【感想・ネタバレ】1940年体制(増補版) さらば戦時経済のレビュー

あらすじ

戦時期に生まれた「日本型経済システム」が今、我々を蝕んでいる。日本型経済システムは日本の長い歴史と文化に根差したものであるがゆえに「変えられない」という運命論を排し、「日本的」と言われているものの多くが「1940年体制的」なものであることを喝破した1995年刊の名著&ロングセラー『1940年体制』の増補版。
経済危機後の今日の情勢を踏まえて書き下ろした追加の第11章「経済危機後の1940年体制」では、企業の戦時経済的体質について論じている。戦時期に作られた経済体制に束縛され、日本はグローバリゼーションから取り残されている、と警告する。

※本書は2010年12月に東洋経済新報社より刊行された『1940年体制(増補版)』を電子書籍化したものです。

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ネタバレ

1940年体制(増補版) ―さらば戦時経済 単行本 – 2010/12/10

日本的なるものと思い込んでいるものは実は比較的新しい
2011年2月19日記述

1995年に出版された1940年体制の改訂版。
2002年にも出されているので3つ目の増補版になる。

11章の内容を新たにしている。
本的なるものと戦後思ってきたものは、実は太平洋戦争への準備で出来た体制の影響が随分と大きいという事実に驚いた。
現在の世界経済の流れの中で高度成長期には良かったそのシステムでは対応しきれない。
新しい経済体制を作る必要がある。

本書が初めて世に出たのは1995年。
それから15年経つが、大きく日本は変化した。
しかし企業の分野で40年体制が変化していないことが問題であると指摘する。
特に労働者の企業間移動は殆ど無く、それは日本経済にとってマイナスに働いていると。

また経営者層も大半の企業でいわゆる上がりのポストになっていることがダイナミズムを産まなくなっている原因のひとつであるとも。

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2022年01月16日

Posted by ブクログ

日本では終戦を期に全てが刷新され、戦後に再構築された経済体制によって高度経済成長が成し遂げられたと考えられてきた。野口氏はこれを否定し、日本の経済体制は1940年頃に総力戦に向けて構築されたものが、かなりの程度戦後も継続して生き残っていると主張する。総力戦に最適化された体制で有るが故に、大量生産時代には効果的にこの体制は機能した。高度成長を成し遂げ、石油ショックからもいち早く立ち直り、世界経済を席巻するほどの発展につながった。

しかしながら、グローバル化、IT化が進み、異なる経済環境となった今、「1940年体制」は一刻も早く解体、刷新されねばならない障害である。さもなければ、高齢化が進み没落しつつある日本の衰退を止めることはできない。本書からは野口氏の強い危機意識と焦燥感、あるいは絶望感すら滲み出しているように感じられる。

経済体制、革新官僚の作った官僚機構が生き残ってきた経緯に対する野口氏の分析については、異なる意見もあるようで、本書は典拠や異論についても随時言及しながら書かれている。(『戦後経済史』は出展や異論への言及が省かれていて、本書と同様の主張が一般の人にもより読みやすく表現されている)。

細かな議論についての是非は素人には判断が難しいが、
大蔵省の中の人であった野口氏ゆえに説得力が感じられた。

カレル・ヴァン・ウォルフレンが出展として所々出てくる。明治期に作られた官僚体制が、戦後も生き残り政治から超然として動くあり様は日本に特有の「政治的中枢の欠如」である。日本は私的領域と公的領域の境界がない「高度に政治化された社会」である。といったウォルフレンの指摘は日本の抱える問題の根幹を鋭く浮彫にしていると1990年頃には思えたが、その後日本の政治体制はゆるやかに変化が起こり、2017年の今となっては野口氏の指摘する「1940年体制」のほうがより深刻で重要な問題のように思われる。

これから日本はこの「1940年体制」を打ち壊して先に進めるのであろうか?

