あらすじ
ロシア語通訳、エッセイスト、作家として多忙な日々を送った故・米原万里さんは、常に複数の猫と犬の母でもありました。そのニギヤカなる毎日を描いたエッセイが本書。執筆時、米原家は猫4匹、犬2匹、人間ふたりのメンバー構成でした。その状況を恩師に年賀状で報告したところ、「ネコイヌもいいけれどねえ、君、そんなことより、早くヒトのオスを飼いなさい、ヒトのオスを!!」と言われた……というのがタイトルの謂れです。ヒトのオスにはちと厳しいが、猫と犬には惜しみない愛情を注いだ米原さんの傑作ペット・エッセイ。猫好きも犬好きも楽しめます!
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イヌとネコもいいけれど、そんなことよりヒトのオスを……恩師からそう言われたらしい。その答えがこの1冊に展開する。多い時にはイヌ3匹、ネコ5匹。なかなか真似のできないイヌネコ中心の生活。そして彼らとの悲喜こもごも。
冒頭からいきなり引き込まれる。国際会議の通訳で出張した東海村、1頭の野良犬を見初め、保護する。さて、東京の自宅にどのようにして連れて帰ったか。次も出張先の御殿場、会議の休憩中に出会った捨てネコ2匹。ネコ好きのアメリカ、ロシア、ウクライナの代表も、2匹のことが心配でしょうがない。さて、どうする?
万里の家のイヌとネコ、先住者が新参者をどのように互いを認め一緒に生活するようになるかも描かれていて、おもしろい。
蛇足。『作家の猫』と『作家の犬』(新潮社のとんぼの本)では、米原万里はどちらにも登場する。後者の裏表紙には、ピレネー犬クレと柴犬の雑種モモとスクラムをくんだ万里の写真が使われている。
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米原万里と犬猫の波瀾万丈な物語。激務をこなしながらも愛猫愛犬に愛情いっぱい振る舞う米原万里の姿はあまりにも健気である。
田丸公美子の解説が米原万里の魅力をより引き立たせている。
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愛猫、愛犬の生い立ちや、それを通して語られる人々との出会いが、作者のユーモアたっぷりな語り口で進んでいく。
肩肘張らずに楽しく読める。
作者の急逝が悔やまれる。
あの猫たちや犬たちはどうしたのだろうか?
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ロシア語通訳者で才色兼備の万里さんと、犬猫たちのドラマチックすぎる日々。
最後の方は、内田百閒の『ノラや』を思い出しました。
犬猫たちのキャラクター描写が素晴しい。
そして、行くたびに病院名が変わる獣医の荒川先生もいいキャラクター。
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いや~おもしろかった!
日常を描いたこの種のエッセイって、一般的には読みやすいのはいいけど密度が低くて麩菓子みたいなのが多いけど、この本は濃い濃い。濃厚なティラミスですな。かといって重いわけではなくて、スイスイいけちゃう。
なんでだろ。どこがちがうんだろ。
たぶん、軽妙ながら正確な日本語によって精緻に状況描写が行われているからだと思う。無駄な言葉がないから、文章がみっちり濃度が高いのね。
登場人犬猫物のキャラクターもストーリーも最上級。万里さん、ある意味ハチャメチャで最高!
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ロシア語通訳者でありエッセイストの筆者が綴る犬や猫との「いとおしき日々」についてのエッセイ集です。ヒトのオスには歯に衣着せぬ物言いをする筆者が彼ら彼女らに惜しみなき愛情を注ぐ姿がたまりません。
最近のマイブームが米原万里さんのエッセイで、その歯に衣着せぬ物言いがなんとも心地よいです。この本は通訳として第一線の舞台に立ちながら猫の無理と道理。ターニャとソーニャ。犬のゲンとノラ。そして美智子さんと筆者の日常を描いたエッセイです。
国際的な会議の席で拾った無理と道理。ロシア人から譲られたターニャとソーニャ。途中でいなくなってしまう犬のゲンと入れ替わりに筆者の家族になるノラ。彼らと筆者の交流がいとおしく、僕も将来的には犬か猫が欲しいなと思いました。
ヒトのオスには終生、厳しかったといわれる彼女ですが、エッセイの中ではその惜しみのない愛情を注ぎ続けます。よく、作家にはいぬか猫のペットがつき物だという話を聞きますが、その一端がうかがえたような気がします。
個人的なハイライトは去勢されたオス猫の無理がターニャとソーニャが新しく家族に迎えられることになって、オスとしての自分を再認識して、彼らを守るしぐさをしたり、スプレー行為で家中に尿をするところでしょうか?なぜか自分でもわかりませんが、あそこが僕の中ですごく印象に残っています。
猫も犬もいる生活は日常に潤いを与えてくれますが、あくまで、彼ら彼女らと最期まで寄り添っていける方がペットを飼うべきで、途中で飼育を放棄したり、もっとひどいのは飽きたからという理由で保健所に連れていって処分して欲しいなんていうのは言語道断で、ここにも保健所に筆者は行く場面が描かれていますけれども、彼女の言葉をよく聴いて、決して、安易な気持ちで生き物を飼うべきではないということと、作中にえがかれている彼ら彼女らとの「いとおしき日々」を楽しんでいただけると幸いです。
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表紙を開くと犬、ネコ、ヒト・・・の写真。米原さんが行く先々で運命的な出会いをしたペットたち、ペット大好きなヒトたちの様子がいとおしくてたまらなくなる。
ネコ語(しかも万国共通らしい!)がしゃべれる愛猫家にはびっくり!
