中島敦のレビュー一覧
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「その声は、我が友、李徴子ではないか?」
高校の現代文の授業で読んで以来。言い回しや表現が小難しかったけど、書かれていることにハッとさせられたのを覚えているし、今でも折に触れて戒めのように思い出すことがある。
そして当時あやふやだった部分も、時を経て人生観が熟し(言い換えれば"老い"かもしれない)、さらに深く読むことができた気がする。
「臆病な自尊心」と「尊大な羞恥心」。己の才能を誇りながらも誰より傷つくことを恐れ、ただ驕り高ぶって刻苦を厭い、努力を放棄してきた李徴の無念と後悔。
李徴を虎の姿に変えてしまったものの正体が手に取るように分かるから、刺されるような鋭い痛みを覚え -
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「狐憑」…最後に2つの意味でギョッとした。想像力と創作とそれを発表する事が許される自由な時代に生まれて良かった。(私は読む側だけど)
「木乃伊」…今なら実際に行くことができたり、ネットで写真や動画で知る事ができる外国を舞台に、どんな風に思い描きながら書いたんだろう。
「文字禍」…かなり好き。長年海外に住んでいると、ネット以外では日本語を目にする事が殆どないので、たまに手書きで文章を書いてると、手が勝手に動くくらい書き慣れた漢字なのに間違ってるように思えて、長く見つめれば見つめるほど見覚えのないような、変なモノに見えてきたりする事がある(ゲシュタルト崩壊)ので、それが作中に出てきた時にはちょっと -
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ネタバレ高校の時、現代文か何かで読んで衝撃的だった話。今読んでも秀逸なのがわかる。文語体の一言一句が、心に共鳴する。
虎になったのは、自分の所為だと語る李徴の物悲しさよ…そして虎になっても、詩作に耽る李徴の傲慢さよ…人生を捧げるほどのことがそこにはあったのだろう。自分はどうだ?全てを打ち捨ててでも、やり遂げたいことがあるか?ああ、あるとも!やってやろうではないか!
人生、何も成し遂げないには長すぎるが、何かを成し遂げるには短すぎる。結局はやれることをやるしかない。そして、横で比べて卑下しないことだな。いや、それができれば苦労はないけど。
華麗な挿絵に関しては、特にコメントはない。まぁ今時の子どもに手に -
購入済み
何度も読み返したい
高校の現代文の教科書にも出てくる小説。自戒の為何度も読み返したくなる一冊です。名文が散りばめられています。スマートホンで無料にかつ気軽に読めるのが嬉しい。
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狐憑き
現在の詩人、小説家にあたるシャクが物語を思い描けなくなるやいな村人に食べられてしまう話。生活に必要不可欠でない行動は表面上受け入れられていても、心の底では軽蔑されており、つまらなくなれば笑いは怒りに変わり、排斥されてしまう。
牛人
恋人に不義理を働いた主人公が、産まれた子供にジリジリジリと追い詰められ、最終的に怒る気力もなく、その悪意への畏怖の中餓死していく話。不義理が産んだ子はこの世の悪意そのものであり、自然への畏怖に匹敵するほど透明な恐ろさをもつ。
文字禍
文字の不思議。なんで線の集合体が意味や音を持ち得るのだろう。この問いを深く考えてはいけない。文字の精霊に食い殺されてしまう -
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何故いま中島敦?という感じで書店に並んでいたこの角川文庫は初版が昨年、2020(令和2)年11月となっている。「奇妙な作家」円城塔さんが2017年に川端康成文学賞を取った『文字渦』という短編(未読)は、本書の「文字禍」に由来しているということのようで、それで角川書店がこれを発行してみたのであろう。
中島敦は私が中学生だか高校生だかの頃国語の教科書に載っていて、ちょっと古くさくて硬い文体は非常に簡潔で、物語を端的に刻み上げる感じなのが私の周りの同級生たちの間では好評だった記憶がある。たしか高校の頃に新潮文庫の『李陵・山月記』を購入して読んだが、それきりになっていた。
この新潮文庫版短編集を -
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中島敦の短編集。
ちょっとおもしろいセレクションで、「狐憑(きつねつき)」「木乃伊(ミイラ)」「文字禍(もじか)」「牛人(ぎゅうじん)」「斗南先生(となんせんせい)」「虎狩(とらがり)」の6編を収める。
中島敦といえば、流麗高雅な漢文調の文章が思い浮かぶが、それも知識人一族の中に育ち、漢文の素養があってのこと。祖父も伯父たちも漢学者、父は漢文教師、生母・継母・伯母も教師。とにかく教養を叩き込まれていなければ、自分の手であれだけの作品を生み出すことなどできないのだろう。敦の強みはその上に、英語も学び、世界への目が開かれていたことだ。遠く、ギリシャ、エジプト、メソポタミアまで。時を超え、それらの地 -
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中島敦の本を開くと紙面が黒々としている。つまり、漢字が多いのだ。中国の古典に題材をとった小説が多く(この本に収められてあるのは、そういうのばかり)、難しい漢字、知らない言葉が多く、実は四割くらい意味が分からなかった。内容も哲学的で一字一句理解しようとすると疲れる。が、全体的に面白かった。
面白かった理由のその一は、読んでいて賢くなった気がするからだ。北風のことをいう「朔風」という言葉など漢文から来ている格好いい言葉遣い、漢字使い、漢文の知識がありとあらゆる所に散りばめられており、意味は半分くらいしか分からなくとも「これも日本文学の源流の一つなんだ。この短い熟語の中にぎゅっと意味が凝縮された