春日武彦のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
著名な精神科医が、赤裸々に自分の内面を語った本。精神科医が自分の内面を書くのだから、詳細になるはずである。自分の内面を客観的に書くなんて、非常に困難なことだと思うので、実際どこまで客観的なのかはわからない。何よりもどこまでが事実なのかもわからない。でも、「恥も外聞も捨てて」書かれているように見える。そこにまず、心が動かされる。
多分新聞の書評を読んだのだと思う。
私自身、占い師に占ってもらおうなんて思ったことがなかったが、この2、3年前から、誰か占い師さん紹介してくれないかなあ、とか「占いの館」みたいなところって、若い人が遊び感覚で行くところなんだろうなとか、占い師さんに占ってもらいたいと、思っていた。
そこで、この本である。タイトルだけでも惹きつけられるではないか。
読みながら、一言一句にふんふんとうなづかされた。
ご自身が患者さんにされるカウンセリングの方法なども、私のような素人が人の悩みを聞くときの参考になる。割と今までいい感じで人の話を聞いてたなあと、ちょっと安心したりもした。
本筋とは関係ないが、安倍首相を評している文が、よくぞ上手くまとめてくれたと感心したので、引用しておく。
"安倍首相の小心さと傲慢さとがミックスされたような口調、愚かな割には妙な運の強さを発揮するそのしぶとさ(それが結局は本人にとっても日本にとってもマイナスの意味になってしまうことも含めて)、再び突然の辞任をしそうな危うさ、ぎこちない「あざとさ」、おそらく心の中に抱えているであろう低レベルの鬱屈(学歴や人望など)、力づくの振る舞いへの憧憬" 61ページ -
Posted by ブクログ
ナルシストの精神科医、脈を計ることによって他人の欲望を見ることができる記憶喪失の青年、モリアーティ教授気取りの謎の男、女装の怪人等々…登場人物が皆濃くてかなり面白かった。
Dr白旗の精神科医を訪れる人たちは人に言えない欲望を抱える人たちばかり。作者は精神科医の先生なので、本当にこういう相談が持ちかけられたりするのかなぁと思いながら読みました。
一話完結で読みやすく、どの話もちょっとブラックなオチで面白い。灰田青年が何故記憶を失ったのか、果たして本当にゲイなのか、月村は一体何者なのか…謎が投げっぱなしのまま終わったので、続編も期待しています。
中野ブロードウェイって本当にあるんだーと思って調べてみたら、医者と法律事務所とまんだらけが隣り合ってたりしてかなりカオスな空間のようでした。行ってみたいな~。 -
Posted by ブクログ
前書きで著者が言うように、確かに「後味の悪い読後感」がある。不安感と言葉に変換しがたいおそろしさと…。それでも、その内容を読み取りにかかってしまうあたり、著者がこの本に記したことが一つの真実であると証明しているみたいだ。
不幸になりたがる人は存在する。社会人になってはじめて、その色が濃すぎる人物に会った。その人物に対してずっとずっと嫌な感じがあったのだが、適当な表現が見つからずモヤモヤし続けていた。止まらない微妙な違和感、常識外の世界観、言葉が通じていない感覚、成立しない意思疏通、思考不足で怠惰な依存性。得体が知れないのだ。不可解で不快極まりないのだ。苦手だからあまり関わらないようにしようとか、嫌いだから考えないようにしようとか、迷惑だから接点を少なくしようとか、そういう自分の能動的な意志でコントロールできないのだ。これがノンフィクションであることが怖い。
けれど、この本でかなり理解できた。つまり“そういう”性質が強い人なのだと。人間に潜在する性質であるからこそ、本人はその気はなくとも、「生・進歩・向上」とは真逆のそれを何も考えずに表に出し続けているのを見るのは、とても不快なのだと。受動的で言いなりで特に何か思ったり考えたり自ら行動することもなく人からのアクションをただ待ち続け漫然と生きている人のことは、私には理解できないのかもしれない。そして、できることならばもう関わりたくないのが本音である。
不幸になりたがる人たちについて書き記されたもう終盤の184頁、「危うい芽が自分の内面にびっしりと植わっているような気がして、私は息苦しくなってくる。」という文を読んだ時、昆虫や爬虫類が枝や葉に隙間無く植え付ける大量の小さな卵のようなものが自分の皮下にびっしり広がっているグロテスクな想像が浮かび、まるで体の内側に鳥肌が立つような気色の悪い感覚を覚えた。本当に読後感はよくない。
ただ、いかにも現実離れしたホラーやサイコサスペンスより、よほどおそろしいし興味深い、と思う。 -
Posted by ブクログ
内田樹と春日武彦の健全な肉体に狂気は宿るを読みました。
生きづらさの正体、という副題のついた、生き方についての対談集でした。
章毎のテーマは、世代論に逃げ込むな、「自分探し」はもうやめよう、人間はわかりあえっこない、個性とこだわり幻想、健全な肉体に狂気は宿る、まずは身体に聞け、と現在喧伝されている生き方の解説やコミュニケーションについての解説に真っ向から対立する主張が述べられています。
春日武彦の精神病の臨床医療の現場からの意見と内田樹の身体の発する信号を聞いて行動しようという主張とがかみ合って面白い読み物になっています。
アメリカの契約社会で育ったコミュニケーションの方法は、日本の以心伝心の文化には合わない、という意見は納得します。
キャリアとは自分で形成するものではなく、他の人が必要とするものを提供し続けていくものだ。
自分だけの秘密を持つことが出来るということが大人の条件だ。
未来が予測可能だと考える人は、取り越し苦労をしてしまう。
精神科に来る人はこだわりとプライドと被害者意識の3点セットが多い。
自分探しは自殺行為である。
などなど、奥深い警句が書かれています。 -
Posted by ブクログ
すっかり内田樹にハマッています。
内田氏の著書は、(勝間氏などの書く)ビジネス書及び自己啓発書と比較しながら読むととても面白い。結構正反対の事を言っていたりする。それなのに、双方に説得力があったりするのが不思議に感じる。
けれど、総じて感じるのは「内田氏のほうがより大人だ」ということ。なんだか懐が深い感じがする。勝間氏らの書くビジネス書が、分かりやすく明確に伝えるために切り捨てている(一見どうでも良さそうに見える)部分を、丁寧に掬ってあげているのが、内田氏の書なのではないか。
だから僕のように「若さをエネルギーにいろいろな自己啓発本を読んだけれど、大体同じことを言っているしもうそろそろ飽きたなあ」と感じ出した人は、是非内田樹を手にとって欲しい。「人生って深いんだなあ。」と思うこと請け合いですから。 -
Posted by ブクログ
この本には世間にまぎれこんでしまったちょっと「グロテスク」な感覚、あるいはそれをもった人についての著者の考えが例を引いて述べられていて、いろいろな点でたいへん興味深かったです。扱う範囲はたぶん狂気とか精神病なんだけど、著者の書き方からまったく病的なものと境界にあるものとの見極めをだいぶ丁寧にやっているような印象を受けるので、けっこう説得力があるのですよ。個人的には文学への言説―「月並みなドラマチックなものがもたらす『判りやすさ』」が、グロテスクへの傾向がしばしば面倒くささとか呆気なさによるものと説明した上で、読者と作者の馴れ合いだという指摘に、はっとしました。それで「自虐指向と破滅願望」というサブタイトルが適切なのかというと、ちょっと迷ってしまう。