春日武彦のレビュー一覧
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600ページという読み応えの凄さもそうだが 内容がいちいち濃くて流し読みすらできない。下手すると その1 項目からこの本とは別の資料に当たっていたりもして本当にきりがなかった。 いや これはいい意味で。ブックガイド映画ガイドとしても優秀で この本をきっかけに 6冊ほど本を購入した。中でも島尾敏男作品集全5巻を2000円で手に入れることができたことはこの作家を紹介してくれたおかげだ。ずっと積読の状態だったJ Gバラードのコカインナイトも読み始めることができた。博覧強記はもちろんなのだが文章の書き方がえらく上手でクラクラしながら読んでしまうのだった。
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ネタバレ単行本『私家版精神医学事典』河出書房新社, 2017
解題文庫化『奇想版精神医学事典』河出文庫, 2021.8
結構一気読みしたが、これは凄い本だった。
確かに無限にループできる本。
そして「超音波怪優」として金田朋子に言及されていて、笑った。
また、他の本でもウィリアム・カーロス・ウィリアムズには言及されていたが、あ、「パターソン」の題材になった人だったんだ、と本書で気づいた。
島尾敏雄への言及。
「トラウマ系」の列挙。
などなど、などなど。
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五十音順でもなければアルファベット順でもなく、筆者の「連想」の流れに乗って見出し語を紡いでゆく、前代未聞の精神医学事典。ただし、実用性には乏しい。博覧強記の精神科医による世紀の奇書。
単行本の推薦文 荒俣宏、円城塔、斎藤環
文庫解説 穂村弘 -
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「我々の首が180度回転していきなり逆さまを向いてしまうといったことなど絶対に起きないのに、心に限ってはそんなことが生じかねない。そのようなグロテスクさが、心には潜在しているのである」
「つましい幸せなどを得るよりも、あえて被害者意識を堪能することを選ぶ人間は、世の中にいくらでもいることを我々は知っておくべきなのである」
「画才のない岡本太郎とか文才のない内田百閒など、何の奥行きもあるまい」
専門に閉じることない精神医療エッセイとも言うべき内容なので、対象を一刀両断するグッとくるフレーズが至るところにひしめいていて小気味よい。もちろん返す刀で自分も切られてしまうのだけど、誰もがいたずらに被害者意識を肥大化させるばかりの昨今、こうした視点がもっと共有されて良い。
一つだけ苦情を書かせてもらうと、本書はブックガイドではないのに矢鱈と小説の紹介が多く、また読みたくなる本が増えてしまった。 -
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生活保護ケースワーカーとして働いていますが、本書に記された「詰んだ」ところで日々もがいています。
特に精神疾患を抱えた人への対応は、研修講師として登壇していてもよく尋ねられる質問ではあるんですが、医療職でもないためうまくアドバイスができなくて困っていました。
本書は、病気や症状から解説するのではなく、現場で直面する事象からの視点で「何が起こっているのか」「相手はどういう考えなどを持って動いているのか」を精神科医の視点で解説しており、援助職にとって最良のアドバイスになっています。
解決しないことを皆で背負うために、援助職のメンタルケアに、本当におすすめしたいと思います。 -
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登場人物たちについて思ったことを語ります。
「ああ、そうですか」氏について、自身の現状へ不貞腐れて生きて、言葉を意識するほどに、言語化によって、自己の人生への悔恨や無念が溢れて仕方がないから、言葉を意識せず生きるために、会話を放棄しているのだと思いました、なんとなく、釣りが好きそうで、麻雀は嫌いそうです。
年賀状氏について、年末の忙しさと疲れで、本人も思いがけず、してしまったのではないかと思いました。
たまたま、整理していた年賀状を、うっかり自宅から持ち出して、車内で未整理であったことに気づいてしまったために、してしまったのだと思いました、地元で歩きタバコをする人を見かけるのですが、令和になっても昭和のままの装いの方や崩れた方が多いのですが、第三勢力に、家庭や会社へ忠義を誓っていそうな真面目な方たちがいます、例外なく眼鏡をされていて、足元なんて見えていないから、歩きタバコのあとポイ捨てをしている自覚もないのかと思われます、そういう方たちと同じ、周りが枠組みの外にあって、見えていないから、してしまうのだと思いました。
