あらすじ
国民の能力に差はないのになぜ給料が7.5倍!?
その理由を知れば、日本は現状から抜け出せる!
アメリカと日本の国力の差は、縮まるどころか広がる一方だ。いまや一人当たりGDPでは2倍以上の差が開き、専門家の報酬はアメリカのほうが7・5倍高いことも。国民の能力に差はないのに、国の豊かさとなると、なぜ雲泥の差が生じるのか? その理由は「世界各国から優秀な人材を受け入れ、能力を発揮できる機会を与えているかどうかにある」と著者は言う。実際に大手IT企業の創業者には移民や移民2世が多く、2011年以降にアメリカで創設された企業の3分の1は移民によるものである。日本が豊かさを取り戻すためのヒントが満載の一冊。
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去年アメリカ在住の友人が日本に一時帰国し会って感じたことがありました。とにかく羽ぶりがよく、お金の使い方にためらいがない。
もちろんこの機に日本でしか手に入らないものを買っておこうという気持ちもあったと思うのですが、友人曰く「日本はモノが安い」とのこと。
「どうして住む場所が違うだけで、ここまで豊かさに差がついたのだろう」と疑問に思い本書を手に取りました。
本書では差が出た原因として、アメリカと日本の文化の違い、企業の今までの戦略、政治構造の違いなどを挙げており参考になりました。
著者はあとがきで政府が変わることを望んでいますが、それは難しそうであること、国民の意識を変えることが必要であることをメッセージとして残しています。いろいろ考えてさせられる本でした。
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制度の違い、風土の違いから来るエコシステムの有り無しの違いが大きい。
移民、起業、資金供給者。
開放系と閉鎖系の違いも大きい。
加点か減点主義か、それは制度、風土などでどちらが合理的か無意識に考えで行動してしまうはず。
Posted by ブクログ
先端分野に取り残されていることが日本の問題ということや、金融正常化が必要ということには非常に納得できる。
しかし移民推進というのはどうであろうか。
有能な移民が日本の国益となれば理想的なのだが、移民によって日本を脅かされるようにならないのだろうか。
安易な移民推進には反対である。
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良書。
野口悠紀雄さんの見識は相変わらず素晴らしい。
なんか、日本人として先行き不安になる。国民性がビジネスに向かないんだろう。協調性、安定志向、保守的。
でも、識字率、その他のスキルも高い国民。貧富の差も小さい。多少貧しくなっても平和に暮らせる方が大事ではないかとも思う。
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「超」整理法を著し、そのユニークな発想法と手法の納得感で記憶に刻まれた著者。低迷する日本と成長し続けるアメリカを取り上げ、その差異はどこから生まれてくるのか、データを駆使して分析している。日本の弱みにメスを入れ、処方箋を提示している。著者の父はアメリカ軍との戦争で命を落としたが、その怒りの矛先は、何の防御手段も持たない国民を爆撃機の攻撃にさらし、火災はバケツリレーで消し止めよと命じていた無責任、かつドイツ降伏後も何の展望もない中、惰性的に戦争を継続させた無能な指導者たちに向けられている。当時の日本に蔓延していた不条理さは払拭できたのだろうか、本書で指摘される日米の格差拡大の真因は、意外とそんなところにあるのかもしれない、と考えさせられた。
Posted by ブクログ
ソフトウェアエンジニア報酬 中央値
東京 6.9万ドル サンフランシスコ 23.4万ドル (2022年末)
大学院卒年収 日本400万円 11.5万ドル≒1670万円
コロナから回復期 大幅な人手不足 →賃金上昇
アメリカの主要産業=テック産業、医薬品産業、金融業
アメリカの人口 世界の4.3% GDP 25% 日本 人口1.6% GDP 6%
時価総額上位100社中 アメリカ61、日本1(トヨタ)
大学での高度の専門的教育
大学ランキングトップ100 アメリカ36校 トップ10のうち7校
人口1億人当たりのトップ100大学 アメリカ36 ドイツ8 中国7 韓国3 日本2
日本政府 営利事業への国の補助は巨額 基礎研究や人材育成は削減
半導体の成長はAIのロジック半導体 日本は自動車用やメモリーやイメージセンサ
必要なのは補助金ではなく 技術・投資・人材
円安で輸出産業の利益上昇、株価上昇 安い賃金 技術開発が不足
購買力平価は 1ドル=90円
日本の99.7%が中小企業、労働者の7割 組合員は17%
金融正常化
