【感想・ネタバレ】ばにらさまのレビュー

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Posted by ブクログ 2024年04月15日

…なんとなく…感じてしまう違和感。
これは何だろうと思っていると、驚く事実が発覚し、この物語には別のフィルターがあった事に気づきます。
そのフィルターから見てみる物語は最初にイメージしたものとは異なる意外な世界でした。


そして浮き彫りにされたのは女性たちの潔のよいエゴイズム。
エゴイズムというと...続きを読む、そのようにしか生きられないとても悲しく切ないというイメージ。
ですが…そんな感じではありません。


登場する全ての女性たちを総括するような言葉が子供おばさんの語りの中にありました。
「何も成し遂げた実感のないまま、何もかも中途半端のまま、大人になりきれず、幼稚さと身勝手さが抜けることのないまま。確実に死ぬ日まで。」


ほんの少し他人の思いに心を寄せられたら、違う生き方が見えてくると思うのですが、そんな事はどこ吹く風ねという風情でした。
これはこれで味わってよいのかも。


今日もばにらさまは、雑誌のモデルそのままをコピーした完璧なヘアメイクで、完璧なコーデで、完璧な立ち振舞での完全武装で合コンに行ってそうです。
そんなことしなくても、欲しかったものは側にあった事など気付かないままに。
やっぱりイタイと感じてしまうのですが、ばにらさまを応援したくなる私なのでした。

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Posted by ブクログ 2024年03月17日

私たちは、晴れることのない空虚さを抱えたまま、この「日常」という、いつ崩れるかもしれない薄氷の上を歩くが如く生きていかないといけないのかもしれない。いや、それが「生きていく」ということなのかもしれない。

女性の日常を描いた6編の短編集。
未婚のアラサー女性を描いた表題作から始まり、主婦としての女性...続きを読む、子を持つ女性、そして友人が早逝したアラフィフ女性と、読み進める毎に女性の年齢が上がっていくが、どの女性も一貫して己の奥底に大きな空虚を抱えている。

外側ばかりを飾り立て、内側の空虚さを相手によって埋めてもらおうとした若き頃(表題作『ばにらさま』)、確実に作り上げてきたと思っていた地盤が恋愛によって簡単に揺らぎ、目を背けてきた自分の空虚さと非力さを痛感した頃(『わたしは大丈夫』)、愚かさと幼稚さによって相手を傷つけ、そのことに自らも傷つきそれでも生きていこうとした頃(『バヨリン心中』)、そして最後『子供おばさん』では、自らの空虚さを自覚し日常を送る中でこう締めくくられている。

ーー私は週に五日仕事にゆき、休日は犬の散歩と買い出しをし、夜は友人や家族と食事をしたり、風呂の中で推理小説を読んだりする。日常に倦むことはない。
何も成し遂げた実感のないまま、何もかも中途半端なまま、大人になりきれず、幼稚さと身勝手さが抜けることのないまま。確実に死ぬ日まで。


この締めくくりを、絶望と捉えるべきか、肯定と捉えるべきか、アラサーである私にはまだ判断がつかない。

確実だと思うのは、これまでもこの先も、小説の中の彼女たちのように、私の中に巣くった空虚さを埋めようともがき苦しみ、周りを傷付け、そうすることしかできない自分にまた傷つきながらも、空虚さを内包したまま変わり映えのない日常をただただ生きていくしかないということだけで、願わくばせめて、そんな自分に正しく折り合いをつけていける分別ある大人として生きていくことができたなら、と思う。

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Posted by ブクログ 2024年02月17日

20×20と子供おばさんが大好き。
前者は山本さんご自身のお話だろうなとなんかうれしくなりながら読んでしまった。
子供おばさんは素敵な表現を見つけて、山本さんの言葉は刺さるものが多い。

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Posted by ブクログ 2024年01月09日

山本文緒作品を初めて読んだ
恋愛小説のイメージからこれまで敬遠していたが、読んでみると日常の描写が細やかで面白い
人物の心的描写もしっかりなされているため、感情をあわせて読むことができた
最近には珍しく、続きが気になって読書したくなる作品だった