焼身自殺をされた方について、文庫化する前の新書の時代での60代ですから、老い始める頃に昭和が終わった方だと思います 少し理解が及びません、アルコールランプのように酔った自分に火を点ける気持ちにでもなったのかなぁとか無理やり想像しましたが、訳が分からないです。
小さな絵からコツコツと上達を夢見る方について、まぁ趣味なんで良いんじゃないでしょうか、と、さも無関心を装いたくなりますが、とても気持ちが分かりますし、共感できます。特別な上達法の先には、時代を塗り替える栄光があるに決まっていると夢見る部分が私にはあります。大人の趣味ほど熱を上げて、特別な手段にこだわっている人が多い気がします、子どもの夢は決まっている成功のレールがありますが、大人からの夢の実現には飛躍した成功が必要で、自分のルールに縋る気持ちが、よく分かります。
動物園での死者について、解説されるほど、よく分からなくなりました
共犯者のAとbについて、Aがもたらす刺激物にbがくっついていったのかなぁと想像しました、覚せい剤ほどでなくても、タバコや酒の入り口は、いつもbはAの案内で触れていたのだと思います、だから搾取でしかない援助交際もAによる性行為の場の提供で、自発性がない分、刺激に酔っていたのかなぁと思います、性やドラッグに溺れるには、はしたない自分だけは許せず、強要されなければ自分では、性行為などの刺激的な選択を出来なかったのかと思いました。
死亡届を出せない方たちについて、週刊誌の談話を引用されていて、本人が怯えていた、と語っているのが全てだと思います 死者が怖くて、何もできなくなってしまったのでしょう
覚せい剤中毒で、性癖のある方について、暴走族が爆音を鳴らしていると、本当にバイクの運転が気持ち良くて、気分アゲアゲでヤメらえないのだろうなぁと想像します それは、エンジンの爆音と振動が生む興奮と、運転のためにハンドルを握ることで、よりバイクの乗っていることに集中して下りる気がしなくなるのだろうと思っています、同じ理屈で興奮の持続のために、つい性癖のままに行動してしまうのだと思いました。
Q氏について、折り紙や塗り絵では子どもっぽいから、したくないけれど、木工や絵画だと現実の実力が見えてイヤになるから、工作をしていたのだと思いました 動力があると、それだけでカッコイイですから 工作も食事の合間を埋めるためだけの役割だったのでしょう 作品の完成も、月に一つや二つで、大部分は、ボゥーと座っていたり、テレビやラジオを視聴していたのではないかと思いました。
不幸であることは、自分だけの苦しみに忙殺され、周りへ頓着しない理由づけるができるのだなぁと思いました
もう読んでしまったので、「幸福な金持ちであるより、不幸なソクラテスでありたい」という言葉に魅力を感じることができなくなりました。 -
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挨拶しても無視する、満員電車で足を組んで平然としている、ちぐはぐな返答しかできない…など、世の中にいる「心の病気でもなければ奇人というほどでもなく、しかしどこか微妙に不協和音の混ざった生き方をしている人たち」を精神科医の視点から考察するエッセイ。めちゃくちゃ面白かった。
自分もたまに「この人はなぜこういう言動をするのだろう」と不思議に思う人と遭遇する。不愉快になったり気持ち悪く感じたりするのに同時になぜか惹かれる。怖いもの見たさというか。彼らなりに理由があるのかもしれないし、何も考えていないのかもしれない。本書を読んでそういった人たちの解像度が増し、今後は以前より寛容になれる気がする。
1995年に足立区で起きた二人の女によるお粗末な営利誘拐事件。その犯人の一人、bのパーソナリティ分析が興味深い。「自分の気持ちや考えを首尾よく表現する語彙や言語能力を持てなかった者は、常に社会との間に違和を覚え、それが苛立ちとなってきわめて短絡的・直上的・衝動的な人間になる場合もあれば、むしろコミュニケーションの成立をあきらめ、それがためにひどく無気力かつ得体の知れぬ人物と周囲から思われるようになる場合もある」。bはそういう人物だったのではないかと著者は憶測する。人生に対して投げやりになり、もう一人に流されるようにして犯罪に手を染めたのではないか。「まあいずれにせよ、語彙が貧弱で表現能力拙いことは不幸の中でもかなりグレードが高い筈である」。人間は思考にも表現にも伝達にも言語を用いる。だから言語を豊かにすることが人生の豊かさにつながる。自分は常々そう思っているので(それは読書する理由の一つでもある)この指摘は胸に沁みた。
