米原万里のレビュー一覧
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「ああ神様!これぞ神様が与えて下さった天分でなくてなんだろう。長生きはしてみるもんだ。こんな才能ははじめてお目にかかるよ!あたしゃ嬉しくて嬉しくて嬉しくて狂い死にしそうだね!」
物語は在プラハ、ソビエト学校の教師オリガ・モリソヴナの強烈な反語法によるダンス指導シーンからはじまる。
彼女の教え子で日本人のシーマチカが卒業後?大人になってから、親友のカーチャとともに青春時代の謎を追い求める。ロシアに訪れ各所をたずね資料や証言を集めていく過程は、作者自身がオリガを調べている様子を鮮明にイメージさせた。
さらに凄いところは、読者自身も旧友と一緒になって歴史の謎を炙りだしていくような連帯感というか没入感。
そして小説のかたちをとることで、スターリン時代のラーゲリ(強制収容所)の実態を文献から歴史で学ぶのとは違って自分ごととして考える機会を与えてくれた本作は読後に内容を反芻したくなる良書だ。
三宅香帆さんが激推しする理由がわかった。また読みたい。
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Posted by ブクログ
話が壮大で中身がギュギュッと詰まった読み応えのある小説。三宅夏帆さんが「一冊しか薦められないとしたらこの本を薦めたい」とYouTubeで仰っていたので、すぐにネット予約し買った。
ソ連の歴史と社会構造について細かく描写されているけど、知識不足でよくわからないことも多かった。でもチャットGPTに「スターリンとは?」「共産主義とは?」とか、わからない単語を調べながら読むと読みやすかった。(新しい読み方!)
ソビエト学校から日本の学校に転校した主人公が、日本の学校の方が社会主義でガチガチで息苦しく感じている描写が意外で、興味深かった。
プロが薦めるだけあって素晴らしい小説だった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ実体験をもとにしたノンフィクションで、すごく濃密な本だ。
チェコのプラハでソビエト学校に通う小学生のマリ。ここには50もの国からやってきた子供たちが通っている。マリの父親は、日本共産党から派遣されて、国際共産主義運動の理論誌の編集局に勤めており、そのため家族でプラハにやってきた。(この学校に通う子供たちは外交官や共産主義運動の幹部たちを親に持ち、それなりにブルジョアな暮らしぶりが散見される。しかし同時に社会主義国としての計画経済による、融通の効かなさみたいなところも描写され非常に興味深い)
米原万里がプラハで過ごした9〜14歳までの期間に出会った、3人のかけがえのない友人たち。リッツァ、アーニャ、ヤスミンカ。それぞれを主役にした三篇からなるお話。
同時に、社会主義、共産主義思想を掲げる東ヨーロッパ諸国の、激動の二十世紀後半記でもある。ロシア語同時通訳者、エッセイストである著者の豊富な異文化体験と、民族に対する冷静なまなざし。読み進めるほどに、なんと聡明な人だろうと驚く。
P247から引用。
『ところで日本ではいとも気楽に無頓着に「東欧」と呼ぶが、ポーランド人もチェコ人もハンガリー人もルーマニア人も、こう括られるのをひどく嫌う。「中欧」と訂正する。』
こんなことぜんぜん知らなかった。
彼らはもちろん地理的正確さを期して東を嫌うのではない。「東」とは、より西のキリスト教諸国の発展から取り残されてしまった、また冷戦で負けた社会主義陣営を指す記号でもあるという。貧しい敗者のイメージ。憧れ、劣等感、蔑視と嫌悪感。これは、明治以降に脱亜入欧を目指したわたしたち日本人に通じる。
民族紛争や異宗教との諍いに、否応なく巻き込まれていくかつての少女たち。
しかし、かといって悲壮感に溢れるだけではない。多感な時期の少女たちの、華やかで明け透けで、ときに大人顔負けの知的さを垣間見せる、希望に溢れた感性も見事に描写される。
歴史に疎い自分にとってはとても勉強になるし、それどころか10代の女の子たちがここまで社会や民族について学び理解し、自分なりの考えを持って生きていたことに頭が下がる。
総じて、いい本を読んだなぁ、という気持ちになった。 -
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ネタバレペット(猫、犬)エッセイの傑作です。
