春日武彦のレビュー一覧
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死の瞬間は見逃されてしまうという話と、ある患者が息を引き取るときに漏らした「あー」という声がまるで湯に浸かったときに自然と出てしまう声のようだったという話がよかった。
著者がこれまで読み、見てきた多くの小説や映画から死について考察されるけれども、それよりも医師として患者と接してきた経験談の方に面白みを覚えた。去年読んだ『自殺帳』もそうだった。
自分、たまに深夜にふと目が覚めると自分がいつか死ぬってことを意識して猛烈な恐怖に襲われるのだが、この恐怖はたぶん存在の消滅に一人きりで対処することの孤独や寂しさに由来している、と思っている。この気持ちについて何か教示してもらえるかと思い本書を読んだのだけれど、本書は死を実存の問題としてではなく現象として客観的に批評する内容だったので俺が期待したものとはちょっと違っていた。 -
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この二人でこのタイトル!そりゃ読むでしょと思い手に取った。まとまりすぎていない友人同士のだらだら飲みのような感じが死というテーマにむしろ合っている。
ただ猫死するほどネコ好きの読者が手にするには漫画のネコの”ねごとちゃん”が擬人化されててあんまりかわいくないのがいまいちで、思い切りネコらしく描いてほしかったと思う。人物と背景はうまいなあと思ったので、この作者はおぶうの兄弟さんと真逆で本当は動物より人間が好きな人なのかもしれない。
カバーにもネコいないし勿体ないな・・・と思っていたら、最後のほうでタイトルの由来が会話されており、あ、そういう意図だったのかとわかる。しかしそうならば、単に図形と白抜きフォントにブロック塀と雑草を抜き合わせするんじゃなくて、もっとうんとリアルに作り込んでほしかったなぁ・・・
P20 穂 (俺たちはどう死ぬのかについては)「「君たちはどう生きるか」みたいに「こうあるべき」とか社会的にもとりあえず多くの人が、「まあそうだよな」と納得できるような、共通できる答えがないってことね。」
春「で、結局「人それぞれ」っいうのが面白いところでもあり、共感して安心できないからつらいところでもある」
P38 春(亡くなった店の親父さんの小さな顔写真を見て)「なんか物理的にちっちゃくなっちゃったのを目の当たりにした感じですごくショックだった。死体とか血とか、そういう”いかにも”じゃない形で「死」が強烈に迫ってくることもあるんだよね」
P54 らしい死に方とはなにか 死因「猫死」(猫がかわいすぎたため死亡)
P117 穂「人から頼られることが全くない」春「ああ、年をとってもベースとなるキャラの部分は変わらないわけね。万年「この人に頼っても仕方がない」キャラ
P146 穂「竹富島に初めて行った時、大きな蝶がいっぱいいて、それが胸にバンバンぶつかってきてさ、なんだかこの世の光景とは思えなかったんだよね。以来、自分の中の天国は「大きな蝶が胸にぶつかってくる場所」として定着してしまった。
P223 春「永遠に時間が続くなら、競い合うことなんて面倒でしかないと思う。妬みとかがなくなるのはいいよね」穂「死ななければ、無限に機会があるから妬みはなくなるということでしょ?でも本当ににそうなのかな?」
【中略】穂「ずっと同じメンバーで生きていくのだとしたら、それはもうみんな死んでいる状態と変わらないんじゃないかな。
P237 穂「いつまでも幼児性をなくさずにいたほうが幸福なんじゃないか、とかさ」【中略】春「ただ悲しいかな、それは「無垢である」ということとは全然関係がないんだよね」穂「むしろ権力やパワーを持たせたら最悪、という存在じゃない?」 -
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医師でありながら作家でもある方々の医療小説9編。
私の知っている作家さん以外にこんなに多くの医師作家さんがいることに驚きました。どれも医師であるだけに小説の内容は臨場感が溢れていて迫力がありました。
中山祐次郎さんの『救いたくない命』は救急で運ばれてきた患者が犠牲者15人以上を出した通り魔事件の犯人と知り、葛藤をしながらも必死に命を救う姿に京アニ事件を思い出しました。
