社長に就いている。
  → 岡本健一さん

主人公・水無月に関係する複数の男たち、その中でも『当時まだ高校生だった私は彼が出ているテレビは欠かさず見るほどファンだった』というタレントの創路功二郎と、水無月の大学時代の同級生であり、〈introduction〉で彼女が務める『編集プロダクション』の社長でもある荻原の二人は全編に渡って登場するのみならず水無月の人生に大きな影響を与えていきます。そんな水無月は「恋愛中毒」という書名に象徴される通り『恋愛』に恐ろしいほどに情熱を注ぐ人生を生きています。そして、そのことによって生じるさまざまな苦悩とその結果が物語を動かしていきます。とは言えこのようなありきたりの説明ではピンとくる方は少ないと思います。「恋愛中毒」という書名が伊達ではないことを知るために水無月が〈introduction〉で語る次の言葉を引用しておきたいと思います。

 『どうか、神様。いや、神様なんかにお願いするのはやめよう。
  どうか、どうか、私。これから先の人生、他人を愛しすぎないように
  愛しすぎて、相手も自分もがんじがらめにしないように。
   ︙
  私が私を裏切ることがないように。他人を愛するぐらいなら、自分自身を愛するように』。

実は『︙』で省略した箇所にはさらに具体性を帯びた『…ように』も記載されていますが、まさしくこの祈りにも似た言葉の先に水無月の心からの叫びを見ることができます。

物語は、〈introduction〉に引き続いて水無月の過去が描かれていきます。『離婚した時、父親の知り合いが紹介してくれた』という弁当屋で『週に五日アルバイトをしている』水無月は一方で『駆け出しの翻訳家』でもあります。そんな翻訳の『仕事をくれる出版社の人間』が荻原という関係性です。翻訳だけでは生活できずにアルバイトを掛け持ちするという日常。そんな日常に、運命の人でもある創路功二郎との出会いが訪れます。初めて会った、しかもレジ向こうに働く店員に対して『おねえさん、可愛いね』と気軽に声をかけてしまうところに創路の性格が垣間見えもします。しかし、店員と客という立場で親しく対峙していく関係性は世の中いくらでも存在します。そこから先に男と女の関係性が進むとしたら、そこにはどちらか一方に大きな一歩が必要だと思います。物語では、創路の家のある近辺へと訪れ出会いの確率を高めていく水無月の行動があり、その先に創路の元で働くようになる水無月の結果論の人生が描かれていきます。それこそが、水無月本人も認識する次の言葉に現れています。

 『選択。そうだ、窓を開けるか閉めるか。それも些細な日常の選択だ。欲を出さず、ささやかにひっそり暮らしているつもりでも、やはりこうして何かを選んでいる』。

そうです。私たちは誰でも平凡な日常を生きているようでも実は日々の中でその一瞬一瞬に未来に何かしら影響を与える『選択』を繰り返しています。そして、その『選択』にその人が日頃から認識している、していないに関わらずその人が内在するその人本来の心の声が顔を出します。「恋愛中毒」という書名を想起させもする水無月という存在がそこに浮かび上がります。

 『結婚していた頃、いや、そのずっと前からも私は何かのウィルスに冒されているようだった。私はどうかしていた。頭がおかしかった』。

創路との出会いの先に再び『ウイルスに冒されて』いくかのように「恋愛中毒」な時間を繰り返していく水無月。

 『もう二度と恋愛することはないと思っていたし、そんなことにならないよう気をつけていたのに、私はまたしても深い森に踏み込んでしまったようだ』。

そんな言葉の先に展開していく物語は、視点の主としての水無月に感情移入していた読者に衝撃を与えると共に、からめ取られる恐怖が襲います。『恋愛』という言葉が書名に入っているにも関わらず、単なる”恋愛物語”からもっと深い人の心の闇へと読者を誘う物語への変質。愛するということ、愛されるということ、その先に続く幸せというもののあり方。山本さんが『中毒』という強烈な言葉まで使ってまでこの作品で表現されようとした”愛のかたち”とその先に続く幸せとの関係性。この作品では水無月が見せる極端なまでに歪な”愛のかたち”によって愛すること、愛されることの幸せを再認識させられる物語が描かれていたのだと思いました。

