中島敦のレビュー一覧

  • 李陵・山月記 弟子・名人伝

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    名人伝 ー 技を極めるため、成長しつづけて辿りつく先は… 初めて読んだ時、ラストは軽い衝撃でした。人生における老いの一つのモデルとして今も心しています。段々と衰える、ではなく本質を極めていく人の姿が見えます。

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    2013年02月22日
  • 李陵・山月記 弟子・名人伝

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    ネタバレ

    ≪引用≫

    地に落ちた矢が軽塵(けいじん)をも揚(あ)げなかったのは、両人の技がいずれも神(しん)に入っていたからであろう。


    (なんじ)がもしこれ以上この道の蘊奥(うんのう)を極めたいと望むならば、ゆいて西の方(かた)大行(たいこう)の嶮(けん)に攀(よ)じ、霍山(かくざん)の頂を極めよ。そこには甘蠅(かんよう)老師とて古今(ここん)を曠(むな)しゅうする斯道(しどう)の大家がおられるはず。老師の技に比べれば、我々の射のごときはほとんど児戯(じぎ)に類する。の師と頼むべきは、今は甘蠅師の外にあるまいと。

    「既に、我と彼との別、是と非との分を知らぬ。眼は耳のごとく、耳は鼻のごとく、鼻は口のごとく思われる。」というのが、老名人晩年の述懐(じゅっかい)である。




    ≪レビュー≫

    中島敦を読んだのは初めてである。
    漢文学者の父を持つ敦は、15歳にして3人の母親を持ったという。33歳で亡くなっている。

    「名人伝」は、趙の邯鄲の都に住む天下第一の弓の名人になろうと志を立てた紀昌という男の物語である。
    紀昌はまず、百歩を隔てて柳葉を射るに百発百中するという達人の飛衛に弟子入りする。飛衛の教えのままに弓の名手になった紀昌は、「天下第一の名人となるためには、どうあっても飛衛を除かねばならぬ」と飛衛に矢を向ける。この戦いは互角だったが、飛衛は身の危険を感じ、紀昌に新たな目標を与えた。それが甘蠅(かんよう)老師だった。
    飛衛が「己の業が児戯に類する」というほどの甘蠅老師は、紀昌に「不射の射」を教える。
    9年の歳月が流れ、山から降りた紀昌は、「以前の負けず嫌いな精悍な面魂はどこかに影をひそめ、なんの表情も無い、木偶のごとく愚者のごとき容貌に変って」いた。そして不思議なことに弓も矢も再び手にすることはなかったという。
    やがて老いた紀昌は、「既に、我と彼との別、是と非との分を知らぬ。眼は耳のごとく、耳は鼻のごとく、鼻は口のごとく思われる」と述懐する。
    不思議なエピソードが唯一残っている。知人の許に招かれた紀昌が、弓と矢を見て「 それは何と呼ぶ品物で、また何に用いるのか」と聞いたというのだ。射の名人たる紀昌は、既に弓を忘れてしまっていたのである。

    物語の概要は上記の通りである。
    とても不思議な話だ。
    業の深奥を極めたはずの射の名人が、最後には弓の名前も使い方も忘れてしまっていたというのである。
    名人というよりは神の域に達してしまった者にしか見えない世界がある、とも取れる話である。

    興味深いのは、「神に入る」や「蘊奥を究め」などの表現が、囲碁名人の允許状や将棋名人の推戴状に通じているところだろう。
    もしくはこの作品から取ったのかもしれない。

    囲碁や将棋の物語を書くには、この話は使えるかもしれない。

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    2012年10月04日
  • 新撰クラシックス 李陵/山月記(小学館文庫)

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    李陵は子供の頃から何度読んだやら。読むたびに心に染みいります。山月記は森見登美彦のパロディ読んだ後なので違った面白さ。
    しかし、新装で600円か。昔は200
    円ちょっとで薄いペラペラの新潮?文庫買えたのだが。

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    2012年03月06日
  • 李陵・山月記 弟子・名人伝

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    ネタバレ

    『李陵』

    『弟子』

    『名人伝』

    『山月記』

    『悟浄出世』

    『悟浄歎異』

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    2011年07月11日
  • 李陵・山月記 弟子・名人伝

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    ●山月記●
    この気持は誰にも分らない。誰にも分らない。己と同じ身の上に成った者でなければ。
    事実は、才能の不足を暴露するかも知れないとの卑怯な危惧と、刻苦を厭う怠惰とが己の凡てだったのだ。己は漸くそれに気が付いた。
    この胸を灼く悲しみを誰かに訴えたいのだ。