タイトルから、独身を貫いた米原万里の私生活エッセイかと思いきや、急にペットを飼い始めた筆者に悪友から「人のオスは飼わないの」と冷やかされたのがタイトルの由来。
本来、可哀想な捨て犬や捨て猫を放っておけない性分から、拾ってきた彼らを育てる暮らしが始まる。通訳という仕事がら家を留守にしがちな筆者は、認知症気味の母親がいるので、ペット好きのお手伝いさんを雇い対処する。ご近所さんにもペット飼育の先輩たちがいて、行方不明など困ったときには力になってくれる。ペット病院の院長先生も専門知識が豊富で親身になってくれる心強い存在。
つまり、環境的にはとても恵まれた状況で、筆者のペット飼育の奮闘記が開始される。
愛情たっぷりに接する筆者とその愛情に応えるペットたちの健気な姿は、ペットを飼った経験のある人にはたまらない。また、ペットの生態も参考になる。
捨て犬だったゲンは、前の飼い主の躾がよかったのか、社交的で庭でも滅多に吠えない。それが、ある時から急に番犬的役割に目覚め吠え始めた。ご近所の手前もあるので、獣医師先生に相談すると、「それはおめでとう。ゲンちゃんは今まで遠慮してたんですよ。また、前のように捨てられるかもしれないって。だから、どんな人にも愛想よくして犬なりに気遣ってたんですよ。それがやっと米原さんのところを終の棲家と見定めて、この家は、自分が守って行かねばという自覚が芽生えたんですよ」、なんか泣ける話です。
通訳の仕事でロシアにいる時、町でブルーペルシャ2匹の赤ちゃん猫に一目惚れして衝動買い。しかし、共産圏から無事連れて帰れるのか不安。その時の気持ちがよくわかる文章。
「パスポート審査を終え、搭乗者用待合室のベンチに腰掛けてから初めてじっくりと手荷物ケージの中を覗いた。この瞬間をどれだけ心待ちにしていたことか。2匹を一緒に連れ帰ることが確実になるまで、一目惚れを本格的な愛に熟成させるわけにはいかなかった。一目惚れのあいだは、まだ愛の感情を制御することが可能だからだ」
しかし、家には既に猫が2匹いる。そして、この後悪い予感が的中する出来事が待っていた。
ペット本には、《猫は人に懐かず、家に懐く》と書かれているが、本当だろうか?
米原家に起こったことは、2匹の新参者が現れた途端、古参猫2匹は不貞腐れ、本当に家出してしまう。自分たちへの飼い主の愛情に疑問を持ったのだ。その後、紆余曲折があり、家に戻って来るのだが、今度は逆に新参猫に対して母性愛、父性愛に目覚めてしまう。2匹とも避妊手術と去勢手術をしているにもかかわらず。さらに、家の中で去勢されたオス猫は本来しないマーキングまでやり始める。先生曰く、「父性が目覚めたのです。自分が守ってあげなくてはならない家族が出来て、ここには強いオスがいるぞと周囲に誇示しなくてはならなくなったためです」
群れの動物には、上下関係やリーダーが必要。狭い活動空間でさえ、失われたオス性を振り絞って頑張っているのです。
その後も、嵐の夜、雷を怖がるゲンが居なくなり…
解説は、翻訳者仲間の田丸公美子。普段から仲のいい関係性から下ネタと毒舌と愛情深い内容は味わい深い。
ペット好きには、是非読んでほしい一冊です。巻頭の登場人物一覧(ペット含む)写真も嬉しい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレこの本は本屋で紹介されてて面白そうって購入した。が、なかなか手を付けず、少し読んでみたけどなかなか進まず。今思うとそのタイミングじゃなかったんだなと。最近読んだらまぁすらすら読めて面白くて止まらなかった。
まず作者がすごい体験をしているということに驚き。小学校を海外で過ごしていろんな国から来た子に囲まれて育つなんて知り合いにいたことないし、そんな方の経験談を本で読めるっていうのは貴重なことだなと思った。
そしてとっても面白かったのはアーニャの章で、自分の生まれた国から時間的にも距離的にも離れていればいるほど自分の国を愛しているという話。これは自分が実際住んでいる時間が少ないことで嫌な部分も見えにくいって言うのもあるのかな?あとまだ小学生ぐらいの子って自慢したがるとこあるよなと思った。こういう普段考えないようなことだけど、自分がもし同じ境遇になったらやっぱり日本って素晴らしいよって言うのかな?って考えて、小学校の自分だったらいいそうな気がするなーと。
大人になってから3人を探しに海外に行き全員見つけられたのは本当に運がいいし携帯もなかった時代で奇跡。