【感想・ネタバレ】不幸になりたがる人たち 増補新版のレビュー

あらすじ

自虐指向と破滅願望はどこから来るのか? 人間の狂気について考察する。

動物園の熊舎に身を投げた主婦、「葬式代がない」とアパートの床下に妻の遺体を埋めた夫、4匹の愛犬をつれて鉄道自殺を図った男──世の中には不幸や悲惨さを自ら選びとっているとしか思えない人たちがいる。不都合な現実に対処するために認知をゆがめ、率先して不幸に身をゆだねる奇妙な隣人。自虐指向と破滅願望がもたらすものは何か? 人間の狂気について考察する。解説 カレー沢薫

【目次】
第1章 理解しかねる隣人たち
不自然な人たち/ああ、そうですか/大おお晦みそ日かの電車/炎の人/微妙な違和感/おかしいのは誰か/猫町の正体/猫おばさんと四匹目の猫

第2章 奇妙な発想 奇矯な振る舞い
幸運の法則/運勢曲線/不幸の先取りについて(1)/不幸の先取りについて(2)/事故への誘惑/「いけないこと」が手招きする/失われた指/見当外れの事情/被害者意識依存症/これさえなければ……/これさえあれば……/ものごとのはじまり

第3章 悲惨の悦楽 不幸の安らぎ
熊に喰われる/虎と熊/二十六時間の誘拐/二人の女/素朴な疑問/近似値としての言葉(1)/近似値としての言葉(2)/安寧としての現状維持/床下の女房、ミイラの父親/呆気なさについて(1)/呆気なさについて(2)/虎に喰われる/活性化される不幸/結実する不幸

第4章 グロテスクな人びと
変人たち/狂気予備軍/供養する男/人格という概念/人間図鑑/現今におけるパーソナリティー障害の分類/奇人・変人・狂人/犬と一緒に昇天する人/グロテスクな人びと/予想もつかない願望や欲望

第5章 四半世紀後から振り返る
二〇〇〇年の空気と精神医学/三面記事の角度から/精神疾患と時代の相関/自著に解題を加えてみる(1)/自著に解題を加えてみる(2)/自著に解題を加えてみる(3)/ああすればよかったのに……

おわりに
文庫版あとがき
解説 カレー沢薫

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Posted by ブクログ

登場人物たちについて思ったことを語ります。
 「ああ、そうですか」氏について、自身の現状へ不貞腐れて生きて、言葉を意識するほどに、言語化によって、自己の人生への悔恨や無念が溢れて仕方がないから、言葉を意識せず生きるために、会話を放棄しているのだと思いました、なんとなく、釣りが好きそうで、麻雀は嫌いそうです。
 年賀状氏について、年末の忙しさと疲れで、本人も思いがけず、してしまったのではないかと思いました。
たまたま、整理していた年賀状を、うっかり自宅から持ち出して、車内で未整理であったことに気づいてしまったために、してしまったのだと思いました、地元で歩きタバコをする人を見かけるのですが、令和になっても昭和のままの装いの方や崩れた方が多いのですが、第三勢力に、家庭や会社へ忠義を誓っていそうな真面目な方たちがいます、例外なく眼鏡をされていて、足元なんて見えていないから、歩きタバコのあとポイ捨てをしている自覚もないのかと思われます、そういう方たちと同じ、周りが枠組みの外にあって、見えていないから、してしまうのだと思いました。
 焼身自殺をされた方について、文庫化する前の新書の時代での60代ですから、老い始める頃に昭和が終わった方だと思います 少し理解が及びません、アルコールランプのように酔った自分に火を点ける気持ちにでもなったのかなぁとか無理やり想像しましたが、訳が分からないです。
 小さな絵からコツコツと上達を夢見る方について、まぁ趣味なんで良いんじゃないでしょうか、と、さも無関心を装いたくなりますが、とても気持ちが分かりますし、共感できます。特別な上達法の先には、時代を塗り替える栄光があるに決まっていると夢見る部分が私にはあります。大人の趣味ほど熱を上げて、特別な手段にこだわっている人が多い気がします、子どもの夢は決まっている成功のレールがありますが、大人からの夢の実現には飛躍した成功が必要で、自分のルールに縋る気持ちが、よく分かります。
 動物園での死者について、解説されるほど、よく分からなくなりました
 共犯者のAとbについて、Aがもたらす刺激物にbがくっついていったのかなぁと想像しました、覚せい剤ほどでなくても、タバコや酒の入り口は、いつもbはAの案内で触れていたのだと思います、だから搾取でしかない援助交際もAによる性行為の場の提供で、自発性がない分、刺激に酔っていたのかなぁと思います、性やドラッグに溺れるには、はしたない自分だけは許せず、強要されなければ自分では、性行為などの刺激的な選択を出来なかったのかと思いました。
 死亡届を出せない方たちについて、週刊誌の談話を引用されていて、本人が怯えていた、と語っているのが全てだと思います 死者が怖くて、何もできなくなってしまったのでしょう
 覚せい剤中毒で、性癖のある方について、暴走族が爆音を鳴らしていると、本当にバイクの運転が気持ち良くて、気分アゲアゲでヤメらえないのだろうなぁと想像します それは、エンジンの爆音と振動が生む興奮と、運転のためにハンドルを握ることで、よりバイクの乗っていることに集中して下りる気がしなくなるのだろうと思っています、同じ理屈で興奮の持続のために、つい性癖のままに行動してしまうのだと思いました。
Q氏について、折り紙や塗り絵では子どもっぽいから、したくないけれど、木工や絵画だと現実の実力が見えてイヤになるから、工作をしていたのだと思いました 動力があると、それだけでカッコイイですから 工作も食事の合間を埋めるためだけの役割だったのでしょう 作品の完成も、月に一つや二つで、大部分は、ボゥーと座っていたり、テレビやラジオを視聴していたのではないかと思いました。
不幸であることは、自分だけの苦しみに忙殺され、周りへ頓着しない理由づけるができるのだなぁと思いました
もう読んでしまったので、「幸福な金持ちであるより、不幸なソクラテスでありたい」という言葉に魅力を感じることができなくなりました。