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    2012年03月14日
  • 光と風と夢 わが西遊記

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    いろいろ思い入れがあって、たぶんこういうレビューを書くのに適さない。悟浄とスティーブンスンが好きになる中篇。講談社文芸文庫は注釈がないので、ある意味読みやすく、ある意味つらいカモ。

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    2009年10月04日
  • 経営者の死角 見えていないものにこそ経営の真理がある

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    知り合いに薦められて一気読みした。経営者の目的は、財務的な数値だけではない。血の通った社員への愛情や自律を重視する考え方に、共感しかない。その裏にある苦悩もまた、ここに書かれている以上のことがあると想像し、いち管理職として自分に何ができるだろう、と問う。

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    2026年09月26日
  • 山月記(乙女の本棚)

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    ネタバレ

    他の方も書いているが、「臆病な自尊心」と「壮大な羞恥心」によって、自ら虎に成り果ててしまった李徴の後悔は、私は大人になってようやく分かった。

    誰しもが、心に虎を持っている。もっと早く、人と関わっておけば。縁を切らなければ。もっとこう生きようと、思わせてくれる作品であった。

    読みやすく読後感も良く、全てにおいてスッキリする作品でした。

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    2026年09月20日
  • 山月記(乙女の本棚)

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    ネタバレ

    李徴と自分が重なるところがあった。私も虎になりかけていた。
    李徴が大切に思っていたのは詩だったのか、それとも才能がある自分だったのか。
    私もプライドという猛獣を、こころに潜ませている。
    虎にならないように、わたしは自分と向き合わなければいけないなぁと思った。

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    2026年09月05日
  • スラよみ!現代語訳名作シリーズ 山月記

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    ただただ懐かしむために読書。
    教科書で読んだときは難しい単語には文外に注釈が散りばめられてたな。臆病な自尊心という単語がまあ懐かしい。先生が黒板に書く要点を暗記して、ちょっと聞き方を変えたものがそのままテストに出た記憶。現代文の勉強方法って暗記でいいのか……。

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    2026年09月01日
  • 李陵・山月記 弟子・名人伝

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    ネタバレ

    高校の国語の授業で「山月記」を学んだので、短編小説を挑戦してみたいと思った。

    中国の古典に想を得ているので、1ページあたりの情報量で難しい漢字のオンパレードでちょっと読み飛ばす部分もあった。山月記は授業で読解したので読めたが、それ以外は個人で調べた。


    『李陵』は、栄華を求める若者の葛藤や、家族間の確執をリアルに描いた作品である。人間の弱さや孤独を感じさせる物語であり、欲望や現実との葛藤が心に深く訴えかけるものだった。


    『山月記』は、人間の欲望と現実、人と幽霊、現世とあの世の境界を巧みに描いた作品である。美しい景色と恐怖が交錯する中で、主人公の心理の葛藤が鮮やかに表現されている。

    老師匠と若弟子の友情を描いた作品。弟子は老師匠の教えに感銘を受け、彼に尽くすが、やがて老師匠は病に倒れる。弟子は看病を続けるが、ついに老師匠はその世を去る。弟子は、彼の教えと人との繋がりを胸に新たな生き方を模索する。

    『弟子』は、師弟の絆や人間の生と死について描いた感動的な作品である。弟子の純粋な心と老師匠の優しさが語りかけるようであり、読む者に感動を与える。


    『名人伝』は、才能と嫉妬、師弟の葛藤を描いた秀作である。名人の苦悩や弟子の成長がリアルに描かれており、人間関係における複雑な感情が巧みに描かれている。

    中島敦作『李陵・山月記・弟子・名人伝』は、人間の複雑な姿や感情を繊細に描いた作品集であり、深い感動と考えさせられるテーマが多く含まれている。

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    2026年08月29日
  • 李陵・山月記

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    有名なフレーズもたくさん出てきて、学生の時よりワクワクしながら読むことが出来た。虎になった李徴が「臆病な自尊心と尊大な羞恥心のせいで自分の才能や人生を切り拓けなかった(意訳)」「人間は猛獣使として猛獣という己を飼い慣らさないといけなかった(意訳)」と後悔の念に苛まれるシーンが見てて辛かった
    李徴はもうじき虎として生きていくため、人間としての記憶や気持ちを失っていくことも悲しいが、すべてを知った袁傪のことを思うと、読んでいてやりきれない気持ちになった

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    2026年07月17日
  • 山月記(乙女の本棚)