低金利で効率の悪い投資 円安による利益で技術開発が遅れ
アメリカの強さ=異質の容認 最強国の条件=寛容
移民14% フォーチューン500企業のうち101企業が移民が創立
IT革命はインド人と中国人が実現 NVIDIA Google Zoom Yahoo
オープン ファブレス 場所貸し(ウィンブルドン現象)
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世界中から多様な人々が夢を求めて集うアメリカ。その活力は多様性がもたらす創造性に根ざしている。
一方で日本は長らく均質性を美徳としてきたが近年その枠組みに限界が見え始めている。政治行政とお上に依存し村社会的な閉鎖性が改革を阻む現状は明らかだ。
豊かさとは経済的な数値以上に変化を受け入れ挑戦を促す土壌に宿るのではないか。停滞から抜け出すには日本も多様性を力とする新たな視点が必要だろう。
未来を切り開く鍵は自ら動き出す意志にある。旅立とう諸外国に、試そう自分を。
Posted by ブクログ
この数年、仕事でアメリカに何度か出張したが、日本との違いに毎回驚かされる。物価は肌感覚で日本の倍以上、広大な土地、高い給料…
「アメリカはなぜ日本より豊かなのか?」まさにその疑問を持っていたので、本書を手に取った。
日米の報酬の格差、産業構造の差、日本経済が衰退した原因、アメリカの強さ、米中の関係、トランプ政権復活後の可能性、について書かれている。各章末に「まとめ」があるので頭の整理に助かる。また、著者はハッキリと物事を断ずるので、賛否両論はあるにせよわかりやすかった。
一言でいうと、アメリカの豊かさの源泉は、「異質なものへの寛容と多様性の容認だ」と著者は論ずる。他民族を受け入れる寛容性(tolerance)。世界中から優秀な人材を呼び寄せ、活用することによって経済、軍事、テクノロジーの各分野で優位性を築いた。アメリカ企業の多くは移民や移民2世が作った。エヌビディア、Google、Yahoo等外国生まれのアメリカ人が作った企業が多い。優秀な人が能力を発揮できる機会を与えてきたのがアメリカ。オープンな社会では、アップルのように収益率の高いファブレス(工場を持たない製造業企業)が生まれやすい。かたや日本生まれの日本人だけで社会を作る日本。日本企業の多くは1社ですべてを完結させようとする自己完結的でクローズドな仕組みになっているという。
産業構造が変化したのもアメリカの特長。テック、医薬品、金融業が伸びる一方で、自動車、製鉄業は衰退。AIの活用によって、新薬の開発コストとリードタイムを大幅に削減できているという。確かにファイザーやモデルナといったアメリカの製薬会社が、驚く程短期間でコロナワクチンを開発したのは記憶に新しい。AIの根幹を成す“ロジック半導体”の需要は今後も高まる一方だろう。
日本経済正常化のためには、円安政策から脱却することだと著者は説く。円安で企業利益が増大するのは帳簿上のことに過ぎず、利益が増大することにより企業は技術革新や新しいビジネスモデル導入の意欲を失い、結果生産性の向上が阻害されるという。この論法は腹落ちはしなかったが、今の円安状態からは脱却しないと日米の国力の差は開く一方だという実感はある。日本は“金利正常化”に進めるのか…?
一方、トランプ大統領再選に伴い、異質なものに対する寛容性を放棄する方向になるという。それがアメリカを強くするのか弱くするのか、今後注視してみることにしよう。
Posted by ブクログ
2024年夏の本なので、たった1年前だが、5-7章は隔世の感がある。もはや懐かしさすら感じるレベル。アメリカ、中国、とも議論の浅さ感じる。新書だし仕方ないですが。
前半では、円安が輸出業の数は変わらないのに帳簿上利益額を上げてしまったために、日本企業の生産性向上が進まず衰退したこと、金利正常化は短期的痛みを伴い政治的な課題であること、金利が低いままだと貴重な資源を垂れ流して技術開発が進まないこと、このままだと生産性上がらないのに無理に賃金上げてインフレやまず、のスタグフレーションが収まらないこと、が丁寧に語られます。
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久しぶりに野口氏を読む。
著者の意見にはおおむね賛成。それにしてもこの30年で世界との差がこんなに広がってしまうとは・・・
やはり意味のない補助金や助成金はさっさと廃止すべきだと思う。
トランプ2期目が決まる前の本だが、今ならどう著者が言うか聞いてみたい。
Posted by ブクログ
「アメリカはなぜ豊かなのか?」という疑問を著者の視点で説いた一冊。著者はこの問いについて、「これは、50年以上にわたって私が抱き続けた疑問である」と冒頭で述べているとおり、その問題意識を持っていたようです。著者の作品はこれまで何冊か読んでいますが、そのような問題意識を持っていたことは知りませんでした。
