山本文緒のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ご命日なので、もう一冊。
新婚ではない、熟年夫婦でもない、結婚してから数年の若い夫婦達の結婚生活の不協和音。8編の短編集です。
人生三度目の土下座に悩む小心の夫「土下座」
納得の政略結婚のお嬢様の別宅がある夫への愛「子宝」
口論もできず演じた夫婦の結末「おしどり」
地元の同級生と結婚、貞淑な妻の心の不貞「貞淑」
穏やかな夫の隠された生活。トドメのラスト1行「ますお」
明朗な夫の親との不仲に手を差し伸べる「秋茄子」
同居十年目のカップルの別れ。結婚の有効性を問う「紙婚式」
一緒に暮らすパートナーの見える部分が全てではない。話すことより飲み込む言葉の方が多い。どの短編もラスト5行に掴まれる。
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Posted by ブクログ
散る花と流れゆく水。
落花は流水のままに流れたいと思い、流水は落花を乗せて流れたいと思う。
互いに惹かれながらも抗えない運命を思わせるこの成句のように、母娘三代の“流れ”を描く物語。
家庭や安寧の対極で生きるような女性たち。若くして娘を産み、母に育てさせた女。その娘・手鞠を中心に、1967年から2027年まで十年ごとに時代を移しながら、流れゆく様子を描きます。
自ら流れに落ちたようで流されぬ母、やがて流れに身を任せる手鞠、そして踏みとどまろうとする手鞠の娘たち。
彼女たちが求めるのは、愛か自由か。
安定の見えないその生活に耐えられる彼女たちは強いと思う。 -
Posted by ブクログ
何も考えたくないのに反芻思考をしてしまって、上手く言葉にできないし考えて言語化すること自体が疲れてやりたくないと思ってしまうし、今人生に大疲れフェーズに入っていて、生きていきたくないと思ってしまっていて、
だからこの本の人生、というような感じ、しかも現実的な感じ、嫌なことも考えることもたくさんある感じ、多分今じゃなかったらもっと色々考えて刺さってたんだろうけど、ちょっと疲れた
生きるのって大変だと思った。そういう感想。
いつもみたいな状態じゃなくて感想も変だし何書いてんだろって思うけど、でも読書ってその時の自分自身と向き合う行為でもあると思うから、 -
Posted by ブクログ
カウントダウンより山本文緒さんの事を知り(遅すぎ)最新版を読もうとしたら闘病記であるこちらを見つけました。
タバコも吸わず暴飲暴食もせず人間ドックにも毎年いき、健康には大変気遣っていたのに何故?
ステージ4aになる前にわからなかったのか…と思ってしまいました 人間は必ず死はやってきますが、余命宣告され死と直面したらどうなってしまうのか…
体調が浮き沈みする中、日記として綴るなんてホント強い方ですね 気持ちが落ちてる時だったのでちょっとネガティブになってしまった。
しかしご夫婦の中がとてもよく旦那さんがずっと寄り添ってくれてホッコリさせられました。
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ネタバレ人生で初めて失恋をして、もう恋愛に振り回されたくないと思って、背表紙のあらすじに惹かれて手にとった。読む前は主人公と同じ気持ちだったし、読み始めてすぐ「恋は人を壊す」という文章にも共感をした。他人の一挙手一投足でわたしの幸せが左右されてしまうことにとんでもないストレスと虚しさを感じて耐えきれず関係を切ったのに、それでも連絡をしてしまう自分が凄く恥ずかしかった。だから連絡手段を切って、自分への戒めのために胸に深く刺さるような本を読みたくて探して、この作品に出会った。
読み終わって、思った以上に深く刺さった。恋愛するのがすごく怖くなった。わたし含めてみんな主人公と同じ狂気を持っていると思ってしまっ -
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故郷を離れて久里浜で暮らす佐々井と冬乃な夫婦の元に冬乃の妹である菫が突然転がり込んできた。
その冬乃と、芸人に挫折し、佐々井が勤める会社に正社員として働き始めた川崎の2人の目線で話が進んでいく。
冬乃は突然現れた妹に振り回されるように、カフェを始めることになり、川崎と佐々井が勤める会社はブラック企業。
その他様々な人間関係等を抱え、2人とも疲弊していた。
そんな、なんとも言えない窮屈さややるせなさに包まれ疲弊する2人を支えてくれる温かい人たちがいることに安堵する。
苦難や上手く行かないことに立ち向かう勇気がもらえるかも。
2025.8.17