遅々として進まない雇用規制の緩和や年金制度の改革。企業に賃金を上げるようプレッシャーをかける安倍政権。こうした動きを見ると、絶望的な気持ちにならざるを得ない。

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2017年01月18日

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ライフネット生命の出口さんがお勧めしていた本です。現在の日本の社会構造が1940年代のものを未だに引きづっていることが良く分かりました。

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2013年11月24日

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1940年体制 革新官僚 企画院 岸信介と高橋是清 
小さな政府 日本企業に必要なのは、海外に真似されるのを防ぐのではなく、差別化・イノベーション もっと先へ進むこと

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2015年11月05日

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今の日本企業がいかにして出来たか、そしてそれは別に古来からの日本的なものではないということ、が面白かった。

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2013年06月11日

Posted by ブクログ

 野口先生の本は、役所にはいった30年くらい前から連続して読んでいる。今でもわかりやすい。

 この本は、名著といわれていたが、なぜか読み飛ばしていたので、改めて読んでみる。

 大事な主張は、年功序列とか、間接金融中心の金融システム、持家主義、直接税中心主義など、現在の日本の経済社会システムの特徴といわれるものが、第二次世界大戦直前の1940年ぐらいに整備された戦時体制の結果であるということ。

 これを丁寧に説明していてわかりやすい。また、このシステムが、高度成長期、あるいは石油ショックなどからの回復にうまく対応したけれども、もうそろそろ、システムを改革しないといけないというのがこの本の主張。

 特に、野口先生が言われている指摘で気になった点。

(1)日本が生き残るのに必要なのは、古いものの生き残りや現状維持に支援をあたえないことである。(p227)

 これを政治の世界で実現するのはとても難しい。野口先生が指摘されているように、業界ごとに業界団体ができていて、その業界の意向が与党に圧力をかける。この業界の意向が時代や国際競争力にあっていればいいが、ともすれば、自分たちだけを守るために、外資を排除してほしいとか、お金がほしいといった主張になりやすい。

 そうこうしているうちに、日本だけが失われた20年になってしまった。これをどういう道筋で改革したらいいのだろう。

(2)日本を外に開き、とじこもりから脱却することだ。(p229)

 さすがに、中国や新興国の発展から、製造業の工場の海外進出がさかんで、日本の国内の工場は空洞化しつつある。しかし、ある程度成熟した先進国が国内の空洞化はやむをえないものでもある。日本国内でしかできない、イノベーションができるかどうか、それも国際的に闘っていけるかどうか、という改革力を民間企業は冷酷に実施しつつある。こっそりではあるが。

(3)現在の日本の政治の閉塞感は、革新官僚が1940年代にもった閉塞感と似ている。政治が国民に選択肢をしめせない状況になっている。(p190)

 日本の将来のために、社会保障制度をどうするのか、もっと将来世代の負担を軽減するために給付水準の引き下げと料率の引き下げといった国民の不人気な政策をうちあげる、まっとうな政策をうちだす、そのために消費税をどこまではあげざるをえない、国民にはがまんいただけないと、将来世代にまっとうな政府を残していけないと、訴える政党がないのは、非常に不安を覚える。

 もともと、戦前は天皇陛下の、そして今は国民の公僕である役人たちが、はぎしりをして、現状をうれいているのは事実。それが、戦前は革新官僚の動きになったが、現在でも、そのような全体的な政策の改革、そして自由市場の活性化を訴える人たちが、官僚の世界の一部しかないのは、決して健全な姿ではない。

 もっと、政策の方向性について、具体的な提案をすべきとは考えるが、今の政治主導のコントロールの中では、なかなか続く若者はいないだろうな。

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2012年05月27日

Posted by ブクログ

  戦後65年が経過したにもかかわらず、戦時中の仕組みがいまだに生き延びている。戦後のGHQの改革によりすべて新しく生まれ変わったわけではなく、戦争のために国民を総動員する仕組みが残っていた。その仕組みが、戦後のある期間はうまく機能して、高度成長が成し遂げられたが、その後はこの仕組みが経済成長の足をひっぱている。
  その一例は、日本的経営である。終身雇用、年功給、企業別労働組合、共同体的企業は、戦後のイノベーションではなく、1940年体制の象徴的なものであった。当時の革新官僚が作り上げた企業統制の仕組みに他ならない。一部は、この仕組みも崩壊しつつあるが、自由競争を嫌うという精神はいまだに強く生き残っている。
  経済の低迷を脱出するには1940年体制との決別が必要である。

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2011年06月14日

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【メモ】
政治家の役割:
政治家は高度成長から除外された後進セクターの調整を行うフィクサーであり、傍役であった。
「statesman」という言葉から想像される国家的な目標選択のための指導的機能は、高度成長期の政治家にはそもそも期待されていなかったといってよい。基本的な目標として経済成長をとることに議論の余地はなかったから、社会の基本的目標について相争うという意味での「政治」は、そもそも存在しなかったのである。(p.127)

規制緩和:
規制をそれが達成しようとする目的(安全・需給調整等)によって分類するのは誤り→目的を正当化できるかは価値判断の問題
問題となる事項について、市場メカニズムが適切な機能を果たしているか否かを基準に、規制の是非を考えるべき。(p.150)

