あらすじ
人はなぜ最大の禁忌“死”に魅了されるのか? その鍵は「グロテスク」「呪詛」「根源的な不快感」にある。精神科医である著者が、崇高でありつつも卑俗な魅力を放つ“死”にひかれてしまう複雑な心理を、小説や映画の作品世界の読解を交えて分析する。
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Posted by ブクログ
死の瞬間、死後の世界、死との対面というものに我々はどう接するのかを論じる。小説・漫画・映画のワンシーンを交え語られる考察は死というテーマでありながら面白い。人間の根源ともいえる感情に迫るダークなカルチャーガイドだ。
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死について著者の経験やカルチャーなど様々な視点からその輪郭について紐解いていく本。
重すぎず、ときにユーモアを交えて死について語られていく。
死というのは結局現象でしかなく、それをどう捉えていくのかは生きた人間なのだが、いつか自分にも訪れる、或いは他者の死についてどのような距離感を持つべきなのか考えるヒントや材料になるような示唆に富んでいる。
春日先生の書く文章は楽しいので読み物として面白い。
Posted by ブクログ
「死」を扱う作品が紹介されていたが、戦前のものからごくごく最近のものまで幅広いのが良かった。知らない作品がほとんどだったので、調べながら読むのが楽しかった。
Posted by ブクログ
何とも凄い本ではある。
どうしても忌避してしまう「死」に正面から向き合っている。
死のオムニバス、アラカルト、、いろんな話題。
何か全体を通してメッセージがある、というものではない。
副題の「人はなぜ(死に)好奇心を抱くのか」を、いろんな角度から探ってる。
答えはないのだと思う。いろんな本から引用している、鉄腕アトムも。
火の鳥じゃない。
まあ気軽に?死について考える新書になっている。
私にとっての最初の死は小2の時の地方に住む祖父だったが
あまりピンと来なかった。
ピンと来たのはその翌年の、ペットのセキセイインコの死。大泣きした。
なんといっても30歳で父に急死されたのはショックだった。
結婚し独立していたつもりだったが、生まれたときから存在していた父親が
いなくなる喪失感というのは、なんともいえないものだった。
悲しいのは当然だが、庇護がなくなる不安のようなものがあった。
しかもバブルピークの相続で苦労し、、、人生が大きく変わった。目覚めた。
なんてことを思い出しながら読んだ一冊
第1章 死ぬ瞬間
第2章 「永遠」は気味が悪い
第3章 見知らぬ世界
第4章 取り返しがつかない
第5章 死体の件
第6章 死と悪趣味
Posted by ブクログ
死の瞬間は見逃されてしまうという話と、ある患者が息を引き取るときに漏らした「あー」という声がまるで湯に浸かったときに自然と出てしまう声のようだったという話がよかった。
著者がこれまで読み、見てきた多くの小説や映画から死について考察されるけれども、それよりも医師として患者と接してきた経験談の方に面白みを覚えた。去年読んだ『自殺帳』もそうだった。
自分、たまに深夜にふと目が覚めると自分がいつか死ぬってことを意識して猛烈な恐怖に襲われるのだが、この恐怖はたぶん存在の消滅に一人きりで対処することの孤独や寂しさに由来している、と思っている。この気持ちについて何か教示してもらえるかと思い本書を読んだのだけれど、本書は死を実存の問題としてではなく現象として客観的に批評する内容だったので俺が期待したものとはちょっと違っていた。
Posted by ブクログ
著者の死への好奇心が詰まった一冊。とはいえ、軽薄なものではなく、死にたいする尊厳と畏怖が随所に感じられた。
第2章については共感した。永遠など、まったく不要。どんなに幸せな状態でもそれは刹那的なものだから価値があり、永遠に続くとなれば必ず虚しさに襲われると思う。それが辛い状況ならなおさら永遠などごめん被りたい。
私自身の病気、母の死を迎えて、死が非常に身近なものになった。それでも、だからなにができるわけでもない。自分が死んでも毎日は続いていく。死ぬ前になにがしたいとか、名を残したいなどもない。ただそこに自分がその瞬間にあっただけ。病気と共に不安と安堵を繰り返しながら、ただひたすらにその瞬間に向かっていくだけである。
死んだ後、体を検体に出すなどは意味のあることだと思うので、自分もそういうのがいいなぁと思う。