山本文緒のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
様々な人生を送る女性達の、31歳という今を切り取ったショートショート。恋や家庭や仕事、名前のつけられないような日常の一コマの中で沸き起こる女性達の想いが丁寧に描かれています。
なぜ31歳なのか?女性にとっての30歳は、男性にとっての節目よりも大きく感じる人が多いのではないだろうかと思います。
世間からみた自分はどんな人間なのか?これから女性としてどう生きたいのか?一度立ち止まってみる。
立ち止まってみてまた進み始めると、理想だけではないリアルな自分が見えてくる。31歳とは、女性にとってファーストプライオリティー(最優先)が見えてくる年齢なのだろうと思います。どの物語も、不思議と主人公1人1人 -
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この人の本は以前一冊読んでしっくり来なかったのをうる覚えしている。しかし、今回の本は面白かった。人の心の機微を堪能できるまでに自分の心が耕されているのだろうか。それとも、4月の新しい出会いと別れの時期だから、センチメンタルでセンシティブになっているだけなのだろうか。でも、読書ってタイミングは大切だと思う。出逢うべきときに出逢えた本は、心に響く。共感は出来ないが、感情は移入される。人の心の変化を成長と呼ぶのか堕落と呼ぶのかはそれぞれの主観に委ねられるのだろうが、やはりそういう場面は、物語のピラクルなのだと思う。人の本心が曝け出されるときは、やっぱりちょっとドキッとする。そんな場面に溢れた一冊。
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ネタバレ結婚をテーマにした8編からなる短編集
『土下座』
主人公の男は、妻の態度を恐れている
二人が出会ったきっかけは、主人公が居酒屋でバイトしているとき、
着物を着ている女性にキムチをこぼしてしまったこと。
それが後の妻になった。
妻にしたはいいものの、しばらくすると妻は夜の生活を断るようになってきた。
そして主人公が復讐のつもりで妻を求めなくなると、今度はあからさまに
夫を誘うようなことをしてくる。
妻を抱くべきか、否か……。
一度目の土下座は、キムチをこぼした時。
二度目の土下座は、プロポーズの時。
主人公の男は、妻を抱くために、三度目の土下座をしなくてはいけないのだろうか?
他
『子 -
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三十一歳、それぞれ絶対にゆずれないファーストプライオリティーを再確認させるショートショート集。
各話きちんと物語がつくりこまれていて、とても短いながら主人公たちのバックグラウンドを感じられました。
ファーストプライオリティーの発見があり、どうにもならないと思うあきらめがあり、けれどそれを受け入れていく決意がある。
きっとその先に、その人にとっての幸せとは何かが通じているているような気がする。
初恋
燗
禁欲
空
当事者
三十一歳
小説
ここらへんが特に好きでした。
腹がくくれてて、自分も世間もよく知っていて、スタートもやり直しもできる。
三十一歳って素敵な年齢だ。 -
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秀明と真弓、この夫婦が茄子田家に絡みあっていく相関図はとても複雑で、でもドラマをみているような面白さがありました。
寿退社して赤ちゃんを授かって、陽当たりのよいマンションで優しい夫と幸せな生活を送るはずだった真弓。
けれど専業主婦であることの辛さから「また働きにでたい」と切望してしまう気持ちは痛いほどよく分かります。
そして、働き出してからの夫婦がすれ違って互いに責任を押し付けあう姿も。
この小説のすごいのは、私自身おなじ立場である真弓はもちろん、夫である秀明の言い分もよく理解できて感情移入すらしてしまえるところです。
妻に対する蔑視や失望や憤り、よそに癒しを求めてしまう弱さも分かる。
とこと -
Posted by ブクログ
「31歳」という年齢に立つ女性たちを描いた31の短編集。
この作品の中にはふと、「これだったのか」と気付く人もいれば、「これでいいんだ」と再確認する人もいれば、「これじゃなかった」と切り捨てる人もいれば、「こういうはずじゃなかった」と苦々しい思いに駆られる人もいます。
31歳という年齢は改めて眺めると絶妙で、「まだ」と感じるか「もう」と感じるかは本当に人それぞれ。なんとなくでもここまで来れた。なんとなくでも、これが私となった。じゃあ、これから先は何を最優先して生きていこう?
様々な選択のかたち。
以下、惹かれたものを簡単に。
「偏屈」…手にした解放感はニヤケ顔が止まらない。
「車」…勢いで買 -
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だいぶ昔に一度読んだ小説。
実際映画化されているのだけど、ものすごく映像化向きの物語だと改めて思った。キャラクターの立ち方とか、映像が目に浮かびやすい構成とか。恋愛小説であり、ミステリ小説であり…でもどっちでもないような、不思議な感じ。
一人の弱い女性の自立までを描いた小説、とも言えるのだろうか。
坂の上の家に住む身体も心も不安定な女性・さとると、ごく普通の大学生・鉄男の出逢い、そして恋愛。
さとるは異常なまでに家に固執し、そして異常なまでに母親の存在を恐れている。それにはひとつの大きな理由があった。
実は昔書いた物の参考にさせてもらった小説でもあって、当時の私はそれだけこの小説(というか -
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椿って、家もそこそこのお金持ち、顔もそれなりの美人で、女ともだちはなし。決して私も友だちになりたいタイプではない。
だけど、自分の武器は美貌だと決めて、それに対する努力は惜しまない。
目標はおばあちゃんみたいに、凛とした女性。
父親のことは殺してやりたいほど嫌い。俗物だから。
母親は見た目もパッとしないし、自分の母であるおばあちゃんと折り合いが悪い。
椿は両親のことなど全く顧みることなく、好きなことをして遊び暮らしている。
ところが、おばあちゃんが事故でけがをして入院した辺りから運気が変わり始める。
仕事も恋愛も家族関係もうまくいかない。
今まで自分が見てきたものが、ことごとく違う様相を見