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Posted by ブクログ 2024年05月04日

山本文緒さんらしさって、ちょっとダメな感じの女性の日常が、あるある!って共感できる情景で事細かく描かれているところなのかなぁ。長編小説で特に感じるけど、短編でも充分感じるものだね。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2024年04月20日

アクロバティックな不倫の終わり方だった。
※2つめの短編小説のネタバレになります。





節約上手な専業主婦と会社員の女性の視点を行ったりきたりする話。会社員の方は、人と深く関わるなんてメンドウだし、結婚願望もないし〜、となんだか冷めてて、たまたま気が合った既婚者とドライに付き合ってたつもりだっ...続きを読むた。

それが段々マンネリ化してきて、電球替えてあげよっか?って言われたのに対して一人でできるもんと何故か言い張り、でも結局面倒臭くてずーっと経ってから脚立に登ってようやくつけようとした矢先、
滑って落ちて、腰を強打!痛すぎて床をバンバン殴る。


うん、意地張らず電球くらい頼めばよかったのに。
でもまぁそれはしょうがない。

で、そしたら下の階の住人(ガタイがでかくて、多分酔っぱらいで、汚い)が「ウッセーぞコラァ!!犯すぞ!」とやってきてドアをドンドン叩いてきたから、ビビった主人公(会社員)は2時間くらいひえぇぇとなりながら腰痛い、どーしよ、と途方に暮れちゃう。
住人は部屋に戻ったと思ったら下からドンドンしてくるし。2時間も。


しかしまず、臭くて汚い人だったとしても、騒がしくしてごめん、脚立から落ちたの、ぐらい言えんのか。
腰も折れてないなら湿布貼るとか、病院探すとか、あるじゃん。さっきのドライさはどこいったのさ。だいたい庭木の剪定じゃないんだから脚立そんな高さないでしょ〜。

最終的に、不倫相手に電話で助けを求めたら冷たくされて、ヤケになって、家にあった薬を何もかも一気飲み。気づいたら病院で胃洗浄されてた。しかも大も小も漏らしてるし吐いてるし、サイアク。


「今来てくれないと死ぬ!」って騒いでたけど、男が来てくれたところで「病院行こ」か「警察呼ぼ」ぐらいしか言えることなくない?

その後は内臓やられて働けなくなって、妊娠もしてて、奥さんにもばれて、不倫相手と一緒になるしかなくて、慰謝料月25万も払わないといけなくなったから、めでたく節約上手な専業主婦になったという。(会社員の女性と専業主婦は同一人物)

専業主婦パートの後半でもブチ切れてた。


タイトルは『わたしは大丈夫』。


いや、どこが??全然大丈夫じゃないよ!

途中途中、なんでなの、とツッコミたくなるけどこの先どうなるんだろう、と読まずにはいられなかった。

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Posted by ブクログ 2024年03月16日

昔の作品(単行本に入れなかった作品)を集めて遺作というのはずるいのではないかと思いつつ…でもいい売り方ですよね。そして名作に限らずたくさん作品を持っている版元は強いですよね。。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2024年03月04日

短編集。
よくありそうな若い女性の話しや不倫の末に結婚したけれど…という女性の話し。感情の起伏が激しい娘に振り回される女性。ポーランド人と知り合い結婚して幸せになったのに3月11日の大震災で日本に恐れをなした夫は家を出てバイオリンを残して祖国に帰ってしまう。その話しを死の間際で語る女性。 
小説を書...続きを読むく為にリゾートマンションを買い、そこに篭る女性の話し。47歳で亡くなった友人の遺書にゴールデンリトリバーを譲るというとんでもない遺言が残されていた。結局その犬と暮らし始め友人の晩年の暮らしを知る。何も成さないけど、日常に惓むことはない。47歳独身女性のお話し。

