今野敏のレビュー一覧
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「隠蔽捜査」シリーズの7冊目。
今回の主人公は竜崎ではなく、彼を取り巻く周りの面々がそれぞれに主人公を務める7つの短編からなるスピンオフ。GWの谷間に神戸へ出かけた車中でサクサクと読み進む。
主人公は竜崎ではないとは言え、やはりお話は彼の判断=正論に従って動く。
組織のしがらみや人間関係を忖度し落としどころを探るような仕事に終始している身にとって、話のテンポは小気味良く、まずまず面白く読んだ。
短編なので竜崎の斬れる正論が中心で、<変人>振りの描写が少ないのは致し方ないとは言え、最初の頃にあった良い意味での毒気が多少薄くなってきている感じは前作でも感じたところ。 -
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短編集。
従来の今野さんとはまったく違う物語になっている。
まるでアイドルを主役にしたライトノベルのような設定と構成、展開で、意外を通り越して驚いた。
こんな物語も書くんだ、と。
実はアイドルが好きだという今野さん。
それもファンのためのバスツアーにまで参加してしまうほどの熱意があるらしい。
大好きなアイドルを主人公にした物語を書いてみました…といったところだろうか。
もちろん面白くないわけではない。
普通に読めば楽しめるし、展開に矛盾があって白けるわけでもない。
ただ、今野さんのファンにとっては読まなくても別にいいかな、と思う物語だった。 -
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これまで今野さんのシリーズに登場した人物がこの物語には集められている。
それぞれのシリーズでの個性はそのままに、自分たちの手法で事件解決に向かうのだが…。
陰陽師を核とするもの、武道を核とするもの。
アプローチの仕方は違っても、やがてはひとつの結論へと向かっていく。
「STシリーズ」の「黒のモスクワ」で黒崎が所属していた美作竹上流が登場するのも面白い。
この物語はこの1冊を読んでも面白いけれど、それぞれのシリーズを読んだ後であればさらに面白く感じるだろう。
祓いを生業とする黒と白の二人組。
現役引退後も暴走族に多大な影響力を持つ二人組。
そして役小角の転生者である高校生。
彼らを協力者としている刑事たち。
登場人物の多様さだけでも豪華だ。
どうしても陰陽師に頼った解決は安易に感じてしまう部分はあるけれど、それでも最後までおもしろく読めた。 -
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舞台は異国の地モスクワ。
百合根と赤城は科学捜査についての情報交換のための研修でモスクワに。
黒崎は美作竹上流のモスクワ支部発会式を兼ねたセミナー開催の講師としてモスクワに。
山吹はモスクワ在住の日本人に依頼されて、宗派の集まりで経をあげるためにモスクワに。
はからずもSTのメンバー4人が同時期にモスクワ入りしたのだ。
到着早々に百合根たちはラスプーチンゆかりのロシア正教会で起きた変死事件を捜査することになる。
ロシア捜査当局のアレクと共に事件現場に向かう二人。
一方黒崎や山吹と同じ飛行機に乗り合わせたフリーの記者は、警視庁関係者だと知り黒崎たちに張り付こうとする。
正教会での変死事件を知っていた彼は、ひとり闇に紛れて正教会に忍び込むが・・・。
翌日死体となって発見された遺体を解剖した赤城は、所見から他殺と断定。
東京から青山と翠も呼ばれて、モスクワでST揃い踏みの捜査が開始される。
黒崎にとって武術とは生きるそのものなのかもしれない。
様々な流派を渡り歩き、修行を重ねてきた彼はけっして持って生まれた才能だけで強くなったのではない。
強さの裏には人知れない努力もあったのだ。
アレクにモスクワ支部の指導者就任を請われた黒埼は、「考える」と返答する。
しかしそれを聞いた百合根は、驚き動揺し、思わず黒崎を責めてしまう。
とっさの反応は、百合根にとってSTそのものが、STのメンバーたちが、どれほど大きな存在なのかを教えてくれる。
自分が動揺していることに困惑する百合根。
彼はキャリアであり、いずれSTとも離れなければならない立場にある。
それでもSTは、彼にとっては大切な仲間であり、居場所であり、警察での存在意義そのものなのだ。
