あらすじ
秩序を破壊する変化を歓迎する。革命の意義を正しく理解した者には未来がある――。
情報経済論の大家が社会の大変動を見通す。
生成AIが生み出す世界とは? 多角的に描き出す。
◆「生成AIのなかった世界」が終わりになる。「生成AIのある世界」が始まる。これからの時代、人間の知的活動は、まったく違うものになる。
◆革命はすでに進行している。これほどの速さで普及した新技術は前例がない。しかも、生成AIは多くの用途に使用される一般汎用技術だ。社会構造に大きな変化が起きる。
◆生成AIの利用による労働生産性の破壊的な変化を受け入れない企業は、壊滅的なコスト高に直面し、イノベーション上の不利な立場に陥るだろう。企業はいますぐ準備を始めるべきだ。ビジネスモデルの再構築、AIをワークフローに組み込むための働き方の変革――ビジネスリーダーはまさにいま、社内イノベーションを開始すべき時を迎えている。
◆一番危険なのは、この技術を過小評価したり、背を向けたりすることだ。変化を恐れて新しい技術を導入しなければ、日本は世界の進歩から決定的に立ち遅れてしまう。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
生成AIが登場したのはまだ2年前(2023.6頃)のようですが、これが私たちに及ぼす影響は大きいようです。思い起こせば、私が初めてインターネットに触れたのが1995年でした、登場してから何年経過しているかは不明ですが、その頃にインターネットを利用してビジネスを起こした人が新しい企業を成長したと思います、今またその時期が来ていると私は感じます。
生成AIは、この本によれば第三次産業革命に当たると指摘されていますが、今までの産業革命と異なり所謂ホワイトカラーに影響を与える初めての産業革命になるとのことです。産業革命が変えていく世界を「生成AI」という視点を通して見守っていきたいと感じました。
以下は気になったポイントです。
・生成AIがもたらす変化は、今までの変化(機械やコンピュータが人間の仕事を代替する)とは異なる。これまでの技術が主としてブルーカラーの仕事を自動化したのとは違い、生成AIの最も大きな影響は、ホワイトカラーの、それも知的に高度な仕事に及ぶ、活版技術やインターネットがもたらしたのと同じような変化がこれから大規模に生じる(p3)さらに社会のあり方が根底から覆されてしまう可能性がある、カスタマーサービス・マーケティング・研究開発・企業の意思決定にまで及び、人々の働き方が大きく変わる(p5)
・外国語の自動翻訳はすでにいくつかアプリがあるが、ChatGPTはそれより使いやすいし、正確である場合が多い。しかも要約はこれまでになかったサービスである(p27)
・筆者(野口氏)のChatGPTの使用方法して、第一に文章の校正(音声入力したテキスト構成と文語・口語変換)第二に、文献や資料の収集、要約、翻訳、この利用により私の仕事の生産性は著しく向上した(p33)ただし、書きたい内容が頭の中にはっきりした形で整理されている必要がある(p34)注意点としては、1)生成AIの出力が間違っている場合(ハルシネーション)、2)新しいアイデアの創出はできない(p38)
・1)ビジネスにおいても教育においても、ChatGPTの利用比率はアメリカの方が日本より進んでいる、2)教育学習における利用はビジネスの利用よりも進んでいる、教育面における利用はすでにかなり進んでいて現実の問題になっている(p54)
・生成AIが価値を提供できる上位の職種は、顧客対応・営業マーケティング・システム開発・研究開発であり、75%以上を占める(p71)
・新型コロナワクチンの主流は「mRNA」タイプであるが、この開発では複雑なタンパク質の構造を解明する必要があり、従来は非常に時間がかかる作業であったが、この過程で生成AIが活用されて、非常に短期間で構造が解明できるようになった(p81)
・企業にとっての生成AIの用途として、1)単純業務の効率化、2)カスタマーサービスの改善、3)意思決定の支援があるが、日本では1)の内容が多い、3)については日本では、今の所、関心がない企業がほとんど、政府や自治体も同じ(p111)
・データドリブンの組織では、データは組織全体で共有され、透明性が確保される。また伝統的な組織では、失敗は避け得られるものとされることが多い。データドリブンの組織では、データに基づいて失敗の分析が行われ、それから学んで改善をくりかえることが重視される(p124)生成AIを意思決定に活用するには、企業の構造を改革することが必要である、従業員のスキルを高め、組織体制を変革しなければならない(p125)
・生成AIは、データの分析だけでなく、新しい創作物を作成することができる。そのため知的労働に影響を及ぼしている(p143)
