米原万里のレビュー一覧
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いや~、やっと復刊してくれたよ。ロシア語通訳でエッセイスト。
2005年に亡くなった米原万里さんの幻の処女作である。
晩年、政治を語るようになってからは面白味に欠けるようになった
のが残念だったが、この人の作品のほとんどは我が家の本棚に
ある。
あ、全部読んだ訳じゃないです。積んだままになっている作品も
あります。ワインじゃないんだから寝かせるなと言われるけど。
さて、本書である。江戸時代にシベリアに漂着した日本人の
足跡を追うというテレビ番組の取材に、通訳として同行した
際のシベリア紀行である。
取材期間は1984年から1985年。ソ連邦崩壊以前のヤクート
自治共和国(現サハ共和国) -
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スゴイ本である。
パンツとふんどしについての文化人類学的考察。
パンツとふんどしについて、
これだけ多数の文献に当たり、考察し
つなぎあわせていく。ジネンジョをほるような
面倒な作業を 嬉々として取り組んでいる。
その集中力に 圧倒される。
ガンによって 身体がおかされているにもかかわらず
この執念。まさに 集大成としての「ふんどし学」である。
結論として 『さきにパンツありき』ということだ。
騎馬文化が日本にやって来て、パンツが普及したわけではない。
馬の家畜化を考察し、ハニワなどの パンツ模様の解明をする。
ハンガリーの学校での家庭科での実習が
パンツづくりからはじまるというのが、笑え -
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4つのテーマにもとづく講演。
1 愛の法則
2 国際化とグローバリゼーションのあいだ
3 理解と誤解のあいだ
4 通訳と翻訳の違い
ここまで、いっていいのかと思うほど
口が滑らかで 言いたい放題。
そのなかに 洞察力(インサイト)がきらきらと輝く。
さすが、米原万里。
その大胆さと下ネタの爽やかさは なんともいえない風情がある。
言語を理解するとは、記号と概念の間の変換プロセスを体験すること。
1 愛の法則
世界の名作は オトコ(ドンファン)がオンナあさりするものばかり。
そのオンナは 美人ばかりだ。
しかし、美人の基準は 時代と地域によって違う。
源氏物語にしろ、
一方 オンナの物語は -
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ネタバレスターリンの支配するロシアで収容所での暮らしを生き延びたオリガ・モリソヴナの謎を解き明かす物語。
不幸な時代をしたたかにしかも他者への思いやりを持って生きたオリガ・モリソヴナの姿には強い共感を覚えます。
作者の米原万理さんはゴルバチョフの通訳も務めたロシア語通訳者ですが、残念ながら亡くなられてしまいました。この作品は、米原さんの最初の、そして最後の小説です。そしてそれは、米原さんのロシア語通訳者としての知識と体験と類まれな言語能力を駆使し、全身全霊を傾けて書かれた逸品です。
読み終わったあとはしばらくは呆然としてしまいました。 -
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言わずと知れたロシア語同時通訳の第一人者であった米原万里の通訳論。何度も読んだがやはり文句なしの名著。通訳を目指す人ではなくても、言語そのものに興味のある人は読んでおいて絶対に損はないだろう。
学校の英語の授業では基本的には字句通りの解釈を求められる。もちろん、それが外国語を学ぶ上で必要不可欠なことは言うまでもない。字句通りの解釈は基礎を学ぶ上では有効であるし、大量のインプットなしにアウトプットもありえないことは本書を読めばよく分かるだろう。しかし、ある程度のインプットが済めば次のステップとして求められるのは「ある外国語の発言や文章が何を言わんとしているのか、その核心をとらえること」だろう。 -
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心臓に毛が生えている理由、わかりますか?
