野口悠紀雄のレビュー一覧
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話の内容としては、特に大きな驚きや新しい情報はなかったものの、日本とアメリカの違い、産業人材、そしてこれからの将来についての見解が非常に分かりやすく説明されていました。
本書のテーマである「寛容さを失った国は衰退する」という点が、今後のアメリカのトランプ政権において実際に起こりうるのではないかと考えると、世界の先進国であるアメリカが停滞することで、世界全体の進歩が遅れてしまうのではないかと、非常に不安に感じました。
また、日本は流動性が低く、産業も弱く、人材も少ないという現状に、日本に住んでいることへの強い危機感を覚えました。
これから生きていく上で必要なこと、学ぶべきこと、そして世界の -
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1940年ごろに形成された戦時体制が、戦後の経済復興を支えるとともに、現代にまで引き継がれて日本社会の発展にとっての足かせになっていることを指摘した本です。
「日本は第二次大戦の敗戦によって生まれ変わった」という理解がひろく受け入れられてきましたが、著者はこのような「不連続性仮説」がじつは誤りだと主張します。むしろ日本社会の断絶は、1940年ごろに認められます。たとえば、企業が株主の利益追求のための組織である以上に従業員の共同体としての性格をもつようになったことや、間接金融を中心とするメイン・バンク制が構築されたのは、戦時体制下においてでした。また、官僚によるさまざまな行政指導や、地方財政を -
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株価がバブル後の最高値を超えたのはやはり、円安が進んだため企業の利益が増大したから。
日本企業の生産性向上や、株主優先の姿勢を強めたからではない。
2024年8月の株価の暴落の直接の要因は、アメリカの景気後退によってFRBの利下げが大きくなるという予測が広がり、円キャリー取引が巻き戻され為替レートが円高方向に転換したから。
現在の実質実効為替レートは1970年代初めの1ドル=360円の固定相場制の為替レートとほぼ同じくらい円安。
2023年の円の購買力平価は、1ドル=90〜95円程度。
2021年から2024年1〜3月期の間に、大企業の粗利益は約3兆円増加。
これは2023年ごろからの輸 -
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2023年末に出た、ChatGPTのこれからを論じた本。
1年経ってみると、日常的に使う人とほとんど使わない人に別れてしまったなと言う感じ。ハルシネーションや知識が不足している話については、1年経った今も状況はあまり変わらない。というかこの時点でGPT-4まで出ており、2024年末現在ではo1 Proなので想定できる範囲の進化だなあと感じる。
内容は、ベーシックインカムと絡めて論じている人が複数人いるのが今となっては懐かしい。初期は仕事が奪われるというところからこう考える人が多かったイメージ。初期の粗削りな議論を見て理解できる今にこそ読むのがおすすめです。 -
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ネタバレ目的のない勉強をする。勉強自体が楽しい。
外国語の勉強がやめられないのは詩が読めるようになるから。
映画を字幕なしで見る。
レーガン大統領がモンデール候補に年齢の問題を指摘されたとき「私は年齢の問題を政治的な争点にするつもりはありません。したがって、私は対立候補の若さと経験のなさを政治的に利用しとうなどとは考えていないのです」
最も重要なのは、統計的な分析法。解析よりも統計学。
英会話学校は無意味。話すこと、より聞くこと、が重要。聞くことができれば話せる。
シュリーマンは、教える人ではなく生徒役になる人を雇っていた。
雇わなくても、学んだことをアウトプットする手段はたくさんある。
AI -
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この数年、仕事でアメリカに何度か出張したが、日本との違いに毎回驚かされる。物価は肌感覚で日本の倍以上、広大な土地、高い給料…
「アメリカはなぜ日本より豊かなのか?」まさにその疑問を持っていたので、本書を手に取った。
日米の報酬の格差、産業構造の差、日本経済が衰退した原因、アメリカの強さ、米中の関係、トランプ政権復活後の可能性、について書かれている。各章末に「まとめ」があるので頭の整理に助かる。また、著者はハッキリと物事を断ずるので、賛否両論はあるにせよわかりやすかった。
一言でいうと、アメリカの豊かさの源泉は、「異質なものへの寛容と多様性の容認だ」と著者は論ずる。他民族を受け入れる寛容性( -
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日銀の金利抑制策によって「円キャリー取引」が増大した。
「円キャリー取引」とは、円借り入れて資金を調達し、それをドルに換えてドル資産で運用する取引。将来円高になることがなければ、金利差に相当するだけの利益を得られる。
これは円安をもたらす。
円安で企業の利益は増えるがそれは輸入価格の上昇分を消費者物価に転嫁することにある。つまり、生産性の向上による健全な利益増ではなく、消費者の犠牲の上に成り立っている。
IMFとOECDによって計算されている購買力平価では、1ドル=90円が推計値。
市場レートと購買力平価がこれほど乖離したのは1980年代前半以来。
名目長期金利=「実質GDP成長率」+「 -
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ネタバレシンボルグラウンディング問題=シンボル、具体的な対象と結びついて理解しているか、という問題。AIは、その理解がないため、とんちんかんなことをいうことがある。
ハルシネーションがあることを前提に考える必要がある。
wikipediaのページを示してもらうと、すぐに確認できる。
外国語学習には最適。丸暗記する文章を作って貰う。英文の翻訳を読んでから、英文を読む。そのあと英文を丸暗記する。専門分野の英文を書いて、訂正して貰ってそれを丸暗記する。
丸暗記に適した教材は少ない。意味を理解してから丸暗記すれば、単語の意味を理解する。忘れない。幼児が言葉の意味を理解するプロセスと同じ。
英語は話す訓練は必 -
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著者が想定する2040年の日本の状況を多面的に説明した本です。決して悲観論を煽る様な内容ではないですが、現実を直視すると、かなり厳しい状況になるかもしれないという話が中心でした。
本レビューを書いているのは2024年で、他国と比較した相対的な経済力が低下し、人口減と高齢化に直面する中で、日本社会をどう変えるべきか(または変えないべきか)という議論が一部メディアで盛んです。その中で、「これ以上の経済成長を追い求めずとも、今のままの生活が維持できればいい」という意見を聞くことがありますが、この論理は成り立たないことは念頭に置かなければならないと思いました。即ち、労働人口が減少する中においては、経 -
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生成AIの誕生によって社会に衝撃的な変化がもたらされつつある。そして、その変化は人類がこれまで経験したことのない急激なものだ。
日本の企業では、その生成AIの利用が他の先進国に比べて限定された範囲に留まっている。このため、近い将来大きく遅れをとる恐れがあるという。また、医療、法律、教育などでの影響が大きい。だからといって、この本を読んで個人的に何か出来るという訳ではない。せいぜい、トランスフォームつまりChatGPTに入力する内容を、より適切な回答が得られるように検討するぐらいだ。
生成AIにより、ディストピアが訪れるのか、それともユートピアを実現出来るのか。それは政策の善し悪しでもたらされる -
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中国の方がITプラットフォーマを手中で国策や防衛に対し扱い易いような気がするが、これについてはアメリカでも安全保障上、公にデータ活用されているし、秘密裏な監視プログラムを暴いたスノーデン事件もある。両国のSNSに対するスタンスの違いは、国民に好き勝手言わせるガス抜きの機能が制度に組み込まれているか否かであり、巨大化した企業をどう扱うか、そこから金とデータを手に入れ、大衆操作(自国に限らない)に活用したい、というのは共通の課題だ。
本書は、公開ニュースの枠を出ない内容で、その整理と解説をする。上記に関連するものでは、次のように、大っぴらに利用しても政府に反対できない、という意味では中国が有利だ