その答えは、「アメリカの豊かさの厳選は、異質なものへの寛容と多様性の容認」にあるとし、アメリカの反映と日本の停滞の理由を解説します。
日本の取るべき道として、日本経済の望ましい姿として、金融の正常化を契機とした経済の着実な成長を主張していますが、現状を打開していくには難しい点も多いと感じます。
古代より、外国のいい所を取り入れながら発展してきたのが我が国の歴史ではありますが、現在に同じことをやることは簡単ではありません。現在の人手不足がその契機になっていくのか、私も含め日本人の意識はどう変わっていくのかは確実な答えが見いだせませんが、議論のなかでいい答えを導き出せるといいと思います。
一方で、今のアメリカ社会を見て、本当にそれが目指すべきものなのかということは常に問い続けなければならないとも思っています。すべてがアメリカに劣っていると考える必要はないのでは、とも感じてしまいます。
▼「補助して企業を助ければよい」という考えが基本にある限り、日本の半導体産業が復活することはないだろう
▼円安が続く限り、日本経済はスタグフレーションから脱却できないだろう。為替レートのコントロールこそ、現在の最も重要な経済政策だ
▼移民がアメリカお総人口に占める割合はわずか14%であるにもかかわらず、移民が創立した企業は、フォーチュン500企業のうち101社、移民を親に持つ2世が立ち上げた企業が122社あった。
▼なぜファブレス企業は収益率が高いのか?それは、全工程の中で、収益率が最も高い部分だけ担当しているからだ。
▼ファブレスは、日本生まれの日本人だけで社会を作る日本とは、相性が悪いシステムだ。日本の企業は、1社ですべてを完結させようとする自己完結的でクローズドな仕組みになっている。だから、中国の工業化という大きな変化に対応できなかったのは、必然だったと言える。
▼問題は、外国人や外国生まれを排除するという、日本人の仲間意識と閉鎖性だ。日本が現在の閉鎖状態から脱却するために必要なのは、こうした仲間意識を捨て去ることだ
▼アメリカの法学者であり、エール大学教授であるエイミー・チェアは、多民族を受け入れる「寛容性」こそが、覇権国にとっての最も重要な条件
▼中国はいかに経済成長し。いかに技術力を高められても。決して覇権国になることはできない。
▼日本は、所得面での魅力を失いつつあるにもかかわらず、移民を認めようとしない。これでは、回復の可能性は見出だせない。
<目次>
第1章 日米給与のあまりの格差
第2章 先端分野はアメリカが独占、日本の産業は古いまま
第3章 円安に安住して衰退した日本
第4章 春闘では解決できない。金融正常化が必要
第5章 アメリカの強さの源泉は「異質」の容認
第6章 強権化を進める中国
第7章 トランプはアメリカの強さを捨て去ろうとする
Posted by ブクログ
読んでいると暗澹たる気分になってくるけど、これが現実なんだろうなぁ。
そして、放漫財政は良くないんだろうけど、著者は緊縮財政論者なんだろうなと思わせる表現がちらほら。どちらが正解かわからないけど、経済政策はほんと間違えてもらいたくない。政治家はきちんと選ばないと。
Posted by ブクログ
話の内容としては、特に大きな驚きや新しい情報はなかったものの、日本とアメリカの違い、産業人材、そしてこれからの将来についての見解が非常に分かりやすく説明されていました。
本書のテーマである「寛容さを失った国は衰退する」という点が、今後のアメリカのトランプ政権において実際に起こりうるのではないかと考えると、世界の先進国であるアメリカが停滞することで、世界全体の進歩が遅れてしまうのではないかと、非常に不安に感じました。
また、日本は流動性が低く、産業も弱く、人材も少ないという現状に、日本に住んでいることへの強い危機感を覚えました。
これから生きていく上で必要なこと、学ぶべきこと、そして世界の流れを読むことは、一つ一つが非常に難しいですが、少しでもアンテナを張って日々の生活を送っていくしかないと強く抱きました。
いやー、きついっすね。
Posted by ブクログ
日銀の金利抑制策によって「円キャリー取引」が増大した。
「円キャリー取引」とは、円借り入れて資金を調達し、それをドルに換えてドル資産で運用する取引。将来円高になることがなければ、金利差に相当するだけの利益を得られる。
これは円安をもたらす。
円安で企業の利益は増えるがそれは輸入価格の上昇分を消費者物価に転嫁することにある。つまり、生産性の向上による健全な利益増ではなく、消費者の犠牲の上に成り立っている。
IMFとOECDによって計算されている購買力平価では、1ドル=90円が推計値。
市場レートと購買力平価がこれほど乖離したのは1980年代前半以来。
名目長期金利=「実質GDP成長率」+「消費者物価上昇率」