今野敏のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
怒りと向き合う
繁華街で起きた連続通り魔事件が本書で扱われる。
この手の事件は、実際の事件を思い起こさせて心苦しい。
さて、本書は犯人すり替えトリックを使った心理戦が妙。
メンタリズムなるものももてはやされているが、人間がいかに完璧ではないかを感じさせる意味で、本書同様興味深い。
見たいものしか見ていないというのはよく言われることだ。
そんなことはない、私はしっかり見ていると思われるかもしれないが、それは明らかなる間違いだ。
例えば、知らぬ間にできた傷、痣。
どこでついたのかさっぱりわからない。
自分に危害が加えられているというのに、だ。
こんな些細なことですら断言できないのだから、大きな混乱の中で人がどれだけ周りを正確に見られるか......。
人間の心理をついた物語は面白い。
ただ、物語である以上仕方がないとはいえ、少々ことが上手く運びすぎる。
実際の話を聞いてみると、プロファイリングはここまで精度が高くない印象だ。
人づてなので、検証したわけではないが聞いた話ではこうだ。
被疑者居住範囲の目星を警察が◯◯区内とつけたとする。
プロファイリングによると◯◯区のほとんどが「想定される地域」と示される。
ピンポイントで当てるには、人の行動というものはどうにも難しいようだ。
恨みや怒りを持った人間が即犯罪者になるわけではない。
行動にはそれなりの理由がある(はずだ)。
自分の中の正しさが果たして本当に正しいのか、私たちは常に他者の目を自己の中に持っていなければならない。
怒りは大きな力である。
それとどう向き合っていくか、それが一人一人の課題であるのだ。 -
Posted by ブクログ
東京・台場で少年たちの抗争があり、一人が刃物で背中を刺され死亡するという事件が起きた。直後に現場で目撃された車から、風間智也に容疑がけられたが、交機隊小隊長の速水警部補は、風間は背中から刺すような奴ではないと、彼の容疑を否認し、安積警部補と共に「車はZだった」という情報を追う。
ひとつの見せ場は、風間のスカイラインGT‐Rと速水が操る「法の許す範囲でばりばりにチューンナップされている」というスープラパトカーが繰り拡げる高速から筑波山へかけてのバトルだ!まるで『湾岸ミッドナイト』と『頭文字D』を彷彿とさせる描写に興奮する。
もうひとつの見せ場は、安積と速水という個性豊かな二人の主人公が見せる無言の信頼関係と、それを感じさせる会話だ。『隠蔽捜査』の竜崎と伊丹の会話の様に楽しめる。
筑波山で速水が繰りだす命がけのアタックに一度後塵を浴びてしまった風間は、速水と安積という二人の男を認め、固く閉じていた口を開くのであった。 -
Posted by ブクログ
湾岸地域の巨大イベントに爆破予告があり、安積班と相楽班は、警戒警備にあたるが…。TVドラマ「ハンチョウ」原作の安積警部補シリーズ。(「BOOK」データベースより)
まさかあの人が東京湾臨海署に配属されるとは……かなり驚きました(笑)。
速水さん、相変わらずカッコいい。
須田さんの勘を信じる安積班の面々。
その信頼関係は感動的なくらい。
でもなあ、これだけ村雨さんはハンチョウのことを尊敬し慕っているのだから、いい加減、ハンチョウも心を開いてくれないかなあと思うのです。
苦手は誰にもあることだけど……ねえ。
しかし、あの人はホントに、どうにかならんものだろうか(苦笑)。 -
Posted by ブクログ
『二重標的』『虚構の殺人者』でも、挑んでくるような相楽警部補との対立構造などの困難がなかったわけではないが、安積警部補が決断に苦しむようなピンチに見舞われることはなかった。しかし、この『硝子の殺人者』で、安積は、初めて苦しい決断を迫られる。そんな時、安積は、まるで『隠蔽捜査』の竜崎のように、警察官であるという原理原則に基づいた決断をする。
事件が解決した時、安積は、迎えに行くと約束していた妻と娘の帰国に間に合わなくなってしまった。速水小隊長は、助手席に安積を乗せたスープラのパトカーを猛然と発進させ「職務特権という言葉を知っているか」と言う。安積は「職権濫用という言葉なら知っている」と言うのだが、このようなキャラクターの立った登場人物達の何気ない会話が楽しい。
今までは、ありふれた刑事ドラマのような筋書きだった物語りが、回を重ねることによって、今野敏さん独自の世界に姿を変貌させてゆく兆しが見える。