中島敦のレビュー一覧
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人間の本質とは何か、人としてどう生きるべきかを考えさせられました。中島敦の4作品がおさめられています。漢語が多く使われているため、とっつきにくく思われますが、4作品いずれも内容が濃く、印象に残る作品ばかりです。
「山月記」
詩人に成りそこなって虎になった男、李徴のお話。高校生のとき授業で出会った作品。恐怖を覚え、自分の日頃の行いを振り返らざるを得ない気持ちに駆られた記憶。今読んでもゾクっとする。
「名人伝」
射術を極める男、紀晶のお話。本物の人物とはいかなる人物か、一芸に秀でるとはどういうことか考えさせられる。書も同様で初めは技巧の上達にばかりにとらわれる。“よく拙を蔵す”という言葉がある -
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表題作「山月記」は言わずとしれた名作だが、「文字禍」「狼疾記」「環礁(ミクロネシヤ巡島記抄)」が特に好き。
「李陵」は読むのが大変で、まだあまり良さが分からない。
心の揺れ、自問自答、自意識、存在の不確かさ あたりがテーマになると思う。
とにかく文章が綺麗で、漢文的で硬いが意外と読みやすい。
思うに、ある種の人にとっては時代を超えた普遍性がある内容なので、波長が合えばするすると入ってくる。
狼疾記に書かれてる苦しみとか、本当にわかる、わかる、と思う。
中島敦は身体が弱いし当時の医療の質は推して知るところなので私なんかよりよほど苦しいんだけど。
狼疾記や環礁を読んでから山月記を振り返ると、 -
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『李陵』
主人公の李陵の他に、蘇武、司馬遷の生き様が書かれていて、
蘇武は、李陵の旧友で同じく匈奴に捕まってしまったけど、超立派な漢気の持ち主で、己の愛国心を貫き、最後は祖国に呼び戻された、まさに天命の持ち主。
司馬遷は、李陵を擁護する発言が原因で腐刑(男性器ちょん切り)と言う彼のプライド的に死ぬ程耐え難い屈辱を受けながらも、史記を書き上げると言う使命だけで生き、書き上げた後すぐ亡くなったらしい。
李陵は、充分戦ったし、匈奴の捕虜になったのも仕方ないし、祖国もそんな李陵に対して冷たい仕打ちだったけど、蘇武と比べちゃうとそこまでの人じゃないって言うか中途半端で。
李陵自身、蘇武に会うとイライ -
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ネタバレ## 感想
『李陵』は勇猛な将である李陵が敵軍に捕えられ、祖国へ帰りたいと思いながらもその祖国から辛い目に遭わされ、捕えられた敵軍の中にも好人物や良い風土があることを知り、葛藤する話。
途中、同じく漢にいた蘇武という人と会う。
この蘇武は同じような境遇ながらに祖国を愛し続けていて、しかも最後には運良く漢に帰れることになる。
そんな李陵を見て嫉妬や羨みのような感情を覚えて悲しむ李陵の心中は計り知れない。
私たちは常に何かに所属している。
家族、学校、会社、国。
自分が属するものが信じられなくなることは、どんな気持ちだろう。
こんな風に祖国に裏切られるなら、確かに諦めてしまうかもし -
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乙女の本棚シリーズから、ねこ助さんの「ビルディング 乙女の本棚作品集」です。収録されてるのは、新見南吉『赤とんぼ』、中島敦『山月記』、太宰治『魚服記』、堀辰雄『鼠』、夢野久作『ルルとミミ』のイラストの中から、ねこ助さん自身が選んだ作品です。このほかに描き下ろしとして、夢野久作『ビルディング』が新たに収録されています。
これまでの「乙女の本棚作品集」(しきみさん、ホノジロトヲジさん)と同様、『ビルディング』以外の作品については本編を読むことはできません。イラストを眺めながら、あぁ…そうそう、こんなストーリーだったなぁ…と、思い出す感じですので、本編を読まれてからこの作品週を手にしたほうがよ -
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中島敦の『悟浄出世』に出てくる妖怪の言葉への懐疑心超わかる。でも、言葉を軽蔑するのは化け物という皮肉も込められてるのかな?中島敦の多層的アイロニー?
中島敦が比喩的にロンドンの中心のチャリング・クロスから半径3マイルにのみ文学は在り得るって言ってるけど、そうだよね。赤道に近づくに連れて文学が無くなっていく傾向あるし、ヨーロッパでもスペイン・ポルトガルとかは何故か文学が極端に少ない傾向ある。
中島敦めちゃくちゃ好きな作家だと確信した。今まで山月記しか読んだこと無くて、山月記も凄すぎてずっと印象に残ってたけど、他の作品もこんな良いんだな。全集読みたいレベル。
中島敦
ナカジマ・アツシ
著者プ -
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表紙や作者の紹介ページで使われるイラストがとても美しい。適度に服装、髪型は本人の雰囲気を残しつつ、完璧に美化されていてイラストレーターの腕の良さにたまげる。
文豪たちの最後の作品を集めた本で、まとめて読むとその文豪らしさがよく感じられて良い。
芥川の「歯車」 私も偏頭痛持ちだからこの現象(閃輝暗点)よくわかる!と共感するとともに、精神病になりやすい家系の人なんじゃないかと邪推してしまった。
太宰の「グッド・バイ」 女性関係の華やかな作者の理想の別れ方を描こうとして、結末までいかなかったのは収集つかなかったのかな、と思った。
梶井「のんきな患者」 若い頃から結核を患ってたから、今回の主人公 -
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「山月記」を高校生の頃に初めて読んだとき、格調高い文体や比喩の妙に心を奪われた。しかし再読した今、最も胸を打ったのは李徴の内面である。彼が味わった孤絶、人としての道を踏み外した悔恨、理想と現実の乖離から生じる自己否定、そのすべてが痛切に迫ってきた。特に「己の毛皮の濡れたのは、夜露のためばかりではない。」という一文に宿る、言葉にならない悲しみが深く響いた。夜露では覆いきれない涙や苦悩、誰にも理解されないまま時だけが過ぎていく空虚さが、その短い表現に凝縮されているように感じた。当時は気づけなかった“距離”―人間関係の中にある微細な断絶、孤独の輪郭、そして胸を灼く後悔。それらを今では読み取れるように