今野敏のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
教師だって人間だ。作中のセリフだが、その通りだと常々思う。教師が聖人君子である必要などどこにもないし、そもそもそんな人間などいないのだから。時として大人としての威厳も必要だろう。だけど子供からの信頼を失った今、弱さも含め等身大の姿を子供に見せることの方が大切ではないだろうか。本書はとても面白い。「任侠書房」を思い出すような可笑しさがあった。もし道に迷っているのなら本書をとるのもいい。重荷が少し軽くなるかもしれない。
あらすじ(背表紙より)
中学生の慎治は、いじめっ子に万引きを強要されて実行してしまう。一方、偶然その現場に出くわした担任の古池は、事情を聞いた後、居場所のない慎治を自室に招き、とある趣味の世界に誘う。古池との交流や新たな世界との出会いに、徐々に変わっていく慎治。だが、いじめはさらにエスカレート。万引きの後始末は思わぬ事態に発展して…。 -
Posted by ブクログ
SF界隈での著名人・新人引っくるめてのアンソロジー集です。SFにはあまり馴染みがなく、フィリップ・K・ディックは好きですがそれもアニメ『PSYCHO-PASS』の影響で最初からというわけではなかったので、慣れる、と言うか、映画は好きなんですが小説はなかなか食指が伸びず、アンソロジーならまだ読めるかな?と言う気持ちで購入しました。
冲方丁さんは、『マルドゥック・スクランブル』を読んでいましたし、新井素子さんは名前くらいは聞いたことがあるなあ、『グリーン・レクイエム』は読んだっけな、夢枕獏さんは『陰陽師』だなあ、とか。
個人的に好きなのは宮部みゆきさんの作品。ロボットとの哀愁漂う感じが好き。最後ちょっと泣きそうになってしまった。
これはあの映画みたいな感じだなあ、とか、さらさら読めたので、入門編には良いかな、と言う感じ。 -
Posted by ブクログ
短編集。
従来の今野さんとはまったく違う物語になっている。
まるでアイドルを主役にしたライトノベルのような設定と構成、展開で、意外を通り越して驚いた。
こんな物語も書くんだ、と。
実はアイドルが好きだという今野さん。
それもファンのためのバスツアーにまで参加してしまうほどの熱意があるらしい。
大好きなアイドルを主人公にした物語を書いてみました…といったところだろうか。
もちろん面白くないわけではない。
普通に読めば楽しめるし、展開に矛盾があって白けるわけでもない。
ただ、今野さんのファンにとっては読まなくても別にいいかな、と思う物語だった。 -
Posted by ブクログ
これまで今野さんのシリーズに登場した人物がこの物語には集められている。
それぞれのシリーズでの個性はそのままに、自分たちの手法で事件解決に向かうのだが…。
陰陽師を核とするもの、武道を核とするもの。
アプローチの仕方は違っても、やがてはひとつの結論へと向かっていく。
「STシリーズ」の「黒のモスクワ」で黒崎が所属していた美作竹上流が登場するのも面白い。
この物語はこの1冊を読んでも面白いけれど、それぞれのシリーズを読んだ後であればさらに面白く感じるだろう。
祓いを生業とする黒と白の二人組。
現役引退後も暴走族に多大な影響力を持つ二人組。
そして役小角の転生者である高校生。
彼らを協力者としている刑事たち。
登場人物の多様さだけでも豪華だ。
どうしても陰陽師に頼った解決は安易に感じてしまう部分はあるけれど、それでも最後までおもしろく読めた。 -
Posted by ブクログ
舞台は異国の地モスクワ。
百合根と赤城は科学捜査についての情報交換のための研修でモスクワに。
黒崎は美作竹上流のモスクワ支部発会式を兼ねたセミナー開催の講師としてモスクワに。