今年は米原さんの著作を制覇する年。
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魔女の1ダースに続き、米原万里のエッセイ。
猫と言えば宇都宮に住むいとこが飼っている、私にはまったく懐かない、何匹かの猫と、昔実家に住みついていた黒のノラ猫しか思い浮かばないほど、猫には疎い。どちらかというと犬派。人間を愛してやまない運命共同体の、犬派。
にも関わらず、今すぐ猫を飼いたく思わせるほどの観察力とそれを言語化する文章力!
とはいいつつも、猫の無理、道理、ターニャ、ソーニャを上回る愛らしさがにじみ出ている犬のゲンに会いたい。
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万里さんにハズレ無し!っと心の中で叫びながら大事に読みました。
読み終わってしまうのがもったいなかったです。
このエッセイにはロシア語通訳の仕事のことももちろん出てきますが、メインは美智子、無理、道理、ゲン、ノラ、ソーニャ、ターニャ、という万里さんの家族。順番に、ヒト(ていうか母)、猫、猫、犬、犬、猫、猫。それぞれの性質が生き生きと描かれているし、巻頭に写真も付いているので、読み進めるうちには猫たち犬たちを直接知っているような気になってきました。それと獣医さんや猫好き犬好きの友達知り合いなども、個性豊かにハツラツと描かれていて、面白いです。猫好きのヒトはもちろん、犬好きなヒトもべらぼうに楽しく読めると思います。
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米原さん最高!基本的に猫はそんなに好きじゃなかったけれど、彼女の視点から見た猫たちの愛らしさにノックアウト。
我が家にいる猫がなんだか可愛く見えた。これぞ人を引き込む天才米原マジック。
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ペット(猫、犬)エッセイの傑作です。
タイトルから、独身を貫いた米原万里の私生活エッセイかと思いきや、急にペットを飼い始めた筆者に悪友から「人のオスは飼わないの」と冷やかされたのがタイトルの由来。
本来、可哀想な捨て犬や捨て猫を放っておけない性分から、拾ってきた彼らを育てる暮らしが始まる。通訳という仕事がら家を留守にしがちな筆者は、認知症気味の母親がいるので、ペット好きのお手伝いさんを雇い対処する。ご近所さんにもペット飼育の先輩たちがいて、行方不明など困ったときには力になってくれる。ペット病院の院長先生も専門知識が豊富で親身になってくれる心強い存在。
つまり、環境的にはとても恵まれた状況で、筆者のペット飼育の奮闘記が開始される。
愛情たっぷりに接する筆者とその愛情に応えるペットたちの健気な姿は、ペットを飼った経験のある人にはたまらない。また、ペットの生態も参考になる。
捨て犬だったゲンは、前の飼い主の躾がよかったのか、社交的で庭でも滅多に吠えない。それが、ある時から急に番犬的役割に目覚め吠え始めた。ご近所の手前もあるので、獣医師先生に相談すると、「それはおめでとう。ゲンちゃんは今まで遠慮してたんですよ。また、前のように捨てられるかもしれないって。だから、どんな人にも愛想よくして犬なりに気遣ってたんですよ。それがやっと米原さんのところを終の棲家と見定めて、この家は、自分が守って行かねばという自覚が芽生えたんですよ」、なんか泣ける話です。
通訳の仕事でロシアにいる時、町でブルーペルシャ2匹の赤ちゃん猫に一目惚れして衝動買い。しかし、共産圏から無事連れて帰れるのか不安。その時の気持ちがよくわかる文章。
「パスポート審査を終え、搭乗者用待合室のベンチに腰掛けてから初めてじっくりと手荷物ケージの中を覗いた。この瞬間をどれだけ心待ちにしていたことか。2匹を一緒に連れ帰ることが確実になるまで、一目惚れを本格的な愛に熟成させるわけにはいかなかった。一目惚れのあいだは、まだ愛の感情を制御することが可能だからだ」
しかし、家には既に猫が2匹いる。そして、この後悪い予感が的中する出来事が待っていた。
ペット本には、《猫は人に懐かず、家に懐く》と書かれているが、本当だろうか?
