あらすじ
日本の老後生活を巡る問題は、公的年金の信頼性、退職後の生活資金、介護や医療サービスの確保、医療技術の進展といった多岐にわたるテーマを抱えています。特に、老後の生活資金の大部分は公的年金で賄えるかどうかがポイントであるものの、政府が公表する年金の財政見通しでは、様々な将来見通しを公開しているが、非現実的な仮定を置くことによって、真の問題を覆い隠しています。
老後資金の必要額に関しては、2019年の「老後資金2000万円問題」以来、個人の貯蓄や投資の重要性が注目されていますが、本書では、株式投資や新NISAなどに頼るより、自己投資によるスキルアップがより効果的であると経済学者の野口悠紀雄氏は提言。また、団塊ジュニア世代は就職氷河期を経験し、雇用環境が厳しいなか、65歳時点で3000万円以上の資金が必要になる可能性も出てきています。
さらに、高齢者の医療保険や介護保険負担も増加しており、「所得」ではなく「資産」に基づく負担制度が必要だと野口氏は指摘。
重要なのは、若いうちからできうる限りの努力をして、老後の備えをしておくこと。また、老後のことについて、他人事ではなく、「自分事」として考えることです。
老後の暮らしや資金について考え直してみるのに最適な1冊です。
『終末格差』 もくじ
序章 広がる終末格差
第1章 老後資金としていくら必要か?
第2章 投資戦略で老後を守れるか?
第3章 団塊ジュニア世代がこれから直面する厳しい老後
第4章 公的年金は老後生活の支柱となるか?
第5章 介護保険は破綻しないか?
第6章 期待される医療技術の進歩
第7章 高齢者の負担増が進む
第8章 終末格差を克服するのは、自分への投資
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Posted by ブクログ
自分の比較優位が何であるかを自覚すること。これ、結構難しい、能力のある人なら自覚は簡単。自覚がなにも無い人はどうするか?無いと自覚しそれなりの努力をするしか無いのかも。
Posted by ブクログ
目次)はじめに──これからの老後生活
序章 広がる終末格差
1.拡大する終末格差
2.巨額の資産を蓄積したからといって、幸せな終末とは限らない
第1章 老後資金としていくら必要か?
1.大議論を呼んだ老後資金2000万円問題
2.将来の年金額が減れば、老後資金に3000万円強必要
3.老後への必要貯蓄額は、用いる支出データでも大きく違う
4.高齢者の生活の実態
第2章 投資戦略で老後を守れるか?
1.新NISAは救いの神なのか?
2.リスクを考慮する重要性
3.「貯蓄から投資へ」という政策の誤り
4.確実に儲けられる方法はない
5.利益を得るのは、「金採掘者を採掘する」人々
6.バブルに乗ろうとした人々の悲劇
7.政治の不安定化で、インフレの危険が高まる
8.インフレ時代には、預金でなく株式投資すべきか?
第3章 団塊ジュニア世代がこれから直面する厳しい老後
1.団塊ジュニア世代が直面する老後問題
2.賃金低下とリストラに喘ぐ50代社員
3.年金受給まで正規労働者を続けるのは難しい
4.あらゆる世代が時限爆弾を抱える
第4章 公的年金は老後生活の支柱となるか?
1.年金改革の課題
2.公的年金の将来は楽観できない
3.あまりに楽観的な成長見通しに基づく財政検証
4.老後のための要貯蓄額は、3500~5000万円!
5.「専業主婦問題」をどう解決するか?
6.働けば年金がもらえない:不合理で不公平な在職老齢年金制度
7.国民年金の低年金問題をどう解決するか?
8.「百年安心年金」は実現できていない(その1)実質賃金の見通しが甘すぎた
9.「百年安心年金」は実現できていない(その2)マクロ経済スライドが機能しなかった
10.年金支給は70歳からに?
第5章 介護保険は破綻しないか?
1.要介護に備えて、まずは正確な情報収集を
2.老人ホームをどう選択する?
3.要介護になったら、施設に入らないと生活できないのか?
4.介護人材の不足
5.崩壊寸前の訪問介護で、なぜ基本報酬を引き下げる?
6.なぜ外国人労働者の活用を進めない?
第6章 期待される医療技術の進歩
1.メディカル・イノベーションはどこまで進むか?
2.日本でもオンライン医療は進むか?
