酒寄進一のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
どんなに小さな音でも聞こえてしまう聴覚を持って生まれたカール。その聴覚ゆえに少しも泣き止むことなく、母親を苦しめ続けた。その原因が分かった両親は、地下のサウナ室を改造しカールの部屋とし、音の聞こえない世界を作り上げた。そこで大きくなっていくカール。しかし、年齢とともに様々な不都合が生じ、カールには休まるところがない。そして見つけた静寂の場。静寂を求めてカールのとった行動は…。
20世紀末から今世紀初めにかけてのヨーロッパが舞台。とにかく壮絶な描写が多く、ちょっとしんどくなる。それでも、カールの行く末が知りたくて読み続けてしまう。
読後は、悲しく、もう一度最初に戻ってしまう。 -
Posted by ブクログ
ネタバレテーマは面白い。
テロに遭った飛行機の乗客の命と引き換えに、満員のスタジアムの客を守ることを、法律は認めることが出来るのか。
命の多さで判断してはいけないという倫理。
また、より甚大な被害を出さないために小さな悪は許されるとする措置。
もしも、乗客が自力でコクピットのテロリストを制圧していたとしたら、は「仮定」の話。
それよりも、スタジアムから誰も避難させなかったという「必然」の方が、罪が大きいと感じた。
結局、これはコッホというパイロット一人を裁く話ではなく、テロリストという「あり得る」犯罪の中で、遂に働くことのなかったシステムの話なのだろうと読む。
しかし、国家の罪は問われない。
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Posted by ブクログ
妻を亡くしたシングルファーザーでぜんそく持ちの刑事と猪突猛進型の女性弁護士が、三年の時を経てふたたび出会う『夏を殺す少女』の続編。
ヴァルターは被害者の母に協力するため警察機構のルールをはずれて捜査を進めるが、警察に全幅の信頼を置いているわけではない彼女に騙され振り回されながら、ドイツ、チェコ、オーストリアと駆け巡ることになる。もう一方の主人公エヴェリーンは、信頼のおけない依頼人の弁護に翻弄されていく。
フランシス・ベーコンの「復讐心に燃える者は自らの傷口をひらく」という言葉がキーワードになっており、プロローグからアクセル踏みっぱなしの展開を見せる。骨を折られ血を抜かれて殺される犠牲者達。 -
Posted by ブクログ
★3.5
事件分析官と言えば、同じくドイツのアーベルト&クリストシリーズがある。偏屈者とそれに振り回される女性相棒が猟奇的な連続殺人に挑む、という似た設定だ。どちらも気楽に読めるエンターテイメント(以上でも以下でもない)だが、本作は2人のセラピストパートを上手く組み込んでいて先行きのハラハラ感にぐいぐい引っ張られた。
ただ後半、舞台がウィーンに移ってからはスナイデルの変人ぶりが影を潜め、ヘレンの存在感がドイツの2人組より優ったような気がする。さらに事件後半はご都合主義が目立って少し雑な収束感が否めない。シリーズらしいので次作に期待したい。 -
Posted by ブクログ
本作を土台とした、芝居を観賞した記録として。
超都市メトロポリスを舞台に、地の底で機械のように働く人々と、それを支配する立場の人間。やがて、機械人間に煽り立てられた労働者たちが暴徒化していく。
最初のうちは労働者と支配階級を描いた社会派の話に思えたが、徐々に主人公の心の内の葛藤を描いた隠喩のようにも受け止められた。ダンスを盛り込んだ身体表現やミュージカル的な歌も駆使して、解釈を観客に委ねる幅をもたせた脚本、演出の効果と思われる。ただ、その分感情移入することは難しく、舞台としての求心力に欠ける。
支配者の息子役の森山未來、身体能力はもう抜群で、動き、静止ポーズ、どれを取っても美しい。以前観