酒寄進一のレビュー一覧
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先日読んだ『償いは、今』とストーリーでカブっているが、本作品の方が骨太。テレビドラマの原作という印象は同じだが、作者は長年テレビドラマの脚本を手掛けてきただけあって、映像的で疾走感のある仕上がりとなっている。
主人公が囚われの身で絶体絶命のシーンから始まり、視点が変わり時間も前後して複数の事件が並行していくというストーリー。一体どのように交錯するのかの興味で引っ張り、弁護士の人生と法廷劇をうまく絡めている。
二転三転の展開と衝撃的な結末もあって面白いが、もうひとつ物語にコクがない。終盤は強引にバタバタしすぎであまり好きじゃない。でもってこのヒロインも好きになれなかった。意味深なラストだった -
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オーストリアの作家が主にドイツを舞台にして描いたミステリで、児童虐待という重い主題を扱いながらもスピーディーな展開で読ませる秀作。謎解きの要素は薄く、サスペンスを主軸とした捜査小説で、飾らない文章は実直な著者の人格を表しているようだ。
主人公は、やさぐれてはいるが経験豊かな中年男と、才気煥発だがまだまだ未熟な女性という二人。定石の設定ではあるが、中盤辺りまで別々に物語が進行するため、余分なやりとりが発生せず、くどさがないのが良い。真相が明らかとなる要所で二人の追跡行が交差するさまも自然だ。
オーストリア在住で経験の浅い弁護士ヴェリーンは、元小児科医や市会議員らが連続して不可解な状況下で事故死 -
Posted by ブクログ
ドイツの作者が書いたミステリー小説。
話の始まりはアメリカン・ミスの美女たちを乗せたバスが拉致される事と並行してある脳神経科学者の娘が行方不明になることを起点として世界を股にかけて事態は進行する。
話の核となるキーワードは「美貌」について。
物語の裏には、元々ハンサムだった大富豪が事故によってその美貌が崩れ、精神的にも破綻し、凶行に走っていく事があるようだが、まだ明るみには出てきていない。。
話の切り口は斬新で面白いが、いかんせんやることがエグイ。ただ、ともするとある人物を評価するにあたり、その人の人格、内面、能力以上に評価される美貌とその価値について再考するきっかけになるかなーとも思った -
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ネタバレオリヴァー&ピアシリーズ第五作。
オリヴァー&ピアのシリーズなのに、ここ数冊、どんどんオリヴァーが壊れていってダメ男になっていっていて、刑事としてすら使えない人間になっていっていて実に残念。
正直読んでいて痛々しくてオリヴァーのシーンは見ていられなかった。
その分、ピアの頑張りはますます必要で、彼女の方も折角得た新しいパートナーとの関係が危うくなってきていて、こちらも別の意味で心配。なのに、オリヴァーは勿論のこと、他のチームメンバーたちもプライベート優先で、ピアのプライベートは誰も心配しないの?と彼女本人ではないが、そう言いたくもなる。
事件の方は風力発電建設に絡んだ様々な汚 -
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どんなに小さな音でも聞こえてしまう聴覚を持って生まれたカール。その聴覚ゆえに少しも泣き止むことなく、母親を苦しめ続けた。その原因が分かった両親は、地下のサウナ室を改造しカールの部屋とし、音の聞こえない世界を作り上げた。そこで大きくなっていくカール。しかし、年齢とともに様々な不都合が生じ、カールには休まるところがない。そして見つけた静寂の場。静寂を求めてカールのとった行動は…。
20世紀末から今世紀初めにかけてのヨーロッパが舞台。とにかく壮絶な描写が多く、ちょっとしんどくなる。それでも、カールの行く末が知りたくて読み続けてしまう。
読後は、悲しく、もう一度最初に戻ってしまう。 -
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妻を亡くしたシングルファーザーでぜんそく持ちの刑事と猪突猛進型の女性弁護士が、三年の時を経てふたたび出会う『夏を殺す少女』の続編。
ヴァルターは被害者の母に協力するため警察機構のルールをはずれて捜査を進めるが、警察に全幅の信頼を置いているわけではない彼女に騙され振り回されながら、ドイツ、チェコ、オーストリアと駆け巡ることになる。もう一方の主人公エヴェリーンは、信頼のおけない依頼人の弁護に翻弄されていく。
フランシス・ベーコンの「復讐心に燃える者は自らの傷口をひらく」という言葉がキーワードになっており、プロローグからアクセル踏みっぱなしの展開を見せる。骨を折られ血を抜かれて殺される犠牲者達。