 『これは本当に私の望んだことなのだろうか』。

そんな言葉の先に主人公・水無月の深い苦悩を見るこの作品には「恋愛中毒」という書名を体現する水無月の劇的な人生が描かれていました。山本さんの構成の上手さでぐいぐい読ませるこの作品。『恋愛』という言葉に恐怖を感じる読後が待つこの作品。

「恋愛中毒」という言葉の行き着く先に、『恋愛』の狂気を見る物語でした。

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Posted by ブクログ 2024年02月13日

 最初は主人公に共感できるか、感情移入のポイントを探りながら読んでいたが、読み進めるにつれ膨らんでいく違和感に戸惑い、終盤でタイトルの意味がわかる。私こそは他の女と違うはず、彼を留めておきたいという気持ちは少し理解できる。親のせいで捻じ曲がってしまった印象はあるが、それだけが要因とも言い切れない。水...続きを読む無月のような人は一種の病気のようなもので、自力では直せないのだろうか。前の夫や創路はもちろん、創路のこれまでの女性も含めて、まともな人間がほぼ出てこない。ラストでは水無月は自分の悪癖を乗り越えられたのだろうか。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2024年02月11日

まさに恋愛中毒な話だった。主人公の”地味で大人しそうな女性"という人物像に所々違和感ポイントがあったが、内に秘めていた狂気が終盤にあらわになってゾワっとした。ある意味ホラー小説…親からは意地でも自立しようとするのに恋愛相手には極度に依存してしまうアンバランスさ(ある意味それでバランスが取れ...続きを読むている?)に何とも言えない気持ちになった。

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Posted by ブクログ 2024年01月23日

翻訳をしながらお弁当屋でバイトをして暮らす水無月は、ひょんなことから芸能人の創路と知り合い、関係を持つ。
そこから仕事、生活を恋愛に全振りする水無月。
恋に落ちて恋にのめり込んでいくのは、共感できる部分もあるし、こーゆー友だちいる!という感じ。

これどーなるんだろうって思っていたら、後半の衝撃的展...続きを読む開。割と長いのにここまで引っ張って爆弾投下する山本さん罪深い、、、おもしろすぎる、、
創路も水無月とは別角度のなかなかな恋愛中毒者だ。
萩尾とのことを知っていたのに関係を持った藤谷は、なんで自分の首が締まることは考えなかったんだろう。

水無月が両親(特に母)をここまで強く拒否するのはやりすぎじゃない?と思ってたけど読んで納得。
家族は1番辛い時に支えてくれる存在であって欲しいよなぁ。

恋愛は1歩間違えるとただの依存関係になる。水無月のは強い依存。でも、誰にでもこうなる可能性はあるよなと思うと、恋愛はほんとにのめり込みすぎてはいけない。

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Posted by ブクログ 2023年12月29日

純愛がテーマかと思ったが、裏切られた。愛が重い。結末知りたいから、終盤、イッキ読み。タイトルの意味、分かった。納得。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2023年12月12日

水無月、グチグチ言ってんじゃないよ!って全く共感せず読み進めているのにギクッとするところを刺されるセリフ、心情がたくさん書かれている。

本当に恋愛の綺麗じゃない部分を書くのが上手い。

でも、結局水無月は創路と元旦那、どちらを忘れられないの?と思ってしまった自分は恋愛に深くハマったことない浅いので...続きを読むしょうか?

創路も荻原も、危ない人だとわかってて
まだこの女にかまう!?って。それが怖かった。男たちもやめられないんでしょうね、自分にハマってる女が近くにいるのが気持ちいいんでしょう。
そちら側も、中毒になってますよね。

とにかく、あー怖い怖い!!!