南杏子さんの『空中テント』は家族の介護の経験がある人は共感出来るはず。
どれも本当に良い作品ばかり。若手医師の過酷な労働時間、医療ミスの隠蔽、不都合な論文を闇に葬る等、医療小説が好きな人なら興味のある内容ばかり。でも朝比奈秋さんの『魚類譚』はちょっとホラーぽくて異色でした。 -
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□焦る
□生きるのが辛い
□嫌なことを忘れられない
□うしろめたい
□運が悪い
□おどおどしてしまう
□傷つきやすい
などなど。
生きているとさまざまなネガティブな感情、状態に苛まれる場合もあります。
そんな感情を精神科医でありエッセイスト、作家でもある春日武彦さんが分析。
一緒に対処法を考えます。
──と書くとちょっと違うんだよな。大筋ではまちがっていないと思うけれど。
春日さんの魅力が漂白されてつまらなくなってしまう。
ずばり、わたしにとって春日武彦の文章の魅力とは、「素敵に口が悪い」こと。
そもそも、口が悪い、いい、って何だろう、と云う気もしますが、春日さんの文章は「あーあ、言っちゃった」感に満ちていて、癖になるんです。
いや、文章が、ですよ。
御本人じゃなくて。
もしかして、「あーあ、言っちゃった」感なんて言ってるわたしのほうが口が悪いのかもしれないですね。
自分のネガティブな部分を、むろん、加減してでしょうが、臆面なく出し、そこにユーモアと確かな知識や知恵が伴っていて、人間味のある素敵さがあります。
対処法も、地に足をつけた、地道なものなのも、肩透かしを食らうとともに納得。
ネガティブ感情をパッと消す魔法も薬も存在しないのです。
春日さんは「この本は、読者に役に立つことを願って書きました。」と、はじめに、に書かれています。
興味あるトピックをつまみ読みするのも良し、通読して春日節に浸るのも良し。
こころに軽い違和感を感じたら、この診察室に飛び込んでみてはいかがですか?
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本のタイトルと裏表紙の内容紹介に書かれているラブクラフトの名前に惹かれて購入する。
16章に渡り、17作品の文学論と各作品と関連する春日氏の自伝的エッセイが書かれていて、一風変わった文芸評論集とのこと。
春日武彦さんの作品に触れる機会が無かったのだが、とても面白かった。
紹介されている作家さんも、殆ど知らない方ばかりだが、どの作品にも興味を持った。是非、各作品を読んでみたいと思った。
この中ではラブクラフトだけは僕が、よく読む作家だ。
東京創元推理文庫の全集も読んでいるし、青心社の暗黒神話大系シリーズも、殆ど購入済みだ。
春日氏がラブクラフトの作品に対して、どのような評論が書かれているのか、興味津々で読ませてもらった。
春日氏は、つまらないと一言。
良くぞ、言ってくれた!その通り、つまんないよね。
あ~っ、スッキリした。
ラブクラフトは、嫌いじゃないし、これからも読み続けるけど本当に、あの世界観に旨くはまれないと読むのが辛いんだよね。
春日さんのことは、この一言で大好きになった。この人の作品は今後も読んで行こうと思った。 -
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ネタバレ9人の現役医師による医療小説アンソロジー。
医師作家でしか表現できないと思われる臨場感あふれる詳細な描写、ヒューマンでミステリアスなストーリーが魅力の作品集だ。
1〈研修医ヒナノの洞察〉
上司からパワハラを受けている研修医が患者の膠原病を見つけ上司を見返す痛快な話
2〈魚類譚〉
封建的で理不尽な医大の内部構造、詳細な手術シーンにミステリーとホラーの要素を取り入れた作品
3〈パイナップルのある光景〉
同じような引きこもり系の精神疾患でも、一方は入院治療、一方は家族による対処という示唆をする精神科医。専門的な見解が押し付けなく、ふわっと伝わってくる秀作
4〈救いたくない命〉
救急外来に運び込まれてきた瀕死の男はとんでもない犯罪者。しかも、手術助手を務める医師には憎むべき理由があった。救急救
命手術場面の描写がすごい
5〈春に綻ぶ〉
コロナ病棟で働く内科医の日常と苦悩をリアルに描く。苦闘の果てに主人公はかすかな希望を見出だす
6〈闇の論文〉