人間にとっての精神のアキレス腱は「こだわり・プライド・被害者意識」という見立ても体感的にわかる気がする。変な人が変な言動をするときってたいてい何らかの執着心が原因なように思い当たるから。
文庫化にあたって追加された第5章で、親本が書かれた90年代後半から2000年の「サイコバブル」の時代と比較して、現在は「当時ほど激しく「どぎつい」症状を示す人は少なくなっている。総じて現在は、精神症状の軽症化がどの精神疾患でも観察される」という。精神科受診へのハードルが低くなり早期から受診する人が増えた、SNSの浸透により幻覚や妄想の持ち主にも「立つ瀬」が提供されたからではないかと著者は見ている。25年前は「心の激痛に叫び声を上げる時代」だった。今は生きづらさを抱えながら「心の鈍痛に耐える時代」。 -
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自殺とはいかないまでも、小さな悩みや面倒なこと嫌なことが積み重なっていくと、すべてがどうでもよくなって、全部投げ出して人間関係もシャットアウトして逃げたくなることはある。逆に、やってきたことが一度に無駄になったときや、何かを成し遂げたことでそう感じる時もある。
そういう時って、自分の積み重ねにふと未練がなくなる感じで、それは自殺に踏み切ることと似た部分があると思った。まだ戻れるだけ自殺よりはマシなんだろう。結局、努力や人間関係とかそういう蓄積を放棄することができず、時が解決するのを待つことが多いけれど
生きたいから生きているのではなく、義務感や死への恐怖とか、単にそういうものがあるから死なないだけって人、踏み切れないってだけで本当は死にたいと思っている人は少なくないんじゃないかと思う -
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自滅的な小説の感想とそれから連想される著者の記憶が並行して展開する文芸評論とエッセイの中間のような構成。自滅とあるけれども紹介される本の全部がそうとも言い切れない。自分には、魔が差してしまった人たちの話と思えた。
「わたしにとって常に関心があるのは「連想」という心の働きである。いや、連想するときのイメージの飛躍距離に興味がある。距離が短すぎれば、それは当たり前・月並みということになる。距離が遠すぎれば、もはや意味が分からない。そこそこに遠い距離だと、ときに意外性や詩情、発見や驚きが生じる」
「他人の連想を自分のものと比べたり玩味してみるのはきわめて妙趣に富む作業ではないだろうか。もしかするとそれは現代詩を読む楽しさに近いかもしれないとさえ思う」
小説を読んでいると全然本筋と関係ないような文章から思いがけない記憶の断片が突然蘇ることはままある。小説を読む醍醐味の一つと言っていい。それが黒歴史的な記憶だと意味不明な言葉を叫びながらのたうち回りたくなる。読書ー想起のメカニズムは不思議だ。小説を読むとは自分の過去を読むことなのかもしれない。 -
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医師作家9人によるアンソロジー作品。
どの作品も50頁程なので、スピード感がある。
研修医 精神科医 救急医療 現場医療 研究者 認知症等 医療1つとってもジャンルが違い、心理描写の加減に手に汗握ってハラハラしたり、淡々と読み進めたり、一冊で何度も美味しい読み応えのある本でした。
医師(著者)が実際に経験しているであろうリアリティがそこにある。
認知症対応を生業としている身としては、何度も見た光景で「あーー大変さの中に、いくつも希望が見いだせるんだよ」「怒ったらダメダメ」と逆の意味でハラハラさせられた。
現代はサービスが揃っているので、抱え込まず使える手段を利用していくのがお互いの心の安定を図るが、未だに長男が!とか、嫁が!とか他人事の様に話す親戚がいるのも事実。
「介護者は生き方を選べないのか?」に胸つまされる。
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とても面白い。知りたいことが書かれている。
患者に寄り添いつつ患者を突き放す。患者に嫌悪感を持ってはいけないが嫌はやっぱり嫌。エレガントな処方と増改築を繰り返したような訳のわからない処方。同じ薬しか処方しない医者、隠し味を加えるような処方をする医者。
そして極めつけは精神科医が望むことは2つ、治るか関係性を断ち切るか。究極のサービス業だと思う。傾聴しているように感じさせつつ、深入りしない。確かにそうしないと医者側が病む。担当医を思い出しながら、とても納得した。
精神科医を受診している人以外にも、誰が読んでも面白いと思う。文章が読みやすく好みなので、他の本も読んでみよう。