わりとどこにでもありそうなお話が文章になるとこんな風になるのだな…。思い返すとじわーっと染み込んでくるような不思議な感覚の短編集でした。

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Posted by ブクログ 2024年02月18日

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そんなにも
 不安なのか。

彼女は、雑誌の中のモデルみたいに
細くて綺麗で、優しく笑っていて、楽しそうで……

え?
思わず二度読み

最後の作品集
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6編の短編集ですが、
最初の「ばにらさま」、...続きを読む
最後の「子供おばさん」のサンドイッチが最高です。

間に挟まっているのは、
「わたしは大丈夫」
「菓子苑」
「バヨリン心中」
「20×20」
上記4編ですが、
順番を考えた人最高とお伝えしたいぐらい。苦笑

「わたしは大丈夫」はとにかく倹約する主婦が、
「菓子苑」は友人のワガママを拒めない女性が、
因果応報というか業というか、
ミイラ取りがミイラになるというか、
読み終わった瞬間に怖くなる作品。

どの作品も、
一瞬目を離したすきに違う景色になるというか、
あれ今何見てたっけ?となる作品ばかり。

「子供おばさん」の読後は、
早朝に愛犬と散歩している空気を思い出しました。
空気が澄んでいて、まぶしくて、
静かに地に足がついているというか、
淡々と生きていく決意というか。

もう新作を読めないことが残念です。

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Posted by ブクログ 2024年01月31日

 本書は、山本文緒さんが2021年に逝去される1ヶ月前に単行本として刊行された短編集です。「最後の作品集」とするも、6編の初出が2008〜2015年となっており、『自転しながら公転する』(2020)より前なんですね。

 各編とも、短くスラスラ読めますが、濃密な内容です。入念な仕掛けがあって、途中か...続きを読むら見ている世界が一変したような印象をもちます。ある意味、人の心(とりわけ女性)、内面の怖さを突き付けられるような、思わず2度読みしたくなる感じでした。

 多分、主人公目線で描かれる途中に、別人物の視点が挟まれ、明から暗(光から闇)へと、意図的に雰囲気・見え方を逆転させているのでしょうか。
 当然、女性だけでなく人は多面的なので、日常の何気ない生活の中に見せる私たちの(光と闇を併せ持つ)姿を、リアルに描こうとしたのかな?

 悲しく辛くなりそうで、がんの闘病記である『無人島のふたり』はまだ読めていません。それでなくとも、過酷なうつ病からの再起を果たした闘病記もあったんじゃなかったでしたっけ?
 改めて、山本さんが58歳の若さで亡くなり、本作が小説としては遺作となってしまった事実は、とてつもなく重く切ないです。

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Posted by ブクログ 2024年01月09日

『恋愛中毒』がツボだったので、続けての山本文緒さん。

表題作の『ばにらさま』が一番好き。酸いも甘いも知ったアラサーが楽しめる短編6篇。

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Posted by ブクログ 2023年12月22日

山本文緒さんの本が読みたくて。

ツイッターやブログといった
現代的なSNSが組み合わされていることによって
よりリアルな日常を味わえた。

子どもおばさんが最後で良かった。
どんな日常も悪くないと思えた。

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Posted by ブクログ 2023年11月25日

山本文緒さんの本を読んだのは2作品目だけど、
この人の描く女性はリアル。
なかなか毒のある短編集だった。
SNS、というよりインターネットというのはやはり恐ろしい。
そんなつもりはなくても個人が特定できちゃうからね…

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Posted by ブクログ 2023年11月23日

人の闇の書き方が綺麗だなという印象。

実際に会ったらきっとイヤだなと
感じてしまうかもしれないけど
そういう闇なところを見事に言葉にしてくれる。

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Posted by ブクログ 2023年11月15日

山本文緒さん最後の作品。少し前のものを集めた短編集。

表題作「ばにらさま」は読んでいてもちょっと腑に落ちなかったけれど、解説を読み、現代に置き換えてみたところ、すごくすとんと落ちた。SNSなどのインフルエンサーを見て真似してみたいと思う気持ち、自分にもそんな気持ちがあるのではないだろうか。そのこと...続きを読むに気づかされたとたん、ぞっとした。

