米原万里のレビュー一覧
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時は1960年代前半、舞台はチェコスロバキアにあった在プラハ・ソビエト学校。
ギリシャを故国に持つリッツァ、ルーマニアの要人を父にもつアーニャ、ユーゴスラビアから来たヤスミンカ、それから日本人のマリ(主人公で作者)ら少女たちの物語。
思春期の女子たちの対話や言動は、どの時代どの国どの人種であっても、かつて少女だった私も、似たようなもんなんだなぁと微笑ましく思い返してみたり。当時あの国では文房具は何をどう使っていたかまでが記されてあったり。
だがしかし、たんなる青春群像劇ではないのが、この作品の別の顔というか、本質というか、ミソというか。
『私たちと多少異なる点があるとしたら、彼女らが子どもな -
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あまり触れてこなかった時代(WW2前後のロシア)が舞台の話。学生時代の印象的すぎる先生の謎を(解けるようになったので)解こうとする主人公視点で徐々に謎が解明していく。最終的に二人の養女だった同級生から話を聞けてほぼ全ての謎がとけることとなる。外務省での公式資料から劇場の衣装係、強制収容所の手記の著者に古い友人と様々な立場が関わってくる。
戦後シベリア抑留があったことは知っていたが、ロシア人ですら逮捕され劣悪な環境で強制労働などがあったことはこれで初めて知った。普通の文庫本か少し厚いくらいのボリュームなのに、書かれている人々の記録や人生や悲しみが濃厚すぎる。ロシアでは友達同士は愛称で呼ぶが、そ -
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ネタバレオーディブルで聴いた。
面白かったー!!
1960年代にプラハのソビエト学校で小・中学生時代を過ごした著者の、当時の友達の話と、大人になってからその友達に会いに行く話。
冷戦、東欧諸国の民主化など、現代史でさらっと習った出来事に、まさに影響を受けた人たちの話で、私にとって遠い世界の話だったけれど、そんな世界の中で生きている人たちが、著者の親友だったから、本を読んでいる(聴いている)間はとても身近に感じられて面白かった。
3人の友達が、3人とも魅力的で個性的で忘れられない。
まだネットやスマホが普及していない時代だったから、すぐに連絡もつかなくて不安だっただろうな…。ネットが普及してても、30 -
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父親が日本共産党員で、日本の小学校高学年から中学に当たる時期の1960-1964年をチェコプラハのソビエト学校で各国から集まった生徒達と過ごした自身の経験を綴った米原万里さんのエッセイ。こういうと少々堅苦しそうに聞こえるかもしれないが、其々出身国の違う三人の友人とのやりとりやクラスの様子や各々の家庭の様子もとても興味深い。その後、交流も途絶えていた友人達を約30年後に探して会いに行くというのも壮大。会える迄はこちらもドキドキ。プラハの春前後のチェコの様子、三人の出身国のギリシャ、ルーマニア、ユーゴスラビアの当時やその後。社会主義陣営内での対立等、歴史、政治的な事も身近な視点で良く見えて大変面白
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日本の国際化=英語を話すはなんか変。英語を重視する理由は文化への憧れではなく、経済力と軍事力に頼ろうとしていることであって下品。本当の国際化は国と国同士の直接の関係を築くこと。
サミットの日本語訳が英語を経由することへのおかしさや、その時その時の目的(学びたい文化や特定領域につよい言語)に沿った学びが必要ということなど、マルチリンガルの必要性を感じた。
私も英語だけでなく中国語やロシア語を学んでいるけど言語が増えれば増えるほど視野が広がり柔軟に学べることを実感している。
英語学ぶ労力90%、その他10%、英語経由でしか情報を得られていない。日本の精神を貧しくしている。 -
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米原万里の「世界 わが心の旅プラハ 4つの国の同級生」がNHKでオンエアされたのは1996年2月3日。たまたまそれを見ていた私は、その番組が本書をもとに制作されたものだとばかり思っていた。でも、違った。順序は逆で、番組取材のほうが先なのだ。
時は1960年代前半、場所はチェコのプラハのロシア語のインターナショナルスクール(ソビエト学校)。米原万里はそこで3人のクラスメート、リッツァ、アーニャ、ヤースカと親しくなった。それから31年、音信はとだえ、消息は不明。別れる時には、再会を約束したのだが。
それぞれの章は、彼女たちのなにげない思い出から始まる。しかしその後、チェコも、ソ連も、そして彼女たち -
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各章の冒頭、「パリのアメリカ人」のように「異郷のなんとか人」ネタで、読者の関心を鷲摑みにする。しかしその先がどういう展開になるかは、ほとんど予測がつかない。なにしろ書き手は米原万里、使えるリソースは無尽蔵にあるからだ。たとえば、モスクワのベトナム人で始まる章は、ロシアの小噺につながり、それが三権分立の話につながってゆく。シベリアの日本人で始まる章は、純粋概念の話につながり、それがオウム真理教の話で終わる。
こういった章が13。この数なのは、魔女にとっての1ダースが13個だからという。もしかして、下ネタの多さも魔女のなせるわざか。
巻末の解説を書いているのは、同時通訳の「師匠」と仰ぐ徳永晴美。弟 -