巻末に細谷正充によるそれぞれのメンバーの紹介が掲載されている。
その部分を引用してみる。
【百合根友久】
キャリアの警部。
特捜班のまとめ役。
個性的すぎる部下と、やる気満々の上司に挟まれ、さまざまな苦労を背負い込む。
【赤城左門】
法医学担当。女性恐怖症。
本人は一匹狼を気取るが、人を惹き寄せる魅力をもっている。
メンバーのリーダー格。
【青山翔】
臨床心理士で文章鑑定担当。
恐ろしいほどの美貌の持ち主。
秩序恐怖症で、自分の周囲をちらかしておかないと落ち着かない。
【結城翠】
物理担当。特捜班の紅一点。
常人離れした可聴音域と絶対音感をもつ。
閉所恐怖症もあって、いつも解放的な服を着ている。
【山吹才蔵】
第二化学担当。
薬学などの専門家で、麻薬・覚醒剤・毒物に詳しい。
曹洞宗の僧籍をもっている。
【黒崎勇治】
第一化学担当。
化学事故やガス爆発の鑑定の専門家。
嗅覚が優れている。無口。尖端恐怖症。
武術家で、サムライ風格を感じさせる。 -
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福岡県玄界灘に浮かぶ沖ノ島には、宗像大社の神社のひとつである沖津宮がある。
天照大神の娘・田心姫を祀っている沖津宮には、古来より定められた掟があった。
・神官以外は基本的に上陸禁止。
・女人禁制。
・島で見聞きしたことは決して外で語ってはならない。
・島から何ひとつ持ち帰ってはならない。
土地の因習に縛られ捜査は難航する。
赤城が水死体を解剖したことにより他殺が判明。
事故ではなく正式に事件となり、ようやく捜査本部も設置されることになる。
しかし、警察OBも絡み思うように関係者から話を聞くこともできない。
STのメンバーたちは証言者たちの生理的な兆候と、心理学的な観察で事件の真相に迫っていく。
相変わらず自由に動き回るSTのメンバーたちに振り回されながら、百合根は彼らの言葉を信じ捜査を進める。
伝説シリーズはこの物語で終わるようだ。
理由はわからないが、他のシリーズに比べると伝説シリーズにはSTならではの面白さがあまりなかったように感じた。
誰もが納得する証拠を捜査にいかすために設置されたST。
だが翠たちの場合、その特殊な能力を持ちがゆえ、間違った方向へと誘導してしまう危険もはらんでいる。
すべてを総合し、分析し、判断する人間がいてこそSTはいかされるのだとあらためて思った。 -
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被害者となった小西律子は相手によってあからさまに態度を変える人間だった。
権力を持っているものには愛想よく媚び、スタッフなどには見下した態度を隠そうともしなかった。
何がそれほどまでに彼女を強気にさせていたのか。
単に性格の問題なのか、それとも人気に後押しされて天狗になってしまっていたのか。
STの面々が現地に捜査に向かう展開は目新しかった。
小型飛行機に乗らなくてはならなくなった翠の動揺など、ちょっとした息抜き場面もあり面白かった。
でも、捜査そのものはすでに事故死と判断がされていたからなのか。
後追いで確認作業に追われるばかりの展開で、STでなければ!!という場面がない。
STシリーズの楽しみは、やはり個性的なメンバーがそれぞれの特性をいかした調査をするところにある。
フル稼働で活躍しているのは菊川ばかり。
まったくSTのメンバーが目立っていない。
補助的な助言をするためにたまに登場してくるだけだ。
かろうじて存在感を示したのは青山だろうか。
せっかくのSTシリーズ。
彼らが自由に大胆に調査をする姿を見てみたいものだ。 -
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「色」シリーズはST特捜班のそれぞれのメンバーを中心に据えたシリーズである。
青の調査ファイル→青山翔
赤の調査ファイル→赤城左門
黄の調査ファイル→山吹才蔵
緑の調査ファイル→結城翠
黒の調査ファイル→黒崎勇治
「緑のファイル」は絶対音感と超人的な聴覚を持つ結城翠が中心となって展開する物語だ。
個々のヴァイオリンによる音の違い。
弾き手による音の違い。
翠の能力が事件を解く大きな力となっている。
聞こえ過ぎてしまうためにしなければならなかった辛い思い。
初めて出会った同じ能力を持つ人間。
事件の解明だけでなく、音楽にまつわる場面も楽しめた。
