あらすじ
もう神様にお願いするのはやめよう。――どうか、どうか、私。これから先の人生、他人を愛しすぎないように。他人を愛するぐらいなら、自分自身を愛するように。哀しい祈りを貫きとおそうとする水無月。彼女の堅く閉ざされた心に、小説家創路は強引に踏み込んできた。人を愛することがなければこれほど苦しむ事もなかったのに。世界の一部にすぎないはずの恋が私のすべてをしばりつけるのはどうしてなんだろう。吉川英治文学新人賞を受賞した恋愛小説の最高傑作。
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Posted by ブクログ
水無月の言動は客観的に見れば異常なのに、少し共感できてしまう自分がこわくなった。
恋愛に執着したり、心の隙間をこじ開けて他の人で埋めようとしたりせずに、わたしは自分の人生を生きたいな〜と思った。
Posted by ブクログ
あらすじだけ読むと、過去の恋愛を引きずって新たな恋に臆病になってしまった女性が一歩踏み出すかのような作品。
いや、違うんですよね、ふふふ。
キャラが魅力的
個性的なキャラクターばかりで、会話や描写も秀逸でした。話のテンポもよくあっという間に読めました。また読み返したいと思える作品に久しぶりに出会えて嬉しいです。ただ、ラストの肝心なところが描写されていなかったので、ここどうなったか気になる!とちょっと不完全燃焼の読後感。まぁ、そこは読者の想像に任せますという事なのでしょうが、せっかくキャラクターが面白いので、できれば書いて欲しかった。
Posted by ブクログ
いわゆる“やばい女子”の物語なんだけど、主人公視点で進むから最初はただの地味な女子・水無月の目線に自然と感情が寄っていく。
ところどころ引っかかる違和感はあるものの、淡々とした日常の延長として物語が続く。
で、最後に正体が判明するあたりで一気に転調。
「え、今までの行動ってそういう意味だったの?」と世界が反転する瞬間が最高。昔の作品だから時代背景は今と少し違うけれど、逆にそのズレが妙に生々しくて面白い。
読み進めながら思ったのは、世の中で“ヤバい”と評される人も、その人自身の視点から見れば、その場その場で自分なりの最適解を選んでいるだけなんだということ。
それぞれが自分の正義で動き、自分を「正常」と捉え、周囲が「おかしい」と感じる。
この物語は、そんな“視点の偏り”や“世界の捉え方”に気づかせてくれる一冊。
世の中って自分が思う以上に、人それぞれの世界観で動いているんだと実感した。
Posted by ブクログ
人生で初めて失恋をして、もう恋愛に振り回されたくないと思って、背表紙のあらすじに惹かれて手にとった。読む前は主人公と同じ気持ちだったし、読み始めてすぐ「恋は人を壊す」という文章にも共感をした。他人の一挙手一投足でわたしの幸せが左右されてしまうことにとんでもないストレスと虚しさを感じて耐えきれず関係を切ったのに、それでも連絡をしてしまう自分が凄く恥ずかしかった。だから連絡手段を切って、自分への戒めのために胸に深く刺さるような本を読みたくて探して、この作品に出会った。
読み終わって、思った以上に深く刺さった。恋愛するのがすごく怖くなった。わたし含めてみんな主人公と同じ狂気を持っていると思ってしまったから怖くなった。でも、だからこそ自分が主人公みたくなる前にこの狂気を直に感じることができて良かったと思う。
主人公からの視点と他人からの視点が全く違うことや少しずつ主人公への違和感が形になっていくことに、胸のざわつきが止まらなかった。被害者意識が強く、相手の気持ちを考えない。主人公の夫との過去の話は本当に幸せそうな風景が思い浮かんだ。だけどきっと、違うのだと思う。すべてが違う訳では無いけれど、自分の全てを捧げてもたれかかって、そうしてもたれ掛かられた相手の気持ちなど、まるで知らないのだと思う。なにかあれば被害者になる。そうじゃない。狂う前にきっと何度も一人の人として向かい合えるチャンスがあったと思う。でもずっと悲劇のヒロインの主人公は、自分が我慢すれば良い、相手が機嫌よくなってくれればいいって、すべてを相手に丸投げしてて、それに気づけない。この主人公は、恨みをもって逃げる以外で何かを決めたことはあっただろうか?他人に関係なく、大きな決断をすることはあっただろうか?仕事も恋愛も、人生の大きな軸を彼女は人任せにしてきたのだろうと思う。だから自分の軸がない。自分の人生に責任を持てない。そっちの方が楽だから。恋愛は簡単に脳を興奮状態にできて、人生の何もかもをどうでもよくさせて幸せだと錯覚させる。本当に強い強い薬だと思う。だからこそ、用法も容量も自分でちゃんと適切に守っていかなければならない。わたしも主人公になり得る可能性がある。ちゃんと考えてちゃんと自分で決めて、責任を持たなければならない。人生を恋愛だけにしちゃいけない。恋愛以外にも楽しいことや素敵なことがあるのだと再認識できた。
恋愛はひとりでするものじゃないからこそ、まずはひとりでしっかりと地に足をつけてするものだと改めて思った。
わたしも恋愛中毒にはならないよう心に誓う。改めて恋愛だけでなく人生に目を向けるきっかけをくれたと思う。