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Posted by ブクログ 2023年11月22日

これも恋愛の形なのか。そう思うと、愛することではなくて、自己承認を求めて恋愛するのだとも思える。
例えて言うのなら、ホストから一番に愛されたいとシャンパンを入れまくるホス狂いのような。

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Posted by ブクログ 2023年09月06日

山本さんの最高作品だと思ってます。だんだん引き込まれて行く展開と、最後の終わり方、空気感ともに、よかったです。

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Posted by ブクログ 2023年08月02日

ただただ面白かった。段々と水無月さんの歪みが垣間見えてくる感じ、でも恋愛に振り切る水無月さんをどこかで応援してしまう感じ、とにかく面白くて一気に読み上げてしまった。
わたしは恋愛で傷つくのは怖いから、色々保険をかけて自分を守ろうとするし、きっとこれからも恋愛に溺れることはないと思う。でも、(周りから...続きを読む心配されそうだけど、)痛々しくて危うい水無月さんが一瞬だけ羨ましくなった。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2023年07月28日

こわかった。
最初は地味で受身の主人公につまらなさを感じてページが思うように進まなかったが、読み進めていくうちに恋愛というフィルターで主人公と自分が重なるような重苦しさを感じる反面、彼女の異常行動が徐々に如実に表れて狂気を感じる…正に読んでいるこっちも“中毒”状態だった。
達観できず終わりが見えない...続きを読む最終章も主人公の人生らしい不思議な感覚に陥った。
いまも感想まとめるの難しい感情に陥ってる。中毒

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Posted by ブクログ 2023年07月18日

人間のだめなところがたくさん滲み出ている。理性と本能が入り交じった感情を、どう処理して生きていくのか、読む手が止まらなかった。

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購入済み

甘くて辛い

2023年05月13日

素敵なストーリーだと思った。水無月の恋愛観に共感しながら、あるいは反発しながら、読み進めた。諦めの悪い彼女が、早く気持ちの整理をしてくれるといいなと願った。予想だにしない事実に軽くショックを受けた。素敵だっだのはつかの間だったんだと気づいた時にストーリーは終わりを告げた。

#深い #切ない

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Posted by ブクログ 2024年02月23日

恋愛小説を比較して色々な恋の形を知れればと思い、恋愛小説をまとめて読もうと思ってまず初めに手に取って読んだのがこの「恋愛中毒」。裏表紙には恋愛小説の最高傑作と書いてある。山本文緒氏はこの作品で第20回吉川英治文学新人賞受賞の後、「プラナリア」で直木賞受賞するも2021年に死去。
芸能活動もする作家の...続きを読む創路功二郎とファンである主人公水無月美月の恋愛の話と思いきや、最終章の描写で物語の色合いが大きく変わる、オチのあるミステリ仕立ての恋愛小説。

この物語は主人公水無月の視点から、妻もいて水無月以外に愛人を数人抱えているモテる男である創路との恋愛を中心に描かれている。男性読者からは創路がどうしてモテるのかが気になる所だと思うけれども、創路がモテる理由はありきたりでお金を稼げるから。創路はお金が稼げてテレビに出るほどの有名人であり、水無月は彼のファンである。

恋の形を知ろうと思ってこの「恋愛中毒」から何かしら参考にしようと主人公水無月をよく観察しながらこの作品を読んでみた結果、恋愛を十分理解できたような気分になった。水無月という女性は男性目線から好感を持てたし、身近な存在として読み取れた。等身大の水無月という女性を十分理解できる描写に満ちていて、彼女を通して恋愛気分にさせて貰える物語である。物語は最後の最後に水無月のことがわかるけれども、それはそれで物語を面白くするスパイスになっている。
山本文緒はストーリーテラーと呼ぶにふさわしく、文章が巧みである。本作品を読んでいると、グイグイ引き込まれる。

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ネタバレ購入済み

キャラが魅力的

2022年08月07日

個性的なキャラクターばかりで、会話や描写も秀逸でした。話のテンポもよくあっという間に読めました。また読み返したいと思える作品に久しぶりに出会えて嬉しいです。ただ、ラストの肝心なところが描写されていなかったので、ここどうなったか気になる!とちょっと不完全燃焼の読後感。まぁ、そこは読者の想像に任せますと...続きを読むいう事なのでしょうが、せっかくキャラクターが面白いので、できれば書いて欲しかった。

#ドロドロ #切ない #笑える

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Posted by ブクログ 2024年03月15日

後味が良くなく共感を覚えずってところは、紫のスカートの女と一緒なのに、読後のスッキリしない感じが異なる。(褒めてない)
水無月さんは、何で萩原さんに見捨てられないのだろう。
萩原さんは萩原さんで水無月さんに頼られることに満足でもしてるのかな。
だとして、どちらも良くならない。
こんな言い方したらアレ...続きを読むだけど、男で水無月さんの様な人は目も当てられないと思う。
女だから、まだ構う人もいるんだろうなと。