ばにらさまを含め、すべての短編でいびつな関係と心理的に追い込まれる状況が描かれている作品が多かった。ばにらさまで腑に落ちてからは、夢中になって読んだ。
こちらが想像している斜め上をいく展開の作品もあり、面白くもあり切なくなった。

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Posted by ブクログ 2024年04月25日

全く別の事柄を結びつける表現方法。そのおかげで感覚を呼び覚まし心の芯から物語に入ってしまう。物語よりも表現に感動した。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2024年04月18日

さまざまな女性の生き様を描いた短編集。
一番印象に残ったのは『菓子苑』。
どこか歪で奇妙な二人の関係にモヤモヤしながら読んだが、途中でまさかの母娘と分かり…すっかり友達同士か、恋愛感情があるのかと騙されていた。

どの話の中でも、生活していく上でふと感じる違和感や上手く言葉にできないモヤモヤをとても...続きを読む分かりやすく表現されていて、自分自身とは重なる部分は少ないにも関わらずなんとなく気持ちが分かってしまう。
ストーリーの展開自体は淡々としているが、引き込まれてしまった。

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Posted by ブクログ 2024年04月11日

Audibleで聴いた。

短編集で、面白くなりそうってところでお話が終わってしまい、次の話に行ってしまうので、え?もう終わり?と毎回思った。Audibleで聴いていたので、最初は一編が終わったことに気づかなかった。全ての話を、もう少し長ければなと思った。

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Posted by ブクログ 2024年03月25日

遺作ということとばにらさまというタイトルが気になって。菓子苑がいちばんおもしろかった。わたしと相性が良くないのか、文章がちゃんと頭に入ってこなくて読むのに時間がかかった。なんでかなー

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Posted by ブクログ 2024年03月08日

普通といわれる人の思い通りにはいかない日常を書かせたら、この筆者はとても上手で、読みやすく、面白い。でも、内容をすぐ忘れてしまう。。。
その中で、「菓子苑」は、そうなの??と、短編ながら驚きの連続で面白かった。

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Posted by ブクログ 2024年02月09日

山本文緒の小説としての遺作。「20×20」がエッセイかのようなリアリティを帯びていたけど、私小説だったりするのだろうか。それは置いといて、全体的に結婚をテーマにした物語が多かったように思う。人はなぜ結婚するのか、独身と既婚者で人生における幸せの総量は変わるのか、二元論的な問いを考えても答えは出ないけ...続きを読むれど、みんな少なからず一度は立ち止まり、答えのない問題に悩んだりするのだろうか。

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Posted by ブクログ 2024年01月20日

短編集。どれも誰かの話でありながら、私の話でもあった。そう感じる人が多いんだと思う。解説に書かれていた通り、「生活」を描くのが非常に上手い。「生活」というものは誰かへの愛情、恋、期待、仕事、正体の分からない不安、孤独、胸が苦しくなる後悔、ひりひりした苦痛、役割を演じることなんかを常に内包していて、オ...続きを読むチなんかなくってもドラマチックものなんだろうな。
「子供おばさん」の「人と人との関係な時にそれが同性同士でも仕事の関係でも蜜月を迎えることがある。そしてそれはまず例外なく、熟して落ちる果実のように自然に終わるものだ」という一文が好きだった。

⚫︎あらすじ
伝説の直木賞受賞作『プラナリア』に匹敵する、中毒性の高い短編小説集。
①「ばにらさま」  僕の初めての恋人は、バニラアイスみたいに白くて冷たい……。
②「わたしは大丈夫」 夫と娘とともに爪に火をともすような倹約生活を送る私。
③「菓子苑」 気分の浮き沈みの激しい女友だちに翻弄されるも、放って置けない。
④「バヨリン心中」 余命短い祖母が語る、ポーランド人の青年をめぐる若き日の恋。
⑤「20×20」  主婦から作家となった私は、仕事場のマンションの隣人たちと……。
⑥「子供おばさん」 中学の同級生の葬儀で、遺族から形見として託されたのは。
以上6編を収録。
日常の風景の中で、光と闇を鮮やかに感じさせる凄み
読み進むうちにぞっと背筋が冷えるような仕掛け
「えっ」と思わず声が出るほど巧みな構成
二度読み必至! 引きずり込まれる魅力満載の山本文緒文学!
2021年10月に惜しくも死去した著者最後の小説集。
(文春文庫HPより引用)

