今野敏のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
今野敏の『スクープ』はテレビニュース記者、布施京一が活躍する報道ミステリーの短編集。どの事件も、布施と警察の連携で不思議とうまく片付き、スクープになる。
布施京一はTBNテレビ報道局の看板番組である二ユース・イレブンの遊軍記者だが、敏腕記者というわけではなく、どちらかというと不良社員で、いつも会議に遅れてくる上に、真面目に参加することはなく、会議はそれこといつも上の空。そして取材といいつつ、実際は六本木や新宿、渋谷でプラプラと飲み歩いている。でも布施はどこの店でもそこそこ人気がある。布施の肩ひじ張らず自然に受け入れる雰囲気がつい相手が話したくなる雰囲気を醸し出すのだ。
警視庁捜査一課の黒田部長刑事に対しても同様。黒田刑事がお決まりの居酒屋で一人で呑んでいるところへ布施はやって来る。黒田部長からしてみれば、来るとうっとうしいが、来ないと寂しい。しかもいつも持ちつ持たれつの関係は実はかなりよいコンビだと思う。
布施の取材姿勢、というか行動姿勢は実は一貫しており、ネタをさがしているわけではなく真にプラプラと遊んでいる。しかし、ただプラプラと遊んでいるわけではなく、さりげなく問題を見つけている。困っている人のことを気にしているから真の姿が見えてくるのかもしれない。マスコミはとかくスクープに躍起になるが、スクープに躍起になると目がくらんでくるのではないか。
今野敏は「スクープなんてどうでもいい。事件に関わっている人のことが気になるんだ。」と布施に『スクープ』の中で語らせている。この小説が面白いのは、事件そのものよりも、事件に関わる「人」にフォーカスしているためだと思う。そして、布施のようなプラプラした記者が実は爽快に活躍するという、完全懲悪、大人のスーパー戦隊、水戸黄門だ!
そうそうこの展開!という、分かりやすい中にも結果的に事件を解決していくスッキリ感を味わい時にはぴったりの短編集だ。