・ChatGPTには、適切な質問や指示が必要であり、そのためには「知識」が必要である、自分の思考を表現する能力、さらには他人への適切な伝達力が求められる、これによってこそ、思考を適切に展開できる。実業界の問題を数学的な問題として形式化し、それを解く能力も必要である、歴史・地理・自然界の法則といった基本的な知識の取得が必要で、これらはAI技術がいかに進歩しても必要なことである(p157)
・これまでの自動化技術の展開は、スキルレベルが最も低い労働者に最も大きな影響を与える傾向があると指摘されていた、ところが、生成AIは、これと逆のパターンとなる。修士・博士号の保有者、仕事のうち自動化できる比率は、生成AIがなければ28%にとどまるが、生成AIがあると57%に上昇する。それに対して高卒の場合には、それぞれ51%と64%である、つまり、修士・博士号の保有者は、生成AIによって大きな影響を受ける(p225)高度な知的労働では、失業率が50%になる(p228)
・日本では、57%の業務が自動化可能とされる中で、それを実現するには、業務がすでに標準化されており、デジタル化されていなければならない。ところが日本の営業部門では、いまだに情報が属人的に管理され、またデジタル化が進んでいない、こうした状況では、生成AIを導入できない、このままでは日本は世界の大勢に大きく遅れる危険がある(p226)
・低スキル従業員に不利に働く、つまり、生成AIをうまく使える人々が生産性を上げ、これまでより高い賃金を得られる、そしてうまく使えない人々を駆使して仕事を独占するようになる(p232)
・生成AIがもたらす変化h、第三次産業革命と行ってよい事態である、第一次は18世紀に起こった蒸気機関の登場、第二次は19世紀における電気の利用であった、今起こりつつあることは、まさしく産業革命である(p236)生成AIがもたらす変化は、第一次、第二次とはかなり違う、文章を書く作業を効率化するので、知的労働に影響を与える、単純労働でなく知的労働である点が、これまでとの大きな違いである、肉体労働はあまり影響を受けないだろう(p237)
・生成AIに対する指示の差で結果が変わらない仕事は、生成AIに代替される、そうでない仕事においても、生成AIの使い方で仕事の効率が変わる、生き残るのは、それに成功した人や企業である(p245)
2025年5月25日読破
2025年5月26日作成
Posted by ブクログ
AIの歴史やプロンプトの例示をする様な本はあるが実際に著者が生成AIを使用して有効不要を断じているのが分かりやすい。章ごとにまとめもあるので時間が無ければそちらを読んで復習するのもアリだろう。プログラミングの細かいところは出てこない。
クールな文体だが野口悠紀雄先生は執筆時点で80代半ば。AIよりも野口先生のクリアな脳の方に興味がいってしまった。続編が気になる。
Posted by ブクログ
かなり読みやすいやすかった
金融業界は社内の事務作業効率化にしか使っていない。個人情報を扱うためここはかなり慎重にならないといけない背景からきていると思う。
医薬品業界で新薬開発などにも利用しているのは驚き、新技術がどの業界で利用されるかはサービスインしてみたいとわからないんだな。
金融業界はなかなか攻めの使い方ができていないのではないか。
アメリカではAI発達によるクリエイターの解雇も始まっている。日本もそう遠くなく同じことが起きる。
Posted by ブクログ
1.5年前の2024/1月発刊の著作なのですごい速さで進化しているこの領域だとちょっと古いかもしれない(最近はより先のAIエージェントが話題になっている印象がある)のであまり新鮮な内容はなかったがchatGPTの仕組みなどがわかりやすく解説されていた。「超」整理法で有名な野口先生は経済学の先生という印象だったが、東大では応用物理学科だったという理系の出身でありこうした領域にも強いのが納得。
Posted by ブクログ
日本では生成AIを導入している企業は少ない。今すぐ導入しないと取り残されてしまう。上手く使う人は生産性を上げるこができるが、使わない人との格差は益々開くことになる。
Posted by ブクログ
生成AIの誕生によって社会に衝撃的な変化がもたらされつつある。そして、その変化は人類がこれまで経験したことのない急激なものだ。
日本の企業では、その生成AIの利用が他の先進国に比べて限定された範囲に留まっている。このため、近い将来大きく遅れをとる恐れがあるという。また、医療、法律、教育などでの影響が大きい。だからといって、この本を読んで個人的に何か出来るという訳ではない。せいぜい、トランスフォームつまりChatGPTに入力する内容を、より適切な回答が得られるように検討するぐらいだ。
生成AIにより、ディストピアが訪れるのか、それともユートピアを実現出来るのか。それは政策の善し悪しでもたらされる。あー、、、