春日武彦のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
精神科医の春日武彦さんと
歌人、穂村弘さんの対談集。
春日武彦さんは知らなかったけど、
穂村弘さんのエッセイはたくさん読んでて
訳のわからなさ加減含め
とても面白い文章を書く人。
肝心の短歌は読んだことない(笑)
穂村さんに関しては
自意識と諦観が入り混じりつつ、
どこか中2っぽい感じもするし、
そういうのを演じてるような気もするなぁって
漠然と思っていたけど、
この本で初めて知った春日武彦さんは、
穂村さんと精神年齢が近いのかな⁇って
印象を受けた。
世間に対するズレを感じながら
地に足の着いてない不器用なお2人が
18のテーマについて語り合って -
Posted by ブクログ
春日武彦さんの本はわりと気に入って読む。
読みながらこれは私小説的だなと思った。
文章が読みやすくて、奇をてらったような書き方をしないのが好ましい。
自分の中にある鬱屈した気分、母との関係、リノベーションで家を作る心理的な作用、
患者とのエピソードや、他の作家の小説の引用、などなど
今の時間から、頭の中で、過去に想像に妄想に、あちこち巡る。
小説や評論であれば、もっと筋道や伏線など、
計算された形で進むのだろうけど
それがなくても心地よく読める本だった。
穂村弘さんと同じニオイがするが、
春日さんの方が自分に深く沈んでいくような感じ。
前著も気になるので探して読んでみよう。 -
Posted by ブクログ
主人公は母親からの呪縛から逃れるために家をリノベーションすることにした。 ちなみに主人公は著者である。 そして、これはエッセイでもなく、医学本でもない、まぎれもない私小説なのだ!(本人曰く)
タイトルが意味不明すぎて興味がわいた。
「エッセイではない」と豪語しているせいか、逆にエッセイのような気もしたが、
読み終わってみれば、確かにこれは小説なのだろう。
若干支離滅裂ではあるが、著者は精神科医というだけあって文才もあり読みやすい。
人は誰でも執着に支配されている。
著者は1951年生まれの精神科医とのことなので現在66歳。
未だに母親へのコンプレックスが強く、執着もかなり病的に強い。
執着心 -
Posted by ブクログ
私小説であるならば、なんたる重度な鬱屈ぶりだろう。自らの容姿に底知れぬ劣等感を抱き、生じる自己嫌悪は両親への責任転嫁で逃れんとする。もっとも、ご本人は自分を医師としても作家としても二流以下と申されるが、文才、筆力は相当なレベルに違いない。占い師の世界観とそこへの誘導なんぞ、実に端的かつ明瞭に説かれている。されど、占い師巡りったってさほど冴えない占い師がチョロっと登場する程度で、すがったというのは過剰表現でしょう。物書きネタで体験したってのが穿った見方ではあるまいか。今後、精神科医を振りかざすことなく作家業に精進されるなら、化ける資質を感じるんだけどなあ。
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Posted by ブクログ
本著には実にさまざまな精神科医(の類型)があ登場する。つい、くすりと笑ってしまう人物もあれば思わず眉を顰めてしまうような人物もいる。エピソードのあとに挿入される人物描写は、シニカルで、流石という不思議な感想をもつ。そして著者のことばによれば、100人登場する精神科医のうち、その2/3は著者自身だという。むすびにて、「人間誰しもフランケンシュタインのようにパッチワークで出来上がっておりツギハギなのだからほころんだり矛盾したり不連続であるのは当然のことで…」とかかれているが、人間ほんとにそんなものだよなあ。と思わせる本でした。春日先生の本が好きな方は好きなはず。
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Posted by ブクログ
春日先生、何だか最近お姿見かけないと思ったらこんな所にいらしゃったんですね‥それが占い師の所だったという感想です。
まさか精神科の医者が占いによすがを求めるなんて!という意外性はありますが、よくよく考えると物語りが患者の精神世界を彩る精神科の領域にあっては、それもありなのかとも思えます。逆に占いは統計的な要素が下地にあるので型に当てはめてスッパリ切って貰える小気味よさが、筆者の求める救いに繋がるのかともおもいます。
初老の年齢に差し掛かり、今までに経験したことのない不安感や不全感や迷いに戸惑う筆者ですが、うつ病でもないしと自身を診断してしまう哀しさもあり、様々な理由をあげてああでもない、こうで -
Posted by ブクログ
精神科医を100のタイプに分け、精神科医と患者との関係、そもそも精神医療において「治る」とはどういうことかといった問題を取り上げる。
医者はクライアントに対して診察中は真摯に対応しつつも、常に一定の距離を保って客観的に病状を捉える必要がある。その“客観的”な部分の内容が綴られているので、内容はものすごく冷静かつ淡々とした印象。でも多くのクライアントを担当するゆえに、これくらいの冷めた視点というのは精神科医には必要なのかもしれないとも思った。
腹の底で何を考えているか「語る」というより、終始「吐露する」といった様子。口語的な文章は読みやすかった。
精神科医のタイプ、クライアント、姿勢を覗き見し -
Posted by ブクログ
春日武彦"精神科医は腹の底で何を考えているか"を読む。
都立病院の精神科部長を務めた著者が豊富な臨床経験から、患者を通じて見た精神科医の内面に迫ったもの。身も蓋もない語り口がいっそいさぎよく、好感が持てます。
精神問題で倒れる人が続くような場合、その周囲にパーソナリティ障害の攻撃者が存在するように思います。
【精神障害の類型について】
◯パーソナリティ障害の一部、たとえば境界性パーソナリティ障害といったものの特徴のひとつとして、とにかく周囲を振り回し飜弄するといった行動様式がある。しかも、はっきりとした思惑などないまま、ひたすら他人を操り糸を引きたがる。他者を玩弄す -
Posted by ブクログ
内田樹と春日武彦の対談です。おおむね内田のほうが春日の専門領域にアクセスを図りつつみずからの思想を語っているという印象です。
精神の病に逃げ込むことで「低値安定」してしまう人びとが増えていることへの危惧が語られ、身体に基づく知の衰えを嘆くなど、かなり思いきった発言が飛び交っていて、刺激的な議論でした。
春日の著書にはかなり「とんがった」言葉が散見されるのですが、本書ではむしろ内田のラディカルさがストレートに出ている印象です。内田にしてはややバランスを欠いているような気もするのですが、こういう思いきった言葉が聞けるのも、対談本の醍醐味かもしれません。