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Posted by ブクログ
「李陵」
李陵と司馬遷、二人の不遇な男の物語。
祖国への忠心を頑に守るのか、柔軟に新たな恩義を大切にするのか、どちらの生き方が正しいのかは誰にも判断できないが、迷いのある者が苦しむことは確か。
「悟淨出世」
西遊記でおなじみの沙悟淨が、三蔵法師一行に出会うまでの話。自分とは何なのか、何のための人生なのか。答えのない問いにとらわれて苦しむ悟淨の姿には、誰しもが人生に対して感じる言いようの無いもどかしさが表れている。
案ずるより生むが易しという、簡単な言葉で殻を破れるのもまた、悩みというものの本質か。
「牛人」
魯の名大夫、叔孫豹のエピソード。突如叔孫豹の前に現れた生き別れの倅・牛が、叔孫を死の恐怖へと追いこんでゆく。理由なき、得体のしれぬ恐怖というものを追及したかのような作品。
「盈虚」
衛公蒯聵にとっての二重の意味での復讐劇。因果応報、盛者必衰。
「名人傳」
弓で身を立てようと志を立てた男、紀昌にまつわる逸話。弓を極め、弓を必要とすらせず、弓とは何かを忘れるまでに至った紀昌の姿を以て、名人とは何か、物事の極みとは何かを問いかける作品。
「弟子」
孔子の弟子の中でも一際骨っぽい好漢・子路の生き様を、孔子や他の弟子達との複数のエピソードを紹介する形で解き明かす。中国の古典・史書には度々登場する豪傑タイプ同様、不利な状況と知りつつも、一度禄を食んだ君主を守るために戦い散って行った子路だが、そうした美徳とも取れる部分を、ある種の引き際の悪さとして評価していなかったという、どこか現実主義じみたところに、孔子が他の思想家たちから抜きんでた存在として語り継がれている理由があるように思う。
それでもやはり民衆に好まれるのは、子路のような直情にして義理堅く、武骨にして素直な男であろう。
「山月記」
ー己の場合、この尊大な羞恥心が猛獣だった。虎だったのだ。ー
博学を活かし官吏として勤めるも、清廉を気取りすぐにやめてしまう。詩の道を志さんとしたものの、己の才能が無い事が明らかになることを恐れて打ち込むことができない。どんな形であれ、志した夢が有る者なら、他人事としては読めない李徴の独白は、鬼気迫るものがある。醜き自尊心という己の内の獣が、身体の表面まで現れ乗っ取られてしまうという、苦悩の行き着く先の表現が非常に秀逸。
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