春日武彦のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレたまたま手に取り斜め読み。
さまざまな知識満載、表現力の妙味、
例えば、富岡多恵子の遠い空を、
田舎を舞台にした気味の悪い小説である
肥溜めに石を放り込んでみるような怖さと好奇心とに満たされている
という感想。遠い空の紹介の前には、アメリカ西部劇やドラマに出てくる底なし沼のことが書かれており、とにかく引き出しが広く多く想定外の発想と結びつきの考察。面白いし、紹介されている本の内容も詳しいのでブックガイドとしても役立つ。
遠い空の章がやはりなかなかよい。億劫であること面倒くさいという心性がもつ支配力、人を麻痺させる力。
いい人は不精者。
最初はおもろないと思ったが細かい考察表現法人間てしょう -
Posted by ブクログ
精神科医、春日武彦による「恐怖の一歩手前」「グロテスクの未然形」とでも言うべき不安や違和感に満ちた感覚をもたらす文学作品を題材にしたブックガイドとも文学評論ともエッセイともつかない読み物。
文庫化にあたりボーナストラックとして描き下ろしで一章が追加されている。
取り上げられている作品の中で明確にホラーといえるのはラブクラフトの「ランドルフ・カーターの陳述」ぐらい。しかも内容は結構な diss。
多くは純文学系のしかも割とマイナーな短編が多く、百閒の「殺生」とラブクラフト以外はいずれも未読どころかタイトルすら知らない作品。しかし、どれも怖いというより不気味というか厭な感じの小説で面白そうではあ -
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Posted by ブクログ
自分はビビリである。
世の中に、好んでジェットコースターに乗ったり、ホラー映画を喜んでみる人がいるというのが信じがたい。
そういうわけで、「恐怖の正体」に何らかの回答が得られるのではとの期待をして本書を読んだ。
この本では、恐怖を以下の三要素によって説明する。
・危機感
・不条理感
・精神的視野狭窄
しかし、単純には語り切れないらしい。
例えば「恐怖症」の人たちにとっては、実際には直面していないにも関わらず恐怖を感じる。
むしろ、漠然とした不安を、わかりやすいものによって形を与え、そこに恐怖を感じるメカニズムがあるらしい。
恐怖の最中にある人が、どんな風に時間を意識するかが語られるあたり -
Posted by ブクログ
●=引用
●幻の同居人の存在を訴える老婦人たちは、なるほど天井に向かって「そこから出ていけ!」と怒鳴ることもあろう。(略)だがそのいっぽう彼女たちには、過剰に侵入者個人を意識するといった点おいても、あまりにも被害内容が生活に密着し具体的である点においても、またどこか危機感が希薄な点においても、さらには迷惑を訴えても恐ろしさや不安感を訴えぬ点においても、なにがしかの屈折した親近感を屋根裏の某へ抱いているような気配を指摘し得るのである。(略)天井裏の侵入者は、実は老婦人の孤独を癒すべく彼女と不思議な交流を実現していると考えることも出来るのである。
●ひっそりと一人暮らしを営む老女たちにとって天井