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Posted by ブクログ 2024年01月12日

 ただ幸せが欲しいだけ。
 目先の安寧に縋ってしまっては失敗して後悔しもする。でも、それが私。
 そんな要領の良くない女性たちを描いたヒューマンドラマ短編集。
          ◇
 大手の金属会社が運営する冶金研究所で雑用係( 庶務?)を務める僕に、生まれて初めて恋人ができた。

 彼女の名は竹...続きを読む山瑞希。肥満体で冴えない僕にはもったいないほどの美少女だ。山形生まれの彼女はバニラアイスみたいに色白で、冬でも薄着のせいなのか華奢な身体は冷えきっていて寒そうだ。
 瑞希ちゃんは優しい。僕のことを広志くんと呼んでくれるし、目当てのレストランの予約が取れなくても怒ったりしない。ニコニコして居酒屋につきあってくれる。そんな彼女は、僕にとっては女神さまみたいな「ばにらさま」だ。

 けれど、ある日たまたま彼女のブログを見つけてしまい……。
   (第1話「ばにらさま」) 全6話。

     * * * * *

 どの話も最後に、主人公 ( 第1話のみヒロイン役 ) の女性はふっ切れたように前を向いて生きる気になるのだけれど、それまでの屈折ぶりが痛いというか、読むのがつらい。

 例えば第1話の「ばにらさま」こと瑞希は主人公の広志が勤める冶金研究所の事務を担当する派遣社員なのですが、仕事よりも彼氏選びに余念がありません。

 瑞希はかなり結婚というものを意識しているようで、自分の魅力を有効活用しようとしているフシが見られます。広志には自分から告白して彼氏にする一方、合コンなどにも積極的に参加していい男をつかまえるチャンスを狙っているのです。
つまり瑞希は広志を “滑り止め” として押さえてあるだけで、愛情はかなり希薄な感じです。

 恋愛よりも、豊かで安定した生活を手に入れたいだけの瑞希。だから打算で生きる瑞希の心はいつも満たされず、それは身体の冷えにつながっていました。
 そんな瑞希の不満のはけ口はブログに思いをぶちまけることでしたが、ある日それを安全パイであるはずの広志に気づかれてしまい……。

 穏やかで人のよい広志に対する瑞希の姑息で白々しい振る舞いに、読んでいてイライラしてしまうのですが、なぜか瑞希を憎み切ることができません。ここに山本文緒さんの狙いがあるのだろうと思いました。


 いちばん気に入ったのは、最終話「子どもおばさん」です。

 主人公の夕子は、独身でひとり暮らしの中年女性です。仕事でもプライベートでも打ち込めるものがないまま生きてきて、気づけば47歳になっていました。
 夕子には美和という中学時代からの友人がいます。ただ、ある理由で7年ほど前から疎遠になっていたのですが、ある日、美和が急死したと彼女の兄から連絡を受けます。とりあえず葬儀に参列した夕子を待っていたものは……。

 美和の死によって自分の生き方を見つめ直した夕子が、それまでの生活を一変させていくさまが清々しくて、読後感も上々でした。

 その他では東日本大震災による原発事故を描き込んだ第4話「バヨリン心中」が印象に残りました。

 
 久しぶりに読む山本文緒さんの作品。短編の中に独特の情緒を漂わせる山本さんの作風を堪能できました。 ( これが遺作だそうですね。)
 山本文緒さんの御冥福を、心からお祈り申し上げます。

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Posted by ブクログ 2023年12月22日

山本文緒さんの最後の短編集。
読み終わって、もう一度読まないとちゃんとわからないような感じの不思議な感覚におそわれた。

「ばにらさま」は、人の本心の扱い方を考えた。「菓子苑」は、てっきり友達同士なのかと思って読み進めていたのに、途中で驚いた。
「子供おばさん」は、中途半端に流されるように生きていく...続きを読むのも悪くないのでは、と思った。