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    臆病な自尊心と尊大な羞恥心

    高校時代に授業で習った記憶。
    「『戸外で誰かが我が名を呼んでいる』とあるが、この声は何だと思うか」と指された友人が「李徴が自分で発していたのではないか」と答えていたことを覚えている。
    自身の持つ性情(猛獣)をコントロールできなかった李徴が虎に変じるのだから、自分の内側から聞こえてきた声、という回答が腑に落ちたから覚えていたのだろう。
    ねこの絵がかわいい。

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    2026年07月01日
  • ビルディング(乙女の本棚)作品集(乙女の本棚)

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    乙女の本棚シリーズ。夢野久作のビルディングが収載された、ねこ助さんの作品集です。

    ビルディングは、とっても短いストーリーですが夢野久作らしさが全開。ねこ助さんのイラストが、より一層作品にパワーを与えていました。最後のシーンの可愛らしさと不気味さの混じった様子が印象的でした。

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    2026年06月25日
  • スラよみ!現代語訳名作シリーズ 山月記

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    戦前の作家、中島敦の代表作3作を、親しみやすい現代語訳で収録した一冊。

    表題作の『山月記』は、李徴のように人間なら誰しも心の中に内なる虎を宿しているのだと、深く考えさせられる作品だった。自尊心や羞恥心という名の虎とどう折り合いをつけ、ままならない人生とどう直面すればいいのか。葛藤で激しく揺れ動く李徴の心情が、痛いほど響いた。

    『名人伝』はガラリと雰囲気が変わる。弓の名人を目指す紀昌の修行は、常軌を逸したシリアスさでありながら、どこか過剰でコミカル。そのギャップにクスッとさせられつつも、一つの道を極めた先にある教訓めいたオチには、ハッとさせられた。

    最後に収録されている『李陵』では、国家の理不尽に翻弄される将軍の運命が描かれる。祖国への忠義と裏切り、生への執着、そして武人としての誇り。極限状態の中で生きる李陵の葛藤の日々に、胸が抉られる思いだった。

    いずれも漢学に精通した著者ならではの作品であり、人間の内なる心情に深くフォーカスした作品集だった。

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    2026年06月06日
  • 李陵・山月記

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    【感想】
    流麗美文、格調高い文章とはこういうものを言うのだなと。時に差し込まれるグロテスク表現もおもしろい。

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    2026年05月22日
  • 李陵・山月記 弟子・名人伝

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    短編集でどれも読み応えがありました。
    山月記、李陵、悟浄歎異が特に好きな話です。漢字が多く、自分には意味が分からないのが多いですがそれでも読み進められます。

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    2026年05月16日
  • 山月記(乙女の本棚)

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    〈乙女の本棚シリーズ〉
    中島敦+ねこ助

    李徴は、かつての自らの行いに焦燥に駆られた時にはすでに遅く、発狂して飛び出した。

    後に袁傪が、使いに出たところ猛虎に襲われかけるのだが、人間の呟き声に我が友ではないかと叫ぶ。

    叢から出てこないわけを尋ねると今は、異類の身となり、そのあさましい姿を見せるわけにはいかないと。

    なぜ虎の姿となったのか…
    いや、初めから今の形のものだったと思えば、幸せなのか…
    だが、人間だった記憶がなくなることを恐ろしく、哀しく、切なく思っているのかもしれない。

    虎になったことで、己れの卑怯さや刻苦を厭う怠惰さに気がついた。

    滂沱の涙を流して全てを悔いたとしても、もはやどうにも元には戻れない。

    悲しくも深い話。




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    2026年05月10日
  • 李陵・山月記 弟子・名人伝

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    ネタバレ

    『山月記』は教科書で読んだことがありましたが今読むとまた良いですね(笑)他の作品は聞いたことがあるくらいで初めてでした。全部良かったけど特に『李陵』『弟子』が良かった(笑)『李陵』は歴史の本で内容は知っていたけど良いですね~(笑)引き込まれていく感じで楽しめました(笑)このイベントがなければ中々手を出さなかったっと思う(笑)

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    2026年04月26日
  • 山月記・李陵 他九篇

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    【収録作品】李陵/弟子/名人伝/山月記/文字禍/悟浄出世/悟浄歎異/環礁/牛人/狼疾記/斗南先生

    中島敦の漢文調のテンポの良さが非常に好きなので、評価に迷った。テンポや語彙に比重を置けば文句無しに星5の作品。自分の本棚内で他作品と評価軸を合わせる目的で、ストーリー自体は寓話的で目新しさを感じるものではないこと、文学的な情景描写があまり見られないことから星4とした。後から思い返して星5にするかもしれない。

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    2026年04月05日