がんを見極める生検の際、傷ついた血管からがん細胞が侵入し、転移を招くことを証明した論文。これが世間に知れた場合の混乱を避けようと医療界の重鎮は論文を闇に葬る。現実世界ではどうなっているのか気になる
7〈言葉が消えるまえに〉
過去に同じ脳神経外科の医局員だった男の裏切りで医局を追放された主人公。そこへ、その男がグリオーマ患者としてやって来る。主人公のヒューマンな姿勢が光る
8〈空中テント〉
唯一、医師の視点ではなく、女性看護師を主人公にした作品。肉親が認知症になった時の介護を巡って、エゴむき出しの親族や主人公に訪れる修羅場、介護サービスを考えるまでの経緯がリアルに描かれる
9〈峠を越えてきた命〉
伊豆半島にある産科救急に特化した病院の若手医師が主人公。切迫早産の妊婦が救急車で揺られながら険しい天城峠を越えて病院に向う様子、待機して万全の体制を取る医療スタッフ、分娩室での対処の様子が実に生々しく描かれる。危険にさらされる新しい命を懸命に救おうとする産科スタッフの努力と救急隊との密接で的確な連携が読み手の心を打つ。秀逸で感動的な人間ドラマだ
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ネタバレ精神科医の著者が読み、明確な“恐怖”以前の不穏さや不気味さ、不安、グロテスクさを覚えた各種文学作品17編を題材に、自身の体験と随想を加えつつ人間精神の不可解さと闇を覗き込む異貌の“恐怖”文学論。
全部で17編の小説が採り上げられ(文庫版で1編が新録)ているが、怪奇幻想色が濃厚なのはホーソーン、パトリック・.マグラア、HPLそれにブルーノ・シュルツの作品くらいで、後は純文学系の作品が占める(ブラッドベリ「目かくし運転」も彼の他作品に比べると幻想味は薄い)。が、どの作品も(紹介される内容だけでも)何かしら不穏さや不安、不気味さを覚えるもので、時に人間とはかくも醜悪なまでにグロテスクな存在ないしそのような側面を持つものなのか―と気が滅入ってくるものすらある。その辺りは恐怖という食材を“エンターテイメント”という一品料理に仕上げず、生の素材のまま―譬えるならば生魚の腹を割いただけで内蔵を取り除かずに皿に盛る如く―“人間の様々な側面、内面”を表現、提示しようとする純文学だから、とも言えるのか(純文学ってそういうものか?)。
どの作品も概要は勿論、あらすじから結末までが書かれているのでブックガイドとしては些か不向きだし(そんな意図でそもそも書いていないだろうが)、ネタバレを避けたい向きは目次で事前にチェックが必須かと。ちなみに自分はホーソーン「牧師の黒いベール」とラヴクラフト「ランドルフ・カーターの陳述」しか既読がなかったが、その他の作品にしても本書の記述だけでお腹いっぱい気味で、個々の作品を新たに読んでみたいという気には……なれず。 -
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「かけがえのない人物が死んだからと、後を追う者がいる。でも、生き続ける者のほうが多い。はるかに多い。にもかかわらず、我々は絶望や喪失や苦境が自殺への扉であると信じている。」
確かにそう思う。自殺は悲しみの果てにあり、どこかドラマティックさ、特別さ、ある意味で惹かれるものを感じている。
丸々一冊自殺について書かれている本書。自殺の分類や遺書紹介など盛りだくさんだが、自殺は精神的視野狭窄によって選択されているもので、「いじましい固執にこそ精神病理は求められるべきではないか」という冷静な発言に、読むほどに自殺のドラマティックさが薄れる。いい意味で自殺を遠くから見ることができる本だった。 -
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予想最高気温29℃ですって
どうなっとんねん!
もう夏やん!インザサマーやん!ボンジョールノやん!
今年も30℃超えたらホラー小説を読もうと思ってるんですね
宮部みゆきさんや京極夏彦さんの続きとか小野不由美さんとかね
去年けっこう読みましたからね
今年はもうスティーブン・キングとか行っちゃおうかとも思ってます
すごいねスティーブン・キング、スティーブン・キングって書いた時点でもう怖いもの
ひと文字も読んでないのにもう怖いもの
そして今年こそはホラー小説完全克服を目指しますよ!