3.今後の医療需給
第7章 高齢者の負担増が進む
1.介護保険、医療保険で負担増
2.「全世代型社会保障」
3.本来は、資産所得が介護財源になるべきだ
第8章 終末格差を克服するのは、自分への投資
1.いつまでも働ける社会が来た
2.情報処理技術の進展は、働く高齢者の味方
3.自分の位置づけを正しく知る
4.税や社会保障の仕組みが高齢者の就業を妨げる
Posted by ブクログ
高齢の方が本音で何を感じているかは想像するしかないが、もう80歳とかの良い歳になれば、そこからの「余生の意義」は、若い頃に思う「人生の意義」とは、身体的にも別の質感だろうと思う。
つまり、長い人生で糧となるような名誉欲や若い肉体故の性的な部分は削ぎ落とされ、たわいもない家族や友との交流や健康でいられる事そのもの、あるいは苦痛からの回避を求めるように優先順位が入れ替わってくる。果たして、長生きして時代の移り変わりや世の中自体をもっと見てみたいという気持ちに変化は訪れるだろうか。
そう思うなら若い頃からもっと交流し、健康に気を使って生き、書を読めば良い。だが、そう考えるのは無粋であり、人間はそう直線的には生きられないものだと、ようやく分かりつつある。
「今この瞬間」の心構えにも差がある。
そして、それはその「余生」の差にもなる。
最も大きな差は、お金よりも健康だと本書はいう。健常者は、要介護の金持ちよりずっと豊かな終末を迎えられる。しかし、健康は完全にはコントロールできない。やはりお金も大事だという。
資産運用に随分と紙幅を割く。「今この瞬間」余裕がなければ、投資などできないのではと思うが、人間は、与えられた所与の条件から余裕をどうにか見つけ出し、その時間や資金を将来のために有効活用をすべきだと。
書類を1時間で作る人と10分で仕上げる人、こうした実務時間が差を生み、その差を少し我慢して自己研鑽に使うか否かで更に差がついていく。運の良し悪しやリスクの取り方でも差が広がったり、リセットされたりする。
格差を論じる時、そこにあるのは他者との比較。それは余生に重要な事だろうか。だが、比較不要な価値観としても「長生きして世の中をもっと見てみたい」という感覚はある。だから、本を読む。
Posted by ブクログ
生成AIを活用してご自身が執筆活動を続けているという本を先日読みました、私が社会人になりたての頃からお世話になっているので、かなりのご高齢だと思いますが、精力的に仕事を続けておられます。それに引き換え、昨年定年退職を迎えた私は、両親の介護のこともあり雇用延長での勤務はしないで、細々と個人事業をしています。
年金は将来的には受給額も減り、開始年齢を下げなければ維持できないことや、老人が働く気を削ぐような制度があることも指摘されています。筆者の野口氏のアドバイスは「自分に投資をしろ、生成AIなどの最新の技術を味方につけろ」と受け取りました。多くの本を読んで、生成AIが仕事を奪うよりも、生成AIを使いこなす人が使いこなせない人の仕事を奪う世の中になることも理解できてきました。
誕生してまだ2年程度(2023.6月頃)しか経過していない技術ですが、私にとってはインターネットに初めて触れた1994年に感じた衝撃に似ています。終末に向けて幸せに過ごすことができるよう、この本に書かれていることを理解して自分なりに実行していきたいと思いました。
以下は気になったポイントです。
・トルストイの有名な言葉にある(幸せな家庭は同じように幸せだが、不幸な家庭はそれぞれに不幸だ)ように、終末についても同じことが言える「幸せな終末は同じように幸せだが、不幸な終末は、それぞれに不幸だ」幸福な週末とは、1)終末に至るまで健康である、2)経済的に困窮していない、3)家族の仲がいい(p24)
・厚生年金の支給開始年齢の引き上げは、2024年の財政検証でも全く議論されていない、しかし2040年代を考えると、あり得ないことではないというより、大いにあり得る。その理由は、実質賃金についてあまりに甘い見通しの上に構築されているから(p35)
・二人以上の世帯のうち世帯主が65歳以上の世帯(2人以上世帯の42%)について、2022年では貯蓄額の平均は2414万円、違和感を感じるのは金融資産の分布は「パレート分布」(正規分布でない)だからである。中央値は1677万円で、これが多くのひとが持っている感覚だろう(p48)
・ファイナンス理論の本を何冊も書いてきたが、そこで強調した最も重要なメッセージは「確実に儲かる有利な投資など存在しない」である、機体収益率が高い資産は、必ずリスクも高い(p71)新NISAなどで一番得をしているのは、手数料を稼ぐ金融機関である、人々がある方向に一斉に走り出した時、ほとんどは犠牲者になる、その人たちをうまく利用した人が、つまりゴールドラッシュで「採掘者を掘った人=ズボンを作ったリーバイス、駅馬車を運行したウェルズ・ファーゴ)が成功者になる(p73)
・最も確実で収益が高い投資とは「自分自身に投資すること」時間や努力を投資先を探すのではなく、自分自身の価値を高めるために使うべき(p77)