他に、「わたしは大丈夫」「バヨリン心中」「20×20」の計6編。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2023年12月19日

えぇええ、モブのくせにバニラさま降っちゃうんですかぁああ。縁故採用でホワイトカラーの職につけた君がモテる理由なんて、いい会社に勤めて都心に土地持ってる以外は1ミリもないと思うけど、ばにらさまのSNS日記っ内緒でチェックしてるとかキモイし、検索可能なネットに晒す本心なんて誰か構ってほしい演技入ってるの...続きを読む常識だし。ばにらさまは派遣でいつ切られるか不安で年も誤魔化してるしそれだけ必死なんだから、彼氏なら優しくフォローしたらいいのに、自分のこと本当は好きじゃないとか、そんなこと後から変化することだし細かいとこ気にせず、ばにらさまのこと好きなら自分から積極的にアプローチすればいいのに、自意識過剰で包容力なさすぎのダメダメ男の話でした。
てか、彼女の部屋ですき焼きご馳走になって、シャワーまで浴びて何もせずに帰るとかとんだゲス野郎でした。
他5編の短編集、冴えない女性が愚痴ってますがなんだか他人事に思えず楽しく読ませて貰いました。
情熱的な話の「パリオン心中」はよく知ってる浜名湖の舘山寺とか浜松が出てきて楽しめましたが時代考証ズレてるんではって気づき始めたら、あれよあれよって年寄りの話は迷走して面白かったし、「20×20」はご本人のエッセイなのかな?作家生活憧れるなぁ「子供おばさん」も楽しい話でした。この作品の中にも鰻を食べに行く件があってやっぱ食べたーい。

初読みの作家さんでしたが2年前に58歳の若さで他界されて本作品が遺作とのこと、こころよりご冥福をお祈りいたします。

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Posted by ブクログ 2023年12月10日

・日常のちまちました事柄を作品として昇華する作者の力量には驚かされた。
・大袈裟に演出する事なく光から闇へ反転させる内容がとても良かった。

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Posted by ブクログ 2023年12月10日

正直、帯から受けたイメージと読んでいる間のイメージの乖離が大きくて、読み終わった時は消化不良という感じだったのだけど、ここの感想や解説を読んで納得。日常というパブリックイメージが少しずつ(それこそプレートの地動のようなもの)ずれていくことを差すのか。
と考えると不思議だ。平凡でありきたりでおだやかな...続きを読む日々、なんてもの、誰の人生にも存在しえない(恐らく聞かれるとそう答える人は多いだろうが、日々様々な感情と事件は生成されているのである)。であれば、短編たちに語られる「違和」はむしろあたりまえにあることになり、「違和」にならなくなってしまう。いかに自分が小説の世界にきれいな理想をつめた平穏を求めてきたのかということを突きつけられた気持ちになった。
そのうえであらためてお話をたどると、どの短編もこれからの日々あるいは続いていく時間を思わせるような終わり方をしているように見える。日常はおわらない。続いていくのである。けっして平和的終わりといえないものもあるのに、なぜだか生きることへの肯定をされたような気になった。

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Posted by ブクログ 2023年11月19日

文庫化されているのを見つけて購入しました。山本さん独特の世界観と言いますか、白いベールを通して物語を観ているような感覚があり、「自転しながら〜」に次いで好きな作品です。

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Posted by ブクログ 2023年11月16日

なんというか感想を書きにくい作品。
人間の不安とか嫉妬とか、人生には切っても切れないものだなと思った。
もやっとした気持ちでも、人生は続いて、そして必ずいつかは終わりが来る。

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Posted by ブクログ 2023年11月15日

日常の細々とした部分、多くの小説ではそこまで救いきれないというか描写するのは無理だよねというところ。
感じてはいるけれど、本の中でしっかり表現されていることで自分の感覚に名前がついた気がしました。

ちょっと不思議な感覚の短編集だった(終わり方にクセありと感じた)ので、次は長編読んでみたいです。

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