過去のことで「もしも」の想像をするのはやめた方がいいっていう作中のキャラのセリフはそうだなと思う反面、中々出来ないことだよなとも思う。
感想がまとまらないように、なんかモヤモヤした感じ。

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Posted by ブクログ 2024年03月04日

恋愛選書きっかけで。
凪良ゆうさんのファンブックの山本文緒さんとの対談を読んで、読みたくなった作品でもある。
対談で山本文緒さんが「理性が一番吹っ飛んじゃうのが、恋愛感情だと思うんです。」と仰っていて、今作はまさにそういう作品だな、と思った。
水無月がしたことは褒められることではないけれど、気持ちは...続きを読む分かるような気がした。
私も恋愛をして理性が吹っ飛んだら、水無月みたいになってしまうのかもしれない。
そう思わせられる作品だった。

✎︎____________

これから先の人生、他人を愛しすぎないように。
愛しすぎて、相手も自分もがんじがらめにしないように。
私は好きな人の手を強く握りすぎる。相手が痛がっていることにすら気がつかない。だからもう二度と誰の手も握らないように。
諦めると決めたことを、ちゃんときれいに諦めるように。二度と会わないと決めた人とは、本当に二度と会わないでいるように。
私が私を裏切ることがないように。他人を愛するぐらいなら、自分自身を愛するように。

選択。そうだ、窓を開けるか閉めるか。それも些細な日常の選択だ。欲を出さず、ささやかに、ひっそり暮らしているつもりでも、やはりこうして何かを選んでいる。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2024年02月14日

読後感はあまりよくない。
主人公の気持ちは分かるけど度が過ぎてる。
無意識のうちに法に触れてるというのはヤバすぎる。恋愛中毒というタイトルに納得。

山本文緒さんの作品は色々なところに小さな共感部分があるから時間を忘れてどんどん読み進めたくなる。
もっと山本文緒さんの作品を読んでみたい。

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Posted by ブクログ 2024年02月04日

「自転しながら公転する」が良かったので読みました。登場人物ほぼ全員が中毒に冒されていて嫌悪感を抱きつつも、ENDINGで何かサプライズで楽しませてくれるのかなと思いながら読みました。が、期待はずれで残念でした。

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Posted by ブクログ 2024年01月14日

なんて毒々しくて、あつけらかんと鬱屈してて、むしろ清々しいんだろう。水無月さん、他の女たちも、好きだわ。
どうしようもない人たちばかりで苦しくなるところもあるのに、読んだ後は、もやっとせず、すっきりするのは山本さんの本読んでて不思議なところ。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2023年08月18日

井口
小さな編集プロダクションで働いている。

水無月圭子
美雨。事務の女性。社長とは大学の時の同級生。

荻原
社長。

坂口理香子
井口の元彼女。

創路功二郎
作家。

佐藤孝子
弁当屋の社長。創路とは高校の同級生。

鈴木千花
創路の事務所のタレント。

陽子
創路の事務所の事務。

中野美...続きを読む代子
白金台のマンションの女。

裕二
美代子のスナックのバーテン。

藤谷
水無月の元夫。

馬淵
創路の新しい事務員。

のばら
創路の妻。

奈々
創路の娘。

トーコ
駅裏にある居酒屋でバイトをしている女。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2023年08月13日

怖い話だった。ホラー。
読み進めるにつれて水無月さんの狂ってる部分がどんどん明らかになって怖かった。
創路みたいな人を好きになる感覚も全然わからんし、好きな人にいいように使われて喜んでるのもわからんし、離れられなくて犯罪まがいのことをするのも人としての常識どこへやった!?ってなって共感できなかった。...続きを読む

でも自分も恋愛において何かとてつもなく不安を感じた時、犯罪は絶対しないとして、いつもの自分からは考えられないような行動を絶対しないかといわれると断言できないかもと思った。(行動に移すまではいかない気がするがそういう思いに駆られることはあるかも)

この話は多分極端な例の話だったけど、恋愛している全員に可能性がある話かなと思った。
執着、依存はしないで済むよう生産的な人間になりたいですね。

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