未来に向けて:
○「未来への展望を持つことによって、初めて過去を見直すことができる」
×「過去の歴史から教訓を学び、その上に未来を構想する」
(p.205)

企業の閉鎖的性格:
大企業の幹部は、経営の専門家でなく、その組織の内部事情(とりわけ人的関係)の専門家であり、過去の事業において成功してきた人たちだ。したがって、企業経営の究極的な目的は、これまで続いてきた企業の姿と、従業員の共同体を維持することにおかれる。(p.222)

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2011年01月04日

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この本は野口氏によって書かれたものですが、オリジナル版は1995年(私が社会人になったのが1989)その後2002年には「新版」さらに、2010年に最後の賞を書き直して出されたものです。

諸般を読んだ時に、戦争が終わってからかなり時間が経過するのに、未だに1940年体制(戦時体制)を引きずっているのかと驚いたのを覚えています。1995年と比較すると日本はさまざまな変化がありましたが、他の先進国と比べてデフレが続いて低成長の時代が30年近くも続いたのは、筆者の野口氏によれば、1940年体制からまだ完全に脱却できてないからのようです。

その説明が書き直された最終章に集約されていると思いますので、その部分について気になった部分を取り上げたく思います。

以下は気になったポイントです。

・イギリスやイタリアでは、石油ショックにより経常収支の赤字が拡大、その結果、為替レートが減価した。これにより輸入物価を引き上げ、それにより国内インフレが進む、それが賃金を押し上げ、国際競争力向上を打ち消した。こうして、イギリスやイタリアの通貨に対する信任は失われた、これに対して、日本では賃金上昇圧力が低かった(企業別労働組合)ため、輸出が増大し、経常収支黒字が拡大、円高となり輸入インフレを軽減でき、国内インフレが抑制、輸出拡大により不況も克服された(p212)

・1940年体制の中核部分の、官僚制度と金融・税財政制度は大きく変化した、その象徴は、1)日銀法の改正、2)大蔵省、通産省という名称の消滅、3)金融制度の代表であった長期信用銀行が消滅、4)都市銀行が再編、しかし、根強く残っている分野として、1)税・財政制度(=所得税と法人税を中心、消費税の導入くらいが新しい)、2)地方財政が国の財政に大きく依存する、3)日本型企業の閉鎖的体質である(p216)

・日本型企業の要素である、企業別労働組合、年功序列賃金、終身雇用は変わったが、残っている点として、閉鎖的で外に向かっていない、経営者の市場がない、内部昇格者が多く、改革の意欲を持たず現状維持勢力になってしまう、ビジネスモデルを継続する(p222)

・日本的、と言われているものは、40年体制的なものである、この体制は日本の長い歴史から見れば異質なものである(p231)

2025年6月9日読破(最終章のみ)
2025年6月9日作成

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2025年06月09日

Posted by ブクログ

1940年ごろに形成された戦時体制が、戦後の経済復興を支えるとともに、現代にまで引き継がれて日本社会の発展にとっての足かせになっていることを指摘した本です。

「日本は第二次大戦の敗戦によって生まれ変わった」という理解がひろく受け入れられてきましたが、著者はこのような「不連続性仮説」がじつは誤りだと主張します。むしろ日本社会の断絶は、1940年ごろに認められます。たとえば、企業が株主の利益追求のための組織である以上に従業員の共同体としての性格をもつようになったことや、間接金融を中心とするメイン・バンク制が構築されたのは、戦時体制下においてでした。また、官僚によるさまざまな行政指導や、地方財政を国がコントロールするしくみなども、総力戦体制を構築するために導入されたと著者はいいます。

こうした社会のしくみを、著者は「1940年体制」と呼び、それが戦後の日本経済の復興を可能にしたことを明らかにしています。たとえば、間接金融方式のもとで資金が基幹産業と輸出産業に重点的に振り分けられました。他方、行政指導や地方財政のコントロールといったしくみは、経済成長をうながすことよりもむしろ市場の競争を緩和し国内の摩擦を調整する役割を果たしてきました。

しかし、グローバル化が進む現在の世界情勢のなかでは、これまで日本の経済発展を支えてきた「1940年体制」はむしろ経済発展を阻害する要因となっていると著者は主張し、人びとのマインドセットもふくめた社会全体のありかたを見なおす必要があると訴えています。

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2025年03月21日

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