・団塊ジュニア世代とは、2024年において「50−53歳」であり、就職氷河期とは、1993年から2004年(または2005年)頃である(p90)
・1971年に制定された「中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法」は、その後に幾つかの改正を経て、2012年改正(13年施行)で、65歳までの雇用を義務付けた、3つの選択肢の中で最も多いのは、65歳までの継続雇用制度の導入(他には、定年引き上げ、定年制廃止)である(p96)改正高年齢者雇用安定ほうが2020年に成立(21年4月施行)により、70歳までの就業機会の確保が努力義務となった(p98)
・基礎年金と報酬比例年金の年金額を毎年少しずつ減らす仕組み(マクロ経済スライド)は2004年の公的年金制度改革で導入され、2023年に完了する予定であったが、これまでに5回しか発動なかったので、将来も続けないと年金財政が均衡しないことになった(p117)本来なら2004-2020までで14.4%削減の予定が、2.7%しか削減されていない(p154)
・国民年金保険料の納付期間を延長する案については、検証結果が改善されたこと、24年秋の総選挙後の政治情勢の変化もあり、25年の国会で関連法の改正案を提出する予定であったが、作業は遅れている(p125)
・在職老齢年金は明らかに不合理な制度である、長く働く高齢者に対するペナルティとなっている。対象とするのは給与所得者のみで、資産取得は対象外である。日本にのみあるのは、元々は在職中には年金を支給しない原則であった、これを1965年に65歳以上にも支給される特別な年金として導入された、つまり、この制度は「本来は受給できないはずの人に、特例として支給する制度」と考えられている(p142)
・支給開始年齢の70歳への引き上げが、厚生年金・報酬比例分の開始が65引き上げが完了した2025年から行われるとする(仮定)と、2年で1年ずつ引き上げ10年かけて行うとする。1960年生まれの人は、2025年に65歳となり年金を受けられるので、1960年以前に生まれた人は影響を受けない。2035年で70歳となる人は、1965年に生まれた人、70歳支給開始になるのが2035年であるならが、1965年に生まれた人は、70歳にならないと年金が受給できない。このように70歳支給開始の影響をフルに受けるのは、1965年以降に生まれた人である(p173)
・2022年9月で、65歳以上の高齢者人口は「3627万人」要介護・要支援の認定者数は、697万人(p191)介護施設などの定員の合計は217万人なので、これらの差である480万人は、自宅に住み続けて介護保険サービスを受けている(p182)
・誰でも比較優位を持っている(例:A氏は有能な弁護士であり、かつタイプも速く打てる。この場合、タイプを打つのが自分よりも遅くてもタイピストを雇うべきである、それによりできた時間で弁護士の仕事をした方が有利になる、この弁護士はタイプ打ちでは、絶対優位性を持っているが、比較優位をもっていない)すべての人が自分の比較優位に特化(=他の人よりも効率的にできることに特化する)し、分業を進めることが望ましい(p259)
2025年6月21日読破
2025年6月21日作成
Posted by ブクログ
終末(老後)はますます格差が広がっちゃうよねということを言っている本
主に今の年金制度を批判してる感じ
本が主張してたことを下記にまとめる
5年前くらいに老後資金2000万が必要と言われて炎上したが、それ以来あまり老後資金について議論されなくなった
が、現在の実質賃金成長率や少子高齢化の現状を見ると確実に確保できる保険料は減り、給付を減らさざるを得ない
給付が減ると、30年後には老後資金3500〜5000万は必要らしい
NISAが老後資金確保の銀の弾丸と思われがちだが、実際はリスクがあるし、それで得られる利益はそこまで多くもない
政府は年金給付額を減らすか支給年齢を引き伸ばすかなりの対策を打つべき
また、一定の給与がある高齢者に年金を払わない仕組みはやめるべき。働いて損するなら働かないという人が増えるため
扶養者が保険料を納めない仕組みもやめるべき。今は専業主婦がほとんどいない時代なので
年金だけでなく介護や医療の負担も大きくなる
特に介護は人手不足が進んでるかつ、実際に人手が減っている。それにもかかわらず報酬の引き下げが起こり、実質賃金の上昇率も他の職種より低い
老人ホームなどの介護施設も少ないし、高いものが多い
昔は三世代で一つの家に住んでたため、そんなに介護は問題にならなかった
今は核家族化が進んで問題となっている
Posted by ブクログ
保険全般、介護、医療などに注目しながら、経済の成長率に合わせて結果的に老後にどのくらいお金が必要かを述べている。目新しい情報はない。筆者は金融資産への課税について強く訴えていたが、自分も概ね同意である。
Posted by ブクログ
高齢化、年金、介護の観点で今後の見通しを語る。内容的に斬新なものはないが見通しは暗い。個人的には金融課税のあり方は要注目。また、自身の年金額の見通しについて再確認するいいきっかけになった。