中島敦のレビュー一覧
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改めて読んでみたくなって、中島敦を手にとった。
本書を編纂するにあたり、解説を書いた氷上英廣氏は李陵に代表される中国物、悟浄出世に代表されるユーモアと哲学を交えた短編、環礁に代表される南洋物とおおまかに3種類に分けている。それぞれに趣の異なる作風だが、私自身としては、やはり中島敦の代表作「李陵」が良かったと言わざるを得ない。わずか50ページと非常に短い小説だが、凝縮された内容に、長編を読んだほどの満足感がある。
今回あらためて中島敦を読んでみて思ったことがある。
中島が主人公に据える人物は、皆おしなべて「優秀だが十分にその道を極めきれず、そばにいる極めた人物にさまざまな思いを抱く」という特 -
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ネタバレ≪引用≫
地に落ちた矢が軽塵(けいじん)をも揚(あ)げなかったのは、両人の技がいずれも神(しん)に入っていたからであろう。
(なんじ)がもしこれ以上この道の蘊奥(うんのう)を極めたいと望むならば、ゆいて西の方(かた)大行(たいこう)の嶮(けん)に攀(よ)じ、霍山(かくざん)の頂を極めよ。そこには甘蠅(かんよう)老師とて古今(ここん)を曠(むな)しゅうする斯道(しどう)の大家がおられるはず。老師の技に比べれば、我々の射のごときはほとんど児戯(じぎ)に類する。の師と頼むべきは、今は甘蠅師の外にあるまいと。
「既に、我と彼との別、是と非との分を知らぬ。眼は耳のごとく、耳は鼻のごとく、鼻は口の -
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添えられたイラストが適切なのかどうかは、私には評価できない。わからないからだ。山月記に登場するのは虎であって、猫は一匹たりとも登場しないが、ここにはたくさんの猫のイラストが描かれる。イラストレーターが「ねこ助」という名前の方であるようなので、たぶん猫がお得意で、だからたくさん猫のイラストを描いているのかもしれないし、出版社もそれを求めて依頼したのかもしれない。しかしそれが適切なのか、よくわからない。李徴でも袁傪でもない、幼児的人物のイラストも、どういうつもりで添えているのか、よくわからない。よくわからないけど、これが現代イラストレーターとのコラボレーションによる新しい文学の提案だと言われれば、
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短い生涯ながら二年の作家人生の中で名作を残した悲運の作家『中島敦』の代表作三篇を、読みやすい現代語に訳した作品集。
山月記
中国の唐の時代、高位の役人が旅の途中人食い虎と出会う。が、そのトラはかつて優れた才能を持ちながら離職し詩人としても芽が出ずに失踪したかつての友人の変わり果てた姿だった。
多分『中島敦』作品の中で一番有名なものだと。
高校の国語の教材で読んだことしかなかったので『乙女』シリーズを読むのに、ちゃんと読んでみようと一緒に借りたのですが、むしろあちらのほうが原文でしたね。
「本気出せばー」って言ってるような奴が頭に浮かんでしまった。いや、だったら出してみろよ、みたいな。
ち -
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ネタバレ李陵について
・李陵への漢への想いや恨み、匈奴への恩などで思考がぐるぐるし、どっちつかずになっているさまは自分を見ている気持ちになった
・寒く困難な状況でも芯を通す蘇武を見ながら自分と対比して恥じる姿に共感
・見返りを求めない祖国への愛は立派。李陵の愛は確かに蘇武に比べ低かったかもしれないがそれだけで人の優劣はつけられるものではなく、李陵にとっては祖国よりもっと大事な、それこそ見返りを求めないレベルで愛する何かがあったんじゃないかな?と想像します。確かに芯の通った姿は格好いいけど、それに揺さぶられすぎて好きでもないものに人生を捧げないようにしなくてはな。と思いました -
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まず装画が怪しげで綺麗!いわゆるジャケ買い
あとタイトル『疵の迷楼』別世界へと誘い込まれるような魅惑的な感じに加え、名だたる文豪たちの作品に興味を引かれてしまう。
まだ、このとき耽美という言葉の意味を理解していなかった。ただ「美しい」くらいにしかとらえていなかったので読んでみたら本当の意味を思い知らされ、常軌を逸した世界への入り口だった。
なかなか普通の感覚では理解、共感し難い作品ばかり。どの作品も何かに心を奪われていたり、病的にのめり込んでいたりと現実からかけ離れていて危うい空気が漂っている。
抗いがたい好奇心や欲望、まるで[パンドラの箱]を開けてしまったようなそんな感じだ。
収録されて