中島敦のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
読み始めると案の定、「漢文訓読体」というのでしょうか、
その古い文体に悪戦苦闘しました。
しかし、知らぬ間になんだかどんどん夢中になっていきます。
単純に物語が面白い。どの話も。
特に良かったのは、西遊記の河童の沙悟浄を主人公とした二作。
悩める沙悟浄が妖怪の賢者たちを訪ね歩き、教えを乞う。
そののちの三蔵法師一行との旅を彼の視点から綴った悟浄歎異。
まさか沙悟浄をこんな風に描くとは。
読み切るのはとても苦労しましたが、非常にユーモラスで、
とても楽しめた一冊です。
<収録>
1.李陵
2.弟子
3.名人伝
4.山月記
5.悟浄出世
6.悟浄歎異 -
Posted by ブクログ
ネタバレ■江戸川乱歩「鏡地獄」
既読を再読。
■谷崎潤一郎「人魚の嘆き」
未読のまま。
水島爾保布の挿画ありの中公文庫で読みたいので。
■小栗虫太郎「方子と末起」 ★
初読。まさことまき。
百合、スール、手紙のやり取りという少女小説、にして不思議の国のアリスモチーフ。
推理小説<恋愛小説。
■泉鏡花「妙の宮」 ★
初読。
たった4ページだが、なんでこんな風景を思い描いたのだろう? と。
■木下杢太郎「少年の死」
高原英理・編「少年愛文学選」で既読。
■坂口安吾「蝉―あるミザントロープの話―」
初読だが、混乱をそのまんま文章にした風情で、よくわからなかった。
Misanthrope はフランス -
Posted by ブクログ
乙女の本棚シリーズから、中島敦さんとしきみさんのコラボ作品『文字禍』です。この作品、難しいっ!!
ストーリーは、アッシリアの碩学ナブ・アヘ・エリバ博士が「文字の精霊」に関する研究をすすめるうちに、文字がもたらす恩恵とともに災いにもたどり着く…。アッシュールバニパル王に進言するものの聞き入れてもらえず、悲惨な最期を迎えてしまうというもの…。
『…文字の無かった昔…歓び(よろこび)も智慧(ちえ)もみんな直接に人間の中に入って来た。…文字が普及して、人々の頭は、もはや、働かなくなったのである。』
なんか、この一文が刺さりました。文字に頼り過ぎているのかな…とか、思ってみたり…だけど、文 -
Posted by ブクログ
アッシリヤの碩学ナブ・アヘ・エリバ博士が、「文字の精霊」が人間に及ぼす災いについて研究するうち、分析的思考や文字そのものへの否定にまで陥り、アッシュールバニパル王に進言するものの認められない。
やがて大地震で自家の書架が倒れ、"文字共の凄まじい呪の声"とともに落ちかかってきた書籍(当時の粘土板)の下敷きとなり、圧死してしまうという最期を迎える。
「文字ノ害タル、人間ノ頭脳ヲ犯シ、精神ヲ痲痺セシムルニ至ッテ、スナワチ極マル。」
文字を精霊に見立て、文字を学び言葉を手に入れた者たちはつぎつぎと狂わされる、とする見解には思わず頷かされるばかりだった。
文字を使っているだなんて