【感想・ネタバレ】ばにらさまのレビュー

あらすじ

二度読み必至!
伝説の直木賞受賞作『プラナリア』に匹敵する、
光と闇が反転する傑作短編集。

1,「ばにらさま」 僕の初めての恋人は、バニラアイスみたいに白くて冷たい……。
2,「わたしは大丈夫」 夫と娘とともに爪に火をともすような倹約生活を送る私。
3,「菓子苑」 気分の浮き沈みの激しい女友だちに翻弄されるも、放って置けない。
4,「バヨリン心中」 余命短い祖母が語る、ポーランド人の青年をめぐる若き日の恋。
5,「20×20」 主婦から作家となった私は、仕事場のマンションの隣人たちと……。
6,「子供おばさん」 中学の同級生の葬儀で、遺族から形見として託されたのは。

以上6編を収録。

日常の風景の中で、光と闇を鮮やかに感じさせる凄み。
読み進むうちにぞっと背筋が冷えるような仕掛け。
「えっ」と思わず声が出るほど巧みな構成。
引きずり込まれる魅力満載の山本文緒文学!

2021年10月に惜しくも逝去した著者最後の小説集。

解説=三宅香帆

※この電子書籍は2021年9月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

作者最後の短編集。

やはりこの人は等身大の女性の描き方が恐ろしく上手い。特別な人間でもなく、清廉でも崇高でもなく、本当にどこにでもいそうな女性の内面をわかりやすく言葉にする。読む人によっては辛い追体験になりそうなほどに。

いろいろなものを捨てて軽くなるというのは分かる気がする。捨てるまでは特別なものと思い込んでいたのに。そういうことは人生の転換期であるよなあ。

物語としては「わたしは大丈夫」が好き。「20×20」は作者自身が割と入っている?そして短編集のラスト「子供おばさん」。

「何も成し遂げた実感もないまま、何もかも中途半端なまま、大人になりきれず、幼稚さと自分勝手さが抜けることのないまま。確実に死ぬその日まで。」(p.218)

そんな自分でもいいんだという、作者の寛容さや温かさを感じるラストだった。

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2024年12月05日

Posted by ブクログ

ネタバレ

『子供おばさん』が印象的だった。
40代半ばで同じように独身だった女友達の死に際し、自らのこれまでの人生を振り返る主人公。平穏さ、ささやかな幸せの記憶の中に「たられば」、葛藤が去来して切ない。
そんな彼女に女友達が託した遺品は、憐れまれていた自分も案外幸せな晩年を過ごしていたのよ、という主張であったと同時に、これからも人生を歩み続ける主人公へのエールであったのだと思う。

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2024年09月17日

Posted by ブクログ

ネタバレ

短編集だがひとつひとつ濃く読み応えがある。ただ、表題作の「ばにらさま」を含む4作品、あっと驚く仕掛けがある話が続いたため、途中から仕掛けが気になってしまい物語に集中しにくくなった。それでも読み進めていくと「20×20」と「子供おばさん」は面白かった。自分の感じ方がある事実を知ることにより変化したり、ひとつの出来事で自分の本音に気づいてゾッとしたり。それでもなお日常が続いていくところが生々しい。それが人生だよね。苦しさの中で小さな暖かさが沁みる。

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2025年11月18日

Posted by ブクログ

ネタバレ

山本文緒さん最後の作品。

ばにらさま
 男を利用する美人 ブログの本音に主人公が気づき振ると彼女は食い扶持としてしか思ってなさそうなブログで終わる
わたしは大丈夫
 結婚もしたくなかった主人公。電球の取り替えで床に落ち下の住人にドンドンされて薬を大量に飲んで倒れ、不倫相手と結婚することに。前妻には多額の慰謝料、後遺症で主人公は働けない。人と一緒にいるのが嫌な筈なのに、流されるまま生きている。
文章が良かった
菓子苑 一番面白かった
 女友達同士の話と思いきや後半に親子だと判明する。胡桃はやりたい放題で振り回される主人公に見えるが、過去に主人公も若く子供を産み旦那が嫌になって子供を連れて家出する。娘もそれを繰り返す。一緒に住む住まないは主人公は嫌がってるような見えたが、結局互いが依存し合っている。
バヨリン心中
 ポーランド人と祖母の恋愛。東北の震災を機にポーランド人は母国に帰り別れてしまう。最後ポーランド人の孫に主人公が恋をして終わる
恋をするというのは生き物になるということ
20×20
 物書きの主婦。リゾートマンションで缶詰。役所が猪を檻に捕まえてそれが怖くて逃げる。その間にマンションの知り合いが死ぬ。私はこのことも20×二十の原稿用紙に書くのだろうか。猪を捕まえるより醜い。
子供おばさん
 昔の親友が四十代で死に、遺書に五百万渡す代わり飼ってた犬をもらってほしいと書かれていたと、その兄、昔主人公と付き合っていた男に頼まれる。主人公は結局犬と、親友が住んでいた長屋をもらう。そのために仕事も変える。七年会っていなかった親友。不倫をしていたから。その不倫相手の妻が手切で与えたのがその長屋。なぜ主人公にその犬を預けたのだろう?

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2024年10月28日

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