まずそのためには「恐怖」とはなんなのかを知るところから始めなければいけません
孔子も言ってます「カレーは一晩寝かしたほうが美味しいよ」って
そしてホラー小説の克服について再定義しておきましょう
それは決して「恐怖を感じなくなること」ではありません
恐怖をいかにエンターテイメントに昇華させることができるかってところです
ホラー小説を読んだ日の夜はトイレに行けなくなってるようではとてもエンターテイメントとは言えませんよ!(バンッ)
というわけで本書『恐怖の正体』です
「恐怖」と「娯楽」の関係性にも多分に触れていて非常にためになりましたよ
ただね…肝心の『恐怖の正体』ですが…よく分かりませんでしたw -
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ネタバレ「屋根裏に誰かが住み着いている、そしてそのヒトが時々部屋に侵入して悪さをしていくんです…。」
そんなことを訴える精神分裂症の患者は意外と多いという(驚いたことに、分裂症でも痴呆でもない老婦人にも同様の訴えをするヒトが多いという)。なぜ患者の妄想上の侵入者は共通して屋根裏にいるのか?筆者は本著の中で、屋根裏妄想の謎を解くヒントとして、実際に屋根裏妄想を抱えていた患者の例や本当に起きた屋根裏侵入事件などの事例を沢山紹介している。
以前、部屋のWifiの調子が悪くなり管理会社に連絡したところ「お風呂場の天井の一角を押し上げて通信機の元電源をオフにし再起動してみてください」と言われた。その通りに天井の板を押し上げると、そこには意外なほど広い空間が広がっていた。まずは不気味というよりも秘密基地のようなワクワク感を覚えたのだが、賃貸マンションなのだからその隣の部屋でも同じ構造になっているはずで、つまりはここから容易によその部屋に侵入できてしまうのではないかとゾッとしたことを覚えている(本著では本当に同じ手口で起こった殺人事件も紹介されている)。天井裏とは不思議な空間だ。家の最深部にあるはずで正規の入り口でありはしないのに、なんとなく暗黙の了解で外と繋がっているというか。精神分裂症の患者の妄想を受け入れる場所といえば、家の中でも屋根裏部屋しかないのかもしれない。
孤独に生きるヒトは妄想をこじらせて病的な状態に陥りやすく、屋根裏に侵入者がいるという妄想はその孤独を癒やすための自己防衛本能なのではないかという考察が面白かった。
また、家の中こそそのヒトの内面が現れるという話も興味深い(ゴミ屋敷とかも)。家の中で表現されるその人の狂気が、更に狂気を濃縮させ妄想をエスカレートさせるのだという。
逆の発想だが、最近流行りのミニマリストたちはミニマルな環境に身を置くことによりよりシンプルな考え方に染まっていくものなのだろうか。ミニマル主義がミニマルな部屋の中で濃縮されエスカレートして、これも無駄、あれも無駄、趣味なんていらない、最終的には生きていることも無駄…みたいな思考に陥らないものなのだろうか。なんて、散らかった部屋で考えてしまった。 -
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様々なシチュエーションの恐怖を作者の主観で語っていくという形式でした。
恐怖という感情についてより専門的に知りたいという人には物足りないかなと思いましたが、個人的にはわかりやすくて読めて面白かったです。
1番共感したのは、「鯉」の話です。あの状況を怖いと感じる人が他にもいたんだ!と読んでいて密かにテンションが上がりました。
専門書というより、自分が恐怖を感じるシチュエーションを作者はどう解釈しているのか楽しむ入門書に近いのかもと感じました。
ホラー小説、ホラー映画がいくつか例に挙げられているので、この本をきっかけに観てみたいものが見つかるかもしれません。 -
Posted by ブクログ
面白かった。
どちらかといえば、エッセイ風味。
作者(50年代生まれの精神科の医師)の怖かった映画や小説の話が多い。
古い戦争系の映画と、2000年代の外国映画が多い。
小説は古めだけど、文だけでどう怖くなるか、がわかりやすくて面白かった。
怖いとはなにか、台所にでるあの虫や、ピエロ、高所閉所、集合体(←私もめちゃめちゃ苦手)、尖端など恐怖の望都は様々。
それがなぜ、どうして怖いのか、文にして明快に説明されるのはスッキリした。
しかしまあ、※個人の感想です、に由来する恐怖も多くて、なかなか面白いテーマだとわかった。
お化け屋敷やジェットコースターなど、なぜわざわざ恐怖を感じたいのか、などの話や、娯楽としての恐怖が本当の恐怖になる瞬間(こわすぎ)なども興味深く読んだ。