野口悠紀雄のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
Audible版。副題にある「円安という麻薬」という言葉。以前勤めていた会社が業績不信で改革を進める中、円安という神風による業績回復で改革機運が急速にしぼんだのを思い出した。これを含めて、特に第4章までは個人的に共感する部分が多い。
第5章からアメリカなど海外との比較を通して、日本の成長が停滞した原因と対策を考察する。主な原因としてIT革命と中国の工業化に対応できず構造改革ができなかったことを挙げる。巨大テック企業が勃興したアメリカという特殊な国ではなく、欧州やアジア諸国との比較に重点を置いて欲しかった。
目次と各章末の「まとめ」を見るだけで内容が理解できるのはありがたい。
■目次
はじめに
第1章 信じられないほど貧しくなってしまった日本
1.これでよいのか、日本。ビッグマック指数で中国に抜かれた?
2.価格が安いことより、賃金が低いことが問題
3.知らないうちに日本の地位が低下した
4.日本は「アメリカ並み」から「韓国並み」になった
5.円の購買力は、70年代に逆戻りしてしまった
第2章 〝円安という麻薬〞で改革を怠った
1.円安になるのは、経済政策にバイアスがあるから
2.政治は、円安による安易な利益増を求める
3.企業利益が増加する二つのトリック
4.アベノミクスの本質│賃金を下げて株価を上げた
5.分配は重要だが、技術革新も重要
第3章 「安い日本」を理解するための経済指標
1.「総額」か、「一人あたり」か
2.「実質」は重要な概念だが、実体のない架空の数字
3.購買力平価と実質実効為替レート指数
4.ビッグマック指数と購買力平価の関係
第4章 物価が上がらないのは、賃金があがらないから
1.賃金が上がらなければ、高いアパートに住めない
2.日本で物価が上がらないのは、サービス価格が上がらないから
3.コストプッシュ・インフレもあるが、特殊な場合
第5章 日本停滞の原因をアメリカに学ぶ
1.「新しい資本主義」は「資本なき資本主義」 GAMMAと情報処理産業
2.アメリカをリードする「データ資本主義」=「高度サービス産業」
3.賃金も成長率も高い産業は何か? 日米を比較する
4.アメリカでは、従来の産業別分類が意味を失いつつある
5.アップルの年収は7400万円超⁉ 米企業の「稼ぐ力」は信じられないほど強い
第6章 デジタル化に遅れた日本
1.日本の高度教育力はアメリカの7分の1
2.大学の「情報化」が進まない日本で、デジタル化ができるはずはない
3.90年代後半からのIT革命に対応できなかった
4.デジタル化が進まなければ賃金は上がらない
5.韓国は日本より強い経済力を持つ国になった
第7章 亡国の円安20年史
1.2003年から本格化した為替介入
2.アベノミクスによる円安が日本を貧しくした
3.企業にとっても悪い円安になってきた
第8章 日本は1%成長できるか?
1.OECDは1%成長を実現できると言うが、IMFは0・5%だと言う
2.日本政府は、実質2%成長ができると言う
3.経済成長の基本モデル
4.楽観シナリオで深刻な問題を隠蔽する財政収支試算
5.消費税を15%に上げても焼け石に水
第9章 高齢化のピークに向かう―2040年問題の深刻さ
1.分配政策だけでは生き延びられない
2.2040年に向けて高齢化問題がさらに深刻化する
3.人口構成の変化で、社会保障の給付と負担はどう変わるか?
4.一人あたり社会保障負担が4割増える
5.老後生活資金は3000万円必要? 高齢者の9割が賄えない
6.高齢者向けの生活保護費が増大。消費税率を2・5%ポイント引き上げる必要がある
第10章 将来に向かって、いま何をすべきか?
1.50年前は希望の時代だった
2.つかの間の世界最先進国。そして衰退
3.日本は先進国にとどまれるか?
4.第2の敗戦なのに、危機感がない
5.経済原則に反する賃上げ税制は、長期的には賃金を低下させる
6.政府は何をすべきか、何をすべきでないか?