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2026年07月21日

Posted by ブクログ

挨拶しても無視する、満員電車で足を組んで平然としている、ちぐはぐな返答しかできない…など、世の中にいる「心の病気でもなければ奇人というほどでもなく、しかしどこか微妙に不協和音の混ざった生き方をしている人たち」を精神科医の視点から考察するエッセイ。めちゃくちゃ面白かった。

自分もたまに「この人はなぜこういう言動をするのだろう」と不思議に思う人と遭遇する。不愉快になったり気持ち悪く感じたりするのに同時になぜか惹かれる。怖いもの見たさというか。彼らなりに理由があるのかもしれないし、何も考えていないのかもしれない。本書を読んでそういった人たちの解像度が増し、今後は以前より寛容になれる気がする。

1995年に足立区で起きた二人の女によるお粗末な営利誘拐事件。その犯人の一人、bのパーソナリティ分析が興味深い。「自分の気持ちや考えを首尾よく表現する語彙や言語能力を持てなかった者は、常に社会との間に違和を覚え、それが苛立ちとなってきわめて短絡的・直上的・衝動的な人間になる場合もあれば、むしろコミュニケーションの成立をあきらめ、それがためにひどく無気力かつ得体の知れぬ人物と周囲から思われるようになる場合もある」。bはそういう人物だったのではないかと著者は憶測する。人生に対して投げやりになり、もう一人に流されるようにして犯罪に手を染めたのではないか。「まあいずれにせよ、語彙が貧弱で表現能力拙いことは不幸の中でもかなりグレードが高い筈である」。人間は思考にも表現にも伝達にも言語を用いる。だから言語を豊かにすることが人生の豊かさにつながる。自分は常々そう思っているので(それは読書する理由の一つでもある)この指摘は胸に沁みた。

人間にとっての精神のアキレス腱は「こだわり・プライド・被害者意識」という見立ても体感的にわかる気がする。変な人が変な言動をするときってたいてい何らかの執着心が原因なように思い当たるから。

文庫化にあたって追加された第5章で、親本が書かれた90年代後半から2000年の「サイコバブル」の時代と比較して、現在は「当時ほど激しく「どぎつい」症状を示す人は少なくなっている。総じて現在は、精神症状の軽症化がどの精神疾患でも観察される」という。精神科受診へのハードルが低くなり早期から受診する人が増えた、SNSの浸透により幻覚や妄想の持ち主にも「立つ瀬」が提供されたからではないかと著者は見ている。25年前は「心の激痛に叫び声を上げる時代」だった。今は生きづらさを抱えながら「心の鈍痛に耐える時代」。

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2026年07月14日

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