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没後10年、佐藤優シェフによる米原万里のフルコース。1冊目としてではなく、彼女の本を何冊か読んでから読むべき本。
目玉はやはり、東京外語大の卒論「ネクラーソフの生涯」100ページ。文章や論理展開は生硬だが、その後花開く彼女の萌芽が詰まっているように感じる。ネクラーソフをテーマにしているあたりが、いかにも彼女らしい。そしてなんと、卒論の審査概評も載っている。やや厳しい講評だが、温かさも感じられる(指導教員は飯田規和)。
冒頭で紹介されているエピソードが印象的。佐藤優がチェコの作家クンデラを魅力的だと言ったら、米原万里が色をなして怒ったという。さもありなん、彼女は、計算尽くの人、裏のある人、言行不 -
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チェコ・プラハのソビエト学校で出会ったダンス教師、オリガ・モリソヴナ。老齢だが魅力にあふれ、ほれぼれするような舞踏。教え方は厳しく、口が悪い。その特徴的な言い回しは「反語法」。いったい彼女はだれだったのか。30年後、その謎を解く旅に出るが、謎はさらなる謎を呼ぶ。モスクワのロシア外務省資料館に始まって、トゥーラのダンス教室で終わる怒涛の7日間、めくるめくような展開。
旅は7日間だが、そこにロシア革命からスターリンの大粛清、雪解けとペレストロイカまで、80年間の事件や出来事の回想が詰まっている。ロシア史(あるいはソビエト史)に詳しくない場合は、座右に『世界史年表』が必要かもしれない(少なくとも私は -
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1998年から2002年にあちこちに書いた料理や食材をめぐるエッセイ、37品。読み終わると、トリビアで満腹、いっぱしの食通になった気がする。
酒飲みには(あるいは化学者にも)「ウォトカをめぐる二つの謎」がおもしろい。推理小説のように歴史的実証が展開する。中心人物として、あの周期律表のメンデレーエフも登場する。
「トルコ蜜飴の版図」や「サンボは虎のバター入りホットケーキをほんとに食べられたのか?」も同じような趣向。ケストナーの『点子ちゃんとアントン』に出てくるトルコ蜜飴への関心から始まり、それが世界史の窓になる。そして『ちびくろサンボ』、オリジナルな物語はインドが舞台fだったとは!
雑多なエッセ -
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イヌとネコもいいけれど、そんなことよりヒトのオスを……恩師からそう言われたらしい。その答えがこの1冊に展開する。多い時にはイヌ3匹、ネコ5匹。なかなか真似のできないイヌネコ中心の生活。そして彼らとの悲喜こもごも。
冒頭からいきなり引き込まれる。国際会議の通訳で出張した東海村、1頭の野良犬を見初め、保護する。さて、東京の自宅にどのようにして連れて帰ったか。次も出張先の御殿場、会議の休憩中に出会った捨てネコ2匹。ネコ好きのアメリカ、ロシア、ウクライナの代表も、2匹のことが心配でしょうがない。さて、どうする?
万里の家のイヌとネコ、先住者が新参者をどのように互いを認め一緒に生活するようになるかも描 -
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ネタバレ面白かった、泣いてしまった、どうして今まで読まなかったんだろうと思った。いろんなことが思い出された。
何人からかおすすめされて、何年か越しに手に取った。最近読んだ系統で言うと、ハンガン『少年が来る』『別れを告げない』と同じく、歴史があってその中にうまくフィクションとして成立している小説。
1960年プラハのソビエト学校に入った主人公の志摩(シーマチカ)は、オリガ・モリソヴナという舞踊教師に魅了される。それから30年、日本に帰国後翻訳者となった彼女は、ダンサーになるという夢に破れ子供を持ち離婚を経験し、、といった後に、モスクワに渡りオリガ・モリソヴナの半生を辿り出す。ソビエト学校時代の親友に再会 -
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ロシア語のみならずさまざまな言語にまつわる知的おもしろエピソードが豊富。通訳者としていろんな世界に触れている裏話が聞ける
母音が多い少ないや、高低、強弱アクセントの違いなど、言語を話していて躓くところが言語化されていてなるほど感がある。納得間はなかったけど文理の人の考え方の違いとか、そんな考え方もあるのか、と納得。
通訳現場での面白エピソードや、うまい通訳さんの腕についても興味深い話が詰まっていて、教養って美しいなと思う。粋である。
積極的知識と消極的知識。
上手い語り手は記憶に残る。物語が見えてこない話にも地下水脈のやくな物語があり、それが感じ取れた時には記憶の負担は軽減される
耳か -
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500ページ近い長編だったが、推理小説のようにワクワクしながら一気に読み終えた。先に『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』を読んでいたから背景もよくわかった。
私自身もモスクワに留学した経験があるので、アルバート通り、トヴェルスカヤ通り、フルンゼンスカヤ駅、マヤコフスキイ広場など、懐かしい地名ばかりで、久しぶりに当時使っていたモスクワの地図を開いた。また、冷戦時代、チェコスロヴァキアにペンフレンドがいて、楽しく手紙のやり取りをしていたことをふと思い出した。いつの間にかどちらともなく連絡が途絶えてしまったが、彼女は今どうしているだろう?ビロード革命を乗り切って幸せに暮らしていて欲しいと思う。
巻末の池