このシリーズは事件解明も楽しめるけれど、何よりも人間性が浮き彫りになる場面が多いのがうれしい。 -
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元は2002年の作品である。
その頃のインターネット事情と現在では大きく違う。
たぶん、この物語が発表されたときはインターネットの経験者はあまりいなかったのでは?と思う。
逆に今では未経験者を探す方が難しいだろう。
ネット上に突然現れる「殺人ライセンス」というゲーム。
ターゲットを殺害することを想定して進めていくゲームである。
たとえばターゲットに接触するのに「自宅を訪ねる」と「呼び出す」の二択がある。
「自宅を訪ねる」を選ぶと第三者に目撃されたことにより逮捕されました…とメッセージが出てゲームオーバーとなる。
「呼び出す」を選んだ場合は、次に呼び出す方法を選ぶ…という感じだ。
ほとんどの捜査官がインターネットの知識がないため、このサイトのことを知らされてもどう受け止めていいのかわからない。
インターネットで殺人…というシチュエーションが理解できないのだ。
結局、人が人を殺すのであって、基本的なことは何も変わらないと気づくのだが。
ミステリー部分よりも、相沢の変化、相沢家の雰囲気、キュウの成長など、他の部分のほうが楽しめた。
とくに祥子が麻理に違和感を感じ始めるところが印象に残った。
ほんの少しだけ自分の方が先に大人になっただけ・・・そんなふうに思えるようになった祥子の成長が見える場面は好きだ。
うっとうしいけれど感謝すべき存在でもある。
それが親だと思う。高校生で親のありがたみがわかるなんてすごいな…と単純に思ってしまった。
そんな簡単なことに気づいたのはもっと大人になってからだったので。
時間的な古さもあり、今野さんの作品のわりには書き込み不足というか浅い感じがした。
もったいないなと思う。 -
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ニュース番組の遊軍記者である布施は、これまでにも数々のスクープをものにしていた。
自然体にふるまう布施を、いつの間にか取材のターゲットは受け入れてしまうようなのだ。
何も考えずに行動しているように見える布施だったが、実はしっかりと考えたうえで動くべきときに動いている。
だからこそ、何度もスクープを手にすることができたのだ。
管理職である鳩村は、布施の実績を認めながらも何かと口うるさく注意をしてしまう。
キャスターの香山は、お飾りではないキャスターへの道を欲していた。
刑事である黒田は、布施の協力を受けつつ事件解決のために布施を利用することも厭わなかった。
スクープを手にすることが布施の目的ではない。
事件の影で苦しんでいる人に手を差しのべるため、少しでも力になるため。
彼なりの正義はそこにある。 -
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う~ん。悪くはない。
悪くはないけれど、今野さんに対する期待度がいつも高いせいか、ちょっとだけ残念感も。
碓氷にしてもアルトマン教授にしても、個性的ではあるけれどいまひとつパッとしない。
印象が薄いというか、あっさりしすぎていて後々まで印象に残るようなキャラクターではないような気がした。
碓氷のシリーズは「エチュード」しか読んでいない。
警察外部の人間と協力体制のもと捜査をしていくのがシリーズの特徴なのだろうか?
「エチュード」ではプロファイリングの専門家が協力者として捜査に参加していた。
珍しいせっかくの考古学もの。
ペトログリフを題材に選んだのだから、もっとそこを中心に物語が展開してほしかった。
なのに題材を料理しきれずに、適当に「〇〇らしさ」を盛り付けて完成品にしてしまった感じがどうしてもしてしまう。
もったいないなと思う。
今野さんならここからいくらでも物語を深く拡げていけただろうにと。
肝心の結末部分も消化不良のようなスッキリとしない感じが残った。
事件現場に残されたペトログリフも、それを残した理由も、いまひとつしっくりと来るものではなかったし、何よりも「この教授である必要がある?」という疑問も。
「エチュード」では視覚と死角という題材が上手く活かされていて面白かった。
一般にはあまり馴染みのない考古学をもっと題材に取りあげたのは珍しかったけれど、それだけにやはり「もったいないな」と思ってしまった。