夢枕獏のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
平安時代に活躍した陰陽師安倍晴明とその友の源博雅を
描いたシリーズ第七作目。
このシリーズには一つの「おきまりのパターン」がある。
いつも物語は、晴明の屋敷で二人が庭を眺め、
変わり行く景色を感じながら酒を飲むシーンから始まる。
素直でロマンティストな博雅は、その庭から感じ取った
あるがままの自然の姿について自分の感想をを率直に述べ、
それを晴明は不思議な微笑を浮かべながら聞いている。
時に博雅は、そこから生じた疑問を晴明に投げかけると、
晴明は「呪」の言葉を用いて説明しようとする。
しかし、単純な男である博雅は、
晴明の「小難しくてややこしい」説明を嫌がる。
本当は博雅はその「ややこしい」と言って嫌がる「呪」の理を、
根本では分かっていてそれをちゃんと口にしているのに。
そんな博雅を、晴明は「よい漢(おとこ)だ」と褒める。
そんな一通りのやりとりが行われた後、
博雅が晴明に相談を持ちかけたり、
客人が来たりして話が展開していくのだが、
今まで何度となく繰り返されてきたこの冒頭のやりとり。
なのに、毎回シリーズの最新刊を購入して
初めのページをめくった瞬間、このおなじみのシーンの描写が
自分の目に飛び込んで来る「お約束」を、
「またか」とうんざりした気持ちを覚えた事は
一度たりともない。
むしろこの二人がいつもの場所で簀子の上に座り、
ほろほろと酒を飲んでいると、
自分もまたいつもの場所に来られたような気がして、
なんだかほっとするのである。
夢枕獏の陰陽師シリーズは、いつまでもこの「お約束」から
物語が始まってもらいたいと思う。
今回収録されている六話の短編の中では、
本巻を最初に飾っている「二百六十二匹の黄金虫」が一番好き。
私の好きな登場人物の一人である露子姫が再登場。
相変わらず、平安時代のお姫様らしからぬ風変わりぶりだけど、
その「私は私よ」的な性格が彼女の最大の魅力。
今後もちょくちょく父実之の目を盗んでお屋敷を抜け出し、
晴明、博雅と色々冒険してほしい。 -
Posted by ブクログ
シリーズ第四作目。
悪くはないと思う。
悪くはないと思うのだが、
しかし、自分の気持ちの問題で相済まないが、
前作に圧倒的に感動させられてしまったため、
その後に続くこの巻の印象がどうしても薄い。
「付喪神ノ巻」の存在がなければ、
もっと高い評価をしていたと思う。
晴明がライバル蘆屋道満と術の競い合いをする
この巻ラストに収録されている作品は、
ある意味このシリーズのファンが
「いつの日か・・・。」と
待ちに待ったシチュエーションだと思う。
この作品を読むと、蘆屋道満という人間が、
この「陰陽師シリーズ」の作品中において、
ただ悪役的役割をこなしている訳ではない事がわかる。
彼は、晴明と相容れない所も多くあるものの、
その晴明と劣らぬ魅力を持った人物である。
優秀な陰陽師が二人、お互いにその能力を認め合い、
相手の考えを尊重している。
この陰陽師二人の懐の深さを前にしたら、
彼らを見世物にして、技を競い合わせた貴族達は
なんて薄っぺらな人間なのだろう。
いつの日かこの二人の陰陽師が、
命がけの対決をする日がやってくるのだろうか。
それを考えると、ちょっとドキドキする。