山吹はモスクワ在住の日本人に依頼されて、宗派の集まりで経をあげるためにモスクワに。
はからずもSTのメンバー4人が同時期にモスクワ入りしたのだ。
到着早々に百合根たちはラスプーチンゆかりのロシア正教会で起きた変死事件を捜査することになる。
ロシア捜査当局のアレクと共に事件現場に向かう二人。
一方黒崎や山吹と同じ飛行機に乗り合わせたフリーの記者は、警視庁関係者だと知り黒崎たちに張り付こうとする。
正教会での変死事件を知っていた彼は、ひとり闇に紛れて正教会に忍び込むが・・・。
翌日死体となって発見された遺体を解剖した赤城は、所見から他殺と断定。
東京から青山と翠も呼ばれて、モスクワでST揃い踏みの捜査が開始される。
黒崎にとって武術とは生きるそのものなのかもしれない。
様々な流派を渡り歩き、修行を重ねてきた彼はけっして持って生まれた才能だけで強くなったのではない。
強さの裏には人知れない努力もあったのだ。
アレクにモスクワ支部の指導者就任を請われた黒埼は、「考える」と返答する。
しかしそれを聞いた百合根は、驚き動揺し、思わず黒崎を責めてしまう。
とっさの反応は、百合根にとってSTそのものが、STのメンバーたちが、どれほど大きな存在なのかを教えてくれる。
自分が動揺していることに困惑する百合根。
彼はキャリアであり、いずれSTとも離れなければならない立場にある。
それでもSTは、彼にとっては大切な仲間であり、居場所であり、警察での存在意義そのものなのだ。
巻末に細谷正充によるそれぞれのメンバーの紹介が掲載されている。
その部分を引用してみる。
【百合根友久】
キャリアの警部。
特捜班のまとめ役。
個性的すぎる部下と、やる気満々の上司に挟まれ、さまざまな苦労を背負い込む。
【赤城左門】
法医学担当。女性恐怖症。
本人は一匹狼を気取るが、人を惹き寄せる魅力をもっている。
メンバーのリーダー格。
【青山翔】
臨床心理士で文章鑑定担当。
恐ろしいほどの美貌の持ち主。
秩序恐怖症で、自分の周囲をちらかしておかないと落ち着かない。
【結城翠】
物理担当。特捜班の紅一点。
常人離れした可聴音域と絶対音感をもつ。
閉所恐怖症もあって、いつも解放的な服を着ている。
【山吹才蔵】
第二化学担当。
薬学などの専門家で、麻薬・覚醒剤・毒物に詳しい。
曹洞宗の僧籍をもっている。
【黒崎勇治】
第一化学担当。
化学事故やガス爆発の鑑定の専門家。
嗅覚が優れている。無口。尖端恐怖症。
武術家で、サムライ風格を感じさせる。 -
Posted by ブクログ
福岡県玄界灘に浮かぶ沖ノ島には、宗像大社の神社のひとつである沖津宮がある。
天照大神の娘・田心姫を祀っている沖津宮には、古来より定められた掟があった。
・神官以外は基本的に上陸禁止。
・女人禁制。
・島で見聞きしたことは決して外で語ってはならない。
・島から何ひとつ持ち帰ってはならない。
土地の因習に縛られ捜査は難航する。
赤城が水死体を解剖したことにより他殺が判明。
事故ではなく正式に事件となり、ようやく捜査本部も設置されることになる。
しかし、警察OBも絡み思うように関係者から話を聞くこともできない。
STのメンバーたちは証言者たちの生理的な兆候と、心理学的な観察で事件の真相に迫っていく。
相変わらず自由に動き回るSTのメンバーたちに振り回されながら、百合根は彼らの言葉を信じ捜査を進める。
伝説シリーズはこの物語で終わるようだ。
理由はわからないが、他のシリーズに比べると伝説シリーズにはSTならではの面白さがあまりなかったように感じた。
誰もが納得する証拠を捜査にいかすために設置されたST。
だが翠たちの場合、その特殊な能力を持ちがゆえ、間違った方向へと誘導してしまう危険もはらんでいる。
すべてを総合し、分析し、判断する人間がいてこそSTはいかされるのだとあらためて思った。