米原家に起こったことは、2匹の新参者が現れた途端、古参猫2匹は不貞腐れ、本当に家出してしまう。自分たちへの飼い主の愛情に疑問を持ったのだ。その後、紆余曲折があり、家に戻って来るのだが、今度は逆に新参猫に対して母性愛、父性愛に目覚めてしまう。2匹とも避妊手術と去勢手術をしているにもかかわらず。さらに、家の中で去勢されたオス猫は本来しないマーキングまでやり始める。先生曰く、「父性が目覚めたのです。自分が守ってあげなくてはならない家族が出来て、ここには強いオスがいるぞと周囲に誇示しなくてはならなくなったためです」
群れの動物には、上下関係やリーダーが必要。狭い活動空間でさえ、失われたオス性を振り絞って頑張っているのです。
その後も、嵐の夜、雷を怖がるゲンが居なくなり…
解説は、翻訳者仲間の田丸公美子。普段から仲のいい関係性から下ネタと毒舌と愛情深い内容は味わい深い。
ペット好きには、是非読んでほしい一冊です。巻頭の登場人物一覧(ペット含む)写真も嬉しい。
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ロシア語通訳者の米原万里さんが、捨てられたor迷子になった犬猫たちを引き取って、新入りが入る度に彼らの間で巻き起こる嫉妬から、親愛の情が育つまでの賑やかな生活ぶりが臨場感たっぷりに描かれている。
出張先でも行き場のない仔猫や犬を見つけると連れ帰らずにはいられない著者の家の構成員は、時にその構成数を変えつつ、この本の執筆終了時には、ネコ5、ヒト2、イヌ2と思われる。そんな多頭飼いにもかかわらず、著者のネコちゃん、ワンちゃんへの愛が半端ない!
そして、そういう人の周りには同様にネコ好き、イヌ好きが集まるもので、微笑ましい話、笑える話が盛りだくさん。
飼育放棄される動物の多さに、心が痛む面もあるものの、読んでいるうちに、イヌ派の私も、かなりネコの魅力にやられそうになった。
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ヒトのオスに対する辛辣なエッセイかと思って手にしたのだが、全編、ご自分が飼われた犬と猫に関する、物語のようなエッセイ。
ペットには全く興味ないが、早く先を読みたくなるような本だった。
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愛犬猫記。鬼の目にも涙というか、米原万里の手にも犬猫というか、犬猫を愛するようになると、人間奴隷化するというか全ての中心が犬猫、それも猫中心になるのだなと感心。
福島で犬猫シェルターの募金集めしている人達の心理状態がなんとなくというか強烈に分かったは。
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米原万理さんの動物関係エッセイ。私はとにかくゲンちゃんのファン。ああ、本当に犬格がすばらしい! 米原さん亡き今、猫たちはどうしているのだろう・・・。
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嘘つきアーニャがよかったので読んでみました。
なんと行き当たりばったりな人生よ(^^;)
すでに亡くなってることを知って、このままの勢いで人生を駆け抜けたんだろうなぁと感心しました。
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「心臓に毛が生えている理由」と同じ流れで通訳稼業の話だと期待したが、初っ端から書かれている通り、見事飼い犬飼い猫の話で埋まっている本だった。それはそれで面白いし、何しろ神経を使うであろう仕事とその準備は見事に脇に置かれ(でもちゃんと時間通りに約束通りに果たされているのがすごいが)、犬猫まっしぐら。こういう真っ直ぐな女性だったんだろうなあ。最近になって2006年に亡くなったことを知り、残念でならない。
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動物好きにはたまらない。
共感できる点がもうたくさんあって、さらに米原さんの達者な文章力で表現された米原さんの日常はとても魅力的で、やっぱり人は動物と一緒に暮らした方が生活が複雑だけど豊かなのでは、と改めて思いました。
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現在は爬虫類と暮らしているトカゲ派の私も、久しぶりに犬猫と触れ合いたくなりました。
時には辛いエピソードもありつつ、犬と暮らすこと猫と暮らすこと、命あるものと触れ合う喜びが、全編から立ち上ってくる。
個人的には、最後に登場する「ノラ」がすごく愛おしい。