いえ、これはあなたの心臓にということではなく、米原万里自身の話。通訳を仕事にするということは、言語における文化の違いを仲介することにもなる。日本語のように、名詞に男性形や女性形がない言語をこれとは異なる国の言語に同時通訳で訳す時、スピーカーの言葉を最後まで待つという訳にはいかない。つまり、腹を決めて、あるいは剛腹に、形容詞を待たずに訳し始める必要がある。まして、米原万里のお相手は政治的要人。こうして、心臓に毛が生えるのである。
つくづく頭の良い人だと思うし、様々な考察は読む価値のある内容だ。惜しむらくは既に逝去された彼女のエッセイがこれ以上増えない -
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「音楽においては美しい音も汚い音もない。大切なのは伝えたいメッセージを最も的確に伝えられる音だ。そのメッセージにふさわしい音、それがいい音だ。」と。著者が通訳を担当した有名音楽家が、記者からの音楽にとって最も大切なことは?の問いにそう答えた。
「まさに、言葉もそうで、言葉にとって、一番大事なことは、美しいことよりも、最も的確に伝えたいメッセージを、表しているかどうかだ。」(本文より)
米原さんのメッセージはいつも的確で、わかりやすく、ダイレクトに言葉が心に突き刺さる。そして笑いがいつもある。イタリア語通訳者で友人である田丸さんとのかけあいもまた楽しい。 -
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鳥飼久美子著『歴史をかえた誤訳』を読んでこの本の存在を知った。鳥飼氏は私が中学生の頃から憧れた同時通訳者で、ほとんどアイドル的存在だった。本書の著者米原万里氏は今回初めて知った。ロシア語通訳で、エリツィンやゴルバチョフが大統領の頃から活躍しているという。
ロシア語通訳としての豊富な経験から多くの実例を挙げ、通訳者あるいは翻訳者の使命を語る。また同業者や通訳としての先駆者たちの著書からの引用も的確で面白い。ロシア語通訳でありながらロシア語だけに偏らない書きぶりも好感が持てる。とにかく面白くて直ぐに読み終えた。素晴らしい通訳者はアウトプットに優れているのだろう。
本書の『不実な美女か 貞 -
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刺激的なタイトルに惹かれて思わず購入。
ロシア語の同時通訳者として活躍する著者の『通訳』という仕事の妙を教えてくれる作品。
外国語もからきしだめ、日本語もおぼつかない私からすれば、バイリンガルな人の頭の中は奇々怪々にしか感じられないが、この本にはわかりやすくそれを解説してくれている。更には著者や他の通訳の方々の失敗談、体験談を通し、異なる文化異なる価値観での会話の中で、日本という国の文化の輪郭を確かめることもできる。
気軽なエッセイ、異国への紀行本のように、通訳を目指していない人でも楽しく読むことが出来るだろう。
この本では通訳という仕事は多様な表現を受けている。たったその場限りに重宝がら -
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ロシア語同時通訳者の米原万理さんは大変な読書家だったようだ。平均1日7冊読むそうで、自称本好きの私でも足元にも及ばない。
この本を読むと、彼女が博識でとても頭がいい人なのだということがよく分かる。紹介されている本のうち何冊かは既読だが、彼女の洞察力、読解力は並外れているし、感じたことを文章にする力もすごい。ジャンルも言語学、民俗学、国際政治、動物から下ネタまで多岐に渡る。
基本的に新聞などの書評欄に掲載されたものを集めたものなので、著者や出版社に遠慮があるのか、それほど辛口の批評は出てこないのがやや残念ではある。それでも今後読みたい本は何冊もメモした。 -
Posted by ブクログ
国や民族について、米原万里ほどの経験で以って、しかもそれを的確に表現できる人もなかなかいないだろう。米原万里の言葉には単に外国に迎合したり、あるいは逆に最近特に多い「日本ってこんなに素晴らしい!」などという井の中の蛙のような日本賛美ではない、世界のそれぞれの国の文化(もちろん日本を含めて)に対する強い敬意を感じる。彼女のような、媚びず、けれども自身に強いプライドを持った生き方こそが、今求められているグローバル人材なのではないだろうか。
本書では特に第二章と第三章が面白い。第二章で語られるのは真のグローバリゼーションについて。彼女が説くのは英語一辺倒でアメリカ中心の世界観からの脱却だ。
◼️世