7.劣化した政治を何とか変えられないか -
Posted by ブクログ
「超」シリーズの野口氏による本。無尽蔵に増えていくデータの具体的な整理法を挙げている。
具体的にスマホなど端末を操作していく内容なので、通勤電車で読んでいると読み流しになってしまう。さらに6年前(2019年)の本なので今でも挙げているメニューを使えるか怪しいものもあるので、整理の考え方として読み進めた。データは「捨てる」ではなく「検索する」ことにエネルギーを使う方が良いというのが大枠。
非常に参考になったのは実物の書棚の整理で「使ったものから左端に置いていく」というもの。これだと使わないものはだんだん右端に追いやられるので削除対象になる。
後半は日々進化するAIとの向き合い方に言及。無限に増える情報も、それを管理するのも創造するのもヒトの力量次第だ。 -
Posted by ブクログ
「アメリカはなぜ豊かなのか?」という疑問を著者の視点で説いた一冊。著者はこの問いについて、「これは、50年以上にわたって私が抱き続けた疑問である」と冒頭で述べているとおり、その問題意識を持っていたようです。著者の作品はこれまで何冊か読んでいますが、そのような問題意識を持っていたことは知りませんでした。
その答えは、「アメリカの豊かさの厳選は、異質なものへの寛容と多様性の容認」にあるとし、アメリカの反映と日本の停滞の理由を解説します。
日本の取るべき道として、日本経済の望ましい姿として、金融の正常化を契機とした経済の着実な成長を主張していますが、現状を打開していくには難しい点も多いと感じます。
古代より、外国のいい所を取り入れながら発展してきたのが我が国の歴史ではありますが、現在に同じことをやることは簡単ではありません。現在の人手不足がその契機になっていくのか、私も含め日本人の意識はどう変わっていくのかは確実な答えが見いだせませんが、議論のなかでいい答えを導き出せるといいと思います。
一方で、今のアメリカ社会を見て、本当にそれが目指すべきものなのかということは常に問い続けなければならないとも思っています。すべてがアメリカに劣っていると考える必要はないのでは、とも感じてしまいます。
▼「補助して企業を助ければよい」という考えが基本にある限り、日本の半導体産業が復活することはないだろう
▼円安が続く限り、日本経済はスタグフレーションから脱却できないだろう。為替レートのコントロールこそ、現在の最も重要な経済政策だ
▼移民がアメリカお総人口に占める割合はわずか14%であるにもかかわらず、移民が創立した企業は、フォーチュン500企業のうち101社、移民を親に持つ2世が立ち上げた企業が122社あった。
▼なぜファブレス企業は収益率が高いのか?それは、全工程の中で、収益率が最も高い部分だけ担当しているからだ。
▼ファブレスは、日本生まれの日本人だけで社会を作る日本とは、相性が悪いシステムだ。日本の企業は、1社ですべてを完結させようとする自己完結的でクローズドな仕組みになっている。だから、中国の工業化という大きな変化に対応できなかったのは、必然だったと言える。
▼問題は、外国人や外国生まれを排除するという、日本人の仲間意識と閉鎖性だ。日本が現在の閉鎖状態から脱却するために必要なのは、こうした仲間意識を捨て去ることだ
▼アメリカの法学者であり、エール大学教授であるエイミー・チェアは、多民族を受け入れる「寛容性」こそが、覇権国にとっての最も重要な条件
▼中国はいかに経済成長し。いかに技術力を高められても。決して覇権国になることはできない。
▼日本は、所得面での魅力を失いつつあるにもかかわらず、移民を認めようとしない。これでは、回復の可能性は見出だせない。
<目次>
第1章 日米給与のあまりの格差
第2章 先端分野はアメリカが独占、日本の産業は古いまま
第3章 円安に安住して衰退した日本
第4章 春闘では解決できない。金融正常化が必要
第5章 アメリカの強さの源泉は「異質」の容認
第6章 強権化を進める中国
第7章 トランプはアメリカの強さを捨て去ろうとする -
Posted by ブクログ
この本は野口氏によって書かれたものですが、オリジナル版は1995年(私が社会人になったのが1989)その後2002年には「新版」さらに、2010年に最後の賞を書き直して出されたものです。
諸般を読んだ時に、戦争が終わってからかなり時間が経過するのに、未だに1940年体制(戦時体制)を引きずっているのかと驚いたのを覚えています。1995年と比較すると日本はさまざまな変化がありましたが、他の先進国と比べてデフレが続いて低成長の時代が30年近くも続いたのは、筆者の野口氏によれば、1940年体制からまだ完全に脱却できてないからのようです。
その説明が書き直された最終章に集約されていると思いますので、その部分について気になった部分を取り上げたく思います。
以下は気になったポイントです。
・イギリスやイタリアでは、石油ショックにより経常収支の赤字が拡大、その結果、為替レートが減価した。これにより輸入物価を引き上げ、それにより国内インフレが進む、それが賃金を押し上げ、国際競争力向上を打ち消した。こうして、イギリスやイタリアの通貨に対する信任は失われた、これに対して、日本では賃金上昇圧力が低かった(企業別労働組合)ため、輸出が増大し、経常収支黒字が拡大、円高となり輸入インフレを軽減でき、国内インフレが抑制、輸出拡大により不況も克服された(p212)
・1940年体制の中核部分の、官僚制度と金融・税財政制度は大きく変化した、その象徴は、1)日銀法の改正、2)大蔵省、通産省という名称の消滅、3)金融制度の代表であった長期信用銀行が消滅、4)都市銀行が再編、しかし、根強く残っている分野として、1)税・財政制度(=所得税と法人税を中心、消費税の導入くらいが新しい)、2)地方財政が国の財政に大きく依存する、3)日本型企業の閉鎖的体質である(p216)
・日本型企業の要素である、企業別労働組合、年功序列賃金、終身雇用は変わったが、残っている点として、閉鎖的で外に向かっていない、経営者の市場がない、内部昇格者が多く、改革の意欲を持たず現状維持勢力になってしまう、ビジネスモデルを継続する(p222)
・日本的、と言われているものは、40年体制的なものである、この体制は日本の長い歴史から見れば異質なものである(p231)
2025年6月9日読破(最終章のみ)
2025年6月9日作成